メイドは主人を殺したい   作:朱花

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新たな魔法(?)

「さて⋯⋯それじゃあまずは魔法の理論説明から始めま〜す!」

「「うーい」」

 

 いつものように元気いっぱいに言い放ったサヤに帰ってくるやる気のない二つの男声。

 それは教壇に立ったサヤの前で着席するサーチェとカムラのものであった。

 本来は魔法顧問としてサーチェに授業をする予定だったのだが、ふらっと現れたカムラも興味を持って参加することになったのだ。

 ちなみに僕はそんな三人のお目付け役として一人離れたところでその様子を見守っていた。

 それに、少しばかり講義の内容にも興味があったしな。

 

「さて⋯⋯まず大前提としてなんだけど、一口に魔法って言ってもそれには魔力を使う魔法と、聖法気を使う聖魔法ってのに分けられるんだ!」

 

 そう言いながら、サヤは黒板に向けてチョークで人の絵を描き、そこから二つの矢印を伸ばして『魔力』『聖法気』とそれぞれに書き込んだ。

 サヤの字は結構癖字のようで少し読みにくいのだが、サーチェらは頷いているようだし問題ないだろう。

 

「それで〜それぞれの力を使って魔法と聖魔法を発動させるんだけど⋯⋯実は基本的な魔法の効果は同じなんだよね〜」

「「え?」」

 

 サヤの発言にカムラとサーチェは顔を見合せた。

 どうやら二人は知らなかったようでたいそう驚いた様子を見せていた。

 僕も驚いていたが、以前からもしかしたら⋯⋯と思っていた内容だったのでそこまでは驚かない。

 最も、僕自身聖法気が殆どないから予想の範疇だったのだが⋯⋯同じように魔力が殆どないのに確信を持っているサヤは、流石は女神と言ったところだな。

 もしかしたら全盛期は魔力を持っていたのかもしれないな。

 そんな事を考えていた折、おもむろにカムラが手を挙げた。

 サヤはそれを見て「お! カムラくんどうぞ!」と何やら嬉しそうに発言を促した。

 当てられたカムラは律儀にも立ち上がり、サヤをまっすぐと見つめながら口を開く。

 

「それはつまり⋯⋯なんだ。 魔法も聖魔法も大元は同じで、結局名前が違うだけってことか?」

「あ〜。 それはねぇ⋯⋯半分は正解で半分は不正解かな〜?」

 

 口元に手を当てて、少し考えるような素振りを見せた後に再び黒板に向き直って大樹のような絵を描いた。

 

「え〜っと⋯⋯これをイメージで持って欲しいんだけど、確かに魔法も聖魔法も大元は同じだよ〜。 でも⋯⋯こんな感じで途中で枝分かれしていって、やがて唯一無二の魔法⋯⋯俗に言う『上級魔法』とか『固有魔法(オリジナル)』になるってこと〜」

「「「ほぉ⋯⋯」」」

 

 物凄く分かり易い説明に、思わず僕までもが感嘆の声を漏らしてしまった。

 要点を纏めてそれを図式化するのが本当に上手い、これはサヤの才能では無いのだろうか?

 絶対に本人の前では言わないが。

 

「さて⋯⋯まぁこんなことはねぇ⋯⋯どうでもいい!」

 

 サヤがパチンと指を鳴らすとひとりでに黒板消しが動き出し、先程の図を綺麗さっぱりに消してしまった。

 欠伸をするサーチェとは対照的に、真面目にノートを取っていたカイナは唖然としていたが、そんな事を気にする様子もなくチョークをポイと投げ捨てた。

 

「どうでもいい⋯⋯か。 教科書通りの内容は意味が無いってことか?」

「お! そうだよサーチェくん! 確かに基本は大事だけど⋯⋯一般的な強さなんか意味がないからね〜!」

 

 先程までの内容も、なかなかに基本から逸脱したものだったのだが⋯⋯サヤからしたら『基本』の範疇のようだ。

 サーチェもサヤもつくづく規格外だな⋯⋯本当に。

 

「あ! 先に言っておくけど、今から話す内容はあくまでも私が実践出来ないから、本当にできるかどうか分からないものだからね〜!」

 

 うーん?

 サヤの言葉に僕はひとつの疑問を感じた。

 一体どうしてそんな事を教えようとしているんだ?

 いくら自由奔放なサヤと言えど、そんなに無駄なことはしないはず⋯⋯。

 

「⋯⋯と言っても、さっきの内容の延長線上だから、八割くらいの確信は持ってるけどね〜。 ちょっとビックリしたでしょ〜」

「ほぉ? そういう事なら聞こうじゃねぇか!」

 

 ニヤっと悪戯な笑みを浮かべたサヤに、笑い返したサーチェ。

 ⋯⋯少しだけイラっとしたが、まぁいいだろう。

 

「さて。 まぁさっき言ったみたいに二つの魔法は根本的には一緒なんだ〜。 じゃあセリカちゃんに質問! この二つの端的な違いは?」

「「え? セリカが来ているのか?」」

 

 一応は目のつかないところでこっそりと観察していた僕だったが⋯⋯どうやらサヤには気づかれていたようだ。

 男二人は全然のようだが⋯⋯。

 

「なんだよセリカ⋯⋯いたんならこっちで見てもいいんだぜ? なぁカムラ?」

「おう。 強い奴の上にサーチェの信頼する奴なら同席を拒否する理由はねぇ!」

「⋯⋯いえ結構です。 私が近くによったらご主人様が私へのちょっかいで講義に集中しないではありませんか」

「ははっ! 確かに! セリカちゃんやる〜! それで? 質問の答えは〜?」

「⋯⋯二つの魔法の違い。 それは魔力と聖法気。 つまり、使う力の違いですか?」

「お! せいか〜い!」

 

 パチンと指を鳴らしてサヤはウインクをする。

 どうやら正解だったようだ。

 サーチェは「え? ⋯⋯名前の違いじゃねぇの?」と馬鹿げた事をほざいていたが、聞かなかった事にしてやろう。

 名前って⋯⋯屁理屈にも程があるだろう。

 ⋯⋯と思っていたのだが「俺もそれだと思ってたぜ⋯⋯」とのカムラの呟きで物凄く残念さを感じたのも、胸に秘めておこう。

 

「さて⋯⋯それでさっきセリカちゃんが言ったみたいに、二つの違いはその源にあるんだ。 もし聖法気も魔力も沢山あれば、魔法を同時に使えるかも? つまり、同じ効果の魔法を一度に二回使えるかな〜な〜んて思ってるんだよね〜」

「なるほど⋯⋯」

 

 サヤの考えは確かに一考の余地があるものだ。

 ただ⋯⋯聖法気も魔力も沢山持っている人なんてそうそう⋯⋯あ。

 

「なるほどな⋯⋯それがこれからの目標か。 悪くねぇな」

「そ。 まぁ私が気になるってのが主な理由なんだけどね〜。 嫌だったら変えるけど」

「いや。 いいじゃねぇか。 俺はやってみたいぜ?」

「お! だったらそれでいこっか!」

 

 再びパチンと指を鳴らしたサヤは嬉しそうに笑う。

 大量の魔力と聖法気を持つ現代の化け物。

 サーチェ=マグノリアをその漆黒の双眸で見つめながら。

現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)

  • セリカ
  • サヤ
  • サーチェ
  • エイリ
  • カムラ
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