桐山君は清滝家の長男坊?【本編完結済】   作:紫電海勝巳

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さてさて、ようやく東京五輪も終わり、またいつもの日常が戻って来たと思いますが、将棋日程も益々熱くなっていく今日この頃ですな…
豊島竜王叡王vs藤井王位棋聖の十二番勝負もこれからが本番佳境となりますが、一体全体どんな展開になるものやら…

って訳で本編スタート!!



清滝道場

一門感謝パーティーでの師匠と八一君の確執騒動から数日…

 

順位戦8回戦が行われ、C級2組の八一君はAIを上手く活用した指し回しと竜王戦で一皮剥けた感覚で順調に勝ち進み、7勝1敗で昇級まで2勝となった。

一方師匠は未だ不振を抜け出せず、ここまで歩夢君と2人全勝を走る20歳の期待の若手の1人でもある大原鉄太君に手も足も出ない惨敗を喫し、1勝7敗と本気で後が無くなる崖っぷちに立たされた……

 

そんな時、「名人」との盤王戦に備え、研究に取り組んでいた僕の家に師匠が単身訪ねて来た。

取り敢えず居間に通して話を聞こうとしたのだが、座るなり、いきなり土下座して、「零、否、桐山名人、伏して教えを乞いたい。儂はこれまで名人挑戦2回A級在籍14期を誇りとしてきたが、今思えばその誇りに縛られただけで進化を蔑ろにしていたと、この年末年始の連敗で完全に思い知らされた。よって、多忙は承知の上で時間の都合が付く時だけでええ、儂に若い将棋を伝えて欲しい。」と頼んできた。

確かにここ数年の師匠はその誇りに依存していた傾向が強かったのは否めないが、それにしても思い切った話ではある。

けど弟子としてばかりではなく、故郷の「元親族」から切り捨てられ排除された僕を人として棋士として慈しみ育ててくれた本当の意味での唯一の親族の伯父を突き放せる訳が無かった。

しかし、僕だけでは手が足りないのも確かだから、関西所属の若手中堅の面々や、関東の知己にも協力を頼む事とした。

僕の答えを聞き、師匠は「有難い。この尽力に力の及ぶ限り答えて見せなならんわ。」といたく感謝された。

 

そして盤王戦第1局の会場に出発する前日、野田の師匠宅の離れでもある「野田将棋センター」を訪ねると、鏡洲さん始めとする関西若手有志が多数集い、奨励会員からも創多始め何人も集団で自由に指しまくっており、更に関東からも僕の依頼でニ海堂始めとする若手有志も集まっており、鏡洲さんと同期昇段の坂梨さんも勿論いた。

そしてあの騒動以来、師匠宅に寄り付かなかった八一君にも連絡し、来て貰った。

八一君、道場を見るや、「何なんですか?この活気と熱気は?」ってえらく驚いていた。そして、「兄弟子、手が足りないから更にA級も1人2人頼んだって聞きましたけど、まさか会長とか生石さんですか?」と聞いたので、

「否、違う人だけど。1人は今創多と指してる佐伯さんで、もう1人はそろそろ着くと思うけど…」と言うや否や、

「八一くぅん、久しぶりぃ」って声が…

その途端八一君、叫んでた。

「うわぁーーー兄弟子、よりによって何でこの人なんすか?ヤバ過ぎるでしょうーーー!!」

「A級で即座に都合が付いた人が山刀伐さんと佐伯さんだったからね。お願いしたら即興味津々に承知してくれたよ。」

「清滝さん程のベテランがなんとも面白い事を企図してるって聞いて乗らない手は無いよね。しかも仕掛人が零君と来たら乗らなきゃ損だしね。」

 

って訳で「清滝道場」大盛況となり、参加した大勢の棋士や会員がここから更に力を伸ばす事となる「伝説の道場」と後に謳われる話になるのはまた別の機会に…

 

 

その後、順位戦9回戦では師匠が昇級争いにいる若手相手に会心の指し回しで2勝目を挙げ、残留に首の皮一枚残った。

八一君も順調に8勝目を挙げ、昇級に王手となっていた。

 

そして3月、いよいよ1年の総決算となる順位戦最終戦が行われる…




余談…

関西奨励会例会2月後半、ここまでいいとこ取り12勝4敗まで残り1勝の銀子ちゃんと、二段昇段後5連勝中の冬司が初めてぶつかった。
お互い矢倉を組んでからの戦いとなり、先手の銀子ちゃんに攻めさせるだけ攻めさせ、攻めが過剰になった所をカウンターからの一気の逆襲でたちまち相手陣を破壊させた冬司が快勝し、銀子ちゃんの三段昇段はお預けとなった。

その後は3月前半に更に連勝を重ねた冬司が一足先に三段昇段、銀子ちゃんもその次の3月後半の1局目で三段入りを決め、年度明けの4月からの三段リーグに共に参加する事となった。

一方、現在開催されている今年度後期三段リーグは、創多が敵無しの全勝突破を決め、2位昇段は曾ては生石さんや山刀伐さん達と奨励会同期も一度は抜け出せずに退会し、後にアマチュア復帰後にアマチュア棋戦で実績を挙げ、参加したプロ棋戦でも勝つだけ勝って三段受験資格を行使して見事に奨励会復帰を果たし、今回から再び三段リーグに参戦し、今度は一発回答の16勝2敗の好成績で辛香将司さんが悲願達成となった。

正直、才能は兎も角、三段リーグは独特の雰囲気が支配するだけに、特に銀子ちゃんが呑まれないか気掛かりではある。
一方の冬司は才能メンタルは心配いらないけど、唯一気になるのが体力だろう。ここが何とかなれば一発回答出来るとは思うが…
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