落ちこぼれ魔術師が呪術高専に   作:はいから

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呪術=魔術、呪霊=魔物です。基本的には呪を魔に変えてもらえればわかります。
わかりにくくてすんません。


落ちこぼれ魔術師、日本へ行く

世界各国の行方不明者、怪死者は年を増すたびにおびただしい量に増えていっている。

 

 

その殆どが人間から漏れ出した負の感情。魔物による被害。

 

 

国によって言い方や見た目などは変わるものの、一貫して言えるのが、それらは人間によって作り出されるものということ。

 

 

故にどこの国、どこの世界でも人間がいる限りは魔物もいる。

 

そして魔物がいる限り、その魔物を魔によって祓う我々のような魔術師も存在する。

 

 

「ハンスくん、ハンスくん。ちょっといい?」

 

 

魔術師のほとんどは術式と呼ばれる固有の魔術を使う。

 

ある人は召喚獣を召喚する召喚術式を持ち、ある人は箒などで自在に空を飛べる飛行術式を持つ。

 

今俺に向かって手をこまねいている、この魔法学校の二年教師のアリス先生は、高度な反転術式を使うことができる。

 

 

「うす...」

 

 

「ハンスのやつ、このあいだの四級任務失敗したんだと」

「マジ!?四級任務失敗するとか、逆に難しいだろ」

「アリス先生に呼ばれてんのも”格下げ”の話じゃね?」

「だろうな。術式ないのに魔具も使えない。そんなやつが魔術師やれる訳ねぇもん」

 

 

しかし俺、ヨハネス・カンパネルラは、術式をもっていない。

 

術式を持たずに魔術師をやっている人間は少ないながら存在する。事実、”今のところは”俺もその一員である。

 

しかし術式を持たない魔術師のほとんどが、魔具と呼ばれる魔力のこもった武器を使う。

 

 

しかし俺はどうだろうか。

 

 

剣の魔具を振るえば自分がふっとばされ、槍をつくまえに自分の体力がつき、斧は持ち上げることすらできなかった。

 

筋力の問題ももちろんある。しかしそれ以上に邪魔をする圧倒的な運動神経の無さ。

 

 

結局の所俺は、中の下の魔術師が牽制で使う程度の『魔導書』を武器に戦うことにした。

 

 

「ごめんねこんな所まで来てもらちゃって」

 

「いえ、全然大丈夫ですよ」

 

「教室の中でマグノリア先生が待ってるから。入って」

 

「...はい」

 

ローズ・マグノリア先生。魔法学校3年の担任であり、魔術師としての等級の昇級に大きく関わる人でもある。

 

逆を返せば降級にも大きく関わっているわけでもありまして...

 

「だ、大丈夫よ!誠意を持って頼み込めばきっと話を聞いてくれる。なんなら私も一緒にお願いするわ!」

 

その優しが逆に今は辛いですよアリス先生...。

 

「いや、一人でいきます。俺は大丈夫ですから」

 

「そ、そう...。それじゃあ...私は先に戻るわね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

魔術師には四級から特級までの等級が存在する。

 

「失礼します」

 

 

──ガラガラガラ

 

 

その等級より実力が上とみなされたら、昇級することができる。逆に実力が見合っていないと判断されたら、降級させられてしまう。

 

「よくきましたね、ミスターカンパネルラ」

 

しかし、魔術師として最低等級である四級魔術師の俺が、四級任務すらこなせないとなったら。一体どうなるのか。

 

「話はわかってますね?」

 

「”格下げ”...ですよね?」

 

「生徒の間でつけられた造語をこのような場で持ち出すのはやめなさい、ミスターカンパネルラ。格下げではありません。補助監督クラスへの編入です」

 

「...次の。次の任務では必ず──「ミスターカンパネルラ」

 

「もとより魔術師の等級というのは、四級であったら四級任務をこなせるのは当たり前でないといけないのです」

 

「.....」

 

「しかしあなたは四級任務ですら毎回ぎりぎりでこなしてきた。そして今回、いよいよ失敗をしてしまった。いずれくる限界は自分でもわかっていたはずです」

 

「...でも」

 

「魔術師でなくとも、補助監督として魔術師を支えるという役目もまた大役ですよ。あなたにしか務まらない仕事も、補助監督ならたくさんあるはずです」

 

「もう...決定事項ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....ええ。規則ですので」

 

「.....そうですか」

 

「魔術師と補助監督、どちらの方が格上などそんなことは定められません。魔術師あっての補助監督であり、補助監督あっての魔術師──「もういいです」

 

「もう、わかりましたから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ガラガラガラ

 

 

「ふぅ...」

 

 

 

 

『強い魔術師になって、沢山の人を救うんだ』

『それでいっぱいお金を稼いで、姉ちゃんを楽させてやるんだ』

『絶対、世界一の魔術師に...!』

『絶対...絶対...』

 

 

 

魔術師になるのが、昔からの夢だった。

 

 

魔術師の家系でもない一般家庭で生まれ、家族の中で俺だけが魔物の存在を認識できた。

 

だからなのか、小さい頃は本気で世界一の魔術師になれると思い込んでいた。

 

見えないものが見えている俺を気味悪がって距離を置いていた両親とは違い、俺の話を信じてくれた姉に毎日のように豪語した。

 

 

世界一の魔術師になるって。

 

「姉ちゃん...」

 

 

 

 

 

 

「お疲れサマンサー!」

 

「うわぉおう!?!?」

 

「はじめまして、ヨハネスくん」

 

「あぇ...。えっと、誰...?」

 

俺の後ろから突如現れたアイマスク男。俺の驚きも意に介さないように軽薄そうなニヤケ面を浮かべている男。

 

「五条悟。日本の最強の呪術師さ」

 

五条悟。

 

話は聞いたことがある。日本に生まれた最強の魔術師。知らない人間はいないことだろう。その最強の名は、日本国内だけでなく世界にも轟いている。

 

しかし.....

 

「.....」

 

「....?」

 

世界最強の男って、こんなへんな風貌なの...!?

 

「え、えーっと。一応知ってます。こっちの国でも有名ですから」

 

「それは光栄だね」

 

「...その最強さんが、俺になんのようですか?」

 

「そう警戒するなよ。ただちょっとした、スカウトさ」

 

「スカウト?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハンス、こっちこっち」

 

「うす...」

 

「元気がないねー。これから新しい学校だってのに」

 

「こんな朝っぱらから元気なあんたのほうがおかしいっすよ...」

 

「ハンスにとっては初海外だろ?日本だぜ日本。ジャッパーン。スシテンプラスキヤキ!テンション上げてこうぜ」

 

「テンション高い大人って不気味ですね」

 

早朝の5時。俺と最強の魔法使い、五条悟は空港にいた。

あと数十分後に出る便は、日本へと飛ぶ飛行機だ。

 

俺は、五条悟のスカウトにより、東京都立呪術高等専門学校へと転校することに決まった。

 

話は一日前に遡る。

 

 

 

 

〜一日前〜

 

「スカウト?」

 

「そ。最強の呪術師からのスカウトだぜ」

 

「...なににですか」

 

絵に書いたような軽薄。奇妙な風貌。絶対的自信から来る表情。

五条悟のその立ち振舞には、最強の二文字が堂々と浮かび上がっていた。

 

俺が目指すべきまさに世界一の魔法使い。

 

「僕が教鞭をとっている都立呪術高等専門学校さ」

 

そんな最強の男から、俺はスカウトを受けた。

 

「...なんかの罠ですか?」

 

「失礼だなぁ。君は僕をなんだと思ってるんだい?」

 

いきなり現れた変人にそんなこと言われたら疑うだろ。

 

「ただのお誘いだよ。ほら、甘いものあげるから。こっちおいで」

 

うさんくせぇ...。

 

しかし、おそらくこの男が五条悟だというのは本当だ。四級魔術師の俺でもひと目でわかる。

 

溢れ出る魔力は誰のものとも違い、動き一つに隙がない洗練された動き。

もしいま俺がこの男に不意打ちで攻撃したとして、おそらくひと掠りもしないだろう。

 

そんな男が、俺なんかをスカウト?

 

「...もっといいのいるでしょ。名家のアリスト家とか、ルイス家とか。次期当主候補の学生がごろごろいますよ」

 

「...ふむ。ハンスはそのいい魔術師とやらではないの?」

 

「俺は...。術式持ってないし、魔具も使えないし」

 

「確かに、ハンス弱いしね」

 

「.....」

 

そう。俺は弱い。エリートの血筋も、才能も、身体能力も。なにもない。

正直魔術師なんてやめたいって何度も思った。でもやめてないのは──

 

 

『絶対、世界一の魔術師に...』

 

 

あのときの俺がいるから。

 

「はい。だから、強くなりますよ」

 

「....くくっ」

 

「え、笑われてます、俺?」

 

「いや、結構。でも君はもう魔術師でいられないんだろ?」

 

「なんでそれを...?」

 

「僕、最強だから」

 

あ、会話できねぇな。

 

でもたしかに。マグノリア先生は、俺の補助監督クラスへの編入は確定だと言っていた。

そうなると、俺はもう魔術師ではいられなくなるということだ。

 

「五条さん」

 

「なんだい?」

 

「あなたの学校に行けば、俺はまだ魔術師を続けられますか?」

 

 

 

「.....」

 

「.....」

 

 

 

 

「...もちろん」

 

五条さんのにやけ面の口角が、さらに釣り上がる。

 

「お願いします。俺を日本に連れて行ってください」

 

「ふっふっふっふ...。スーパーグレートティーチャー五条悟に任せなさーい!」

 

こうして俺は、日本の都立呪術高等専門学校に転校することになった。

 

 

 

「あ、ちなみに日本への出発明日ね」

 

「明日!?」

 

 

 

そして今。

 

『飛行機がまもなく離陸いたします。シートベルトをもう一度お確かめください』

 

「これ美味しいねぇ。ハンスも食べる?」

 

「いらないです。よく朝っぱらからそんな甘いもん食べれますね」

 

日本行きの飛行機が出発した。

 

「それにしてもすごい荷物だね。日本にしばらく住むとはいえ、そんな必要?」

 

「俺の戦闘スタイル的に荷物がかさばるんですよ」

 

「魔導書ってやつ?」

 

「よくしってますね」

 

アホそうに見えて意外と知ってるんだな。

魔導書はヨーロッパ圏くらいにしか存在しないから、一部を覗いてなかなか浸透してないと思ったんだけど。

 

「仕事の都合上海外行くことが多くてねー」

 

「大変そうっすね」

 

世界最強の呪術師ともなれば、やはり大変なんだろうか。

ちゃらんぽらんに見えて、意外と色々な悩み背負ってるんだろうな...。

 

「見て見てハンス。あの雲ち○こみたいだねぇ。はっはっは」

 

そうでもないか。

 

 

俺と五条さんを乗せた飛行機は、着実に日本へと進んでいった。

 




中二病全開の作品に付き合ってくれてありがとうございます。
設定投げときます。

『魔導書』
簡易的な術式が組み込まれている本のこと。人工術式、即席術式などと言われることも。
本に魔力を流し込むことで本に組み込まれている術式が発動する。
魔力があって、流し込む技術があれば誰でも使える代物だが、術式が弱いので基本使われない。

『魔導書の種類』
下級:複製可能な魔導書。前述の通り弱いので誰にも使われない。種類は豊富。

上級:術式の強さはまちまちだが、最低でも程々に強く、上級の中でも上位の魔導書はそこらの術師の術式よりも全然強い。特殊な条件で作られたものなので、複製は不可能。
世界に数十冊あるものとされ、その殆どがヨーロッパ術師の名家が保存している。下級のものは使われず、上級のものは名家が保存しているため、ヨーロッパ呪術界で魔導書は結構マイナー。

??:?????


呪力=魔力、呪霊=魔物です。基本的に呪を魔に変えてもらえばわかります。
わかりにくくてすみません。
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