「セリカー。 もうちょっと力込めて⋯⋯あともっと奥をやってくれー」
「注文が多いですね⋯⋯鼓膜突き破りますよ?」
「やっちゃえセリカちゃん!」
「え? お前⋯⋯やめろよ! マジでだからな!」
ちょっと強めに力を込めてやった途端、わーわーと喚き出したサーチェを鬱陶しく思いながらも僕は忙しなく手を動かし続ける。
僕が今行っているのは耳かきでの耳掃除だ。
サーチェ曰く「メイドとしての基本教養」らしいのだが⋯⋯真偽は分からない。
「⋯⋯というか、どうして私が耳掃除をしないといけないんですか」
「ん? カムラから説明されたんだろ? なぁカムラ?」
「あぁ。 確かにセリカには伝えておいたぞ」
「伝えられましたけど⋯⋯あんな説明で納得いくと思っているのですか!」
僕だって別に自分から望んでサーチェに耳掃除を行っているのではない。
朝っぱらから魔法の特訓に励んでいたサーチェとサヤとカムラ。
その三人に、わざわざ朝食の差し入れを持ってきてやったのだが⋯⋯それが間違いだった。
いきなりカムラに耳かきと綿棒を渡されて「あれの勝者に耳掃除してやることになったんだ」と、目の前で勃発していたサヤとサーチェの勝負を指さしながら、告げられたのだ。
なんでそのような状況に陥ったのかも僕は知らない。
「まぁたまには素直にご主人様の命令に従っとけよ」
「⋯⋯む。 それは横暴では?」
「知るかよってんだ。 まぁ気持ちいいからそのまま頼むわ」
「⋯⋯今回だけですよ」
よく考えたら、当たり前のように膝枕をしているのもおかしいな⋯⋯
⋯⋯まぁ今回だけ⋯⋯今回だけだから許してやろう。
カリカリ⋯⋯カリカリと音を立てながら僕は耳かきを動かし続ける。
「あれ? ヴァ⋯⋯セリカちゃん結構耳かきにハマってる?」
「確かに⋯⋯なんというか一心不乱だな⋯⋯」
「⋯⋯ハッ! いっ⋯⋯いえ。 全くしょうがないですね⋯⋯」
「痛っ! おぃセリカ⋯⋯痛いって!」
サヤとカムラの声で、意識を取り戻した僕は何とか取り繕おうと変に力を込めてしまった。
そのせいで耳かきが突き刺さってしまったが、まぁいいだろう。
以外に奥が深くてのめり込んでしまったな⋯⋯耳掃除恐るべし。
コホンと咳払いをした後、没頭し過ぎないように気を払いながら耳掃除を続行した。
「そういえば⋯⋯進捗はどうですか? 朝っぱらから魔法を練習していたようですが⋯⋯」
「あーん? まぁ⋯⋯そこそこだな」
「はいサーチェくん。 嘘つかない!」
「その通りだ。 まず魔法を作るところすらロクにできていなかっただろう!」
何気なく問いかけた質問だったが、やはりなかなかに難しいようだな。
サーチェが魔法をあまり得意ではないことは、なんとなく察しがついていたが、サヤ達の話を聞くに基本中の防御魔法と身体強化魔法しかまともに使えなかったらしい。
酷いな⋯⋯確かにサーチェのスタイルに魔法はあまり必要ないのだが⋯⋯そこまで割り切るのか。
「もう少し成長しているものだと思ってたがな⋯⋯あの時と魔法は変化なし、少し残念だ」
「あ? うるせぇよ! つーか魔法なんかなくてもお前なんか余裕だし?」
「ほぉ? 言うじゃないかサーチェ。 後で一戦交えるか」
「おうよ! 望むところ⋯⋯っておい! なんで頭抑えるんだよセリカ!」
「動かないでください! 鼓膜破られたいんですか!?」
耳掃除をしているこちらの気持ちなど知らないとばかりに、頭を動かしてカムラに反論しようとするサーチェが暴れないように抑えつける。
本当に心臓に悪いからやめて欲しいものだ。
「つーか。 レータが魔法をロクに教えてくれなかったんだろ!」
「それは⋯⋯まぁそうだが⋯⋯」
「ん? レータって誰?」
唇を尖らせてのサーチェの反論に食い付いたのはサヤであった。
「レータ」⋯⋯今まで会ったことのない人物だな。
「もしかして、ご主人様のお師匠様ですか?」
「⋯⋯おおよ。 俺とカムラの師匠だ。 よく分かったなセリカ。 話したことあったか?」
「いえ。 なんとなくそう思っただけです。 どんな方なのですか?」
「そうだな⋯⋯まぁ⋯⋯自分勝手な奴だな」
「同感だ。 レータの自由奔放さにはいつも苦労させられる」
「へ〜。 なんかダメ人間っぽいね〜」
「「「⋯⋯」」」
「⋯⋯え? 何その顔? ⋯⋯ねぇ?」
自分もそれに当てはまっていることに、気がついていないサヤは、じとーっと自分を見つめられていることに気がつき、少し語調を強めた。
まぁ⋯⋯本人が良いのなら別に問題ないのだが⋯⋯
「⋯⋯はい。 これでおしまいです」
「⋯⋯おぉ。 お疲れさん。 気持ちよかったぜ? また頼むわ」
「⋯⋯まぁ気が向いたらやりますよ」
以外にも楽しかったので、やらないとは断言せずに僕は立ち上がった。
「⋯⋯あれ? もう行っちゃうの? これから訓練再開するんだけど⋯⋯セリカちゃんも一緒にやらない?」
「そうだぜセリカ? 一緒にどうだ?」
「あぁ⋯⋯申し訳ございません。 この後、少し予定がありまして⋯⋯」
「予定?」
「えぇ。 メイド長と食事に行って参ります」
「へー。 何と言うか意外だな。 まぁいいや。 しっかり愛想よく振る舞う方法を教えてもらえよ?」
「⋯⋯それでは」
軽く一礼して、僕はメイド服から着替えるべく自室へと向かうのであった。
現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)
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セリカ
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サヤ
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サーチェ
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エイリ
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カムラ