って訳で本編スタート!!
山城桜花戦……
江戸幕府初代将軍徳川家康により『碁将棋所』から『将棋所』が独立し、その初代将棋所に任ぜられ、『将棋名人』と認定された
一世名人・大橋宗桂を記念し創設された女流棋戦であり、現在は供御飯万智さんが4連覇を記録し、今期防衛すると連続5期獲得でクイーン山城桜花の資格を獲得する事となる。
そして今期挑戦者は、その供御飯さんの親友にして最大のライバルでもある月夜見坂燎女流玉将である。
第1局は慣例及び宣伝効果狙いでの東京開催で、防衛側の供御飯さんが先勝し、早くもリーチを掛けていた。
続く第2局と第3局は2日連続京都開催で場所は第2局は天龍寺で、最終戦の第3局は四条河原特設ステージとなっていた。
そして僕と天衣に冬司の3人は第2局当日、京都入りしていた。というのも、天衣がマイナビ本戦準決勝に進んでおり、準決勝は月夜見坂さんとの対局が決まっており、更に挑戦者決定戦に進むと今度は供御飯さんと当たる可能性が大きい事から敵情視察とタイトル戦の雰囲気を体感する予行演習を兼ねて連れて来たのだ。
その第2局は昼頃に到着した段階では供御飯さんやや優勢気味な状勢だったのだが、昼食休憩明けからの対局再開後は月夜見坂さんが一転躍動感溢れる指し回しで見事な逆転勝ちで1勝1敗のタイに持ち込み、明日の四条河原決戦で決着する事となった。
因みに山城桜花戦は他のタイトル戦と異なり、プロ・女流全てのタイトル戦では唯一感想戦の前に記者会見を行うスタイルとなっている。
ここで月夜見坂さんがヤバい発言で会場内が凍り付きかけた。
曰く、「昼休憩ん時にクズ連れ込んだら急に調子上がってよwww」って姿見てないけど八一君いるの?
一方の供御飯さんは淡々と「今日は良く無かったですが、明日までには立て直して見せます。」と言葉少なに話していた。
そして会場を出ると八一君とあいちゃんを発見、八一君はなんか顔面蒼白で一方のあいちゃんは悋気全開の不満顔と聞かなくともヤキ入れられたのは明白な状態だった。
八一君、僕に助け求める顔してたけど自業自得なんだから自分で解決しようね。
さて、僕らは予約していた旅館に入り、風呂・夕食・vsと第2局の感想をして、早目に床に就いた。
そして四条河原特設ステージでの第3局、現地大盤解説に八一君とあいちゃんが入り、月光会長が立会人として行われたが、佳境に入ったその時、一陣の風が駒を吹き飛ばし、即座の再開が出来ないハプニングが起こった。屋外ステージ故のハプニングであり、更に言えば立会人の月光会長が盲目である事から直ぐに駒を現状の位置に戻せず一瞬どうするのかと思ったが、ここで手番の月夜見坂さんが口頭で指し手を宣言、何とタイトル戦では前代未聞の目隠し将棋を仕掛けて来た。
これに対し供御飯さんも持ち時間が消費される中、目隠し将棋に応じ、ここからはお互い持ち時間が無くなる中での目隠し将棋となり、月光会長も追認した。
そして脳内のみで駒を動かす難解な戦いは、供御飯さんが硬い穴熊を自ら崩し攻めに使うという奇策で月夜見坂さんを受けなしに追い込んで勝ち、5連覇を果たしてクイーン山城桜花の資格を獲得した。
会場を後にし、八一君達と合流した帰り道、天衣に
「この2日の対局を見てどう感じた?」と聞くと、
「負けるとは思わないわ。でも、臨機応変だけは少しは参考にはなったわね。」との答えだった。
一方の冬司は「幾ら目隠しと言っても少し不恰好だし、研究が足りない。」といつもの辛口だった。
八一君は……隣のあいちゃんが何気に怖いのだが……
2人に何があったかは知る気もないし聞こうとも思わない……。
天衣のマイナビ準決勝は1週間後である。
マイナビ本戦準決勝
月夜見坂燎女流玉将vs夜叉神天衣奨励会1級
まず下座に天衣が座り、少し後に月夜見坂さんが上座に座り、対局開始。
月夜見坂さんは得意戦法の横歩取りから攻勢に入るも、天衣の「横歩取り?全くバカの一つ覚えね。所詮山猿じゃそんなものなのかしら?」との挑発にあっさり乗り、
「あ?ゼロにどんだけ可愛がられてるか知らねーけどよ、調子こき過ぎだクソチビが(怒)」
完全に怒りの針が振り切ってるよ…
けど天衣は落ち着いたもので、
「おばさんに瞬殺されて山城桜花にも目隠し将棋を返り討ちにされる程度の山猿に私が劣るとでも思うの?あんたなんか女流タイトルホルダー中最低ってのを今、私が証明してあげるわ。」
怒らせ方上手いな。僕じゃムリだ。
……そして次から次への挑発に完全に我を失った月夜見坂さんにもう勝機は訪れなかった。
結果、天衣が圧勝し、同日関西将棋会館での準決勝を制した供御飯さんとの決定戦に駒を進めた。