桐山君は清滝家の長男坊?【本編完結済】   作:紫電海勝巳

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さてさて王位戦も3局終わり、藤井王位がこれまでの苦手振りが何だったのかって具合で豊島竜王に連勝し、2勝1敗としましたね。
竜王戦もベスト4が決まり、藤井二冠は八代七段との2組決勝に続く再戦となりました。
後、叡王戦も間もなく開幕するし、藤井・豊島両棋士は大変とは思いますが、是非にも素晴らしい対局を期待してます。

って事で本編スタート!!


旅館ひな鶴

マイナビ本戦1回戦を終え、次は竜王戦第4局が間もなく始まる。

今回僕は解説の仕事は入っていないけど、スケジュールは空いていたので現地で観戦検討する事にした。

開催場所は石川県和倉温泉の旅館「ひな鶴」である。

ここは去年竜王戦最終局の開催場所でもあり、八一君が竜王獲得を決めた記念の場所である。そして何よりあいちゃんの実家で、2人のファーストコンタクトもここだったと聞いていた。

 

大阪から特急で現地に向かい、最寄りの駅に到着すると、なんだか凄い垂れ幕やら大勢の人だかりやらが所狭しと待ち受けている凄まじいフィーバー振りには流石に仰天した。

しかもこれが「竜王戦」関連じゃなく、最早地元のアイドルみたいな感じで「あいちゃんお帰りなさい」みたいな歓迎なのだから僕ら清滝一行は駅から旅館まで通常10分そこらの道程なのに結局1時間程掛かってしまった。因みに『名人』一行はすんなり通されて…ってか半ばスルー気味にされていたのは…これはここまでにしておこう。

 

で、今回の御一行は竜王の八一君、地元凱旋待遇のあいちゃん、師匠、桂香さん、銀子ちゃん、僕、天衣、冬司、天衣付きの晶さんの面々である。

 

やっとの思いで旅館に着くや、女将さんであいちゃんの母親の亜希奈さんが態々出迎えてくれ、あいちゃんとの半年振りの再会に厳しい言葉を口にしながらも娘の成長と元気な姿に感無量って本音も垣間見た感じがした。

 

で、一旦宿泊部屋に案内され、何故か僕は4人部屋になっていた。冬司はいい。けど天衣と晶さんまで一緒って誰ですか?この部屋割りにしたの?

 

とは言え、僕は対局当事者じゃないから受け入れるしかなかった。幸い、和室スペースと洋室スペースが併設されている高グレードの部屋だから男子組と女子組に分けられるのは助かる…

 

そして直ぐに対局場所に向かったが一足早く旅館入りしていた「名人」と如何にも今着いたって雰囲気の八一君が既に検分を始めており、今回の立会人である柳原九段が両対局者に色々と要望を聞き、副立会人の関崎八段及び、記録係の椚創多奨励会三段が見守っている風景だった。

 

検分が恙無く終わると、何故か僕だけが女将さん直々に案内され、入った部屋は…福井にいる筈の八一君の実家の家族が揃っていた。僕も以前、玉座戦の防衛戦や師匠の挑戦を受けた名人戦で福井を訪れた事があり、その際にご両親、お兄さん、弟さんとは面識があり、又、玉座戦の時はまだご健在だったお祖父さんとも会っていたから(お祖父さんはその翌年に物故した。)それなりに知り合いではあるのだが、それにしても何故ここで?って疑問は頭に?マークと共に浮かんだ。

すると、お父さんが「桐山名人、いつも不肖の息子が世話になっています。未熟で不甲斐ない八一ですが、これからも御指導御鞭撻の程、伏して御願い申し上げます。」ってまだ20過ぎたばかりの人として途上の僕に深々と頭を下げてきて、僕も思わず「あの、お父さん、お顔をお上げ下さい。」って返してた。

で、事情を伺うと、お父さんは早期退職制度により(つまり体のいいリストラ)50代で退職、お兄さんは大学卒業後の就職活動が上手くいかず困っていた所、北陸最大にして評判日本一の名門旅館・「ひな鶴」から誘いがあり、働き口を得たとの事で…。

あぁ、これ完全に女将さんの囲い込み作戦だな…まぁあいちゃんが1人娘で旅館継がせるには入り婿必要だし、これは八一君、説得本気で根気いるぞ…しかも話振りから八一君とまだ中学生の弟さん以外はほぼ完全に女将さん信者に染まってる感触がありありなんだな…殊にお兄さんは何故か僕にも女将さんが刊行した経営本を薦めるレベルだし…まぁ僕は将棋しか出来ないしそれ以外の才覚は不足してると自認してるから何とか理由をつけて断っておいた。

 

そして前夜祭…

 

なんか会場入り口から異様なんだけど…

そこには、「雛鶴家・九頭竜家披露宴」…って何ですか?こんなの僕じゃなくても一瞬固まるお話なんですが…そしたら左右から両脇腹を突かれ、見たら右に冬司、左には天衣がそれぞれ呆れながら僕を見つめていた。

「どうやらその顔だとこんな悪趣味な催し知らなかったようね。」って天衣に言われ、

冬司にも「こんな茶番見ても意味ない」と言われたけど、既に僕らの席も用意されてたから取り敢えず席に着いた。因みに僕らのテーブルは師匠達と一緒だった。

で、僕の両隣は左に天衣、右に冬司だったが、冬司の隣は銀子ちゃんで、この子やっぱりあからさまに不機嫌MAXだった。そりゃそうだろう、単なる前夜祭の筈が銀子ちゃんからすればある意味最も敵視してるあいちゃんに八一君を横取り…みたいな流れに行っちゃってるからな。

しかも会長は何のコスプレ?神父さんの格好になっており、補助役の男鹿さんはシスター姿って、あ~あ銀子ちゃん、ますます不機嫌溜めまくりだよ…

 

で、「披露宴」ってお題だったけど結局の所は研修会例会で女流3級となったあいちゃんと師匠の八一君が正式に師弟になるっていう儀式を大袈裟にしただけだったので僕は「何もそこまで派手にしなくても…」と思ったが、それは八一君も同じだったようで、会場に入るなり実家の家族を見つけるや、お父さんお兄さんと口論になっていた。

しかしこれはあくまでも「竜王戦前夜祭」なので、1番迷惑を被ったのは間違いなく『名人』なんだけど、イベントが面白かったのか、終始大人の態度を崩さず静かに過ごしていたのが救いと云えば救いか…

 

あ、銀子ちゃんの不機嫌MAXは流石の冬司もげんなりしてたので、銀子ちゃんには大阪に戻ったら高級焼肉食べ放題を誘うと少しは雰囲気が和らいだけど僕が出来るのはここまでだ。後は八一君次第だ…

勿論、冬司と天衣にも何か招待しないとな…完全に銀子ちゃんの不機嫌MAXに当てられて終始どんよりげんなりしてたし。

 




ひな鶴での勝負処の第4局、本来はスタートのさわり位は書こうかなと思ってましたが前夜祭までが長過ぎたんで、次回以降にしときます。

って事でまた次回!!
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