メイドは主人を殺したい   作:朱花

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魔王の伴侶?

 資料室の扉の前に辿り着いた僕は、その重厚な雰囲気に息を飲んだ。

 何と言うか⋯⋯物凄くしっかりとした場所で、この中にサーチェがいるとは思えない程だ。

 

「いいかサヤ? この中にはサーチェ以外にも人がいるんだから⋯⋯下手な真似はしてくれるなよ?」

 

 はっきりと見えたわけではないが、水晶玉を覗き込んだ時にサーチェ以外の人の身体が映り込んでいた。

 サヤがうっかり口を滑らしてサーチェだけならまだしも、他の人にまで僕の正体が割れてしまっては目も当てられない。

 サヤは「分かってるって!」と明らかに分かってなさそうな動作で豊満な胸を張って扉の前にやって来た。

 豊満な胸を張りながら。

 ⋯⋯クソッ。

 

「おい〜っす! サーチェく〜ん? 遊びに来たよ〜!」

「⋯⋯!?」

 

 思わず自分の目を疑った。

 先程の言葉が嘘であったかのように、サヤは資料室の扉を蹴って開けたのだ。

 それに加えて一応は一国の主であるサーチェを「サーチェくん」呼ばわりとは⋯⋯やってくれたものだ。

 

「⋯⋯。 誰だお前は?」

 

 中から出てきたのは、サーチェではなく黒い服で身を包んだ青髪の美男子であった。

 初めて見るその男は怪訝そうな顔を浮かべてサヤを睨みつける。

 一体彼は何者なのだろうか?

 少なくともこの王城の人物でないことは明らかだが⋯⋯。

 少し離れた場所でも分かる圧倒的な威圧感。

 正体は分からないが⋯⋯目の前の彼が強者であることは火を見るより明らかである。

 

「おや? お兄さんこそ誰? 見ない顔だね⋯⋯って言っても私も来たばかりなんだけど⋯⋯? まぁいいや! 私はサヤだよ〜! よろしくぅ〜!」

 

 そんな相手を前にしてもいつものように能天気な態度を貫き通すサヤは、大物なのかそれともただのバカなのか。

 しかし、サヤの態度はこの状況では明らかに悪手であることに間違いない。

 男は明らかに不機嫌な表情を浮かべてサヤを睨みつけていた。

 

「それで〜? お兄さん誰? というかなんでここにいるの? というか私たちサーチェくんに用があるんだけど〜?」

「⋯⋯質問は一つ一つしろ。 まぁいい。 俺の名前はカムラ。 サーチェのアホとは古い知り合いでな。 訳あってここにやって来たんだ」

「へ〜? それでさ⋯⋯そこどいてくんない? 私たちサーチェくんに早く伝えたいことがあるんだけど〜」

「それは聞けないな。 サーチェは今集中して作業に取り組んでいるからな」

 

 サヤの願いをバッサリと切り捨てたカムラに「え〜」と不満そうに答えるサヤ。

 しかし納得していない様子で「お願いだよ〜!」としつこくカムラに噛み付いていた。

 先程まで明らかに不機嫌そうな彼であったが、そのあまりの執着具合に、現在は観念したかのように諦めた様子で対応していた。

 何と言うか⋯⋯面倒くさいという気持ちが全面に現れている。

 

「はぁ⋯⋯分かったよ。 伝言だけしといてやる。 それで良いだろ? そこの女もそれで良いか?」

「え? 私⋯⋯ですか?」

 

 サーチェとよく似た動作で頭を搔いたカムラは心底面倒くさそうに僕の方を向いた。

 

「あぁ。 お前はこいつよりはまともに話が出来そうだからな」

「はぁ⋯⋯まぁサヤさんよりはまともな自信はありますが⋯⋯」

「お前、名前は?」

「はい。 セリカと、申します」

 

 僕はカムラに向けて一礼する。

 きっちり綺麗に身体を折っての礼。

 練習した甲斐あって、我ながらなかなかに様になっているように思えた。

 

「セリカ? おお! お前がセリカか!」

 

 カムラは先程までの気だるげな雰囲気を一転させ、明らかに興奮した様子で僕の肩を掴んだ。

 その変わりように驚きつつ、僕は念の為すぐに行動できるように身構える。

 

「えっと⋯⋯私をご存知なのですか?」

「おうよ! さっきサーチェから聞いたぜ? なんでもめちゃくちゃ強いメイドがいるんだってな。 俺は強い奴が好きだから、一度お前にあってみたいと思ってたんだ!」

「⋯⋯はぁ、なるほど⋯⋯?」

 

 喋りながら僕の身体をまさぐるカムラは⋯⋯一体何をしているのだろうか?

 もしかしてだが⋯⋯普通の女性的に考えると男性に身体を触られることは駄目なことなのでは?

 

「えーっと⋯⋯その⋯⋯カムラさん? そろそろ手を離していただきたく⋯⋯」

「へ? ⋯⋯おぉ! 悪かった! そうだよな⋯⋯俺ってば何やってんだか⋯⋯強い奴を見ると自制がきかなくてな」

「いぇ。 次から気をつけていただければ大丈夫です。 その時は容赦なく抵抗しますが⋯⋯」

 

 そう言って僕は、常に潜ませているナイフをチラリとカムラに見せた。

 予防線を張っておくことは何事においても大切だからな。

 

「おぉ怖い怖い! 安心しろ、サーチェはお前の事をたいそう気に入ってたようだし、人の女に手を出すほど俺は落ちぶれてねぇよ」

「え? いや? ⋯⋯え?」

「さて⋯⋯それはいいとして、お詫びも含めて伝言を聞いておこうか。 ⋯⋯一体どうしたんだ?」

「あっ⋯⋯はい。 その⋯⋯」

 

 そうして僕はカムラに向けて、同盟を辞めるべきだという進言を伝えるよう頼んだ。

 カムラは「うーん。 それはちょっと難しいかもな。 サーチェの野郎は完全に同盟を結ぶ気でいるぜ?」と芳しくない返答をしていたが、それについては後日サーチェと面と向かって話すとしよう。

 とりあえず、今日のやるべきことは全て終了したのだ。

 

「そういえば⋯⋯先程別れる時にカムラに『アンタとサーチェはよく似合ってるよ。 大事にしてもらえ』と耳元で囁かれたんだが⋯⋯あれはどういうことだ?」

 

 僕は途中から完全に無視されていた事を、若干気にしているサヤへと問いかけた。

 

「え? 嘘⋯⋯? ヴァイスくん気がついてなかったの?」

「⋯⋯何がだ?」

 

 サヤの言いたいことに検討もつかない僕は首を傾げるが、サヤはそれを見てますます顔を青くして「え〜っと⋯⋯だねぇ」とはっきりしない様子でいた。

 

「一体どうしたんだ? いいぞ、言ってくれ」

 

 なんだかモヤモヤとして気持ち悪いので、若干の覚悟を決めながら僕はサヤに発言を促した。

 サヤは「本当にいいんだね?」と聞いた後、決意を固めたように頷いて、僕の方を向いた。

 

「多分だけど⋯⋯カムラくんは、ヴァイスくんとサーチェくんが⋯⋯両思いなんだと思ってる⋯⋯のかな〜なんて?」

「⋯⋯は?」

 

 サヤの言葉が上手く理解できない。

 僕とサーチェが両思い?

 それはつまり⋯⋯僕とサーチェが男女の関係ということで⋯⋯つまり⋯⋯その⋯⋯

 

「あぁぁぁ! 何てことだ! まずいぞ⋯⋯早く誤解を払拭しないとぉぉぉ!」

「えちょ? ヴァイスくん? どこに行くのぉぉぉ?」

 

 僕は急いでカムラの元へと戻り、そういう関係ではないことを何度も訴えたが「ハハッいいって! 隠さなくても誰にも言わねぇからよ」と笑ってロクに相手にしてくれないのであった。

現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)

  • セリカ
  • サヤ
  • サーチェ
  • エイリ
  • カムラ
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