「えー、突然ですが。転校生を紹介します!」
「ほんとに突然だな」
「また転校生かよ。恒例行事か?」
「しゃけ」
「ちなみに日下部先生は今日は出張でお休みです!」
「このバカ今日はやけにテンション高いな...」
「いつもこんなもんだろ」
「こんぶ」
教室の中から騒がしい声が聞こえる。
墓地で魔導書への魔力の込め方を教わってから一日がたった。東京高専についた頃にはすっかり夜で、寮の説明だけされてその寮ではじめての一夜を過ごした。
東京高専はまさに日本といった寺社仏閣の数々で出来ていて、正直なとこ、歳不相応に、興奮した。
だってめっちゃでかかったし。鳥居とか、なんかこう...すごかったし。
そんなこんなで翌日の朝。俺は早速登校することになった。
「んでその転校生ってのが絶賛思春期生意気シャイボーイなもんだから。みんな盛り上げてあげて!」
なんかすっごい失礼こかれてる気がする。
「それじゃ、はいっといでー」
「....ども」
「.....」
「.....」
「.....」
「.....」
「「「(普通のやつ過ぎて触れづらい...!(おかか...!))」」
「(なんかすっごいきまずい...!)」
「自己紹介どーぞっ!」
「ぇあ、えーっと...。ヨハネス・カンパネルラです。よろしくおねがいします...」
「(暗っ...!)」
「外国人だったのか」
パンダが喋ってる...。
「顔見ればわかるだろ」
「しゃけしゃけ」
「俺人間みんな同じ顔にみえんだよなぁ」
「えー、ということで。ヨーロッパの魔法学校から転校してきた、ヨハネス・カンパネルラくんでーす!拍手!」
──ぱちぱちぱち....
「(拍手乾きすぎだろ...)」
しかし日本の呪術学校はこんなに人数少ないんだな。二年だけとはいえ俺含めて四人。
魔法学校は普通の学校ほどではないが、1学年に2クラスは集まるほどいた。
ヨーロッパ全土の魔術師が集まるから当たり前なんだけど。
「じゃあハンスの席は...棘のとなり。窓際の席だ」
「うす...。ぇっと...よろしく?」
「しゃけ」
.....しゃけ?
「棘は呪言師って言ってね。言葉に呪い、つまり魔法が宿るから語彙縛ってるんだよ」
へぇ。俺の国では見たことないな。
呪文を主に戦う魔術師ならいたけど、日常生活に支障をきたすほど言葉に魔法が宿ってる人は見たことがない。
「棘の横のが禅院真希。呪具を使って戦う。あ、魔具のことね」
「なんとなくわかるのでいちいち訳さなくていいです...」
「んでその隣のがパンダ。パンダだよ」
「ちゃんと訳して!?」
「どっちだよ」
「パンダだけじゃ無理あるでしょーが」
一番知りたい情報だけなかったぞ今。
「俺は呪骸っていう...所謂人形みたいなもんだ」
人形を操つるマリオネット術式か...?でも操作されてるようには思えない。
やっぱ国が違うだけで術式も大きく変わるな。
「と、まぁこんな感じかな。さあこれで、二年は五人になったね」
五人...?
「一人海外行ってていないやつがいるんだよ」
「ぇ...あ、そうですか」
「....なんで敬語なんだよ」
怖そうだからです。
「さて今日の実習をはじめるよ。今日の実習は...
クラス内対抗、チキチキ模擬実践三本勝負。らしい。五条先生いわく。
ちょうど偶数だから2対2に別れて、それぞれ1対1で戦っていく。
3回戦あって、二本取ったほうが勝ちだ。
俺は禅院さんと組むことになり、狗巻はパンダと。禅院さんが一回戦と三回戦で、俺が二回戦に出ることで決定した。
「それじゃあはじめるよ。よーい、スタートっ!」
「死ねパンダっ!」
「来いっ!」
すごい絵面だな。人間が槍片手にパンダ襲ってる。動物愛護とかになんか言われない?
「はぁ...っ!」
「おっと」
禅院さんは術式を持たない呪具使いと聞いた。でも彼女にはあの運動神経と、呪具さばきがある。俺とじゃ月とすっぽんだな。
強く...ならなきゃな。
「おい」
「え...?」
「終わったぞ。次、お前の番だ」
早くね?あ、パンダ伸びてる。禅院さん勝ったのか。
でも流石に骨が折れたのか、禅院さんはさっさと座り込む。
「はやくいけよ。棘待ってっから」
「は、はい」
「...勝ってこいよ。もう一回私に働かせんな」
「お...おう?」
「さぁ、準備はいいかな?」
「しゃけ」
「...っす」
「ハンスは二冊しか魔導書持ってないけど、大丈夫?」
「はい、試したいことあるんで」
「おーけー。棘は強すぎる言葉禁止ね。そのへんは自分で縛って」
「しゃけしゃけ」
「それじゃあクラス内対抗!チキチキ模擬実践三本勝負二本目!レディー...ゴーッ!!」
「たかなっ!」
距離を詰めてきた?呪言師だから距離を取るだろうってのは甘かったか...!
しかも...
「(はやい...っ!)」
こんな運動神経いいのかよ。躱すので精一杯。
このままだと体力消耗させられて俺が落ちる。
「グリモワール術式」
「....!」
──バッ
本を開くと、魔力を察知したのか狗巻が距離を取る。
「(馴染みのない術式を前に警戒して牽制。想像通りだ)」
距離を取られるのも、承知の上。
『サンダー』
──バリバリバリッ!
威力十分。五条先生に教わった魔力操作で、今までのサンダーより何倍も威力が増している。
「明太子」
そりゃ避けられるよな。それも、わかっていた。
「...!おかか!?」
術式による雷だぞ?見てくれは同じでも、実際の雷よりも何倍も威力はある。
その分、よく通る。
──バリバリバリッ!
地面に雷が走る。サンダーは対象に感電させて広範囲に影響を与える範囲攻撃。
ダメ押しでジャンプで躱した先への着地を狙った。
このまま何もなければ当たる。何も、なければ。
「『潰れろ』...!」
──ドゴォッ!
「....っ(地面が抉れた)」
これが呪言か...。なにもないわけない。俺は今ここで初めて術式を使わせた訳だ。
つまりようやくスタート地点。
「すじこ...」
あの感じ、もうサンダーは使えないな。二度同じ手に引っかかるほど頭が弱いようには見えない。
くそ、やっぱ魔導書の術式は単調だから次の手が読まれやすいな。
「(それなら新しい次の手を用意するまで...!)」
二冊目の本を開く。
グリモワール術式
「『ポータル』」
俺の横に魔法陣が現れる。
これは、空間と空間を繋ぐ術式。
今の俺なら半径50メートル。事前にマーキングしておけば半径1キロまでの空間と空間を魔法陣によって繋ぐことができる。推定でしかないが。
そして今俺が作った魔法陣ポータルの先は...。
寮の自室、本棚の前。
「(ありったけの魔導書で、ありったけの手数をぶち込む)」
本棚から魔導書を一つ、乱雑に取り出す。
「...たかなっ!」
「グリモワール術式...!」
『ブリザド』
「...こんぶっ」
かわされますよねー。ただ、凍りついた地面に、まともに着地できるか?
グリモワール術式
「『ファ...「『動くな』」...っ」
体が、動かないっ...。
なにその呪言、反則じゃね。ここまできたら...負け確っ。
「がっ...!?」
狗巻の張り手によってふっとばされる。
ただもう体が動く。呪言にも作用する時間制限があるのか。
「(永続だったら流石に強すぎか...)」
それがわかっただけで十分。まだ体は動く。
「『グリモワール術式』...
「こんぶ...っ」
「はやっ....!?ぐぅっ!?」
──バシィッ
っ...『ポータル』!
ふっとばされた先に、魔法陣を展開させる。ポータルの先は、狗巻の背後。
ふっとばされた勢いを使って、そのまま突進する...!
「『動くな』!」
「は...?」
反射神経よすぎだろ...。
背後にワープした俺にすぐ勘付き、すぐに避けられて呪言のおまけ付き。
チート術式持ってるくせにチート反射神経しやがって。
「(くそ...っ!)」
「たかな!」
「ぐはっ...!」
──ガンッ
あー...くそ。いってぇ...。
重いのくらっちった。
くそ、勝ちたい。せっかく掴んだ魔力のコツ。魔導書の使い方。
もっと、出せるだろ。もっと引き出せるだろ。
術式と魔導書のせいにして。逃げんなよ。ほんとはもっと引き出せる
もっと...もっと....
「はーいそこまで。棘の勝利ね」
「....まだ」
「そこまでだよ。もう動けるような体じゃない」
「....いや」
「言ったろ?模擬実践って。実践でまだやれるって突っ込んでったら、死ぬよ?」
「....」
「こんぶ」
「...え?」
ふと顔をあげると、狗巻が手を差し出していた。
「あ、ああ。さんきゅ」
その手をとり立ち上がる。
「しゃけすじこ、明太子」
「....なんて?」
「呪力をもっとまとめたほうがいいって言ってんだ」
「パンダ」
「だよな棘?」
「しゃけ」
「だとよ」
狗巻の言ってることわかんのかよ...。すげぇな。
呪力をまとめるか。少ない魔力で魔導書の術式の出力をあげる魔力操作のコツは掴んだ。
ただ荒削りに発散するだけじゃ確かに駄目だ。
無駄も多いし、なにより当たりづらい。
魔力、呪力をまとめる練習もしなきゃか...。
「....その、狗巻」
「....?」
「あー...。えっと」
「こんぶ」
「その...。今度呪力まとめる練習付き合ってもらえるか?よかったらだけど...」
「....」
「ひ、暇なときでいいんだ。その...いやならいい」
「しゃけしゃけ!」
「もちろんいいってよ」
「そ、そうか。よろしく頼む」
「しゃけ!」
「にしても今のが魔導書ってやつか?すげぇなぁ。魔法陣出て電気がバーって」
「そうか?呪力が流し込めさえすれば誰でも──「おい」
「...え?」
「何負けてんだよ。私の仕事増やすなって言ったろ?」
「ひぃぃぃぃ!ごめんなさいっ!」
こうしてクラス内対抗。チキチキ模擬実践三本勝負は、禅院さんが二本取って禅院さんと俺のチームの勝ちで幕が閉じた。
〜〜〜
模擬実践三本勝負後、学長室。
「どうだ悟」
「どうって?」
「とぼけるな。転校生のことだ」
「.....」
にやっと五条悟の口角が上がる。
その表情は、なにかを企む大人にも見えれば、無邪気に笑う子供にも見える。
「僕の見立て通りですよ。ここ数年は粒ぞろいだ」
「そうか...。お前のことだから、理由を聞いても教えてくれないんだろう?」
「さっすが学長。わかってる〜」
「はぁ...。呆れたものだな」
「言わずともわかりますよ。このスーパーグレートティーチャーの五条悟が育て上げるから」
「そうか。それを抜きにしても海外の術師だ。東京京都関係なく日本の呪術師にいい影響を与えるだろう」
「そうだね。呪術師もグローバル化だ」
「それで、なんでヨハネスをスカウトしたんだ?」
「おしえな〜い」
「...ッチ」
「今舌打ちした!?」
こうして今日も東京高専は日没を迎える。
設定
『サンダー』
雷を出す術式。範囲攻撃。
『ブリザド』
吹雪を出す術式。対象を凍らせることも出来る。
『ポータル』
自分の目の前の魔法陣と、半径50メートル以内のどこかの魔法陣の空間と空間を繋げる術式。
事前にマーキングしておけば半径1キロまで繋げることが可能。
普通に強いが、それはハンスの魔力操作あってこそなので、普通の術師が使ってもせいぜい半径10メートルぐらいしか繋げることはできない。