尚、今回は基本的にリーナちゃん視線で綴る事となります。
って訳で本編スタート!!
あれはロr九頭竜竜王が空先生に貫禄勝ちして即席婚約発表を終えて京都に戻って少し経った年末…
世間では年越しの空気が充満していたが、この時の私にはそんなゆとりなんか欠片も無かった…
何故なら女流名跡リーグ戦の最終戦で7勝1敗が4人並んで全部直接対決となっていたからだ。
その4人とは…
夜叉神天衣五段(清華・女王・女流玉座)、私(山城桜花)、岳滅鬼翼女流帝位、鹿路庭珠代女流三段であり、何れも一筋縄では通用しない面々である。
で、その最終戦直接対局の組み合わせは…、
夜叉神五段vs岳滅鬼女流帝位
私(桐山山城桜花)vs鹿路庭女流三段
となり、この勝者がプレーオフを戦い、その勝者が雛鶴あい女流名跡とのタイトル戦五番勝負に臨む図式となった。
そして天衣さんと私が勝ち上がり、年明け早々にプレーオフが行われ、その後に女流名跡戦五番勝負が行われる流れとなっていた。
そんな中年末も年末、30日にもなって突然東京から態々来訪して来た珍客が現れた…
日本トレセン学園生徒会長にして七冠ウマ娘の『皇帝』シンボリルドルフさんと、その盟友にして『スーパーカー』の二つ名を持つマルゼンスキーさんであった。
取り敢えず住んでいるマンションの向かいにある喫茶店で会う事となった。
師匠も同席する事となり、奥にルドルフさんとマルゼンさん、向かい側に師匠と私がそれぞれ座った。
お互い軽く自己紹介した後、暫く沈黙が続いたが…、やがて口を開いたのはルドルフさんだった。
曰く、
「桐山カタリーナ君、私が君に大いなる興味を示し、この年の瀬に態々京都くんだりまで訪れたのは他でもない、G1週の土曜日に行われるアマチュア招待レースでブッちぎりの圧勝を繰り返し見せてくれたからだ。4月仁川・桜花賞での1600、5月府中・日本ダービーでの2000、10月淀・菊花賞での2000、この3レースで何れもトゥインクルレース…それもクラシック級レベルを超えるタイムと上がりタイム、今年のマイルカップとダービーを連覇したディープスカイ君ですら仰け反るレベルの圧巻ぶり…、否、もっと極端に云えば、先頃の府中・天皇賞(秋)での勝者ウオッカ君と大僅差で敗れながらも負けて尚勝者に等しい評価を勝ち得た上、つい先日の有マ記念で爆走逃げ切りをやってのけたダイワスカーレット君さえも届かない…
日本ウマ娘の中でも極上の資質持ちにして、世界ウマ娘レースでも十二分に通用する逸材をむざむざ見逃す手なんて私でなくとも考えられん。」
と一見クールに見えながらもその実、迸る熱情を隠す事無く私に来い来いアピールをドン引きレベルで繰り広げていたのには何とも閉口したが…。
で、ルドルフさんが熱弁している中で師匠と云えば…
「日本トレセン学園については僕なりに調査を行い、その優位性や待遇、反面的な諸般のデメリットなんかの最低限の知識・認識は少なからず考慮した上で答えさせて頂きますが、少なくとも僕がリーナを手放す選択肢は微塵も御座いません。」
と、私の盾になる事を高らかに宣言。
然し私を世界レベルの逸材と見做したルドルフさんもそう容易く退く訳もなく、
「彼女の生涯を思うのならそんな頭でっかちなゲームに縛らず、是が非にでもウマ娘としての本質・原点に送り出すのが筋と思うのだが如何か?」
って更に押し込んで来た。
が、そのルドルフさんの反論が師匠の琴線を最大限に揺さぶり、その逆鱗を甚く刺激する事となった。
「あ?お前程度の小娘が俺の人生そのものの将棋に何をしたり顔で物申す?確かにお前がトゥインクルレースに絶大なプライドを持ち、それだけの実績を挙げたのは誰もが認めるさ。けどな、そんな稀有な実績に甘えて他の逸材ウマ娘とそのサポートメンバーの未来を狂わせたのもお前の独り善がりのエゴの結果だった事実に何故気付かない?否、お前はその事実から目を背けていたんだよな、己が強者である事を維持する為に…」
ルドルフさんのある種のコンプレックスを甚く刺激する激烈な反発ではあったがそれにしても私の知る限り、師匠が自身の一人称に「俺」を使ったり、彼処まで荒っぽい言葉遣いになったり…と云うのは悪い意味で物騒過ぎてルドルフさん以上に私の方が魂を抜かれ兼ねない勢いだったのはどう考えようが仕方無かった。
因みにその逸材ウマ娘とは、『芦毛の怪物』オグリキャップさんで、カサマツ時代のトレーナーと同僚の親友と別れざるを得なくなったエピソードを師匠は知っていたのだった…
そんな師匠とルドルフさんの激論を仲裁したのは、それまで黙ってお互いの意見の聞き手に徹していたマルゼンさんだった。
曰く、
「全くルドルフも桐山名人も頑固に頑固を重ねた頭でっかちなんだから…。
だったらルドルフとリーナちゃんで勝った方が負けた相手に要求を呑ませるって事で模擬レースすればいいんじゃない?」
は?ウマ娘レーサーとしての鍛錬なんて私なんかまるで実践してなかったし…
って…、何で師匠まで乗る訳…
「マルゼンさんがどう宥めようがルドルフさんが聞く見持たずじゃ現状避けられないよな…」
って、師匠、一体全体どうするつもりなの?
……って思ったら、狭い喫茶店に何人ものウマ娘が何故か集結していた…。
話合いのテーブルには師匠は別として私とルドルフさんとマルゼンさんの3人。
隣のテーブルには3人が座っていたが、そのうちの1人が伝説のウマ娘の一角であり、先程師匠が例に上げていた
『芦毛の怪物』
オグリキャップさんだった。
他の2人はと言うと、その2人もトゥインクルレースを席巻したスーパースターウマ娘の
『白い稲妻』タマモクロスさんと、『高速ステイヤー』&『若き天才トレーナーの恋人』の二つ名をもつスーパークリークさんであった…。
更には去年のダービーウマ娘の『日本総大将』スペシャルウィークさんに『怪鳥』エルコンドルパサーさん、『不死鳥』グラスワンダーさんに加え、『トリックスター』『クラシック二冠ウマ娘』のセイウンスカイさんと、『不屈のキング』キングヘイローさんも近くのテーブルに陣取っており、私達の話を興味深く聞いていたようで…
だけじゃなく、スペシャルウィークさんを「スペ先輩」と慕う後輩世代(私よりは先輩であるが)の『府中の女帝』ウオッカさんと『クリムゾンカラーの一族』の最強の結晶の呼び声高い『緋色の女王』ダイワスカーレットさんも近くのテーブルに陣取り、私についての知識を吸収していたのには…
それでも師匠は
「絶対拒絶」
との姿勢を崩さず、ルドルフさんに
「貴方はジャイアンですか?じゃなければ鷹村守ですか?」
と、何が何でも私を守り通す姿勢を貫き通し、流石のルドルフさんもどうにか妥協点を導き出す他無かった…。
そして導き出したのが大晦日京都2000の特別レースであり、メンバーの殆どがG1級の準G1レースってな面子ではあった。
◎出走ウマ娘
① 1番 セイウンスカイ
② 2番 スーパークリーク
③ 3番 グラスワンダー
④ 4番 タマモクロス
④ 5番 ウオッカ
⑤ 6番 ヤエノムテキ
⑤ 7番 ダイワスカーレット
⑥ 8番 桐山カタリーナ
⑥ 9番 シンボリルドルフ
⑦10番 スペシャルウィーク
⑦11番 オグリキャップ
⑧12番 エルコンドルパサー
⑧13番 キングヘイロー
……私以外でG1タイトル未経験者って誰もいないじゃん!!
マジで囲い込みに掛かって来たか…
あ〜、今トレセンで活躍してつい先日阪神JFで初G1取った親友のブエナビスタちゃんから聞いた通りだった…
ルドルフさんの執着心の凄まじさと来たら聞いた以上だよ…
けどこうなったら何としても勝って諦めて貰うしかないんだよな…
それじゃ準備運動に入りますか…
翌日午後3時…京都レース場・通称『淀』のターフに全13人のウマ娘が発走準備に取り掛かっていた。
前日に決めた枠組の順にゲートに入り、師匠とマルゼンさん、話を聞いた師匠一家と冬司君、そして何故か現地で待ち構えていたゴールドシップさんの7名のみの観客が見守る中ゲートが開き、レースがスタートした。
先ず先陣を切りハナに立ったのはセイウンスカイさんで、直ぐ後ろの2番手にはダイワスカーレットさん、以下の先行勢はスーパークリークさんにルドルフさん、エルコンドルパサーさん、ヤエノムテキさんとなり、中段にはスペシャルウィークさんにオグリキャップさんと私が位置し、後方はグラスワンダーさんとウオッカさん、キングヘイローさんで最後方はタマモクロスさんの順で前半1000を通過した。タイムは57秒7と速いペースだった。
そして淀の坂に入り、慎重に心臓破りの坂を通過…下り切った処でスパートを…って!うわッ!ルドルフさんに先んじられた…って、え?今度は横から白い稲妻…タマモクロスさんがすり抜けて行ったよ…
って呆然としてる場合か!切り替えてスパートだ!
ってモタついている間にも全てのウマ娘がスパートに入り、完全に遅れてしまったか…
けど淀の直線はそこそこあるし、何よりも平坦だから巻き返しは可能だ…
が、(私以外)全メンバーがG1ウマ娘のハイレベルな上、逃げてもバテず、差し脚も鋭く、ハイペースなのに更に絞り尽くす激走…
けど私は私の道を突き進む為にもこんな処で心身圧し折られてたまるかッ!!
渾身のスパート、末脚を繰り出した。
結果…1着のタイムは1分55秒8、上がり最速は31秒6とマジでG1優勝レベルのハイレベル決着となった…。
1着→スペシャルウィーク
2着→シンボリルドルフ
3着→ダイワスカーレット
4着→オグリキャップ
5着→タマモクロス
6着→スーパークリーク
7着→グラスワンダー
8着→ウオッカ
9着→エルコンドルパサー
10着→桐山カタリーナ
11着→ヤエノムテキ
12着→キングヘイロー
13着→セイウンスカイ
但し、1着と最下位の着差は僅かに1バ身であり、セイウンスカイさんもタイムは1分56秒0と普通なら十分逃げ切ったレベルの結果ではあった…
レース後、改めて話し合いとなり、レースそのものは完敗だったもののルドルフさん、どうやら私の将棋への情熱・熱量を理解してくれたようで、結局トレセン行きの話はナシとなった。
別れ際、ルドルフさんから、
「その頃に私が在籍しているかは分からないが、将来君が名人となったなら是非にもトレセン学園に講義に訪れて貰いたい」
と、最大限のエールを頂いた。
マルゼンさんからも、
「あのメンバー相手にあれだけやればバッチグーよ(はーと)!これからの活躍期待してるわよ。」
との激励を頂き、改めて将棋への覚悟を誓ったのだった…
後日談…
その後、年明けに行われた天衣さんとのプレーオフをどうにか勝ち上がり、あいちゃんの持つ女流名跡に挑戦、交互に勝敗を繰り返した結果…
○●○●○…全て後手番勝利の珍しいケースで私があいちゃんから女流名跡を奪い、山城桜花との女流二冠に輝いた。
又、山城桜花も万智義姉さん相手に東京での第1局は落としたものの、京都での連戦を連勝、初防衛すると共に女流タイトル通算3期獲得により、女流四段に上がる事となった。
何気に書いてみたのですが、全員G1メンバーでキング以外は悉く複数回勝ってる怪物揃いとか、普通ならブッちぎりの最下位でもおかしくないメンツでタイム差コンマ1とか年齢的にジュニアなのにシニア世代相手にあれだけやれたら確かに『皇帝』様もスカウトの手を伸ばしたくなるよな…って程にはリーナちゃんチート過ぎます…
以上、リーナちゃん視点でのお話はこれにて完了!!