って訳で本編スタート!!
大阪市福島にあるこぢんまりとした2階建ての一軒家…
そこが中学卒業以来、5年余りに渡って拠点としている僕のささやかな城である。
小中学生時代はどれだけ稼ごうが忙しかろうが師匠と桂香さんの方針で清滝邸住まいだったので、師匠と桂香さん、特に桂香さんの猛反対を押し切り将棋・一人暮らし・高校生活の両立をキッチリこなすって条件ながら独立を許された時の一種の解放感はこれからの未来が光輝いて見えた気がした。
そして竜王戦第4局が迫った、とある雨が降りしきる夕食時に突然来客のブザーが響いた。
丁度冬司と和食メニューの夕飯を食べていた所だったのだが、兎も角玄関に向かうとそこには全身びしょ濡れのセーラー服の少女…銀子ちゃんが涙を止めず全身震えていた…。
「お兄ちゃん…、八一が、八一がぁ…私を邪魔だ腕が腐るだって…お願い、八一にヤキ入れてよぉ…」
どうやら八一君はこっちの予想以上に重症なようだ。
けど、それだけ苦しみ追い込まれているのは理解出来るが、それにしても八一君、絶対言ってはならない事・特に銀子ちゃんには絶対禁句な言葉を勢い任せとは言えぶちまけるって、本格的におかしくなっているんじゃないか?
それでなくとも第3局が終わった直後にあいちゃんをアパートから追い出して師匠と桂香さんに押し付け独りで研究に没頭してるところに更に銀子ちゃんまで邪険に扱って追い返すって…
完全に何もかも見えなくなっているな…
「銀子ちゃん、兎も角まずは風呂に入って体暖めよう。今日のところはこのまま僕の家でゆっくり休んで。後は…八一君への活入れは僕に任せて。」
「…ぅん、分かったお兄ちゃん。お腹空いたから冷蔵庫から適当に取り出して御飯食べてるから。」
「後、冬司、お互い気の済むまで銀子ちゃんとvsしといてね。」
「…銀子ちゃん、まだ僕には喰い足りないんだけど…」
「僕は今日はもう冬司とは指さないから我慢してくれ。」
「…お兄ちゃん、私と冬司ってそれだけの埋められない差があるの?」
「正直に言って今現在ででも冬司はB級クラスなら十分に通用するレベルだからね。」
「じゃあ、とことん胸を借りる構えで臨むわね。」
「うん、それでいいと思う。それじゃ出るから。」
こうして僕は単身八一君のアパートに向かった。
僕の一軒家と八一君のアパートは歩きで片道10分程度の距離にある。
そして間もなくアパートに到着すると、まず来客ブザーを鳴らしたけど一切反応なし。
あ、これは無視ってよりも最悪レベルの集中モードに入ってるな…
そうと解れば後は本人の意向無視で勝手に合鍵でドアを開けてパソコン研究に没頭してる八一君本人に直接声をかけた。
「八一君、何やってるの?」
「…?…?!あ…に弟子?何でここに?」
「銀子ちゃんからあらましは聞いた。ムダに没頭し過ぎて人として大事な事まで削ぎ落として何になるの?」
「あの「名人」に勝つには勝ちに繋がる物以外何もかも削ぎ落とさなきゃ何も出来ないでしょう。兄弟子には分かりませんよ、「名人」と対をなす…否、「名人」さえも遥かに超えた『将棋を終わらせようとしている神をも超越した絶対神』のアンタには!!」
「はぁ…、八一、お前本当にそう考えてるのか?俺は「神」なんて超えちゃいないしそもそもそんな領域に足を踏み入れた事すらないぞ。と言うよりお前は削いで削いで削ぎ落とす事が最強に繋がるって腹の底から信じてるのか?そんなもの甘ったるい夢物語なんかよりも遥かに有り得ない妄想でしかないのは俺が一番誰よりも熟知してるからな。」
「は?じゃああの「名人」に他にどうやって勝つって言うんですか?」
「じゃあ聞くがお前、竜王を失陥して何もかも失うとでも思っているのか?竜王失陥なんか大した話じゃないだろ。それともたかが1度の失態で棋士生命すら風前の灯なんて誇大妄想もいいところだ。」
「類い稀な絶対的才能を誇り、将棋じゃ右に出る者のない新世紀絶対王者とまで謳われてるアンタには失う事への恐怖なんててんで分かりっこないでしょうがね。」
ここまでやり取りしながらも最後の一線は守ってきたけど、「失う事」…これだけは八一君と言えども否、例え師匠に桂香さんでも絶対に侵してはならない琴線だ。
そして今、八一はその絶対不可侵な領域に土足を突っ込んだ。
「失う?何も分かっちゃいないのはお前だろうが!!お前なんざ竜王の衣を剥がされたって一般の棋士として幾らでも再起が利くだろうが、俺は絶対守らねばならない掛け替えのない家族、実家何もかも俺の預かり知らない中で全て一瞬で消え失せたんだ!!今、どれだけ持て囃されようと栄光を掴もうと、失った俺の根本は永久に戻りはしないんだ!!甘ったれるのも大概にしとけや!!」
(あ…そういえば兄弟子は俺達が内弟子になる前に既に師匠と桂香さん以外は事実上身内が存在しないのも同然な親戚環境だったか…って事はそれだけ孤独孤立のデメリットも熟知してるし、あの気難しそうな天衣ちゃんをも絆の強い師弟関係・信頼関係を築き上げてるってのは俺にはまだまだ出来ない深層心理まで踏み込んだからなんだろうな…)
「少しは落ち着いたか?じゃ早速指すぞ。」
「は?vsしに来たんですか?兄弟子?」
「そりゃそうだろ。銀子が三段ですらない一介の奨励会員だからお前は拒絶したんだろ?ならば、名人を預かってる俺なら最低限不足はないだろ。」
「それはそうですがね…「名人」と兄弟子じゃ棋風が異なるじゃないですか?いいんですか?」
「負け犬寸前のクズ竜王否、ロリコン竜王なんざ俺どころか坂梨さん相手でも惨敗必至コースだから安心して玉砕するんだな。」
「ってか兄弟子~!俺はロリコンじゃねぇ~!!」
「そんなにロリロリ言われるのが嫌だったら銀子を大事にして一刻も早くあいつの人生安心させてやれ。」
「姉弟子関係あります?」
「俺も桂香さんも鏡洲さん始め関西奨励会の若手連中もな、み~んなお前らの行く先を生暖かく見守ってんだ。
あの他人への興味薄そうな創多ですら気にしてる位だからな。少しは自覚しろ。」
「兄弟子、何気なく巧妙に外堀埋めてますね…」
「そりゃ仕方無い、八一と銀子は最早夫婦扱いになってるからな(笑)」
「しかしこれ、あいの実家との折衝が地獄確定なんですけど…」
「あ~、ひな鶴の女将さん相手じゃ短期決戦じゃ確実に負け確定だから中長期戦覚悟で長い目で折衝に当たるしかないだろうな(笑)」
「兄弟子、他人事ですか…」
「僕だって供御飯さんのアプローチ翻わすのに手一杯なんだから…。というか、供御飯さんは超名門公家の家系にして皇居に住まうやんごとなき御一族の末裔の1人なのになんで将棋以外何も持たない僕にここまで関わろうとしてるんだろうって不思議に思ってるんだよね…」
「もう兄弟子はとっとと供御飯さんと結ばれて下さい!!」
…なんか最後は恋愛模様でグダグダになったけど、ともあれ八一君も何とか正気を取り戻したようで改めて第4局に臨めそうだ。
あ~あ、八一どころか零までも恋愛関係外堀かなり埋められてる風情になってきてるこの頃ですな…
っても恋愛模様は今暫くってとこで今は戦いが最優先なもので…
因みに♀→♂への心情は…
銀子→八一「好きで好きでしょうがないけど、八一が超鈍感過ぎ」
あい→八一「ししょーに嫁ぐのはあいで決まりです。」
万智→零「弟を預かった以上、こなたと一緒になるのは既定路線どすwww」
天衣→零「お父様は私の未来を師匠に託したから、私は師匠と共に生涯を歩むのが筋よ。」
シャルロット→八一「しゃうはちちょのおよめたんだよー(はーと)」
桂香→零「数少ない親族で年下の従弟だけど、頼り甲斐があって尚且つ可愛い(はーと)、零君となら結婚しても楽しく面白い人生歩めそう(はーと)」
彼女達以外の女性はとりあえず不明ってとこで
また次回!!