メイドは主人を殺したい   作:朱花

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新たなる協力者

「はぁはぁ⋯⋯」

 

 身体中から汗が噴き出す。

 

「迷ってしまったなぁ」

 

 おかしい⋯⋯⋯⋯サヤから貰った地図どおりに進んでいるはずなのに⋯⋯。

 僕は、サヤから国王暗殺の命を受けたあと必要最低限の物だけを急ごしらえで用意して王都に向けて旅立った。

 本来なら到着している時間帯なのだが⋯⋯一向に着く気配がない。

 これは、あの駄女神(サヤ)が間違えたとしか考えられない。

 

「さてさて⋯⋯」

 

 恨み節ばっかり言っても仕方ないのでこの後どうするか、そう思案する。

 持ってきた食料も残り僅か、オマケに森の中には魔獣、と呼ばれる存在がいる。

 道を行く途中に何度も倒してきたが油断は禁物だ。 うかつには眠れない。

 

炎柱(ファイア)

 

 周囲の枝を適当に集め、魔法で焚き火を作る。

 この世界でも魔王時代に使えた魔法は使えるようだ。

 おそらくコツが分かっていて、魔力があれば身体が違っても魔法を使えるのだろう。

 

「とりあえず、今日はここで野宿だな」

 

 辺りも暗くなってきて来たので、今日はここまでとする。

 持ってきたカバンの中から僅かな携帯食料を取り出し、かじる。

 

「不味い⋯⋯」

 

 この携帯食、長持ちする事のみが利点で全く美味しくないのだ。

 魔王時代には決して食べることのなかった質素な食事だ。

 

 固くて味のしない携帯食を何とか押し込んで、僕は腰を下ろした。

 

 うーん⋯⋯これからどうするかなァ。

 はっきりいって目処が立たない⋯⋯

 

「ん? これは⋯⋯」

 

 ─香ばしいいい匂いだ。

 匂いのする方に寄ってみると、何やらパチパチと焚き火の音が聞こえる。

 覗いてみると、何やら男たちが美味しそうな料理を食べているではないか⋯⋯

 

 思わずそちらに足が伸びたが、人間に物乞いをするなどあってはならないのだ。

 クッ⋯⋯さらば料理よ!

 覚悟を決めて、料理との決別を果たそうとする。

 ―――ぐぅぅぅ

 

 静寂を切り裂く、腹の音が鳴り響いた。

 言うまでもないが僕のものだ。

 

「誰だ!」

 

 当然のように男たちに気づかれてしまった。

 彼らは、油断なく剣を構えて警戒してくる。

 仕方ないので、敵意が無いことを示しながら出ていくことにした。

 

「まぁ落ち着け⋯⋯てください。 敵ではありません」

 

 両手を上げながら、出ていった。

 

「人間の⋯⋯女?」

 

「油断するな! 悪魔が擬態しているだけかもしれない!」

 

「それもそうだな! おいお前! さっさとここから立ち去りな!」

 

 男たちが騒ぎ出した。

 いくら女の子でも、出方が出方だと友好的にはして貰ようだ。

 

 しかし、それより気になることが1つあった。

 悪魔が擬態? 確かに奴らは擬態が得意だったが、人間に恐れられるほど強い奴らでは無かったはず⋯⋯

 これは、調べてみる必要がありそうだな。

 とりあえず、ここにいても良いことは無さそうだし、戻るか⋯⋯

 そう思って彼らに背を向け、足を踏み出した時だった。

 

「おいお前たち! 何をしているんだ!」

 

 奥から別の男の声がした。

 声の主は、贅肉まみれの腹で腹部を固めた男であった。

 

「エイリさん⋯⋯」

 

 男たちがエイリと呼ばれた男に振り返る。

 

「何が悪魔だ! こんな少女がそんな訳ないだろう!お前たちは、 お腹を空かせている子供に何もせずに追い返す奴らなのか?」

 

 エイリが声を荒らげた。

 そう、僕は悪魔などでは無いのだ。

 ⋯⋯魔王ではあるけど。

 

「ほら嬢ちゃん、コッチに来なさい」

 

 エイリは僕を招き、焚き火の前に座らせ、暖かい料理を出してくれた。

 見た目は少しあれだが⋯⋯悪い奴では無さそうだ。

 勿論、油断は出来ないがな。

 

「なんで君のような少女がここにいるのかは知らないが安心しなさい。私が責任をもって王都まで送り届けてあげよう」

 

 僕は罠を警戒して料理を食べるのを渋ったが、エイリがしつこく迫ってくるので、他の男達が食べ始めたのを見て、料理を口に運んだ。

 僕はこの世界に来て初めて、美味しいと思える料理を口にした。

 

「⋯⋯ケッ!」

 

 男たちは心底気に食わない様子だったがそんな事は関係ないとばかりに無視を決め込むことにした。

 

 翌日、エイリは近くにあった集落に立ち寄り、魔道車を借りた。

 なんでも彼は、王都で名のある骨董商人らしい。

 ここに来ていたのは、商談で集落を巡る途中だったかららしい。

 

「その⋯⋯よろしいのですか? まだその旅は終わっていないのでしょう?」

 

 ここまでの好待遇には、何かしら裏がある。

 そう考えての質問だったのだが⋯⋯。

 

「私はね⋯⋯。 孤児だったんだよ。子供の頃に親に捨てられてね。だから、君のような子を見捨てられ無かったんだ。 もちろん、信じてくれなくても構わない。けど、私は君を王都に送るよ」

 

 その真っ直ぐな瞳で見つめられて、何も言えなくなってしまった。

 

(これは、エイリさんだな。)

 

 その日から僕の中でエイリがエイリさんに変わったのであった。

 

 ―――

 

 うーん! 風が心地よい!

 

 なかなかに魔道車の旅は気持ちのいいものである。

 

 気になる事と言えば、傭兵たちの僕に対する態度だが⋯⋯。

 

 僕やエイリさんに対して、邪魔な物を排除したがるような目をしているのだ。

 

 まぁ見るからにガラが悪そうだし⋯⋯。

 気にしてもしょうがないだろう。

 

 ここから1週間ほど森を進めば王都に着くらしい。

 流石にタダで乗せてもらうのは悪い気がしたので、僕はエイリさんの暇つぶしの話し相手を積極的に務めた。

 

「そうか⋯⋯嬢ちゃんはあの、調和国家プライトローズの住人だったのか」

 

「はい、それである日ロゼリアが焼け落ちて⋯⋯」

 

 怪しまれないように彼女の記憶を辿って、ここに来るまでのことを話すようにした。

 

「なるほど、状況は分かった。 最後にひとついいかな?」

 

「大丈夫ですよ?」

 

「嬢ちゃんの名前って何かな?」

 

「名前⋯⋯ですか」

 

 ヴァイス⋯⋯と答えそうになって何とか留まった。

 危ない危ない⋯⋯

 

「言いたくなかったら大丈夫だよ?」

 

 変に間が空いてしまったためエイリが心配そうに声をかけた。

 僕は、サヤに付けてもらった偽名を思い出し、それを口に出す。

 

「セリカ⋯⋯私の名前はセリカです!」

 

 ふぅ⋯⋯何とか違和感なく答えられた。

 そういえば、セリカって名前聞いたことあるなぁ⋯⋯なんの名前だったかな?

 

「セリカ。 いい名前だね。 昔の勇者様と一緒に戦った女神様と同じだ」

 

 頭に衝撃が走った。

 セリカ⋯⋯そうだ。

 この名前は、僕の時代に存在したあの忌々しい女神の名前だった。

 一刻も早く改名したいがしかし⋯⋯名乗ってしまった手前すぐに変える訳にはいかない。

 

 僕の頭には、こちらを嘲笑うサヤの像が想像されていた。

 

 その日から、僕はヴァイス改めセリカとなったのだった。

 




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もっと沢山の応援をいただけると僕のやる気が上がります!

現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)

  • セリカ
  • サヤ
  • サーチェ
  • エイリ
  • カムラ
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