セリカのイラストとかあるのに⋯⋯
「うぅ⋯⋯私のぬいぐるみ⋯⋯」
「いやいや。 確かに僕も悪かったが、サヤにだって非はある。 お互い様だって言ってるだろ?」
「でも⋯⋯あれは私の大切なやつで⋯⋯」
黒焦げとなったものの、何とか原型を留めているぬいぐるみを胸に抱きながら、サヤは元気なく呟いた。
宥め続けた結果、泣き止ませることには成功したものの今度はいじけだしてしまった。
現在はその対応に追われているのだが、正直言って物凄く面倒くさい。
しかし、一応は協力関係にある僕たちの関係を、ここで無理に悪化させることを防ぎたいため、真面目に対応しているのだ。
サヤの大事そうに抱えるぬいぐるみは、部屋に散見される他のものと比べて、特段すごい様には見えないのだが⋯⋯どうやら特別な思い出があるらしい。
「これはね⋯⋯お姉さんに貰った大事なぬいぐるみなんだ⋯⋯」
「⋯⋯そう、なのか⋯⋯」
しょんぼりと俯きながら、寂しげに言い放ったサヤに釣られて僕も俯く。
そのお姉さん、というのがどのような存在なのかは分からないが、口ぶりから察するにもう戻ってこない一過性のものなのかもしれない。
うーん⋯⋯そう考えると、何だか罪悪感が⋯⋯
「なぁサヤ。 そのぬいぐるみ、直せるのかもしれないんだが⋯⋯」
「⋯⋯ほんと? ヴァイスくんが?」
「あ⋯⋯あぁ。 その⋯⋯直せる人に心当たりがあるんだ」
ダメ元で切り出してみたのだが、思いの外いい反応が得られたのでその方向で話を進める。
ちなみに、直せるかもしれない人というのはメイド長だ。
確か彼女は先代のメイド長⋯⋯というか彼女の母親から裁縫の技を叩き込まれたから、それだけは自信がある、と自嘲気味に話していたような記憶がある。
ちょうど三日後に共に昼食を食べに行くのだから、その時にでも聞いてみるとしよう。
性格の良い彼女ならきっと引き受けてくれるはず⋯⋯というか引き受けてくれないと本当に困ったことになる。
「その人に頼んでみようかな⋯⋯」
「あ⋯⋯あぁ。 お、おぉ⋯⋯大船にに⋯⋯の、乗ったつもりでいてく、れ」
もしもしくじった時のことを想像してしまい萎縮しながらも、この任務は失敗できないと肝に銘じるのであった。
―――
「ねぇねぇヴァイスくん! 見てこれ! 可愛いでしょ!?」
色々とあったものの、とりあえず落ち着いたサヤはいつものように暴れ回っていた。
虚空から手品のように、数々のぬいぐるみを取り出しては僕に見せてくるので鬱陶しいことこの上ない。
どうやってぬいぐるみを取り出しているのかと聞くと、魔法を使って収納しているのだと当たり前のことの様に答えられた。
非常識な魔法ではあるのだが、それなら僕が目を外した時間の間に部屋を変貌させたことに合点がいく。
おおよそ、虚空から取り出した物を、魔法を使って配置したのだろう。
「まぁ⋯⋯それは分かったんだが⋯⋯ひとついいか?」
「ん? どうしたのヴァイスくん? 真面目な顔して?」
サヤの動きが止まったタイミングを見計らって、僕はずっと気になっていたことを問いかける。
「どうして僕の前に現れた?」
「⋯⋯うん? ちょ〜っと、どういう意味か分からないな〜」
「そうか。 だったら言い方を変えよう。 どうして僕とサーチェが偽の国王を暗殺したタイミングを見計らったかのように現れたんだ?」
別に僕はサヤを疑っている訳では無い。
ただ、それに何も思惑がないのだとはどうしても考えられないのだ。
それに⋯⋯
「あともうひとつ。 サヤは知っていたんだろう? 当時のマグノリアの国王が勇者の末裔ではないことを。 それを伏せて、僕とサーチェとを出会わせたのはどうしてだ?」
「それは⋯⋯」
「よく考えてみれば、そもそもどうして僕をマグノリアからじゃなくて、森の中から行動を開始させたんだ? それこそエイリさんやドラゴンに出会わせたかのように⋯⋯ましてや偽物の地図を渡してまで」
考えれば考える程、サヤに対する不信感は募っていった。
明らかに何かを意図してこれまでの行動は行われていたと考えるべきだろう。
そして⋯⋯一体何を思って今、現れたのか。
サヤははっきりと動揺の色を浮かべ、視線を泳がせていた。
しかし、やがて観念したかのようにひとつ、ため息をついた。
「あ〜あ。 流石はヴァイスくん。 頭良いねぇ〜」
パチパチと手を叩きながらそう言い放つサヤの声色は、どこか投げやりで先程までの能天気さとはまた違った雰囲気を醸し出していた。
その変わりように思わず身構える僕を見て「あぁ。 大丈夫だよ」と肩を竦めて笑うサヤ。
「まぁ⋯⋯ここまで悟られてたらしょうがないねぇ⋯⋯。 素直に認めるよ。 私は意図的に情報を伏せてサーチェくんとヴァイスくんを巡り合わせた」
「⋯⋯そうか。 エイリさんやドラゴンとも?」
「エイリさんって言う商人さんは、セリカちゃんを補佐させるために、ドラゴンは本線の前にセリカちゃんに戦いの感を取り戻してもらうために、ね」
「なるほど。 ⋯⋯それは分かった」
「うん。 分かってるよ。 どうして今現れたのか、でしょ?」
僕の言葉を先取りしたサヤは「あ〜あ〜」と頭を掻きながら面倒くさげに呟いた。
「最初に会った時⋯⋯言ったでしょ? このままじゃ世界は滅びるって」
「あぁ。 言っていたな」
サヤとの出会いを思い出す。
確か、その滅びの未来を変えるために僕がサーチェを殺す必要があるのだとか。
「それで⋯⋯私はその滅びの未来への道を知っているの」
「ふむ⋯⋯」
未来を知っている。
あまり信じられないことではあるが、一応筋は通っている。 サヤは当代の女神でもあるから、その程度できても不思議ではない。
「でさ。 カイナくん⋯⋯だっけ? あの偽物の王様。 本当の歴史ならサーチェくんが彼を一人で倒して王権を取り戻すんだけど⋯⋯」
「けど?」
「その歴史では⋯⋯カイナくんは悪魔と契約なんてしていなかったの。 それで⋯⋯その後サーチェくんと和解して一緒に国を作ってたんだ」
「⋯⋯!」
「つまり⋯⋯歴史が大きく変わってるんだよ。 私がヴァイスくんを送り込んだことによって、ね」
自嘲気味に呟くサヤは何とも言えない表情を浮かべていた。
確かにカイナは和解するどころか死んでいるし、本来の歴史では悪魔と契約などしていなかったようだ。
⋯⋯歴史が大きく変わっている。
「それで⋯⋯?」
「うん。 それで⋯⋯私が知っているのは滅びの未来だけだから、これからどうなるかは全く分からないんだよね。 それで、これからはより近くで当事者として歴史を監視することで少しでも滅びの未来に向かおうとしていたら力ずくでも修正しよう、ってね。 今の私は本来の女神の力の、十分の一位しかない分身みたいな存在なんだけどね」
「⋯⋯なるほどな」
サヤの言葉からは強い覚悟が伺えた。
それほど真摯にこの世界のことを思っているのだろう。
「⋯⋯分かった。 乗りかかった船だ。 僕も出来ることが手伝おう」
「え? ⋯⋯いいの?」
「ただ。 約束しろ。 今後、そういう事は一人で考えこまずに僕に話してくれ。 上に立つものの苦しみは⋯⋯分かるから。 力になれないかもしれないが⋯⋯話し相手にはなれる」
「うん⋯⋯ありがとう⋯⋯」
サヤは素直にそう頷いた。
そんな彼女に僕は黙って右手を差し出して握手を求める。
サヤはそれを見て「え? ヴァイスくんと握手!? やったー!」とはにかみながら、固い握手を交わしたのだった。
「さて⋯⋯それで? 本来の歴史ならここからどんな事件が起こるんだ?」
「え〜っと⋯⋯直近だったらねぇ⋯⋯」
サヤは口元に手を当てて考える素振りを見せる。
しばらくして「あ!」と思い出したように手を叩きこちらを勢いよく向いた。
「同盟を組もうとした国との交渉に失敗して⋯⋯戦争になる!」
「⋯⋯は?」
壮大すぎるその内容に呆気とされながら僕は思い出した。
「そろそろ同盟とかも考えないとな⋯⋯」と珍しく真面目に仕事に取り組んでいたサーチェの姿を。
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現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)
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セリカ
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サヤ
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サーチェ
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エイリ
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カムラ