同年代もまだ大きな活躍が出来てないし一体誰が天敵になるのやら…
って訳で本編スタート!!
6月下旬…名人戦第7局
神奈川県・鶴巻温泉の名門旅館で行われる。
ここは将棋に囲碁と数多のタイトル戦で幾多の名勝負に歴史的事件が展開された、或る意味聖地に近い場所でもある。
ここまでの結果は3勝3敗(○○●●○●)となっており、文字通りの最終決戦となっていた。
今回の立会人には柳原朔太郎九段が担当し、副立会人は田中太一郎八段が就いた。記録係は椚創多四段である。
検分を一通り終え、間もなく前夜祭というところで部屋で着替をしていたら、誰かが部屋に入る気配がしたので着流しの状態でドアを開けると供御飯さんだった。
「この間の返事、まだ貰ってないんどすが何時になるんどすか?」
「だ・か・ら・、全てはこの最終戦を終えてからって言った筈ですが…」
「そういえば最近の銀子ちゃんと竜王はん、雰囲気激熱どすけど零はん何か知ってはります?」
「んー、元々銀子ちゃん、八一君の事好きなんだけど、超鈍感な八一君も最近やっと銀子ちゃんの気持ちと自分の気持ちに気付いたんじゃないかな?」
「竜王はんの御実家に婚前旅行を決め込んだって情報もあるんどすが…零はん?」
「んー、その情報は何処から?」
「教える訳ないどす。知りたければこなたへの答えを聞いてからどすな」
「じゃあ、明後日まで忘れておきます。という事で」
「…名人の顔になった以上、これは此処までどすな。」
そして前夜祭も恙無く終え、いよいよ名人を勝ち切るか失うかの鉄火場に突入した。
初日…
『名人』はいつも通り落ち着いたもので淡々と、しかし最強のオーラを早くも醸し出していた。
少し遅れて入場した僕は、これもいつも通り平静な心持ちで臨める最高のコンディションを自覚していた。
振り駒の結果、先手は『名人』となった。
さて、どうしたものか…
第1手、『名人』はオーソドックスに指してきた。
対して僕は「後手番一手損角換わり」を仕掛けた。
しかし『名人』もこれは読んでいたようで、直ぐ様対応手を繰り出し、早くも激戦模様の感触となった。
そして昼食休憩…
僕→「旅館特製カレー」+オレンジジュース
『名人』→「旅館特製カレー」+アイスコーヒー
午後からの再開後も駒の動きが激しく、結局初日は両者とも持ち時間9時間中、消費時間は共に4時間に至っていなかった。
そして最終日、『名人』の封じ手が公開されると報道陣から大きなざわめきが起きた。
午前中はまだそれなりに駒が動いていたが、昼食休憩後からは一転、僕も『名人』も中長考で展開を考え、時間を使い始めた。
そんな中、夕食休憩となり、30分と短時間でどれだけ纒められるか食事と共に考える事となった。
僕→サンドイッチ+紅茶
『名人』→サンドイッチ+コーヒー
そして最後の休憩からの再開後、僕から動いた。ここで仕掛けなきゃ『名人』に呑まれる…完全に直感だった。
ここで『名人』もそれに応えるように再び激しい攻め合い捌き合い駒の取り合いと凄まじい戦いに突入した。
しかしそんな激戦もいつかは終わりが来る…
相手の僅かな瑕疵を突き、僕がその瑕疵を大きな傷跡とし、徐々に優勢→勝勢に持ち込んでいった。
やがて最後の攻撃も駒が尽き、後は僕の最短11手詰めというところで『名人』は徐ろに茶碗にお茶を注ぎ、一口啜ると「負けました」と一言告げ、これで僕が名人防衛・通算5期を記録し、『名人』に続く十九世名人資格を獲得した(現役の永世名人資格者には、十七世の月光会長、十八世は『名人』がいる)。
終局後の感想戦もまた検討に次ぐ検討となり、柳原先生が入って来て「これから打ち上げもあるし、あんまり旅館の皆さん困らせちゃいかんよ。」とのお言葉で残念、感想戦は検討半ばで強制終了となった。
そして打ち上げでの挨拶にて、
「こんな若輩者が永世名人資格を獲得なんて身に余る光栄です。
先頃、『名人』が国民栄誉賞を授与された際、未踏の戦いをしてみたいという内容のスピーチを行いましたが、僕もその誰もが踏み入れた事のない戦いを是非行いたいと思う次第です。具体的には、現在三段リーグで激戦の只中にいる空銀子さん、或いは僕の弟子で初段入品した夜叉神天衣さんには是非とも未踏の峠を突破し、僕の前に座って欲しい。そしてもう1つの未踏…日本国外出身の人物とも指してみたいです。これも現在、棋士編入試験を受験中の神宮寺アマが該当しますので(神宮寺は日本人ではあるが両親の拠点がNYでしかも帰化していたので国籍は米国である)彼が突破してプロ入りすれば彼とも是非指してみたいです。そして何れは日本人の血が無い国外出身の方が将棋に興味を示し、奨励会からプロを目指す事になれば僕個人のみならず、将棋界全体としても大きな進化に繋がると信じています。」
とスピーチすると、会場が地震じゃないか?って位の割れんばかりの大拍手が起きた。
が、これでは終わらなかった。
というのも、壇から降りようとした僕を司会の峰さんが呼び止め、
「桐山名人にはもう1つ目出度い話があるそうで、その事についてのスピーチをお願いします。」
って事で引き続き次のスピーチを行う事となってしまった。
これ、会長が嚙んでるとしか…
そしたら矢張りといえば矢張りだが、早速供御飯さんが壇上に上がり、僕からの決定的言葉を待ち侘びていた。
これ、公開処刑じゃないですか…
けど、僕も八一君達との関わりから10年来の縁であり、一時名人を失陥した時期には何かと世話にもなっていたし、これから一緒に歩むのは供御…万智さんなんだろう…
となると、ケジメはキッチリつけなきゃな。
「えー、…供御飯万智さん、単刀直入に申し上げます。今後僕と生涯共に歩きましょう。」
これだけ大勢の前じゃこれが限界…
けど万智さん、いつの間にやら泣いており、
「ずっと待っていました。こなたこそ生涯宜しゅう願います。」
名人防衛と事実上の婚約発表…こりゃ暫く喧騒が収まりそうもないな…
棋士編入試験第2局
大阪・関西将棋会館
椚創多四段vs神宮寺崇徳アマ
第1局は辛香四段に圧勝した神宮寺アマだが、僕に次ぐ史上2人目の小学生プロとなったAIに深く通じた天才少年相手にどれだけ戦えるのか非常に注目されていた。
この対局の立会人は異例な事に名人他現役タイトルホルダーである僕が何故か務める事になった。記録係はこれまた異例の現役女流タイトルホルダーで奨励会三段でもある銀子ちゃんとなった。
会長、本当に話題作りのネタ幾ら持っているんだか…
そして始まった対局、第1局では神宮寺アマが先手だったので今回は創多が先手を握った。
いつも通りAI流最善手指しで優勢を築こうとしている創多だが、一方の神宮寺アマはそんなもん知った事かって具合に奔放に指し出した。
中盤…創多にいつものキレが無い…って、奔放に指してただけの筈の神宮寺アマがいつの間にか形勢逆転で優位に立っていた。なんだよこの人…
けど、ふと神宮寺アマの表情を見ると、「殺意満々の荒ぶる獅子」の表現がしっくりくるような野性溢れる顔付きになっていた。
こんなにも野性と知性が融合された圧倒的オーラなんて幾ら創多でも未知なんだろう、あの冷静な自信家が顔中汗まみれとなり、必死に獅子のオーラに抵抗している。
けど神宮寺アマの優勢を覆すには至らず、結局88手で創多が無念の投了により神宮寺アマが連勝、残り3局で1勝すればフリークラス四段としてプロ入りする事となる。
桐山君の最終決戦のお相手は?
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西の魔王・九頭竜八一
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浪速の白雪姫・空銀子
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神戸のシンデレラ・夜叉神天衣
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神の子or悪魔の子・宗谷冬司
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風林火山・ニ海堂晴信
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盤上の探検者・土橋健司
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盤上の格闘家・隈倉健吾
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猖獗の大魔神・氷室将介
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新世代の申し子・椚創多
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ゴッドコルドレン・神鍋歩夢
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その他