「っしゃー! お前ら! 聖夜祭開幕だー!」
「「「「おー!」」」」
サーチェの大きな掛け声と共に、王都内の人々が各々のグラスを合わせて乾杯を交わす。
サーチェの思い付きで突如復活となった行事、聖夜祭が開始された瞬間であった。
聖夜祭。
かつて魔王を倒した勇者ヴァーチェのこの世への誕生を祝って、王都マグノリアで毎年執り行われていた行事である。
カイナに王国を乗っ取られて以来は一度も開催されていなかったようだが「なぁ? 今年はやらねぇのか、聖夜祭」というサーチェの呟きによって開催される次第となった。
当初は皆、あまり乗り気では無かったのだが「各国の住人からも注目されるマグノリアの一大行事なんだ。 商業活動が活発になるから是非とも執り行って欲しいね」という、王国内でそこそこの発言力のあるエイリさんの協力の結果、円滑に事が進んでいった。
今は何とかなっているが、カイナのクーデター後の復興よってマグノリアの国家財産にはあまり余裕が無い。
しかし、この祭りによって大きな収入が望めるのだとか。
「おーいセリカ? 何やってんだよ。 早くお前も楽しもうぜ?」
「そ〜だよセリカちゃん。 タダ飯は喰らうがよし! これは大事な事だからね!」
「え? ⋯⋯ちょっと!?」
そう言って両脇を固めたサーチェとサヤによって半ば無理やりに食事が用意されたテーブルへと連行された。
肉やら魚やら、思わずこの短期間でよく用意できたものだと感心する程の料理がテーブルの上へと並べられていた。
「ご主人様? あまりお酒は飲まれない方がよろしいのでは⋯⋯」
「え? なーに言ってんだよセリカ! 俺が酔いつぶれる訳ねぇだろ?」
そう言ってサーチェは、グラス一杯についだワインを勢いよく飲み干した。
祭りが始まってから大して時間が経っていないはずなのに、その顔は既に少し赤みを帯びている⋯⋯これは二日酔い確定だな。
「サヤさんも。 あまり食べ過ぎないようにしてくださいね? 太りますよ?」
そんなサーチェは放っておいて、頬いっぱいに食事を詰め込んで恍惚の表情を浮かべるサヤにも釘をさしておく。
「ん? あ〜それは大丈夫! 私って太らない体質なんだよね〜。 不思議〜」
「本当に⋯⋯どこに脂肪がいくんでしょうかね? ⋯⋯チッ」
スタイルのいいサヤの身体の中で大きく存在を放つそれを睨みつけるが⋯⋯サヤは意に返した様子もなく、再び食事を頬張り続けるのであった。
―――
「確かここに⋯⋯いた!」
「おや? セリカ様。どうしてこのような場所に?」
「祭りの方はよろしいのでしょうか?」
僕がやって来たのは、マグノリアへの入り口となる大きな門の前。
到着した途端に、そこで勤めを果たしていた衛兵たちがワラワラと集まりだした。
「こんな日まで⋯⋯お勤めご苦労様です」
「いえいえ。 国王様やセリカ様のおかげでこの国は成り立っているのですから。 私たちが働くのは当然のことです」
「そうかもしれませんが⋯⋯働きすぎはダメですよ。 こんな日くらいサボったところで、だれも怒ったりしませんから。 少しばかり私が代わりましょう」
祭りとは皆が公平に楽しむべきである。
僕はむしろこの祭りに興味が無い方だったし、彼らなら僕の代わりに存分に楽しんでくれるであろう。
「それは⋯⋯いけません」とか頭の固いことをグダグダと言い続ける彼らを、半ば無理やりに押し返して僕は城門の管理を引き受けるのであった。
―――
「ありがとうございました! お陰様で存分に楽しむことが出来ました!」
「いえいえ。 大丈夫ですよ。それでは⋯⋯私はこれで」
しばらく時間が経過した後、戻ってきた衛兵たちに再び警備を任せて、影移動を駆使しながら僕は城下町へと再び戻ってくる。
祭りは大分佳境に入っているようで、ところどころで酔いつぶれて倒れている人が散見された。
「ありゃ!? ヴァイスくーん! 探したよ! こんな所にいたんだね!」
「ん? サヤか。 てっきりもう倒れているかと思っていたが⋯⋯」
「ふふん! 私を甘く見ない方がいいよ〜! アレをするまでは絶対に眠れない!」
「はぁ⋯⋯。 覚えていたのか」
「モチのロンだよ! 私は準備してきてるからね!」
そう言ってサヤは小さな小包を取り出す。
それに習って僕も、ずっとポケットに忍ばせておいた小包を取り出した。
そして⋯⋯サヤと見つめあった後にお互いにその袋を交換する。
聖夜祭のメインディッシュのプレゼント交換だ。
サヤは僕の送った小包を胸に抱きかかえて恍惚の笑みを浮かべる。
「ふふふ⋯⋯! ヴァイスくんからのプレゼント〜! 聖夜祭さまさまだね〜! 開けてもいい?」
「あぁ。 勿論だ。 ただ⋯⋯あまり期待するなよ?」
「またまた〜!」
そう言って勢いよく小包を開封したサヤは、その中に入っていたペンダントを見て「わおっ!」と分かりやすい反応をして見せた。
特段珍しいものでは無いのだが⋯⋯サヤに似合う雰囲気の綺麗なペンダントだ。
女神様のお目に叶うかは少し気がかりだったが⋯⋯嬉しそうなその顔をみるに悪くはなかったのだろう。
「ありがとう! ず〜っと大切にするね!」
「あぁ。 そうしてくれると嬉しいよ。 このプレゼントは⋯⋯」
「あ! それは是非とも一人になった時に見てね!」
「⋯⋯分かった」
その言葉に一抹の不安を覚えながらも、僕は続いての目標地点へと向かうべく足早にサヤと別れる。
ちなみに、後に開いた小包の中身は結構キワドイ女物の下着であった。
全く何を送り付けているのだか⋯⋯。
―――
「失礼します⋯⋯ってもう大丈夫か」
そろりそろりと忍び込んだサーチェと乾杯した場所では、案の定酔いつぶれたサーチェが眠りこけていた。
⋯⋯だから飲みすぎるなと言ったのに。
「まぁいい⋯⋯。 今なら人目もないし⋯⋯」
そう呟きながら、僕は常備しているナイフを抜く。
そして⋯⋯大きく振り上げたそれを、床で爆睡しているサーチェへと⋯⋯勢いよく振り下ろしたのだった。
―――
「んぬ⋯⋯もう朝か⋯⋯体いてぇ」
チュンチュンと騒ぐ小鳥の声に促されて、サーチェはその目を開く。
石造りの道の上で眠りこけたことに加えて、二日酔いも合わさり、全身が物凄い痛みを訴えていた。
(しっかし⋯⋯昨夜騒ぎすぎたから眠いな⋯⋯もう少しだけ⋯⋯!!!?????)
そんなことを考えながら、再び眠りにつこうとしたサーチェは⋯⋯近くに刺さるナイフの存在に気がついた。
「落ち着け⋯⋯俺。 こんな事をするのは一人だけだ」
敵襲かと思って少しばかり焦ったサーチェであったが、セリカの仕業だと検討がつき、落ち着いた様子でそのナイフを抜く。
「ん? なんだこれ⋯⋯」
その時、ナイフの先に括り付けられたペンダントに気がついた。
白と黒の色が上手く混ざりあったそのペンダントは⋯⋯王都のそこそこ高いアクセサリー店で人気となっていたもので⋯⋯
「ハッ! 素直じゃねぇな。 セリカのやつは」
そのペンダントがここにある意味に気がついたサーチェは、笑みを浮かべながらそれを首にかける。
「さーて。 どんな
身体を起こしたサーチェは、セリカへプレゼントを送り返す方法を模索するのであった。
メリークリスマス!
現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)
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セリカ
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サヤ
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サーチェ
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エイリ
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カムラ