また、前回の桐山君の一人称と態度の変わり様ですが、
普段は「僕」で穏やかに、感情が激した時は「俺」で激情に任せて…って具合に区分けしてみました。
原作とはかなり乖離してるかも知れませんがそこはオリジナルって事でご勘弁願います…
って訳で本編スタート!!
八一君への少々激情に任せた説教から遡る事数日前…
マイナビ本戦1回戦が東京で行われていた。
その対局には天衣とあいちゃんが出場していた。
天衣は登龍花蓮奨励会1級と、あいちゃんは月夜見坂燎女流玉将とそれぞれ対局する事となっていた。
その日は僕も対局及び前泊予定が無かったので、冬司を連れて天衣と共に上京していた。
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~side天衣~
間もなくマイナビ1回戦が始まる。
今日の私の相手は登龍花蓮奨励会1級だ。高校2年で1級だからプロ棋士を狙うには少々微妙な年頃だろうが、弱い訳ではないのは確かだ。だから少し挑発してみる事にしてみた。
先に対局室に入ると直ぐ様上座に座り、余裕綽々に相手を待った。やや遅れて登龍1級が入ると、あからさまに不服な態度を見せ、「ボクの席が無いけど、どういう事?」と抗議した。
確かに立場上で言えば私が格下だから譲らなきゃならないのは明白だけど、そこはそれで更に一押し重ねてみた。
「そんなもの早い者勝ちよ。遅れた貴女が悪い。」
あ、完全に乗ったわね。もう一押しね。
「でも顔を立てなきゃ悪いから譲ってあげてもいいわ。」
「施しを受けるほどボクは落ちぶれちゃいない。力でキミに吠え面かかせてあげる(怒)」
これで下準備はOK。後は私次第ね。
開始前からの挑発成功で肝心要の対局は終始私がコントロールし切り、圧勝した。女王挑戦まであと3勝、誰が相手でも勝ちに邁進するだけよ。
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~sideあい~
マイナビ1回戦…、私は月夜見坂燎女流玉将に挑む事となった。
彼女は女流玉将3連覇中で過去には女流帝位も保持していた女流屈指の実力者だ。
しかし私もここを突破すれば仮免ながらも晴れて女流棋士となる。但し3級なので正式な棋士になるには2年しか猶予が無いのだが。
でも今気合いよりも不安の方が心身共に支配されている…理由は、ししょーがあいを家から出しておじいちゃん先生の家に住まわせ、ししょー本人は「名人」との戦いに集中し、あいを顧みてないからだ。
そんなところへ私より少し後に対局室に入場した女流玉将は、「ハッ、クズの愛弟子って言うからどんなヤツかと思ったが何の事はねェ、只のチビガキじゃねぇか。格の違いキッチリ見せてやるから覚悟しとけ!」
入場早々からあからさまに苛立ちを隠さずにヤンキー気質全開で上座に座った。
ししょーや零おじさんから聞いてはいたけど、この人は兎に角徹頭徹尾万事に攻撃一辺倒な激しい棋風なのを実感せざるを得なかった。
その激しい攻めを切らなきゃとゴキゲンの湯で習った捌きを使って見るもあっさり喰い破られ、たちまち陣がボロボロに崩れ去り、読みを使う間もなく無惨に投了に追い込まれた。
終局後、女流玉将は追い討ちをかけるように
「ハッ、こんなだらしねーのがクズの弟子ってクズも大概見る目ねーな。こんなだからクズも「名人」にいいようにサンドバッグにされてんだよ!師匠が師匠なら弟子も弟子、腐れクズ同士底辺で仲良く乳繰り合ってろ!」
…返す言葉が見つからなかった…それだけの格差を徹底的に見せつけられたんだ…私は只茫然と女流玉将が去るのを見ているしかなかった…
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天衣は何を仕掛けたか、相手の登龍奨励会1級が焦って繰り出す緩手を次から次に咎め続け、終わって見ればどっちが格上かって位の圧勝だった。
一方、あいちゃんは八一君に突き放されたダメージを引き摺ったまま臨んだのがそのまま盤面にも現れたような惨敗となった。
そのあいちゃんを惨殺した月夜見坂さんの態度がどうにも気になって先回りして彼女のバイクのある駐車場で待ち構えた。
そこに現れた月夜見坂さんは、僕の顔を見て開口一番「あ?なんでテメーが此処にいる?テメー大阪だろーが!」
「生憎今日は予定が空いててね、弟子の対局を観戦してたんだ。」
「で、オレを待ち構えて何の用だ?」
「八一君に追い付けない焦りと苛立ちのコンプレックスをあいちゃんにぶつけるのは少々筋違いじゃないかと思ってね。」
「何言ってやがる!格の違い見せただけだろーが!ってかテメー、あのチビと関わりあるのか?」
「そりゃあるさ。八一君の弟子である以上、僕には可愛い姪だからね。」
「ハッ、随分過保護な伯父なんだな。」
って月夜見坂さんとやり取りしてると、いつの間にか僕の隣に来ていた冬司が、
「あいちゃんもまだまだ弱いけど、君も脆いほど弱いよ。」
って月夜見坂さんに燃料投下かました。
「あ?この白髪幼稚園チビが何様だ!」
「髪は白いけど僕は小学生だから。」
「チビはチビだろーが!!」
「銀子叔母さんより弱いんだから僕には勝てる訳ない」
「あ?テメー、ゼロの弟子か?」
「うん、零君最愛の弟子」
「ゼロ、テメーもクズレベルのロリショタかwww」
「ロリショタじゃないけど2人の棋士としての成長は楽しんでるよ。」
「そーか、なら準決でテメーんとこのチビと当たるからオレの実力遺憾なく出してやる!!」
「楽しみにしてるよ。天衣にとっても君相手は更なる成長の大チャンスだからね。」
「その言葉忘れんな!!」
その捨て台詞を言うや直ぐ様バイクに跨がって月夜見坂さんは去って行った。
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八一君を説教し、明日の対局をモニター観戦するよう兄弟子命令を下すと僕は一旦家に帰り一眠りした後、清滝邸に行き、あいちゃんを僕の家に連れ出した。1人で見るより何人かでいた方が安心感があると思っての事だ。
その日は桂香さんが釈迦堂里奈女流名跡に挑む一世一代の人生を懸けた戦いだった。
釈迦堂さん、序盤から堅実にしかし華麗に指して来たが、桂香さんも「エターナルクイーン」の圧力に呑まれず必死に指し続ける。
1度は釈迦堂さんの華麗なる「受け潰し」餌食になりかけたが、そこからの桂香さんの粘りと逆襲はまさに関西棋士特有の泥臭くも勝ちへの執念に特化した指し回しだった。
終盤、その「受け潰し」の守りを遂に喰い破り、一気呵成に駒台にある駒という駒を総動員し、釈迦堂さんを詰め切った。
そして釈迦堂さんの投了宣言を以ち、桂香さんは晴れて2年の時限付きではあるが女流3級となった。
僕の家のリビングでも、一番桂香さんを慕ってる銀子ちゃんからマイナビのダメージが癒え切ってないあいちゃんも止めどなく溢れる涙を流し続けた。
冬司は「棋譜は大した事ないけど、勝ちへの思いが詰まっているのは否定しない」って言外に桂香さんを冬司なりに認めていた。
そして僕も崩壊しないまでも涙腺が緩みかけたのは此処だけの話と言う事で…
そんな中、僕のスマホに着信が…
誰かは直ぐに分かった。出ると、
「兄弟子、八一です。急で悪いんですが今すぐあいを連れて来て下さい!!」
それを待っていた。
直ぐ様あいちゃんを連れ、八一君のアパートに直行した。来客ブザーを鳴らすと転げるように八一君が駆け付け、あいちゃんの姿を確認するや、辺り憚らずに一心に抱き寄せていた。
「あい、ごめんな。俺は何も見えていなかった。俺は1人じゃない、多くの支えあってこその俺だってのを兄弟子に突き付けられ、桂香さんにも気付かされた。もう離さない、お前は永遠に俺の大事な弟子だ!!」
「ししょー…、これ見て下さい。前回の研修会の例会で女流3級資格を勝ち取りました。これでずっと弟子になりますけど本当にあいが弟子でいいんですか?」
「何言ってる、あいは俺の自慢の1番弟子だ!!」
そんなシーンを見ながら僕は静かにアパートを後にしたが、降りた所には銀子ちゃんと冬司、更に予想外な事に天衣まで待っていた。
「はぁ、ホント世話の焼けるバカ八一と小童ね。」
「零君お人好し過ぎでしょ」
「全く師匠の世話焼きも大概名人芸の域に至っているんじゃない?」
なんか3人から生暖かい目でジトっと見られてるんだけど僕なんか余計な事したかな?
そう思ってたら今度は師匠から着信。
「桂香がやりおった!里奈ちゃんに勝ち切って女流の仲間入り果たしおった!今夜は祝杯じゃ~!零も儂の行き付けに集合じゃ~!」
「蔵王先生も月光さんも生石君も久留野君も鏡洲君も関西勢大集合じゃあ~!!今夜は貸し切りやから存分に呑めるでぇ~!!」
マジ本気?一晩呑み明かし?僕持たない…
そんな僕を見て冬司が一言
「僕を理由に断ればいい」
天衣も
「今から神戸に来れば断れる」
銀子ちゃんは
「私には師匠も気を使うから私の事を理由にすればいい」
皆僕を離したくないんだ…まぁ僕も酒席はあまり得意じゃないから断りのメールを送ろうとしたら…
背後から突然スマホが取り上げられ、勝手に参加OKの返信を送られていた。
こんな人、1人しかいないよ…
振り向くと、その豊かな胸部に頭を押し付けられて一言
「こなたが一緒や、存分に楽しもうな~、れ・い・は・ん(はーと)」
ロックオン、逃走不能…でも3人どうしよう…
「冬司は天ちゃんと神戸でお泊まりでええやろ。銀子ちゃんはこなた達と付き合って貰うどす。お燎も駆け付けるゆうメール貰ったどすし」
「は?何で好き好んでアンタ達と一晩付き合わなきゃいけない訳?いい加減ぶちころすぞわれ!」
「おー、銀子相変わらず不機嫌MAXじゃねーかwww、っても桂香さんの女流入り嬉しいんだろ?嬉しくないならこのまま帰ってもいいけど嬉しいなら一軒だけでも付き合え!安心しろ、酒は呑ませねーから。ってかキレさせちゃいけねー兄貴いるから本気でオメーは日付変わらない内に帰すからそれで妥協してくれ」
「お兄ちゃんが隣なら一軒だけ夕食として付き合ってもいい…」
「よし、決まりだなwww、ゼロ、銀子、行くぜ!!」
「ごめん天衣、今晩だけ冬司を預かってくれ。もうこうなったら断れない…」
「しょうがないわね、冬司、行くわよ。晶、出して」
「僕賛成してない…」
「もう覆せないわ、諦めなさい。」
冬司はまだ不満たらたらだったけど、なんとか天衣に預けられた。
で、師匠の行き付けの酒場は…って、大阪でも名うての名門料亭?
どうやらここは師匠の行き付けの酒場の元締め的な大店らしい…
そしてメール通り関西の主だった面々が一堂に集っていた。
師匠から蔵王先生、月光会長、生石さん、久留野さん、鏡洲さん、そして僕に銀子ちゃん、供御飯さん、月夜見坂さん(彼女は関東だけど)、あれ?なんで八一君までいるの?あいちゃんは?
「あ、兄弟子、ここ、あいの親父さんの修行先の店なんですよ。で、先程親父さんから、関西棋士一堂が貸し切りで一晩集うから俺とあいにも来ないか?ってメール来たんです。因みにあいは厨房を手伝うそうで」
「って、あいちゃんのお父さん、「ひな鶴」の仕事離れていいの?」
「聞くと、女将さんから年2回・トータル2ヶ月までは古巣での助っ人勤務を許可されてるそうで…で、今週が年内最後だから腕によりを奮ってって事らしくて…」
「ふふ、これで零はんとこなたの婚約行事も心配あらへんなぁ(はーと)」
「もうリア充関西公認カップルいい加減全国発表してください!!」
「はぁ、…僕よりも銀子ちゃんと八一君の結婚発表が何より最優先でしょ…」
「いやいや、兄弟子を差し置いて…って痛ぇ!!」
「頓死しろ、ロリコン!!」
「おう、来たか零!まずは駆け付け3杯や!」
「うゎ…、蔵王先生、僕そんなイケる口じゃないんですが…」
「構わん、ビール3杯なら問題ないわいwww」
「それでは頂きます。」
…………
ふぅ、やっぱり酒は回りが早い…
……あ~あ、師匠早速真っ赤っ赤だよ…
久留野さんも一旦休憩モードに入ってるし…
自由気ままな生石さんも蔵王先生相手じゃ流石に逃げ切れないか…
鏡洲さんは呑んではいるけど奨励会員時代の癖が抜けてないのか、しきりに周りに気を回す動きが目立つ…
鏡洲さん、今少し自分本位にシフトしなきゃこれからの棋士人生、苦労しますよ…
一方で月夜見坂さんは人の奢りって事で自由気ままに注文繰り返してご満悦状態だし、銀子ちゃんは高くて美味しいメニューに特化して食べ尽くし、9時過ぎにはもう1人で店を後にした。
残った面々は変わらず呑み呑み、たまに喰いってペースで延々と長時間宴会になっていった…
結局途中離脱したのは銀子ちゃんと月光会長だけで、師匠たちはもとより、自由人な生石さんですらも今回は最後まで付き合っていた…
なんとも凄い破壊的な大宴会になってしまったがともあれ、
「桂香さん、女流入りおめでとう!!」
すげー長くなりました…
天衣ちゃんとあいちゃんのパートと桂香さんのパートを分けた方がいいかな?とも思いましたが分け過ぎてもどうかって思ったんで一緒にしときました。
これで運命の竜王戦第4局書けそうだ…
ある程度時間要るかも知れないけど。
って事でまた次回!!