飛び蹴りを叩き込んで結城が巻き込まれるのを何とか防ぐことに成功した俺。俺と同じく変身が解けたスペクターは、皮のジャケットを着た茶髪の整った顔のイケメンで、憎悪の籠った瞳でこちらを睨む。
「貴様!何故邪魔をした!俺と同じ力、お前もカルマを倒す人間だろう!」
「お前こそ、今何をしようとした!一般人まで巻き込むつもりか!?」
「躊躇している間に逃げられたらどうする!俺は周りの人間を巻き込んででも、全てのカルマを屠る!卑劣で外道なカルマを倒すためならば手段は選ばん!」
「お前と一緒にするな!」
その言葉には物申したい。確かに森川さんはカルマだ。だが、こいつと一緒にされたくない。
「この人はな、警察官だ!目標以外は気絶させるだけで、決して巻き込もうとしないいい人だ!確かに殺人は擁護できないが、他人も巻き込むお前と比べたら全然マシだこの野郎!」
「不審者君……」
庇うように前に出ると、戸惑った声が後ろから聞こえてきた。カルマだろうがいい人はいるって知れたんだ。止めるためにも、スペクターに倒させちゃ駄目だ。
「…俺の邪魔をするというのなら、お前も潰す」
≪アーイ!バッチリミロー!~♪ バッチリミロー!~♪≫
「上等だ。お前を倒して、この人を止めてみせる」
≪アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!≫
同時にバックルのカバーを開き、ゴーストドライバーにスイッチを入れた眼魂を装填してカバーを閉じ、出現したパーカーゴースト二体が空中でぶつかり合う中で俺達は睨み合い、同時に叫ぶと共にトリガーを押し込んだ。
「「変身!」」
≪≪カイガン!≫≫
≪スペクター!≫≪レディゴー!覚悟!ド・キ・ド・キ・ゴースト!≫
≪オレ!≫≪レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!≫
そして変身と駆け出して、パーカーゴーストを身に纏い変身完了すると同時に拳がクロスカウンターで仮面に激突。同時に殴り飛ばされ、構えるとスペクターはガンガンハンドを変形させて先端の掌部分を握り拳にしてライフル銃にすると俺に向けて乱射。気絶した人たちを巻き込まない様に空に浮かんで回避していくが、一発が胸の装甲に炸裂して吹き飛ばされ地面に転がる。
「やってくれたな…お返しだ!」
≪カイガン!ビリー・ザ・キッド!≫≪百発!百中!ズキューン!バキューン!≫
「英雄眼魂の力を使えるのか!だが関係ない!」
立ち上がりながらビリー・ザ・キッド魂に変身、バットクロックを呼び寄せてガンガンセイバーガンモードと共に構え、こちらも乱射してスペクターと撃ち合いになり、両者ともにダメージを受けて行く。このままじゃ埒が明かないか。
≪≪ダイカイガン!≫≫
≪ガンガンミロー!ガンガンミロー!≫
≪ガンガンミナー!ガンガンミナー!≫
考えることは同じだったのか、同時にアイコンタクト。待機音を響かせ、エネルギーをそれぞれの銃口に溜めて行く。
「命、燃やすぜ!」
≪オメガインパクト!≫
「命、爆発!」
≪オメガスパーク!≫
そして蝙蝠の幻影を纏った茶色のエネルギー弾と、蒼色のエネルギー弾がぶつかり、大爆発。その余波を受けてスペクターが怯んだ隙を突いて突撃。ゴーストドライバーのトリガーを引きながら飛び上がる。
≪ダイカイガン!ビリー・ザ・キッド!オメガドライブ!≫
「俺は、俺が誇れる人間になる!」
「くっ…!」
そして弾丸のエフェクトを纏った飛び蹴りを繰り出し、咄嗟にスペクターの繰り出した青いエネルギーを纏った拳と激突。拮抗して同時に吹き飛ばされ、共に変身が解除されて転がる。すると俺に駆け寄ってくる人間がいた。目を覚ましたらしい結城だった。
「悠二君、大丈夫!?何が起きてるの!?仮面ライダーと戦ってるなんて…」
「結城か…ここは危ない、離れてろ!あいつは他人を巻き込むことも辞さない危険な奴だ」
「で、でも悠二君…後ろにカルマが」
「え?」
「……」
結城に言われて振り向くと、そこにはロビンフッドカルマがいつの間にかいて。スペクターから庇うために戦ってたからいるのはいいが、なんでここに来たんだ?
「ゴースト。教えてくれ、私の手は血で汚れている…こんな私でも、いい人なのか?」
「…なあ森川さん。アンタの動機はわかった。だけど、命を奪うのは間違いだってアンタも気付いてるんだろ?アンタの力なら不正を暴いて公に裁くことも可能のはずだ。そうだろう?」
「…ああそうだ。白川乙女さえ殺せれば、それでいいはずだった。だが許せなかった。私の信じた法を掻い潜って悪事をなす輩を、見過ごすことはできなかった。私は、やり方を間違えたんだ」
そう言って左手の腕輪の目玉の様な中心部を押しこむロビンフッドカルマ。するとパーカーゴーストを残してその姿が消失し、物陰から森川さんが姿を現し、パーカーゴーストは腕輪に吸い込まれて消えた。それを信じられない様に目を見開くスペクターだった男。気持ちは分かるぞ、カルマは自分本位な奴ばかりで自分から変身を解くなんてありえないからな。
「森川さん…」
「やっぱり、あなたが…」
「……私は、どうすればよかったんだろうな」
乾いた笑いを浮かべてそう問いかけてくる森川さんに何も言えない。人生の敗北者である俺如きが何か言えるはずがない。結城も同様の様だ。するとスペクターだった男が口を開いた。
「戸惑うくらいなら復讐をしなければよかったんだ。甘い奴が復讐なんてするのが間違ってる。お前は復讐者に向いてない。やめてしまえ」
…同類だから言える言葉か。少しは落ち着いたようだな。
「…今更、止まれるだろうか」
「大事なのは、自分が誇れる自分になる事だと思うぞ、俺は」
「私が誇れる私…そうだな。私は自首するよ。眼魂はゴースト、君に渡して……」
その時だった。森川さんの瞳が、驚愕に染まる。俺と結城、スペクターだった男が見てる方とは反対方向を見据え、その身を震わせている。振り返る。そこには、白いワンピースを着た幼い少女が立っていた。
「えー、残念。せっかくお仲間に会えたと思ったのにやめちゃうなんて…興醒めだなあ」
「き、さまっは……白川、乙女ッッッ!」
≪ヘイガン!ロビン・フッド!ハロー!アロー!森で会おう!≫
白川乙女。森川さんの家族を殺した未成年の凶悪殺人鬼…!森川さんは怒りの表情と共に、腕輪を荒々しく叩いてロビンフッドカルマになると弓に番えた矢を引き絞り、間髪入れず射出。しかし少女はひょいっと動くだけで矢を回避するとにんまり笑って、その手に眼魂を二つ取り出してスイッチを入れ、直接胸に埋め込んだ。なん…だと!?
するとその胸から飛び出してきた、漆黒の刃物を彷彿させる鋭利なシルエットの布切れの様なパーカーゴーストと、頭に貴婦人の帽子の様な装飾がついた血の様に赤いドレスの様に下が大きく広がったパーカーゴーストが続けざまにロビンフッドカルマの放った矢を迎撃する。
「あ、本気で殺しに来てくれるんだ。嬉しいなあ、楽しいなあ、殺し甲斐があるね!」
≪ヘイガン!ジャック・ザ・リッパー!凶器・斬り裂き・殺人鬼!≫
≪ヘイガン!エリザベート!乙女の生き血!美の極致!≫
二重奏の音声を奏でながら、まずジャック・ザ・リッパーのパーカーゴーストが被さってその上からエリザベートのパーカーゴーストが重ね着した少女から成人男性と同じ大きさのカルマが抜け出した。
両肘に腕輪の役割を果たすのだろう目玉の装飾がついており、胴体には通常のカルマと異なる二つの目玉が縦に連なる姿はただのカルマではなく、顔は白のナイフが交差したものと、緋色のアイアンメイデンを模したシルエットが重なって凶悪なもので、まるでドレスを身に纏った貴婦人の様な優雅な姿で二本のナイフを手に舞い踊る。二つの、しかも完成された眼魂を使うカルマだと…!?以前、ライト兄弟カルマを倒したことはあるが、あれは兄弟だからだったはずだ。今回のとは全然違う!
「こんにちは。ボスからはシルアルキラーカルマと呼ばれてる白川乙女です。よろしく、殺されてどうぞ!」
「まさか…お前もカルマだったなんて…ネクロ…あいつ、知っててわざと…許さん!許せるものか!」
そう和やかに挨拶しながら、激昂したロビンフッドカルマの放つ矢を叩き落として接近してくるシルアルキラーカルマから、結城を庇うように後退していると、ロビンフッドカルマとは別にスペクターも様子がおかしいことに気付く。
「その声、その姿……見つけたぞ、カルマ!俺だ、
≪カイガン!スペクター!レディゴー!覚悟!ド・キ・ド・キ・ゴースト!≫
「えー、誰?知らないなー!」
激昂した浅木魁もスペクターに変身し、ガンガンハンドを手に殴りかかるも、シリアルキラーカルマは意にも介さず、スペクターをあっさり蹴り飛ばすとロビンフッドカルマに当ててもみくちゃにするとこちらに顔を向けた。
「楽しいなあ、殺し合い、楽しいなあ!そこの君は来ないの?それとも、理由が出来たら殺しに来てくれるのかな?」
「っ!結城!」
≪カイガン!ムサシ!決闘、ズバッと、超剣豪!≫
その仮面の下の目が結城を舐めるように見たことに気付き、嫌な予感がしてムサシ魂へと直接変身するも、霧に包まれて瞬間移動してきたシリアルキラーカルマに蹴り飛ばされ、あまりの重さに無様に地面に転がるしかなく。ハイヒールなこともありなんつー威力だ……って、不味い!アイツの目的は…!
「逃げろ!」
「え…?」
「ハーイ、お姉さん。死んでいいよ」
無駄だと思っても叫ぶしかない。無力な少女へと、無垢なる刃が容赦なく振り下ろされて…
「…あー、何時にもまして不幸だなあ」
そんな諦めの籠った声と共に、赤い血飛沫が舞った。一瞬の出来事で、その光景が信じられなかった。
「…え?」
「……あれえ?なんで生きてるの?」
結城は無事だった。突き飛ばされたまま転がり、呆然としている。間に合わないと踏んだのか人間の身体に戻り、結城を庇った人がいたのだ。
「森川さん!」
「…かふっ」
胸から鮮血を溢れさせ、口からも血反吐を吐いて崩れ落ちる森川さん。俺とスペクターは全く同時に飛びかかって挟撃。しかしまた霧に包まれ離れたところに逃げられてしまい、慌てて森川さんの体を支えた。
「なんで…こんな」
「……私は警察官だからな。市民を守る義務を守っただけさ。ゴースト、これを…君に託す」
そう言って森川さんが視線を向けたのは、カルマから解放されてどうしたらいいかわからず森川さんを心配そうに見守るパーカーゴースト・ロビンフッド。俺は頷き、パーカーゴーストも意を汲み取ったのかゴーストドライバーに吸い込まれていき、眼魂となった。
「頼む、私を人間に戻してくれた…ヒーロー。あいつを……白川乙女を、止めてくれ。頼んだ、ぞ…」
「森川さん…!」
そう言って森川真弓という名の警察官は、笑みを浮かべて息絶えた。俺も、スペクターも、結城も、何も言えず沈黙するしかない。それを破ったのは、ただの人間だったころから怪物だったと思われる、少女の声だった。
「私と殺し合いするよりも他人を守って死んでいくことを選ぶなんて酷いなあ。早く続きをしようよ、やる気が出ないならやっぱり殺すしかない?」
「…お前、黙れよ」
「同感だ」
俺とスペクターは結城を守るように並び立つ。俺は森川さんの死を侮辱された怒りで。スペクターは復讐心から、今この時だけ「奴を倒す」という目的が一致した。俺はドライバーからムサシ眼魂を取り外してロビンフッド眼魂を装填、パーカーゴーストを呼び出す。
≪アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!≫
「森川さん…一緒に戦ってください!」
≪カイガン!ロビン・フッド!≫≪ハロー!アロー!森で会おう!≫
そして俺はロビン魂に変身、ガンガンセイバーをガンモードにすると飛んできたコンドルデンワーが合体してアローモードとなり、ガンガンハンドを手にして殴りかかったスペクターを援護する様にエネルギーの矢を発射。しかし霧を纏い瞬間移動してスペクターを翻弄するシリアルキラーカルマを捉えることはできない。
「アハハハハ!鬼さんこちら!手の鳴る方へ!」
「だったらこれはどうだ」
≪ダイカイガン!ガンガンミナー!ガンガンミナー!≫
≪ダイカイガン!ロビン・フッド!オメガドライブ!≫
アイコンタクトして弓の様にガンガンセイバーを引き絞りつつ、さらにゴーストドライバーのトリガーを押し込んでオメガドライブを発動。すると次々と分身が生み出され、横一列に並んでエネルギーを溜めこんでいく。
「逃がさん!」
「およ?これはやばいかも!」
さらに瞬間移動を執念で追いかけたスペクターがガンガンハンドでシリアルキラーカルマを捕らえることに成功。分身全ての照準を奴に合わせて、解き放つ。
≪オメガストライク!≫
十人に分身しての一撃がシリアルキラーカルマに正確に炸裂。スペクターも炸裂する寸前で離脱し、爆発が広がる。しかし、ぱらぱらと何かが崩れる音が聞こえて。炎が晴れると、そこには赤い流動体が奴を包み込んで爆発から身を守っていた。あれは…血か?霧の瞬間移動がジャック・ザ・リッパーの能力なら、あれはエリザベート…エリザベート・バートリの力か。
「あー、危なかった!でも楽しかったよ、また遊ぼうね。ゴーストと…スペクター?」
「っ、待て!」
そう言ってシリアルキラーカルマは手を振って霧に包まれて姿を消し、スペクターが飛びかかるも時すでに遅く。そのまま悔しそうにスペクターは跳躍して去って行く。俺は、無力感に打ちひしがれるしかなかった。
後から知ったことだが、金管は森川さんに殺害されていた。スペクターは殺されたあとに乱入したらしい。…何が誰一人カルマに殺させない、だ。全ての人間を守る事なんて無理だということを、今更ながらに思い知ることとなった、そんな戦いだった。白川乙女……シリアルキラーカルマ。次会ったら絶対に逃がさない。森川さんの無念は、俺が引き継ぐ。
ゴーストVSスペクターこと浅木魁、森川真弓との和解、ノブナガカルマに続く幹部カルマ・シリアルキラーカルマこと森川と浅木の仇でもある白川乙女が登場、森川の死とロビン魂への変身とてんこ盛りだった今回。自分でも積み込み過ぎたと思ってる、反省。
シリアルキラーカルマ。原作グンダリ戦での「重ね着」から着想を得て生み出された、「ジャック・ザ・リッパー」と「エリザベート・バートリ」シリアルキラー2つ分のパーカーゴーストを重ね着した特殊なカルマ。眼魂もすでに完成されている、つまり二人分の偉人(?)の「業」を叶えた少女、白川乙女が変身する。
スペクターの家族を殺した謎のカルマその人であり、白川本人は森川の家族を殺した、数多の人間の運命を狂わせた凶悪殺人鬼。霧を纏うことによる瞬間移動と血の様な流動体を操る能力、そしてパーカードレスに替えが供えられたナイフを武器にする。モチーフは「悪ノ娘」シリーズのネイ・フタピエ。
次回、仮面ライダーWのキャラがついに登場。乗り込むは宗教団体?お気に召したなら感想などいただけると嬉しいです。