桐山君は清滝家の長男坊?【本編完結済】   作:紫電海勝巳

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将棋界の現実文庫見ると、竜王戦本戦トーナメントがいよいよ開幕しましたね。1組優勝の永瀬軍曹(中尉?)始め、1組4位のレジェンド羽生から、2組優勝の藤井二冠から、屈指の実力者が揃った見応えある戦いが期待されるところでしょう。


一方、今期から方式が様変わりした叡王戦も、いよいよ挑戦者決定戦進出者が決定し、一方は先の名人戦では魔王の悪魔力に屈したものの、この叡王戦はしっかりリベンジを果たした上で挑戦目前まで駒を進めた斎藤慎太郎八段が勝ち上がり、もう一方は史上初の十代三冠にまた一歩接近してきた藤井聡太二冠が進んで来ました。

現実文庫でも今年は特に熱い夏の激闘が予感されそうで目が離せなさそうです…


って訳で本編スタート!!


夜叉神天衣

帝位戦での八一君の吹っ切れたような関西風泥まみれ全開の粘り勝ちから2日…

 

 

僕は対局日でないにもかかわらずも関西将棋会館に足を運んでいた…

 

理由は、昨日出張から戻って来た月光会長からの呼び出しである。

 

 

昨日夕方に急に「明日会館で君に考えて貰いたい話があるのです。時間は取らせませんので、昼過ぎにでもどうですか?」との柔らかい口調ではあるが、実質命令なお話を僕が拒否できる選択肢は無かった。本当は4月から始まる名人戦への対策研究に傾注したかったけど、会長の真綿を締めるような拘束力って、どっか気ままなところのある生石さん以外基本的に逃れられないからな…

 

 

 

 

そして会館に入り、「トゥエルブ」で軽くランチを済ませると、真っ直ぐに会長室に向かった。

 

ドアの前で「失礼します、桐山です。」と声を掛けると「お入り下さい。」と会長…ではなく、秘書役の男鹿さんが声を返した。勧められるままに入室し、会長から「まず、お座り下さい。」と勧められたので、それに従い、来客用ソファーに座った。

 

早速会長から、「貴方ももう21歳になりますね。」と、

何故か年齢確認?確かに僕は4月生まれなので、1ヶ月以内に21歳になるのは決まっているのだが、まさか酒とかじゃないよな…前回でもあまり呑めなかったのに、今回は今回でアルコールにはあまり強靭な体質じゃないので酒席に帯同ならハッキリ断ろうと決めた。

 

けど、話は全く異なり、会長から聞かされた話は僕には意外な事だった。

 

「実は、将棋連盟に多額の寄付をしていただいてる、とある実業家のお孫さんから師匠の依頼をされているのです。そして、その師匠の条件が、現役のA級棋士か現役のタイトルホルダーでなければ…という事なのです。」

 

 

なにそれ、幾らなんでもムチャクチャじゃないの?

 

実際、現在の関西でのタイトルホルダーは、竜王の八一君と、玉将の生石さん、他は玉座と盤王の二冠を保持してる僕の3人しかいない。更にA級だと、八一君を抜き、替わって月光会長が加わるだけなので最大でも4人しかいない。随分贅沢な要求するお坊ちゃんorお嬢ちゃんだな…とその時はやや不快に思った。

 

で、僕の方から「会長は多忙ですし、目の問題もありますから難しい事は承知しております。生石玉将も弟子を取るスタンスをお持ちでないのは伺っております。ならば、竜王でも宜しいかと思いますが、何故僕なのですか?」と問うた。

 

「二冠には現在お弟子さんが存在しておりません。そして、その依頼者との相性を鑑みるに、最も最適と考えた次第です。」との会長の回答。

 

名人戦と並行するけど仕方ないな。実際会長には色々とスケジュールとか盤外での所謂「芸能活動」なんかで最大限の配慮を行って貰ってるから素質才能が十分にあるかないかだけ確認し、足りなきゃ断ればいいか…と、その時点ではあまり深刻に考えていなかった。

 

 

 

それから3日後、その実業家の屋敷を訪問した。

豪壮さだけなら二海堂の邸宅を知ってるので、広さでの驚きは無かったが、門前門内に所謂「どう考えても堅気じゃない」その筋で人生送ってる方々がド派手に出迎えの陣太鼓に行列とか、僕は貴方方の担当弁●士じゃありませんから。

 

そして長身のその筋と見られる女性の案内で、その依頼者が待っている部屋に到着した。

 

気配で振り返ったその依頼者は、おおよそ小学生中高学年位の美しいが気の強そうな女の子だった。

 

早速「お祖父様から聞いたわ。私は貴方を師匠とは認めない。私を甘く見ないで!!」と、のっけから僕な存在から否定してくれた。

 

いやいや、依頼したのは君でしょ。って台詞は何とか抑えたが、一方で他者との実戦対局は致命的に不足してるな…とも直感した。

 

故に、「まず一局指そう。駒は幾つ落とそうか?」と、提案したが、本人は「平手以外ないわ」と、なんとも自信過剰な台詞を頂いた。

 

対して僕も「君が思う程将棋は甘い物じゃない。君にはそれをこれから嫌という程体感して貰うからそのつもりで」とだけ答え、対局を開始した。

 

 

 

…最早いじめを軽く超えた虐殺模様となり、何時でも投了宣言でもおかしくない圧倒的盤面の地獄絵図と化していたが、彼女はまだ降参する気配も無く、必死に回避筋を探っていた。が、ここからは詰みが確定してたので、彼女が「ま…」と呟くや、「お疲れ様」と言い掛けたが、次に出た言葉が「まだ負けてない!!」で、そこから防御の陣形を築き、彼女の本質が「受け将棋」であるのを直感的に感じ取った。

 

けど、劣勢を挽回は出来ず、結局守りの穴を崩し、頭金を打ったところで決着。

 

 

彼女がそのまま立ち去ろうとしたので、「礼!!」と僕には珍しく声を荒げ、止めようとしたが、「天衣!」と叱るお祖父さんの叱咤にまで耳を貸さなかった天衣ちゃんは「お祖父様の馬鹿ぁ!!」と叫ぶなり、即刻部屋から逃げ去った。

 

 

直ぐに実業家の夜叉神弘天さんからは、「我が儘な孫で申し訳ありません。あの子は数年前、事故で両親を失っており、以来、私が引き取って生活してますが、不憫な娘と思い、少々甘やかし過ぎたとは今にして思っております。ですから貴方のような若いながらも、栄光と痛みの両面を熟知した方に指導を頂ければあの子の成長に繋がるのではないかと考えた次第です。」と告白された。

 

 

そして、弘天さんに「今、彼女はどちらに向かいましたか?」と伺い、仏間に案内された。そこには彼女が1人で仏壇の前に座っていた。

 

「天衣ちゃん、君の名前を聞いた時、君のお父さんの夜叉神天祐さんの事を回想したよ。天祐さんとは僕がプロ入りして間もなく盤王戦予選決勝で当たり、辛うじて勝ったけど、感想戦ではどちらにも勝ち筋が残っていたって、色々評判が立っていたからね。」と話すと、天衣ちゃんは、

 

「幼い頃からお父様からは、『桐山零君は間違いなく将棋界の天下を取る男だ。天衣は是非にも桐山君の弟子になって貰いたいものだ。』って事ある毎に話していたわ。」と答えてくれた。

 

 

僕も、「僕は正直人に教える事や、盤面状況を言語化する事が極めて不得手なんだけど、君の哀しみについては、ある意味で君以上に熟知し、理解している自負はある。」と話し、

 

「人生及び将棋界での先達としてはまだまだ修行が必要な身だけど、それでも望むのなら、僕が責任を持って君を強くしよう。そしてはいずれ、最高の舞台で戦おう」

と告げると、彼女は、

 

「師匠を喰らい尽くしても最強になって見せる。」と告げ、その場で師弟関係が確定した。

 

 

しかし天衣ちゃんって、少し大人びているように見えるけど、あいちゃんと同学年なんだな…

 

さて、気持ちも新たに名人戦に集中しよう。去年失った名人の奪還は喫緊の命題だからな。




天衣ちゃん登場。桐山君同様、事故で両親一気に失った喪失感と深い傷は原作と変わらず。

しかし、同じ深い傷を背負う桐山君とこれからどう関わるのか、また、桐山君への思慕が覚醒するのか単に師弟関係から動かないのか…これは思案中…



因みに桐山君のこれまでのタイトル履歴は、


名人3期(2013~15)
竜王1期(2013)
帝位6期(2010~15) 永世帝位資格取得
玉座9期(2008~現在)名誉玉座資格取得
盤王9期(2009~現在)永世盤王資格取得
玉将5期(2010~14)
棋帝7期(2009~15) 永世棋帝資格取得
タイトル合計40期(歴代4位)

公共放送杯優勝4回
毎朝杯優勝4回
大河戦優勝3回
賞金王シリーズ優勝6回
新人戦優勝1回
一般棋戦優勝18回

デビュー10年での成績としては当に怪物級。


順位戦も全て1期抜けを記録し、現実文庫でも及ばないA級昇格即名人挑戦→史上最短名人獲得の超絶記録を達成。しかも、順位戦はA級も含め、無敗記録を継続中。
(C2~B1まで42連勝+A級2期18連勝の順位戦60連勝を達成)

鬼●眼鏡やら魔王やらきゅんも軍曹も脱帽レベルの最強に仕立てました(笑)


って訳で次回!!
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