杉下右京の雅楽   作:D・ヒナ

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序章

西暦2022年、7月某日、某所。

――ああ。これじゃあ、ドラマや小説に出る「真実を知ったが為に殺されるキャラ」みたいになってしまうじゃないか。

そんな事を考えながら、陣川公平は座り込んだ姿勢のまま、トカレフに付けられた胸の傷を指でなぞった。しばらく指を滑らせたところ、ほのかにぬるくなった金属に指が触れた。すごく幸運なことに、弾丸は肋骨に当たり、尻を空気に晒している。また、肋骨は折れる事無く、職務を全うしてくれている。しかし、すごく痛い。仮にも弾丸が骨に食い込んでいるのだ。これで痛くなくなる程、ツキを持ち合わせていない事を彼は知っていた。

と、自己分析をしている間にも、足音はずんずんと陣川の方へ向かっている。

「なあ。アンタ、すげえモッテルよ。仮にも人間の急所の胸部にタマが当たってるってぇのに、柱の影に隠れて、尚且つこっちを睨んでられる程に体力が残ってるなんてよ」

「ハハッ。俺でもそう思うよ。何せ、これまでこんなにツイテル瞬間は無かったからな。……火事場の馬鹿力って言うのかな?力が湧いてきたよ」

「はん。ソイツぁ、どっちかっつーと火の車ってぇ奴かな。勢い余って事故死か、それとも自傷で焼死か。ともかく、お前はもうすぐ死ぬな」

「そうはなりはしないさ。……多分なッ!」

陣川は全身の筋肉に力を入れ、柱から出て、目の前のフード姿の男に飛び掛かる。

「そうさッ、テメェは俺というモンスターにクラッシュさせられるんだからなァ!?」

 

 

 

 

 

日本のオタク文化というものにはつくづく驚かされる。

時たまケッコー高クオリティで尚且つインフルエンスのあるモノを作り上げるが、いつの間にか音も無く、スッと姿を消している。かと思いきや、水面下でとんでもない事を画策していたりと、極めて気を抜けないのが彼らだ。そして何より面白いのが、傍から見れば変なモノも多いのに、何故か若者たちにも一定数の人気があるという事だ。そう、それこそ社会現象を起こす程には――

「――右京さん。おはようございます」

冠城亘は、出入口すぐ近くにある木の札を返しながら、自分の上司である杉下右京に朝の挨拶をした。

「おはようございます、冠城君。ところで少し気になったのですが、どこかせわしないですね。どうかしましたか?」

「……何でもないです。ちょっとした、個人的な悩みが出来ただけですから」

「気になりますねぇ、冠城君をそうまでさせる悩みとは。…一体、何があったんですか?」

杉下に話してどうにかなる話では無いのだが、かといって話さないと自他共にモヤモヤが溜まったままになりそうだったので、冠城は話す事にした。

「VIRTUAL SINGERって知ってます?最近流行ってるアレ」

「ええ、聞いた事はあります。VIRTUAL SINGERというのはCFP株式会社の開発したボーカル音源、およびそのキャラクター達の総称で、存在自体は2003年よりしていたが表舞台に出る事は少なかった。しかし近年、それを用いて制作された楽曲が話題となり、流行となった、という事は知っていますが」

「……めっちゃ知ってるじゃないですか」

「ありがとうございます。それで、それが君の悩みとどう関係するんですか?」

「――あれって、聴き辛くないですか?」

「はいぃ?」

「いや、あれって機械音声じゃないですか。人間の本能っていうのか、メディアやSNSが機械に埋め尽くされるっていうのがあまり心地よくなくて。今も人間の歌声が少し恋しいです」

「まぁ、君の言い分も分かります。僕も、肉声の詩を長らく聴いていないものですから――そう、ゾワゾワしているんです、体が。それに、生物としては、自身のメディアという住処を踏み荒らされているんですから、一種の食物連鎖のピラミッドから引き摺り下ろされている様に感じている筈です、それは堪らなく恐怖を感じさせるのでしょうね。しかし、客観的に観、聴けばその良さに気付け、体のざわめきも治まるものです。一に旋律、それはまさに千差万別。若者視点の面白いものから玄人の趣深いものまであります。二に世界観、機械という、いわば異種族の存在が居るからこそ為せる歌詞や演出には、僕も驚かされました。そして」

「ああ、もういいです。また今度、聞いてみますから」

と、冠城が杉下の話を遮った所に男が「暇か?」と、部屋に入ってきた。組対に所属する角田課長こと角田六郎だ。彼は二人に会釈するなり、特命係のコーヒーメーカーを自身の物のように手慣れた手つきで操作し、パンダのカップにコーヒーを注いだ。

「まぁ来たばっかりですからね、一応暇ですよ」

「そっかそっか。……にしても二人してボカロの話か。クラシックや落語ばかり聴いてる二人が話すなんて。怖いねぇ、ブームの力は」

「そんなんじゃないですよ」

「そう?いやさ、ウチの嫁と子供が暇さえありゃ、ソレ聞くようになっちゃってさ。俺も聴いてみたワケよ。そしたら聴き辛いのなんの」

そこで冠城が「ああそれ分かります」と、杉下を横目に食い入るように言う。

「だろ?なんでだろなぁーって思ってたんだけど、みんな普通に聴いててさ。仲間が居て嬉しいよ」

そこで角田は一旦話を区切り、コーヒーをすする。そして、一息ついた時にハッとした顔をした。

「そぉいやよ。仲間で思い出したんだが…」

「どうしました?」

「前に、特命係に三人目が入った時があったろ?えーっと、そう。陣川だったっけかな」

「陣川君が、どうかしたのですか?」

不祥事の臭いを嗅ぎつけたのか、杉下の会話に参加する。

「いや何。あいつさ、この間の休みからもうずっと出勤してないの。今日で一週間だってよ。どうしたのかねぇ?」

「そうなのですか。気になりますねぇ。彼はおっちょこちょいで、思い込みが激しい人ですが、無断欠勤をここまで続ける人ではありません」

「もしかしたら、何か事件に巻き込まれているとでも?」

「その可能性もなくはないですねぇ」

そう言って、杉下は手に持ったカップの紅茶をすすった。

 

 

 

「陣川ぁ?アイツなら来てねぇ。居場所なんて、こっちが知りたいぐらいだ」

杉下と冠城が彼の上司に陣川の居場所を尋ねた所、こう突っぱねられてしまった。なので戻ろうとした時、一人の青年に呼び止められた。右京が彼に名を訊くと、彼は田中(こう)と名乗った。彼は二人に休憩室へ行く事を提案し、二人はこれに了承した。

田中は部屋に入るなり、そこの灰皿、ゴミ箱、排気口等の、その部屋の全てのインテリアに目を通した後、ようやく落ち着いた様子で二人の下へ駆け寄った。

「ここまで来て頂き、有難うございます。特命係の杉下さんに、冠城さん」

そう言って彼は手を前にやり、二人に座るよう促す。二人はそれに応じてプラスチックの椅子に腰かけ、田中もそれに続いて座る。

「それで…。ここまで連れて来たということは、何かヤバい情報でも持っているのかい?」

そう冠城が言うと、田中は「はい」と頷いた後、声を潜めて

「この事は、他言無用でお願いします」

それに興味を抱いた杉下が「何故、そこまで気を遣うような情報を僕達に?」と田中に問う。

すると彼は「陣川先輩からいつもこう聞かされていました。特命係の二人は信頼出来るって。そして、どんな事件でも解決してくれるって」と、二人に尊敬の眼差しを向けながら言った。

「それだけ聞くと、なんだか便利屋みたいですね」と、言った冠城は少しだけ機嫌が斜めになっているように見えた。

「それで、田中さんは何を僕達に教えてくれるんですか?」

「……先輩の失踪の経緯です」

そこで田中は深呼吸をして、再び二人と目を合わせる。

「お二方は、VIRTUAL SINGERってご存じですか?」

冠城が「ええまあ」と、軽く返事をする。

「では、『untited』は?」

「なんでしょうか、それは?」

「……『セカイ』への、入り口です」

「意味が分からないな。もうちょっと、分かりやすく言ってくれ」と、冠城が不平を飛ばす。

「セカイというのは、一種の異世界のようなものです。いつの間にか端末に入っているuntitledを再生する事で、そこに入る事ができます」

そう語る田中の目つきは真剣そのものであった。

「……あまりに突拍子で荒唐無稽だな。右京さん、帰りますよ」

そう言って冠城は席を立つが、それに反して杉下は座ったままだ。

「正直、すぐには理解できません。それどころが、事実と認める事も。ですが何故、君は僕達にその話をしたのですか?」

「見たからです、先輩がそこから出てくる所を。そして、決定的な証拠も」

「と言うと?」

「自分は、ある時忘れ物をしてしまったんです。それで二課に戻ると、パソコンの灯りと機械音だけがありました。自分が忘れ物を取って、部屋を出ようとした時、不意に足音がしたんです。驚いて振り返ってみると、汗まみれの陣川先輩がさっきまで誰も居なかったそのパソコンの前に立ってたんです。大丈夫ですかって訊いたら、何でもないっていいましたけどあれは絶対になにかある顔でした。それから数日後、陣川先輩がパソコンの電源を切り忘れたまま何処かに行ってしまったんです。自分は、好奇心を抑えきれずに陣川先輩のパソコンを見ました。そしたら…」

「どうしたんですか?」

「あったんです。セカイやuntiteledについてのレポートが。それも、とても妄想とは思えない程の量が。先輩はそういうのが得意な人じゃありません。先輩はセカイに入り、そこで何かを見たんです。お願いします、信じてください!」

それを熱弁する田中は、今にも杉下に掴みかからんばかりの勢いと熱量だった。

 

 

 

「で、その世迷言をこの僕に任せるというのか杉下右京。冠城亘も何とか言えよ」

青木年男はそう怒りを露わにする。冠城が(なだ)めようとするが、今回は上手くいっていないようだ。

「だったらハッキリ言ってやる!これまで僕は色んなSNSや闇サイトを除いてきたが、そんな話が事実だった試しは一度だって無い!全部、馬鹿を釣って金か快感を得ようとしたが為に発されたホラばっかりだ!そもそも、電子の世界に物質が入り込めたなんて結果が出ていれば、今頃人口爆発で人類は悩まないで済んでいただろう!おい、聞いているのか?」

「ええ、聴いていますとも。それ程、可笑しな話をあの陣川君が真面目に聴き、そして走り回っていたんです。――気になりませんか?」

右京の言葉が終わると同時に、青木はフンと笑い

「あの馬鹿の事だ。どうせ、美人に頼まれてやってるだけだろ」

と、言ったが、少し考える素振りを見せて、ニヤリと嫌な笑みを見せた。

「じゃあ、こうしましょう。僕はこれから一週間、全力でそのセカイとやらの調査をしてやる。カフェインを摂りまくって、睡眠時間を平均二時間にまで切り詰めてな。それでも、ソイツがホラという証拠が見つからなかったら僕はその与太話を信じる事にしよう」

そこで青木は「しかぁし」と声を張り上げて叫ぶ。

「しかしだ。もし、そいつがホラという証拠が見つからなかったとしたら、しばらく僕の仕事に口出しや邪魔をしないでくれ」

「そこまでやる気になるなんて、珍しいじゃないか」と、冠城が感嘆の声を出す。

「なに、この間に追っていた詐欺グループがケッコーやり手でな。僕の名前を聞き出した挙句、ボイスメッセージまで残していきやがった。僕の完璧なファイアウォールのおかげで警察(ココ)まではやられなかったが、僕はプライドを傷つけられ、心底怒っている。だから、邪魔しないでくれ」

彼はそう言い終えるなり、小走りで自分の職場に戻っていった。

「大丈夫ですかね」と、冠城は心配する素振りを見せるが、杉下は「青木君ですから、すぐに仕事を切り上げて証拠を持ってくるでしょうね」と、優雅に紅茶をすすった。

しかし、杉下の予想は大きく外れる事となるのだった。

 

 

 

青木とのやり取りから一週間後、特命係は調査の結果を調べる為に、警視庁サイバーセキュリティ対策本部を訪れていた。

「青木君、居ますか?」と、杉下がそこに居た職員に問うと、彼女は倒れた椅子と一緒に涎を垂らしながら周囲から迷惑そうに見られている男を指さした。

冠城が呼び掛けるが、彼は目覚めそうにない。ので、二人は無断でパソコンを覗き見る事にした。画面にはメモ帳が開かれており、「存在しない証拠は無い。むしろ一割、一割だけだが有る可能性が高い。」と、記されていた。そして、少し画面をスクロールすると、複数のURLが記されていた。そのリンク先は種類は違えど、有名なSNSや何処かの動画サイトばかりだった。

「何ですかねコレ。まさかコイツ、分からなくなったからって暇つぶしのサイトでもチェックしてたのか?」

「いえ、そういう訳ではないようです」冠城の苛立ちの目立つ言葉を杉下が否定する。

「見てください。……これは」

杉下に促されるままに画面を見てみると、そこには幾つかの『呟き』が表示されており、その全てに『セカイ』や『untiteled』などの田中の言った言葉が含まれていた。

「これって」

「ええ。これほど似通った呟きを多くの人が、しかも見る限り共通点のない人がしたのです。青木君も少しですがセカイの存在する可能性を上げざるを得なかったのですねぇ。しかし、それはあくまで可能性に過ぎない、存在するかは分からないという事で、彼はこのような曖昧な言い回しをしたのでしょうねぇ」

その説明に冠城は不可解そうな顔をしつつも、なんとか頷いている。

「動画サイトの方も見てみますか」

冠城がそのリンクをクリックすると、sound onlyの文字がでかでかと表示された。それを見て二人は耳を澄ます。

少しのノイズが混ざっているが、スピーカーから若い男の声が流れた。しばらくは姉らしき人物との長電話が続いていたが、それが終わると今度はまた別の人物と会話を始めた。

「今日、どこでする?……セカイで?リョーカイ、すぐ行く」

それを最後に、この動画は終わった。

「そこまでメジャーでない動画サイト、音声のみの動画、そして他者からしてみれば別にそこまで重要でもない仲間との連絡。これって多分盗聴ですよね?」

「ええ。それと、ただの盗聴にしては音質がいいですね。盗聴というものは、そう簡単には上手くいかないもので、対象と距離を詰めたり、チューニングを上手く合わせる必要があります。そこで考えられるのは二つ。一つは犯人が盗聴のプロであるという事。もう一つは、盗聴を行った場所の環境がよいという事。収録スタジオや音楽室、ライブハウスなどは声の響きがよくなり、マイク越しでも声が比較的良くなります」

「右京さんは、どっちを選ぶんです?」

「僕は後者を選びたいと思っています。盗聴に限らず、物事を極めた者はそう多くありませんから」

「じゃあ、そっちの方で情報収集してみますか」

 

 

「ありました」

杉下の合図で冠城は手を止め、杉下と面を合わせているパソコンの液晶を見る。

「先月の始めに、尾高智子という女性が盗聴の件で逮捕されていますねぇ。そしてその盗聴の対象というのが、東雲彰人17歳。神山高校の三年生ですねぇ。備考欄には『Vivid BAD SQUAD』という歌手集団に所属、ですか」

「ということは、ライブハウス、環境の良い所にも行く、つまり右京さんの言った条件と合致しますね。それにしても、動機は大好きな東雲君を観察してみたかった、ですか。馬鹿馬鹿しいですね」冠城が呆れる。

「まったくもってその通りです。それはさておき、そのVBDですが、普段はライブハウスや路上でライブ活動をしているようです。今日も、ライブハウス『スコーピオ』で歌うようですね」

「……正直、これが陣川の無断欠勤と関連付くとは思えないんですが」

冠城の気だるそうな意見をよそに、杉下は夏であるにも関わらず、律儀に長袖の上着を羽織ったまま部屋を出て行ってしまった。冠城は慌てて追従するが、その足取りは軽くはなかった。

 

 

 

スコーピオはグラフィティアート溢れる路地裏にあった。汗一つ流していない杉下と、汗で微かにシャツが透けている冠城の特命係の来訪を出迎えたのは、スコーピオの従業員だった。小笠原の名札を胸ポケットに付けている。二人が名刺代わりに警察手帳を見せると、彼は目の色を変え二人をそこの事務所らしき所に案内した。そこは会場から壁二枚を隔てた所だったのだが、それでも喧騒が聞こえてくる。どうやら、それほどまでにVBSというチームは人気のようだ。しばらくすると、小笠原と彼の上司らしきスーツ姿の男が、ノートパソコンを携えてやってきた。杉下らと同じように、応接用のソファに座る。

「お待たせしました。それで、警察の方型が我々に何か?」スーツの男が問う。

「申し訳ありませんが、そうでは無いのです。こちらで今ライブをされている、東雲彰人さんに用があってきました」

「……と、いいますと?」スーツ男が少し体を前に傾けて言う。

「東雲さんの、盗聴騒ぎの件はご存じでしょうか」

「ええ、ネットニュースで見ました」

「その盗聴された音声を聞いた所、とある失踪した刑事の残したメモと共通点がありましてね?それが非常に気になりまして、ここに来た次第です」

「気になって?令状はあるんですか?」

小笠原が口を挟む。が、スーツ男はそれを宥め、「いいでしょう」と言い

「そろそろ彼らのパフォーマンスが終わる頃です。話をしてみるくらいなら、まぁいいでしょう」こう続けた。

二人はスーツ男の提案を承諾し、小笠原の案内で会場に入る。扉を開けると、その軋む音は観客の歓声に、そして四色の鮮烈な歌声に掻き消された。二人はそれに気圧(けお)されるも、じきに慣れ、それを楽しんだ。といっても、入ったのがラスサビのタイミングだったようで、楽曲は口に放り込んだ一枚のクッキーのようにすぐに終わってしまった。

「今日は来てくれてありがとな!」

橙の髪の男が言う。彼が、捜査資料にあった被害者の東雲彰人だ。

「私達、Vivid BAD SQUADをよろしくねー!」

黒髪の女のその声を合図に、ステージが暗転する。しばらくは観客も余韻に浸っていたが、それも灯りが点けば終わり、皆ドアから出て行った。

観客の声がしなくなった頃、ステージからVBSの面々が降りてくる。

「今日はありがとうございました、芥川さん」髪色が左右で藍色と空色に分けられている男が会釈をする。

「いやいや。こちらもよい歌を聴かせて頂きました。お礼を言いたいのはこちらです」

「ありがとうございます。また、ライブさせてください」カーキ色の髪色をした女が深めに頭を下げる。

「ええ、よろこんで。それはさておき、貴方達にお客人です」

そう言って、芥川と呼ばれた男は、身を引き杉下達を前へ出す。六人分の視線が特命係に向けられるが、二人は動じる事無く「どうも。警視庁特命係の杉下といいます」「冠城です」と、挨拶をする。

「これはどうも、ご丁寧に。それで?俺達に何の用です?」

東雲が一歩、杉下達と距離を詰めた。彼は笑顔だが、警戒のオーラが滲み出ていた。

「いやはや。突然押しかけて申し訳ありませんねぇ。実は、そちらの東雲さんに(くだん)の盗聴事件について、お話を伺いたく参りました」

「あれについてですか?捜査資料に不備でもあったんですか?」

「いえ、そういう訳では無いのですが。その盗聴された会話の中に、気になるものがありまして」

そう言って、杉下はスマホから例の音声を再生する。それを聞いて、一行は顔をしかめたが、終わると「それがどうしたんです?」と、東雲がポーカーフェイスを作り直しつつ杉下に訊いた。

「この、セカイというものに興味が湧きましてね」

「俺達がいつも行く喫茶店ですよ。オーナーと仲が良いので、練習スタジオとしても使わせて貰ってるんです。にしても、どうしてそんな事を?まさか、昼飯の相談に来たわけじゃないですよね?」

「そういう事じゃないんですよ。ただ、こちらの刑事が、セカイやuntitledといった謎のメモを残したまま失踪したもので。何か、手がかりが見つかればと思い来たのですが、どうやら、関係なかったようです。失礼しました」

そう言って、杉下は身を翻して、出口へ歩いていく。冠城もやれやれといった様子で会釈をして、杉下について行く。二人が店から出ていくのを足音で確認した後、芥川はくるりとVBSの方を向く。

「引き留めてしまってすみませんでした。みなさん、帰ってゆっくりと休んでください」

そう告げられた一行の表情は、安堵とは程遠いものだった。

 

 

 

「だから言ったじゃないですか。セカイなんて存在しないし、あの青年も無関係だって。確かに、彼はセカイについて言及していましたし、盗聴の被害者でしたけど、僕達の追っているセカイとは別物でした。やっぱり意味ないですよ」

冠城が自分の恥を取り繕うように言う。が、それを聞いている杉下は飄々としていた。

「ええ。確かに、そうかもしれません。実際、彼らは典型的な警戒をし、典型的な口調で僕らと話しましたからねぇ。しかし、それは『典型的でない事』が表に出にくい事案だからです。謎の単語を並べられても、世迷言と切り捨てる事は容易に出来ます。しかし、それらが彼らにとって『謎の単語』で無かった場合、必ずボロが出ます。それまで、時を待ちましょう」

 

 

 

「へぇ。そんな事が」

四人分のコーヒーを注ぎながらそう言ったのは、あのVIRTUAL_SINGERのMEIKOだった。ただ、知名度の高いあの赤を基調とした衣装は着ておらず、その雰囲気はよく居るカフェ店員のようだった。

「もう、訳わかんなくてよ。何で警察がセカイの事調べてやがんだ?」東雲が混乱と苛立ちが混ざった声で言う。

「分からない。だが、下手にその事を話せば、何かしらで疑われかねない。そうなれば、俺達のスマホのuntitledに何をされるか分からない。だから、しばらくはセカイについてあまり口外しないほうがいいかもしれない」

黒髪の女が二色の髪の男の言葉に頷く。

「ときたま話題に上がった事はあったけど、セカイって不可解なことばっかりだもんね。何がどう繋がるか分からない。だから、何もしないに越したことは無いって事、だよね」

「僕達の事、気に掛けてくれるのは嬉しいけど、あんまり無理しないでよ?」

黒髪の女の傍に座っていたVIRTUAL_SINGERの鏡音レンが彼女を気遣う。それに女は「ありがと」と短く返した。

そして、しばらくの間沈黙が続いた。それを誤魔化すように、カーキ色の女がコーヒーカップの中身をすすり、「とりあえず、明々後日(しあさって)のライブに向けて、練習頑張ろう!」と、言った。

 

 

 

「おはようございます」

そう杉下に言ったのは、特命係の部屋に入ってきた冠城だった。そして、「今朝は騒がしいですね」と付け加える。

「ええ。噂では、何処かで殺人事件があったそうで」

そう言って、杉下は紅茶を淹れる。優雅な香りが部屋の中に立ち込め、気が緩んでしまう。冠城も、荷物を置くと、負けじとコーヒーを淹れようとする。が、不運な事に、粉を切らしてしまっていたので、挽く所から始める。しかし、冠城は朝の一杯を飲む事無く、取調室に引っ張られる事になるのだった。

 

 

 

「よう。また会ったな」

取調室で、若干喧嘩腰で特命係に話し掛けてきたのは、東雲彰人だった。何故か、彼は複数の刑事――といっても、顔見知りの伊丹刑事や芹沢刑事、出雲刑事だけなのだが――から睨みをきかされている。

「おはようございます。それで、僕達に何の用でしょうか?」杉下が訊く。

「とぼけんじゃねぇ。俺をハメやがったな?いや、それだけじゃねぇ。店長までハメやがって」

そう、怒りを露わにする東雲に、二人は困惑する。

「――何のことだ?」冠城が問う。

「あくまで知らないっていうのか。舐めやがって!」

そう言って、東雲は暴れるが刑事たちに取り押さえられ、ついでに杉下達も部屋の外で追い出された。そうして一息ついた頃、冠城が「何なんでしょうかね?」と、ぼやく。

「それはこちらの台詞ですよ。杉下さんに冠城さん」

そう言ったのは、二人を追い出した出雲刑事こと出雲麗音だった。二人を外に出したついでに自分も外に出て来たようだ。

「通報があって引っ張ってきたけど、何の事だ、知らないの一点張りで。やっと別の事を言ったかと思えば、特命係を呼び出して掴みかかろうとするなんて」

「何が、あったんですか?」杉下が彼女に訊く。

「昨日、ライブハウスのスコーピオって所、行ったでしょう?あそこの店長の芥川弦太、38歳が殺されたんです」

なんだって、と冠城が驚く。出雲はそれを気にせず説明を続ける。

「死亡推定時刻は今日の午前五時。通報は店員の小笠原信也がしました。凶器は刃渡り10センチ、厚さ数ミリのナイフ。遺体に突き刺さっていたそうです。そして、被害者の血液の付いた指紋がそのナイフに。その持ち主はあの東雲彰人だったので、引っ張ってきたという訳です。第三者のゲソ痕や指紋は見つからなかったようです」

と、そこで出雲は一息つく。そして、「ところで」と話を切り出す。

「東雲が、ハメやがったって言ってましたけど、何かあったんですか?と言っても、大体想像つきますけど」

「別に何もしてないって。ただ、二人であそこまで行って、話聞いただけだから」

「その行為が一般人にとっては脅迫にとれるんですって。取り敢えず、一応関係者ですし、そこから会話聞いといてください」

そう言って、彼女は二人をマジックミラーの方へ押し込み、取調室の方へ戻っていった。

「それで?もう一回訊くが、どうして通報しなかったんだ?」

捜査一課所属の伊丹刑事こと伊丹憲一が東雲に訊く。

「ビビってたんだよ。何せ、死体なんて、アンタ達と違って見た事無かったからな。同じ理由で、アンタらが持ってきた証拠の血の指紋も、うっかり付けちまったんだよ」

そう東雲は、据わった態度で言う。

「……質問を変えよう。何で、あそこに居たんだ?」

その伊丹の質問を聞くと、東雲は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに「お礼だよお礼」と言った。

それに芹沢刑事こと、芹沢慶二は「お礼ぃ?何の」と聞き返す。

「昨日、店長のライブハウスで歌わせてもらってよ。そのお礼に来たんだ」

「へぇ。そりゃまた、随分と殊勝な心掛けで。じゃあ、何で防犯カメラにはお前しか映って無ぇんだ!?」

伊丹が机を殴りつける。その大きな音に東雲は驚き、怯んだ。

「朝の五時前にお前が店に入る所を防犯カメラが記録している。それから小笠原の通報があったのが五時五分。警察が到着して、お前をしょっ引くまでに店から出る者は記録されていないんだ。そして、現場にはお前の血の付いた指紋が確認されている。これがお前の犯行じゃなくて、誰の犯行なんだ?ええっ!?」

そう言い終えると同時に、伊丹は更に二度、机を殴った。

「お前が、やったんだろ?」

言葉のナイフをゆっくりと東雲に突き刺す。東雲は「やってねぇって」と言い返したが、それもやっとの様子だった。

「じゃあ、小笠原がやったとでも言ってるのか?」

その言葉で、東雲はハッとした表情をする。それを目にした芹沢が「なんか、心当たりあるっぽいね」

その言葉を受けた東雲は迷った表情をする。何かを話すか話すまいか、迷っているのだろう。

しばらくして彼は「俺は、店長に呼び出されて来たんだ」と、途切れ途切れに言った。

「へぇ。じゃあ、その証拠はあるんだろうな」と伊丹が言い、それに続いて芹沢が「携帯出してもらおうか」と手を出した。

それに彼は「嫌だ」と、言った。

「ああ?」伊丹が聞き返す。

「嫌だって言ったんだ。お前ら警察は信用ならねぇ。どうせ、お前らも俺達のセカイに何かしようと画策してるんだろ」

「お前何言ってんだ?」

「どうせ、そうなんだろ。おいお前ら!どうせ聞いてるんだろ!?そこの杉下とか冠城とか言った奴ら!テメェら、俺達のセカイに、仲間に何しようってんだ!?黙ってねぇで答えろよ!」

そこまで言った所で、東雲は男二人に抑えられた。

「……このままじゃ、あの子多分逮捕ですよ。いいんですか?」出雲が二人に問う。

「そうなれば、陣川君の謎について手がかりが無くなってしまいます。そして何より、彼が無実であるのならば、そのまま逮捕させる訳にはいきません」

「俺も同意見です」

それを聞くなり、出雲は「そうですか」と言って、立ち去ってしまった。

 

 

 

特命係は、ライブハウス『アロウ』に訪れていた。時刻は十六時前。準備中なので、音楽は流れていなかった。しかし、今回はライブの為に来たのでは無い。二人は、扉を開けて中に入る。するとスタッフが準備中である事を伝え、退室を促すが、二人が警察手帳を見せると彼女は二人に此処へ来た理由を訊いた。その質問に杉下は、楽屋挨拶と答えた。それにスタッフは怪訝そうな表情を浮かべるが、何も言わずに二人をステージの方へ案内する。案内され、扉を抜けるなり杉下は男女衆に声を掛けた。彼が声を掛けたのは、VBDの残存メンバーの三人だった。皆、二人に警戒の視線を向けている。

「何のつもりですか?まさか、御愁傷サマを言いに来たとかじゃないですよね」

黒髪の女が、誰が聞いても不機嫌と分かる態度で二人に言う。そして、こう続けた。

「偶然かマグレか。それは分からないけど、あなた達が私達を訪ねた翌日に、彰人は引っ張られてった。まさかとは思うけど、あなた達が何かした訳じゃないですよね?」

「滅相もない。こう言っては何ですが、今回は不幸が連なっただけです」

それに彼女は「だといいんですけど」と、呟き「それで、何が目的なんですか」と、用件を訊いた。

「実はですね、僕達、彼が取調室に居た時にそこに呼び出されましてね。そこでセカイに何をするつもりだと問われました。それもかなり焦った態度で」

「だから、セカイは行きつけの店で」

「それがですね?無いんですよ。セカイという店名で、あなた方と接点があるような店が」

女の口早な言葉を遮り、そう言った杉下に女はマズそうな顔をした。額には冷や汗が滲んでいる。

「彼は、どのセカイについて焦燥感を感じ、僕達に叫んだのでしょうか。――貴女方(あなたがた)なら、知っているのでは?」

その問いで、一行はゆっくりと目を見合わせた。何かに戸惑い、躊躇している目だった。しかし、アイコンタクトでの議論はすぐに終わり、一行は杉下らの方へ向いた。

「スタッフさんは、少し席を外してもらえますか?」

青髪の男の要求に応じ、スタッフは部屋から出ていく。

「それで、何を教えてくれるんだ?」冠城が言った。少々急いているのだろう。

それに彼女は、口外無用でお願いしますよと、念押しした。

「これを、見てください」

そう言って、彼女が差し出したのは自身のスマホだった。『ファイル』が開かれており、その中には一つだけ音楽ファイル――『ready steady』があった。

「これは元々、untiteledという曲で」

「セカイへの入り口だった。でしょうか?」

またもや、杉下が彼女の言葉を遮って言う。

「もう、知っていたんですね。じゃあ、この先起こる事も知ってますよね」

そう言って彼女は、音楽ファイルを再生する。すると、液晶が激しく光り、収まる頃には彼女の姿は消えていた。

「消えた!?という事は――」

「ええ。陣川君のメモには、ある程度の信ぴょう性が出てきましたねぇ」

冠城の言葉に賛同した杉下は、再びVBSの方を見る。

「確かに、セカイの存在に、untiteledという入り口。それらの存在は判りました。しかし、彼――東雲君の言っていた仲間というのは何の事でしょうか」

「こういう事ですよ、刑事さん」

声のした方を見ると、そこから激しい光と共に黒髪の女が現れた。彼女は何故か、スマホを()()()の様に持っている。

「あの人が、ケーサツのナントカ係の杉下さんと冠城さん。ミク達にも用があるんだって」

彼女はそう、スマホに声を掛ける。よく見ると、スマホの上に誰か居た。

「こんにちは。杉下さんに、冠城さん」

そう言って手を振ったのは、初音ミクだった。ただ、あの知名度の高い衣服では無く、かなりファンキーな服を着ていた。髪色も少し違うようだ。

「どうして初音ミクが?というより、これはホログラムか?何故、このようなものが一般人のスマホに?」

「後者には答えかねるけど、最初の一個には答えられる。『本当の想い』を見つけるためだよ」

「というのは?」冠城が問う。

「本当の想いっていうのは、例えるならば夢、また例えるならば愛、もう一つ例えるなら希望。それを見つけるのを手伝ってあげるのが、私達の役目なんだよ」

「私達も手伝って貰った。助けて貰った。だから、感謝してるし、大切に思ってる。だから、そう簡単に大勢には見せたくない」カーキ色の髪の女が言った。

「セカイっていうのは、ケッコー不安定でね。何をトリガーにしてかは分からないけど、様々な変化が起こる事があるんだ。モノが増えたり、人が増えていたりね。これまではそーいう事しか無かったけど、もしかしたら壊れたり、はたまた無くなったりする事もあるかもしれない。だから、彼は私達の身を案じて大人しく捕まったり、スマホを出さなかったりしたんだ」

初音の説明が終わるなり、青髪の男が頭を下げた。

「お願いします。どうか、どうか彰人を、相棒を釈放してください。アイツは人を殺すような奴じゃありません。わざわざスコーピオに行ったのも、何かワケがある筈なんです。だから、どうか」

そこまで言った所で、杉下は彼に頭を上げるよう言った。

「分かりました。彼が躍起になった理由も、セカイの存在も教えて頂いたんです。あとは、僕達がなんとかします」

 

 

 

「これが、あなたの仲間と会って、話した全てです」

杉下がそう言ったのは、テーブルの向こうに居る東雲だった。

「へぇそうかよ。で?何の為にアンタは、俺をこんなカフェに連れ込んだんだ」

そう言って、彼はカップに入ったコーヒーを一口飲んだ。

「それは、言うなれば職務、ですかねぇ。事後報告も、大事な仕事ですから」

そう言って、彼は紅茶で口を濡れさせた。

「まず最初に。事件の犯人ですが、あの小笠原という店員でした。といっても、貴方は気付いていたようですが」

「そりゃ当然だ。あの店には、俺とアイツ、そして芥川さんしか居なかったからな」

「事件の流れはこうでした。事件の日、芥川さんと小笠原さんは、二人で店に残り書類仕事や清掃をこなしていました。そうして時が経ち、午前五時前に事件が起こりました。小笠原さんが芥川さんを刺したんです。小笠原さんは犯行後すぐ、芥川さんの携帯を奪いました。貴方に電話を掛ける為です。貴方は芥川さんからの電話に出て、この声を聞いたんじゃありませんか?」

そう言って、杉下はスマホの音声データを再生する。

「東雲君、すぐこちらに来てくれないか」

芥川の声がして東雲は「ああ、確かにこんな風に呼び出された」

「これはよく出来ていますが、実際に芥川さんがこう言った訳ではありません。いわゆる、ディープフェイクというものです。本人の声を継ぎ接ぎして作ったのでしょう。彼はライブ会場が職場ですからねぇ。質の良い素材を収集する機会は幾度となくあったのでしょう。そして、その音声に呼び出された貴方を、小笠原さんは待ったのです。彼は貴方が動揺し、芥川さんの遺体に触れたのを確認してから、警察に通報しました。そこからは、貴方も知っている通りです」

「ふーん。一つ気になったんだが、証拠とかってぇのはどうしたんだ?」

「風の噂によると、呆気なかったそうですよ?ナイフの購入元は聞き込みですぐ分かったようですし、フェイク音声の事を問いただしたらぽろっと事件の事を漏らしたそうで。家宅捜索で芥川さんの血液が付着した手袋も、発見されたそうです。こう言うのは何ですが、かなり間抜けな犯人だったようです」

それを聞くなり、東雲は深いため息をついた。

「そんな奴に俺はハメられたってワケか……。動機はなんて言ってたんだ?」

「あなた方にここを離れて欲しく無かったから、だそうです」

「どーいうこった?」

「彼の話によると、芥川さんは大きなライブにあなた方を出演させようとしていたようです。しかし、そうなればトップクラスのシンガーを失い、利益の損失にも繋がりかねなかった。実は、スコーピオは赤字スレスレが続いており、VBSが居なくなれば潰れる事は明確だったようです」

「だから小笠原は、芥川さんの推薦を取り消させる為に――そんな事の為に殺したっていうのかよ?」

――そんな事。その言葉で杉下は、今回の事件の粗末さ、そしてくだらなさを再確認させられる。

彼は、少し間を置いて「そのようですね」と、相槌を打つ。

「芥川さんは、俺達によくしてくれてたんだ。いや、俺達だけじゃない。シンガーに、音楽に全てを捧げてた。それなのに……」

そこで、彼は言葉を詰まらせ、俯く。恐らく、芥川側の志――何を捧げても音楽を繫栄させる意志――と、小笠原側の志――希望(カネ)を保持し、音楽の未来に繋げる意志――が葛藤しているのだろう。

「心中、察するに余りあります。ですが、僕から一つだけ、言える事があります」

東雲が「なんだよ」と、杉下の方を向く。

「今回の事件で、二人の素晴らしい志を持った人物が消えてしまいました。しかし、貴方達の歌を待っている人々は沢山居るんです。めげずに立って、歌って、彼らの志を受け継いでください」

その言葉に、東雲は特にそれらしき表情は出さなかったが、少しして「ありがとよ」と、捨て台詞と千円札を置いて席を立った。

 

 

 

「彼ら、頑張ってますね」

杉下の横を歩く冠城が言う。彼の視線の先には、路上ライブを行うVBSの姿があった。

彼らは、鮮やかな歌声を民衆に届け、輝いていた。




次回予告
「ああもう、出るの遅いなっ」
「姉よ!彰人の姉!」
「そのまさかが、有り得るかもしれませんよ」
「馴れ馴れしいんだよテメェ」
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