九月某日、東京某所。その一角にある銀行にて、少女は銀行強盗に巻き込まれて床にしゃがみ込んでいた。
(何時にもまして不幸だ。なんで、よりにもよってこの日にこんな目に遭うのかな私は!)
高校生であるその少女。本日は月に一度の親からの仕送りがある日であり、ちょうど金欠で困っていたため最速でやってきたところにこれだ。とある体質により常人より不幸であると自負している少女にとっても、最低最悪な不幸なのは間違いなかった。
「おいてめえら!少しでも動いたら容赦しねえぞ!」
(何で日本なのに悪党が普通に銃を持っているのか!)
不恰好な拳銃を手に脅してくる強盗の一人に、心の中で悪態を吐く少女。無抵抗なら何もされないだろうと全力で無力な一般市民を演じる。まだしたいことが山ほどあるのだ、死んでられない。
だがしかし、視界に映ったとあるモノを見た事で思考が冷静になり、少女はとにかく状況判断をする事にした。
(えっと・・・強盗達の持っているのは多分、3Dプリンター?で作った銃。確か漫画だと威力は本物と同じだったはず・・・で、人数は入って来た時と同じ五人でみんなフードを被って仮面を被っているから顔は分からない・・・あれ?)
ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!
ちらちらと横目で確認していると、おかしなことに気付いた。強盗犯が増えているのだ。黒づくめのお揃いのパーカーでフードを被り、統一感の無いお面を付けていてその手に銃を・・・そこで気付く、先程見えた“アレ”が居た、空中に一人出現したのだと。
「え?あれ?」
「どうした、五月蠅いぞ!」
思わず小声で呟いてしまい、すぐ傍の強盗に聞きとがめられたのか銃口を向けられてしまうが少女はそれどころではなかった。
フードを被っているその顔は他の強盗と違ってすっぽり顔を覆ったオレンジ色で縁取られた顔の様な一本角が額に付いてる仮面に隠れていて、よく見ればフードの淵にオレンジ色のラインが見え、開いた胸元にはでっかい単眼が刻まれている。腰にはでっかいバックルの着いたベルトを巻いていて、全体的には警察の機動隊の装甲服が上着だけパーカーを着ている様な格好だ。そして妙に透けていて、ぼんやり仮面が光っている姿が不気味で・・・まるで、
(まさか、アレも幽霊!?)
ふわふわ浮かんでいた謎の男は、騒いでいるこちらに気付くのか視線を向けると、何も感情を感じない黒い複眼でこちらを見続けると、バックルの前に手をやりそこから大型の剣を取り出した。驚きで固まってしまった少女に銃の引き金が引かれそうになったその時、仮面の男はフードに手をかけて、取っ払う。
「脅すだけなら見逃そうと思ったけどさ、それ以上は駄目だろ。人の命を何だと思ってるんだ」
「な、なああ!?」
ただフードを外した、それだけなのに驚く強盗達。否、少女の他の人質達も驚いていた。そこで気付いた、どういう原理かは知らないが、フードを被っている時だけ
「・・・やっぱり、不幸だ」
「テメエ!何時からそこに?!」
「やっちまえ!」
銃弾の雨が謎の男を狙い、男はふわりと浮かんで回避。着地すると浮遊しながら突進し、剣の腹で手近の強盗を殴りつけた。
「まずは一人。命だけは取らないから安心しろ。俺は『カルマ』以外は殺さない。でも、人の命を奪おうとする奴には容赦しないぞ」
「カルマだあ?行け、お前等!殺せ!」
剣を突きつけられたリーダー格だろう男の一声で一斉に銃を乱射する部下三人。しかし謎の男は浮遊して回避、避けきれない銃弾は剣で切り払って行く。そのまま傍にあった椅子を蹴り飛ばしてシャッターの閉まっている窓に大穴を開けると、状況について行けず茫然としていた人質達に向けて、出口を指差した。
「こいつ等は俺が引き受けるからみんな、逃げてくれ」
「なっ・・・人質を逃がすな!させてたまるか、イカレ野郎!」
我先にと逃げ出す人質達を、部下に怒鳴り散らしてそれを阻止しながら銃弾を謎の男の脳天に炸裂させるリーダー格。その場の誰もが、男は死んだ・・・そう直感する。溜め息吐きっぱなしの少女を除いてだが。
「はあ・・・イカレ野郎だって?それはこっちの台詞だっての!この平和な日本に生まれて何でそう簡単に人の命を奪うって結論に達せるんだ?」
「な、何でお前生きて・・・」
「何でって。俺、ゴーストだからな」
頭部、それもこめかみを弾丸で撃ち抜かれたはずなのに肩を竦めただけの謎の男・・・本人の名乗るところの「ゴースト」は、デフォルトされた髑髏にも見える仮面の文様をぼんやりとオレンジ色に輝かせるとその姿を靄の様に消失。リーダー格は戸惑い、部下たちはとりあえずと逃げようとする人質達に銃口を向け・・・次の瞬間、目の前の床から出てきたゴーストに部下の一人が正拳で殴り飛ばされ、続けてその手に握られた剣を変形させ大型の銃にしたゴーストが発砲。
「必死に生きようとしている人達に銃口を向けてんな。撃っていいのは撃たれる覚悟を持つ奴だけだって言うぜ」
「ヒギャッ!?」
「テメエらどいてろ!・・・まさかこんな、活動資金を得るためのはした銀行強盗で使うとは思わなかったが・・・仮面ライダーが出張って来たなら仕方ねえ」
「仮面ライダー?なんだそりゃ?」
眼前の床を撃ち抜かれて完全に及び腰の部下を蹴り飛ばし、ゴーストの前に進み出たリーダー格の男は怒りを顔ににじませながら懐から大型のUSBメモリの様な物を取り出しボタンを押した。
≪OCTOPUS!≫
「知らねえとは言わせねえぞ!わざわざ風都まで赴いて購入したこのメモリの力で、テメエを捻り潰してやるぜ!」
すると額に現れた妙な文様にメモリを端子部分から突き刺し、それが文様に吸い込まれてリーダー格の姿が変わる。全身赤い大男で、タコツボを模した肩当てと胴体、触手が顎鬚のように伸びたタコを模した顔の怪物だ。
「カルマじゃないな?なら相手したくないが、しょうがない」
「うおおおおおおお!」
両手足と触手を含めた八本の連打がゴーストを襲うが、その猛ラッシュはゴーストを透過しており、ダメージを与えることはなかった。そのままゴーストは無気力に銃を剣に戻して鍔部分を腰のバックルにかざした。
≪ダイカイガン!!≫≪ガンガンミナー!ガンガンミナー!≫
その瞬間、ベルトがやかましい音声を響かせて周囲が動揺する中、ゴーストは意に介さず剣のトリガーを押し込んで両手で縦に振り上げた。
≪オメガブレイク!!≫
「ぐっ…アァアアアアアア!?」
タコの怪人が触手を一斉に伸ばして妨害しようとするがやはりすり抜け、振り下ろされた大剣に一刀両断されて爆散。男は元の姿に戻り、額から出て来たUSBメモリが≪オクトパス!≫と鳴ってから砕け散った。
「……これで観念してくれるか?」
「ひ、ひいいいい!ボスがやられた…こ、降参だあ!」
無感情な仮面は首を傾げ、残りの強盗達は降参。銀行員が警察に通報する中でもゴーストは残り続け、警察が乗り込んでくるとフードを被って霞む様に姿を消して去って行った。…人助けする幽霊って、いるんだな。そう思って見続けていると、自分が消えた後の様子を見守っていた幽霊の男は視線に気付くと慌てて今度こそその場を去って行った。
幽霊が見える体質、不幸だと思い続けていたがそうでもないらしい。そう考えながら私、
・基本設定
期限は49日。108体のカルマを倒し、英雄眼魂を集めてカルマを撲滅するのが目的。理不尽に遭っても理不尽に命を奪われる他者を救う孤独なヒーロー。
主人公は偶然、爆発に巻き込まれ浮遊霊となり、カルマの犯行現場を目撃。直後に迎えに来たエクスストリーマー(案内人)によりカルマの存在を知り、命の冒涜をさせないために契約。ゴーストの力を得る。
主人公は普段は物に触れることが出来ないが、変身することで現世に接触できるようになり、幽霊のごとく壁や床から現れて謎の怪物を倒して颯爽と去って行く謎のヒーロー「ゴースト」として世間に知られることに。
ヒロインは幽霊を見ることが出来る少女。
ネクロムがカルマたちの元締めにして死霊術師。エクストリーマーは主人公の「案内人」にして、■■■■。
・カルマ
今回は未登場。英雄眼魂を取り込むことで自らのカルマが怪人型の生霊として幽体離脱した人間たちの総称。煩悩の数を「ネクロ」と呼ばれる男が英雄たちの魂を降霊して生み出した。全てのパーカーゴーストを具現化して英雄たちの魂を得ることがネクロの目的であり、そのためにはどうしようもない人間の業が必要で、英雄たちのそれと同一の業を持つ人間が使うことで具現化、カルマが人の魂を得ることでその力を維持することが出来るが長くは持たず、持ち主が自らの業を維持するために他者の魂を刈り取ることを目的とする。自らの業のためなら他者の死も厭わない、冒涜的で自己中な連中。英雄と呼ばれる域の業を得た狂人たち。
由来は「
こんな感じの設定で全く新しい仮面ライダーゴーストを描こうという試みでした。お気に召したなら感想などいただけると嬉しいです。