桐山君は清滝家の長男坊?【本編完結済】   作:紫電海勝巳

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さてさて今月は叡王戦最終戦と王座戦しかタイトル戦が無く、なんとなく中休み的な月になりそうですが、何に注目すれば良いのやら迷いに迷ってる現状です…

って訳で本編スタート!!


第3章 究極への道
氷室将介十六世名人


7月初め、僕は万智さんと東京を訪ねてた。

実力制第四代名人の刈田升三先生が態々招待してくれたのだ。

とは言っても婚約記念とかじゃなく、とある人物に引き会わせる事に主眼が置かれている。

そもそもこの招待自体は名人戦第5局の時に刈田先生から話があり、僕も了承した経緯がある。で、何故万智さんが帯同したのかって言うと、あの壇上での公開プロポーズの後、刈田先生とその話をしていたら万智さん曰く、「こなたを除け者はあんまりどす(怒)」って事で一緒に上京の運びとなった訳である。

 

因みに現在の対局日程は、棋帝戦5番勝負の真っ最中で、今期挑戦者のニ海堂相手に1勝1敗となっている(●○)。それから帝位戦は八一君と生石さんに敗れ、残念ながらリーグ陥落となり、来期は予選からの出直しとなった。一方の竜王戦は1組優勝したので本戦トーナメントは準決勝シードとなっていた。

 

そして東京駅で待機していた刈田先生と合流すると、都内の比較的閑静な住宅街まで刈田先生のベンツで向かった。

 

そして、とある一軒家に到着すると刈田先生がブザーを押し、出て来たのは50代位の奥様的な女性だった。

「奥方、久しぶりだな。ところで氷室は在宅かね?」

「刈田先生、今日は先生に加え、珍しい客人が訪れると聞き、氷室も待ち侘びています。」

どうやら僕に引き会わせたい相手とは、氷室十六世名人だったようだ。そして出迎えた女性は氷室先生の奥様であった。

 

で、そのまま氷室先生のいる和室に案内され部屋に立ち入ると、氷室先生から

「刈田か?此処を死に場所にする覚悟は出来たようだな」

って早速物騒な発言が飛び出した。

しかし刈田先生も平然と

「貴様には悪いが儂はまだまだ死ねんわ。今日は貴様を燃え上がらせる爆弾を連れて来たまでだ。」

と軽妙に返し、僕の僻目ではあるがこの2人、無意識に意思疎通が出来ていると少々羨ましく思った。

そして刈田先生の言葉を聞いて氷室先生が初めて振り返り、僕と万智さんを見つめた。

「刈田、まさかその女じゃねぇよな?奥の眼鏡のガキが本命だろ?」

「そうだ。この男、小学生にしてプロ入りとタイトル獲得を達成し、今期貴様と月光、眼鏡のガキに続く現役4人目の永世名人を成し遂げた桐山零十九世名人だ。」

「お初にお目にかかります。刈田先生からご紹介頂いた桐山零です。氷室先生とお手合わせ出来る事、光栄に思います。」

「御託はいい。桐山って言ったな、刈田が絶賛するガキだ。それだけの宇宙を支配してるようだな。なら、てめぇの宇宙に飛び込んでやるさ。」

「お願いします。」

 

そして氷室先生との非公式対局(持ち時間各3時間)が開始した。

序盤は静かな立ち上がりだったが中盤、氷室先生の「猖獗」と称される異質にして命を削る読みと集中が発揮、たちまち僕が追い込まれる展開に持っていかれた。

しかし、氷室先生の力は特殊ではあるがその一方で最新型のAI将棋には対応し切れていないのも見て取れた。

そこが付け目とばかりに今度は僕が反撃に出て、両者1分将棋になってから漸く詰ませ、僕の勝ちとなった。

 

そして終局後、氷室先生曰く、「てめぇみたいな面白いガキが名人ってならもう1回復帰するか…」

って10年以上のブランクなんのそのみたいな挑戦状叩き付けられたんですが…

一方、万智さんは氷室先生の奥様が結婚前に観戦記者だった事から妙に意気投合し、色々質問責めしていた。

そして氷室邸を辞去すると、刈田先生行きつけの料亭で夕食を取り、そこで思わぬ事実を告げられた。

刈田先生曰く、「公になっておらんし氷室自身、そんな態度見せた事も無いが奴は儂の唯一の実子だ。」

これには僕も万智さんも一瞬固まってしまったが、僕が「何故此処で縁の薄い僕らに態々そんな重大な事実を話すのですか?」

刈田先生の答え曰く、「お前は近い将来、氷室と名人戦で命を削る死闘を繰り広げる光景が見えたのでな。」

万智さんも「こなたにその情報伝える以上、スキャンダルも覚悟の上という事どすな?」と問い質した。

刈田先生曰く、「その覚悟はとうに出来ておる。そもそも儂は奴の母親とは私的にではあるが将来を誓い合った関係だ。が、奴の祖父で儂に取っても恩師に当たる御仁が生木を切り裂き、望まぬ縁談を彼女に押し付け、一旦別れざるを得なかった。しかし、お互い思いを捨てられず人の道に外れ、儲けたのが氷室だ。」

これには僕も万智さんも言葉が出なかった…

普通なら刈田先生と氷室先生のお母様を非難するべきところではあるが、氷室先生の母方祖父の独り善がりな動きが原因だし、それのフォローも一切ないのだから同情とまでは言わずとも少しは情状酌量の余地は…とは思った。

因みにこの事実を知るのは他には氷室先生の奥様と佐伯九段及び月光会長程度らしい…

 

そして京都大阪方面最終の新幹線で大阪に戻ったのだが、結婚確定だからって万智さん、福島の僕の家に普通に泊まってしまったんですが…

翌日、冬司が万智さんと顔を合わせて罵声を浴びせたのはお約束というか何というか…




マイナビ女子オープン女王戦第5局

会場は京都・桂離宮で行われた。

これまでの経過は1・2戦は天衣が連勝したが、続く3・4戦は八一君のフォローもあり己を取り戻した銀子ちゃんが返し、最終決戦へと縺れ込んだ。

こうなるとアドバンテージもビハインドもまるで無しな生のガチンコでの殺し合いって図式しか浮かばない…

最終戦なので先手は改めて振り駒で決められたが、先手は銀子ちゃんだった。
その第1手はオーソドックスだったが、次の天衣の手は何と「後手番一手損角換わり」であった。

八一君のエース戦法を採用する辺り、銀子ちゃんへの挑発・当て付けを意識した一種の陽動作戦と思われる。
こうなると間違いなく冷静さを欠く銀子ちゃんは苦しい戦いを強いられる事になる。

しかし天衣も「女王」へのプレッシャーからか、時折らしくない緩手を咎められ、結局最終戦前に決着を着けられず縺れた焦りも垣間見える。

昼食休憩後も動きは激しく、一手一手が喉元に匕首を突き付けるまさに殺し合いのやり取りとなっていた。
そんな中、僅かに隙を見せたのは…天衣だった。幾ら相手の動揺を誘う為とは云え、付け焼刃の戦法では此処が限界だったようだ。
こうなるとそんな隙を見逃す銀子ちゃんじゃない。間髪入れずに咎め、一気に詰めに入った。
こうなった以上、天衣は万事休す…

結局、2連勝から後半3連敗で「女王」の栄冠を逃す事となった。
一方の銀子ちゃんは崖っぷちから覚醒したかのような見事な大逆転で竜王戦での八一君を彷彿させるような防衛劇となった。

桐山君の最終決戦のお相手は?

  • 西の魔王・九頭竜八一
  • 浪速の白雪姫・空銀子
  • 神戸のシンデレラ・夜叉神天衣
  • 神の子or悪魔の子・宗谷冬司
  • 風林火山・ニ海堂晴信
  • 盤上の探検者・土橋健司
  • 盤上の格闘家・隈倉健吾
  • 猖獗の大魔神・氷室将介
  • 新世代の申し子・椚創多
  • ゴッドコルドレン・神鍋歩夢
  • その他
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