この人、マジで無人の野を行きかねない超人路線突っ走る予感しかしないんですが…
って事で竜王戦も豊島vs藤井になり、魔王も軍曹も水開けられたかなって雰囲気ムンムンな気がしますが一体全体どうなるのやら…
って訳で本編スタート!!
女王戦第1局
大阪・通天閣特設会場
女王・空銀子vs挑戦者・夜叉神天衣
午前9時開始だが逸る気が抑えられないのか、天衣は30分前に早くも入場し、盤前に座り、早速集中モードに入っていた。
その気持ちはハッキリ理解出来る。
何故なら亡き天佑さんの晩年(天佑さん本人は特段意識してなかったろうが)の口癖が「零君の弟子になって女王となった天衣を見るのがこれからの父さんの励みなんだ」だったらしく、天衣には骨の髄から刻み込まれているのだろう…
この日の天衣の衣装は黒紅の和服に真紅の袴と、集った報道陣から観戦記者から大多数が固まって見惚れた異例の風景と化していた。そりゃそうもなるだろうな、それでなくとも天衣の小学生とは思えない大人びた所作と雰囲気は周囲を圧倒して尚風格さえ感じさせるものなのだから…
一方の銀子ちゃんは開始10分前に女王の貫禄を全面に醸し出し、余裕を演出した風情で入場した。
振り駒の結果、先手は銀子ちゃんとなった。
因みに立会人は地元の名士でもある蔵王先生で記録係はあいちゃんと言うのは前話の通りである。
午前中はお互い防御を固め、様子を伺う様相に終始していた。
因みに今回の大盤解説は何故か僕で(本来なら同門関係で外される筈なのだが、いつの間にか組入れられていた。)、聞き手の女流棋士は供御飯さんが担当していた。
で、供御飯さん、早速「零はん、こなたはクイーン山城桜花を約束通り果たしたどす。今、零はんの答え伺いたいんどすが答えは?」
こんなの即答出来る?そんな意識していた訳じゃないし…
けど、考えて見れば山城桜花戦の前に冬司の現状報告に供御飯家を訪れた際、御両親から「万智の事も気に掛けておくれやす。」って言われてたような…
これじゃ八一君の心配してる場合じゃないな。ってか、僕は僕で既に供御飯家からロックオンの既成事実を固められて逃れよう無しってか…
ハッキリ言えば現世では結婚なんて予定外だったけど、自分なりのケジメ付けなきゃ納まらないのはもう認識せざるを得ない話だったので、
「今期名人戦を勝ち、十九世名人資格を勝ち取った時に改めて僕からお話させて頂きます。」
って答えるしか無かった。
閑話休題…
お互い大きな動きが無いまま昼食休憩に入った。
昼食メニューは…
女王・銀子ちゃん→「ビーフシチューうどん」
挑戦者・天衣→「松花堂弁当」
と、お互い好みの食事となった。
さて、天衣には予め和服対局での注意点を諄い程教え込んだのだが、ここからが重要になる。
対局再開。
どうやら天衣は僕の忠告をしっかり意識しているようで、和服の袖を盤面に触れない様に最大限の注意を払っており、予想外のトラブルには見舞われ無さそうだ。
そして銀子ちゃんから奪った「香」を活用し、後は順調に仕留めた。
そして女流相手ではないものの、女性・それも5歳下の小学生に完敗した銀子ちゃんのショックは尋常でない事は火を見るより明らかだった。
続く第2局もいい所無く天衣に一方的に叩きのめされ、三段リーグでも早くも黒星を喫していた。
竜王・九頭竜八一九段の弟子、雛鶴あい女流3級の新たな挑戦が始まった。
「女流名跡戦予選」
この戦いは4ブロックで争われ、その勝者4名が前期残留5名と前期番勝負敗者との合計10名で争われる挑戦者決定リーグ戦に進む事となっている。
あいちゃんは順調に勝ち進み、予選決勝に駒を進めた。これで女流1級に昇級、晴れて女流正棋士となった。
決勝の相手は岳滅鬼翼女流1級…
つい1年程前まで奨励会2級で戦っており、強敵であるのは間違い無い。
因みに彼女、僕とも多少の縁があり、小学生名人戦準決勝で当たり、僕が勝っていた。
そしてその翌年に女子初の小学生名人に輝き、「不滅の翼」なる異名を頂戴しており、あの供御飯さんや月夜見坂さん、鹿路庭さん達も尊敬している程の人である。
対局が始まった。
あいちゃんはいつも通り序盤は振るわない。一方の岳滅鬼さんは奨励会時代の異質な棋風をここでも使い、千日手狙いの混沌した盤面に持ち込んでいた。
実のところ、岳滅鬼さんがこんな棋風になってしまったのは入会直後に負けが込み、早くも折られてしまったからだ。
結局いつまでも通用する筈もなく、奨励会では2級で終わってしまったのだが。
そんなこんなで終盤に入ると、あいちゃんの驚異的な終盤力が如何なく発揮される事となった。
混沌の盤面がいつしかあいちゃん優勢に変わり、やがて勝勢へと進み、最後は快勝な内容であいちゃんがリーグ戦入りを見事に果たした。