強い光に包まれたと思ったら、新緑まぶしい森の中にいた。
「いや、なんで?・・・って声たかくない?」
一人で、自分の現状にツッコミを入れたらあら不思議、どう考えても声が高くなっている。
長年付き合ってきたバリトンボイスは、可愛らしいソプラノに様変わりしていて自分の声とは思えなかったが周りには自分以外の人間はキョロキョロしても見当たらない。
俺は、今年29歳になるアラサーのオタクなサラリーマンで
学生時代からやっていたバスケの影響もあってなかなかの高身長となかなかのガタイの良さしかも、顔もなかなかに厳ついというバリトンボイスはともかくとしてこの可愛らしいソプラノは合わない。全く合わない。
「・・・・・・えぇい、ままよ!受け入れろ俺!」
思考を少し停止して覚悟を決めて、目に優しい新緑をいっぱい目にためてからグンっと息良いよく下を見た。
「あー、やっぱり・・・そうゆう・・てか服も変わってんじゃん・・・どこ行ったんだよ俺のボーナスで調子こいて買っちゃった20万のスーツわさ」
服は、どこぞの学校セーラー服だ。
もう一度言う、セーラ服・・今年29歳を迎えるアラサー男子が着ていいのは、慰安旅行の宴会ぐらいなもんで、娘でも居ない限り日常で見るのは、駅か街中しかもジロジロ見てたら案件になってしまう未知の代物。
それを俺は、今着ている。
勿論胸もあるのだびっくりしている。だから、間違いなく合法だ。
「俺・・・いや、せっかくだし私タイに行ったわけでもないのに変身しちゃったわけね」
自分の女子顔は、気になるけど今は自分の状況を考察するしかない。何かの作品に出ているという「大賢者」でもいれば心強いんだけれど、そんな声全く聞こえないし一つの場所に留まっておくのも危ないような気がして歩きながら考えることにした。
強い光に包まれた時、私は会社を退勤して夕飯を買いにコンビニに寄ろうとしていたから時間帯は、間違いなく夜だったはずだけれど空を見上げればとても、明るいことがわかる。
地球の反対側に飛ばされたとかそうゆう線は、きっと低いのだろうと思う。
そもそも自分の体にこんな摩訶不思議なことが起こっているというのにその程度の移動では、少しがっかりしてしまうだろう。これでも自分、オタクなもので!
「アメンボ・・・・!」
「うおわっ?!」
ふらふらと散策がてら歩いていたら、突然人語が耳に飛び込んできた。
女子とは思えない声を出してしまったぜ・・危ない危ない、全彼女いない男子の憧れだって言うのにプロテクターを厚くしなければ・・。
「私は、可憐な女の子っと・・夢みすぎか・・というか今の声・・」
喧騒の中でないからなのか、女の子の体になったからなのか、はっきり聞こえたその声に私の好奇心は、天外突破してしまった。
少し高くなった心拍を宥めながらその声の聞こえる方に、足取り軽く進んで行くことにした。
さわさわとそよぐ森はハイキングにピッタリだが、いっそ恐ろしい程になにとも遭遇することがない。ここが、ファンタジー系の世界であれ現実の世界であれ、ホラーの世界観であれ歩いていれば何かは、あるはずなのに今のところあの声と女の子になったぐらいしか発展がないように思えた。
いや、まあどでかいのがもう自分の身に起こっているんだけども。
「じゅげむじゅげむごこうのすりきれ…」
声の主は、発声練習でもしているのか「あかさたな」や「アメンボ」などを繰り返している。会話がないってことはこの声の持ち主は、単独プレイをしていると考えるのが妥当だろう。
「しかし、絶対日本人。寿限無だもんねー」
確実に1歩1歩、声の主に近づいてきているのか段々その音は大きくなっている。
ファンタジー系の世界ならまだ見ぬそういう機能のある植物とか、某ハンターな世界の喋る鳥とかオタクである私の頭を過ぎらなかったわけではないが、私には確証があった。なぜか心底大丈夫な気がするのだ悪いことは起きないとそう言う気持ちなしだ。
『キャイーン!!』
私が歩いていたところから少し外れたところをなにやら大きい犬的な声を上げて何かが大急ぎで去って行くのが見えた。あれは、狼というのか、額に星マークがあったような気がするからこの世界はファンタジー系で当たりなのかもしれない。
あの、狼もどきはきっと声の主を見て逃げたのだ。私の勘がそういっている。なんだか、こちらに来てから勘が鋭くなっている気がするが気の所為だろう!
「よっし、第1村人さんはどんな顔かな」
意気揚々と木々をぬけると少し広いところに飛び出した。
残念なことに眼前には、考えていたようなそれっぽい植物も望んでいた村人もいなかった。
その代わりにぶらぶらと木に吊り下がっているスライムが居た。第1村人さんは第1スライムさんに変わってしまったわけだが言うことは変わらないだってこのスライム寿限無を言うんだから。
「ごきげんよう。スライムさん少しお話宜しくて?」
〇〇〇
こっちを威嚇してきたから「あ?」と凄んでやったら変な狼が逃げていき代わりにセーラー服を着た可愛らしい女の子が話しかけてきた。
こちとら、スライムになってるしヴェルドラにも会ってハプニングには、だいぶ慣れたもんだけれど絶対同郷しかも女子中学生または高校生という未知の存在にさすがの俺もドギマギしてしまった。
「もしもーし、すみません。スライムさん聞こえてますかー?喋れますかー?」
「あぁ、はい!喋れます!喋れますとも!」
「よかった、喋れなかったらどうしようかと思っちゃいました。」
にっこり笑うその顔は、控えめに言って美少女。身近に居なかった存在にますますドキマギしてしまう。こちとら、DTで人生終わらせて来てんだから舐めないで欲しい耐性がない。
「あ、すみません。自己紹介してませんでしたね、はじめまして私『竹下権蔵』って言いますお見知りおきください」
「…え、権蔵さん?」
「はい、権利の権に玄奘三蔵の蔵で権蔵です」
こんな、美少女にガッチガチの男の名前を付けるなんてキラキラネームはそこまで来ていたのか。
びっくりしすぎて自分の名前言うのも吹っ飛んだ。
「あ、ちなみに女の子になる前は29歳のサラリーマンだったんです」
「いやちょっと待って、詰め込みすぎて意味分からんから!」