メイドは主人を殺したい   作:朱花

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魔眼解放

 魔道車の一角、骨董品の置き場にてガサガサと音が聞こえる。

 音の中心では、骨董品が散乱している。

 ―――その中心、僕は魔道車の広さに感心しながら本を読む。

 

 事実、この魔道車はかなり広い。

 どれくらいかと言うと、僕とエイリさん、傭兵3人に1人づつ部屋を与えても余る程、と言えば分かってもらえるだろう。

 

 

「セリカちゃん、明日には王都に着くから。その⋯⋯なんと言うかそこ片付けといてね」

 

「あぁ⋯⋯すいません」

 

 うんまぁ流石にそろそろ言われるだろうとは思ってた。

 僕はエイリさんに助けられて以来、暇を見つけてはエイリさんの持ってきた骨董品を見せてもらっていた。

  そして一昨日! 探し求めていた歴史書を発見したのだった。この世界を全く知らない僕にとって歴史書はさながら聖典のようだった。

 読みふけてしまったのも納得してもらえるだろう。

 

  どうやらこの世界にはゴブリンやスケルトンなどの魔物がほとんどいなくなってしまったらしい。

 もちろん、一部の魔物はしぶとく生き残っているらしいその代表例が悪魔だ。

 

  悪魔は500年前き魔王である僕が滅んで以来、しばらく息を潜めていたらしいが、100年ほど前に大量に増加したちまち人間界に領地を拡大していったらしい。

 

  しかし悪魔か⋯⋯。

 魔王時代の悪魔は狡猾だが大した力がない弱小種族だったのだ。そんな奴らが現在の世界の覇者だとは信じられない気持ちが大きい。

 

 それともう一つ、魔術書を見つけた。

 その中にはこの世界の魔力や魔法の仕組みについて事細かに書かれていた。

 

 ㅇ魔力、聖法気は訓練を積むことで使えるようになる。

 ㅇこの世界に存在する魔法は基本的に、魔力を媒体として放つ「魔法」と聖法気を媒体として放つ「聖魔法」の二種類。

 ㅇどれだけ訓練を積んだとしても魔力、聖法気の大きさは共に生まれつき決まっている総量以上にはならない。

 

 僕のいた過去の世界と変わったことは特には見られなかった。

 ―――ただ一つの(ページ)を除いて。

 

 その題名は『力の質について』

 曰く 魔力、聖法気にはそれぞれその人だけの ”質”があるらしい。

 その判明のおかげで自分の魔力の質を覚えさせることでその人以外開けることができない扉などが誕生し、技術が大きく発展したらしい。

 ―――まぁどうでもいいことだが。

 

  感傷も程々に本格的に片付けを始めようかとしたその時だった。

  魔導車がその動きを急に泊めたのだ。そのせいで大きく転倒してしまった。

 

「いてて⋯⋯なんだ?」

 

  起き上がって窓から辺りを確認した。

 いつの間にか夜となっていてよく見えないが森の中だと言う事は分かる。

 王都に着いた訳でも無さそうだな⋯⋯

 

「さっさとこっちに来い!」

 

 ん? 何か声が聞こえたな。

 声のした方を注視してみる。

 

「お前たち⋯⋯裏切ったのか?」

 

「へへっ! 馬鹿だなおっさん! あんな財宝を俺たち傭兵の前に置いておくなんてよォ」

 

「あのセリカとか言う女は⋯⋯骨董品のところか。あんなガラクタに興味があるなんて変なやつだな。」

 

「私はどうなってもいい! だからあの子だけは……頼む!」

 

「うるせぇな! あの女は美味しく頂くに決まってんだろ。

 」

 ⋯⋯どうやらエイリさんの雇った傭兵たちが裏切ったらしい。

 

(そうか!)

 

 そう考えると彼らの今までの行動にすべて納得できた。

 

 ―――傭兵たちのあの目線は、盗みを働くのに邪魔な僕を忌々しく思ってのものだったのか!

 

 後悔したところで時すでに遅し。

 

 うーん⋯⋯どうするか。

 結論から言って傭兵たちを倒すのは簡単だ。

 ただ、それをした場合僕の正体が知れてしまう可能性がある。

 確かにエイリさんには恩義を感じているが⋯⋯。

 誰しも、自分の身の方が可愛いのだ。

 

 ⋯⋯逃げるか。

 エイリさんに背を向けて窓から外に出ようとしたその時だった。

 

「黙れ! あの子はなぁ! お前たちのような下種の手で汚していい子じゃないんだ! 故郷を失い、親を失い、それでも前を向いて生きているんだ!」

 

 誰かに大切に思われ、守られること。

 今までにあっただろうか?

 今まで、敬れ恐れられるだけの存在だったこの僕に

 

「うるせぇなお前。 もう死ねよ!」

 

 エイリさんに向けて剣が振り下ろされる。

 しかし、次の瞬間その男は地に伏していた。

 

「気が変わった」

 

 僕は、倒した男を踏みつけながら他の男を睨む。

 

「んな! テメェは!」

 

「嘘だろ⋯⋯リーダーが」

 

 狼狽える傭兵たちを尻目にエイリさんの方へ向かった。

 

「大丈夫ですか?」

 

 エイリさんに歩み寄りながら問うた。

 

「あっ⋯⋯あぁ」

 

 差し出した手を取りながら立ち上がったエイリさんの目には明らかに恐怖の色が伺えた。

 

「少しだけ待っていてくださいね」

 

 だから僕は、その恐怖をほぐすようにニッコリと笑いかけたのだった。

 

「おぃセリカ! てめぇ何しやがった!!」

 

 そう言いながら傭兵のひとりが剣を振り下ろしてきた。

 僕はそれを余裕もって躱す。

 

「まだ力の差が分からないのか、愚物が!」

 

 そう言って心の中で念じる『魔眼解放(オープン)』と。

 

「うわぁぁぁ!」

 

「やめろ⋯⋯やめろォ!」

 

 一瞬にして大の大人たちが目の赤く染った少女に睨まれるだけで発狂し、失禁する地獄が展開された。

 

「お前たちに慈悲などない。上位者の名において命令する。『死ぬまで一生、そこから動くな』」

 

 その囁き1つでの彼らの運命は決定した。

 これが僕の元々の能力『魔眼解放』目に宿した魔力を相手に送り込む。それだけの能力だ。

 しかし、その権能は強大で格下に対する絶対有利が例としてあげられる。

 赤目に睨まれた格下はその瞬間生殺与奪の権を握られる。

 

 阿鼻叫喚の光景を背に、僕はエイリさんと魔道車に乗り込もうとした。

 

「あの⋯⋯セリカちゃん。 あの力は⋯⋯」

 

 うーん、やっぱり聞かれるよなぁ。

 そうだ!

 僕は浮かんだ作戦を履行するべく口元に指を近づけた。

 

「乙女には秘密の一つや二つはあるものです。 それを聞くのは無粋というものですよ?」

 

 ウインクしながらそう言った。

 うん、我ながらなかなか⋯⋯。

  エイリさんもドギマギした様子で、あっあぁ、と言っていたし問題ないだろう。

 

 傭兵たち(ゴミ)を下ろして魔道車は再び走り出した。

 それに近づく巨大な影に気づかないまま⋯⋯

現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)

  • セリカ
  • サヤ
  • サーチェ
  • エイリ
  • カムラ
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