…ってお話からして既にブッ飛んでる展開なんですが、更にヤバい話にも踏み込む流れで…
って訳で本編スタート!!
師匠の話が続く…
「それで於鬼頭君の元彼女の事やがあの女、銀子を産むや即座に放棄して暫く病院で面倒見とったんやけど、偶々双方不妊体質の夫婦がそこの院長と知り合いで話を聞くや即養子縁組を決めて空家に入った訳や。
で、銀子を内弟子に引き取る際に空の御両親から実父は不明・実母は連絡取れずで等の事情も伝えられたから実父が於鬼頭君である以外はこの時点で儂はほぼ知っとった」
ここで一旦言葉を切った師匠…
「私もある程度の事情は父から聞かされていたけど、於鬼頭先生との関係までは今初めて知ったわ…」
と桂香さん。
「僕も銀子ちゃんの病気・虚弱体質は予め聞かされていたけど、それ以外は初耳ですね…」
と僕…
「え?予め何も知らなかったの俺だけ?!」
と若干テンパり気味な八一君…
けど、その八一君が於鬼頭さんに、
「於鬼頭さん、一昨年の帝位戦後の子供の話ってそれだったんですか!ならもう少し踏み込んで欲しかったですよ!」
と、やや責めるかのように話していた。
どうやら別方面で何らかの話を聞かされていたようだ…
「か〜っ、とっつぁんに呼ばれたから何の話かと思ったら、中々にヘビーみてぇな話だな。けど、これでお終いじゃねぇんだろ?」
と神宮寺さん。
「銀子ちゃんがやたら強いんは清滝一門の影響力が大やと思っとったけど、血筋の影響も入っとったとは…これはこれで驚きやわ」
とは万智。
一方で直弟子最年少の健司君は、
「こんな重い話、僕ら子どもが聞いていいものなんですか?」
と師匠と於鬼頭さんに問うた。
「銀子の事だけなら桂香、零、八一だけで済ませた所やが、もう1つの問題…、銀子の実の母親の事や。これがまた中々に厄介なもんでな。於鬼頭君に来て貰ったのもその事があったからや」
と答えたのは師匠だった。
その銀子ちゃんの実の母親と言うのが…
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〜回想・by於鬼頭曜〜
私が奨励会に入ったのは中学1年、生石・山刀伐達の1年後だった…
山刀伐とは同い年で生石は1歳下だが、将棋界では奨励会入会時期での先輩後輩関係が優先されるので当時は同年代の彼らにも敬語で話さなくてはならなかった。
まぁそれは些細な事で、逆に私よりも年長の後輩も存在していたから特段気にする程でも無かった…
肝心の例会での成績はと言うと…
近年の桐山君・宗谷君のような化け物クラスは別だが、それでも人並みよりかは幾分早めのペースで昇級昇段を重ね、中学卒業目前で早くも三段に昇り、予想よりも早くに三段リーグに参加する事となった。
そしてその頃に世話になっていた風張先生…
師匠でもなく同門でもなかったのだが何故か気に入られ、時折研究会に誘われて参加させて貰っていた良き先輩だった。
現在は坂梨君、月夜見坂君達の師匠としての顔を持ちながらも未だに現役として奮闘している尊敬すべき人だ…
その風張先生の研究会に私と共に参加していたのがその人物…
三瀬法子女流二冠(女流玉将・女流帝位)だった。
初めて顔を合わせた印象は、情熱的…な感じを遥かに越えた執心・執着の塊としか映らなかった。
以降、時折開かれる研究会で顔を合わせては只ひたすらに指しまくる日々を過ごし、いつしか彼女に惹かれていった…
どうやら彼女も私に対し何処と無く興味を示したようで、そのうち2人だけでのvsを彼女の住んでたアパートで行ったり、流石にお泊りはしなかったが夕食を一緒に摂る等次第に関係が深まっていった…
そして三段リーグ2年目・3期目で15勝を挙げ、高校2年の半ばで堂々の1位でプロ入りを決めた。尚、プロ入り同期は生石で彼の成績は14勝…、結局直接対決での勝敗が順位を左右する結末となった。
そして、その頃から彼女の私への態度が急に余所余所しくなり、話しかけようとしても巧妙に逃げられる日々が暫く続いた。
そんなこんなで1年以上まともに会話の機会すら掴めなかったのだが、高校卒業式の日の午後に漸く彼女と話し合える機会が出来た…
彼女曰く、私が早くにプロ四段を決めた事でこれ迄の姉貴面先輩面が何もかも壊れるのを恐れた結果が素っ気なく相手にしない方向に走るという物だったようだ…
私が、
「別にそんなネガティブに思わなくても問題ありませんし、そもそも私が貴女にどれだけ助けられたか、救われたか、私には貴女への感謝の方が強いと言うのだけは認識して下さい」
とこれ迄の感謝を話すと、彼女は、
「そっか…、アンタみたいな優秀で将来性も高い男が女流トップで燻ってるアタシなんかにここ迄敬意をぶつけてくれるんだ…」
と、何処か感慨深そうに答えてくれた。
もう此処しかチャンスが無いと直感した私が、
「三…法子さん、私は風張研究会で初めて会った時から貴女に惹かれていました。年齢も実績も未だ途上ですが、貴女さえ異存が無ければ末永くお付き合い致したく存じます。」
と一気呵成に告白すると…
「ホントアタシみたいな偏狂的・偏執的将棋狂なんかでいいの?なんなら一寸変わり者でも釈迦堂の方がまだ取っ付き易いし、見掛けが映える女流なんかそこらにゾロゾロ…アンタなら女流じゃなくても選り取り見取りでしょ?それでもアタシに告るってアンタも大概ネジ飛んでるわね(微笑)」
と微笑しながら私の告白を受け入れてくれた。
只、彼女は釈迦堂里奈女流二冠(女流名跡・山城桜花)と並ぶ女流二強の一角を占めており、一方の私は順位戦で生石と共にC級2組を1期抜け(共に全勝)したばかりのソコソコの期待株の立場だったので公にする訳にもいかず、極秘交際する事となった。
そんな将棋もプライベートでも充実していたとある春の日…
何故かこれ迄交流の無かった釈迦堂さんから突如連絡が入った。
何かと思い電話に出ると、
「於鬼頭五段か。余は釈迦堂里奈、女流名跡及び山城桜花を預かっている者だ。然るに於鬼頭五段、足下は現在三瀬法子女流二冠と交際しているようだな。余にもその辺り是非とも御高説を伺いたい」
と、いきなり交際の事実を暴露され、私がたじろぐと、
「何、この事実、他には漏れてはおらん。故に気兼ねなく余の店を訪ねるが良い」
と事も無げに一方的に告げ、なし崩しに釈迦堂さんの店舗に赴く事となった。
「で、何故我々の交際を知る事となったのですか?」
と問うと、
「何、あの者の近頃の充実振り、只ならぬと思ってな。昔から尖っておって男の影すら無いのがここ最近の変わり様…、探ると君が風張九段の研究会に顔を出し始めた頃からそんな傾向が見え出したように思えるのだ…、よってその変化は君による物と断じた次第だ」
成程…、所謂オンナの感か…
「そこ迄見抜いておられるのならば、私がどう抗弁しようが無意味ですね…。仰せの通り、我々は確かに交際しております。が、何らかの目論見無しで呼び出した訳では有りませんよね…」
と返すと、
「ふ…、流石だな。その事実を黙認する代わりに君と三瀬が余のブランド・シュネーヴィットヒェンのモデルとして活動して貰いたいのだ」
…本気か?
将棋以外世間に誇れる物の無い我々にモデルが務まるとでも?
そんな不安を一蹴したのは他ならぬ釈迦堂さんだった。
「何、専門に行えと言う訳では無い。PRが必要な時だけ臨時で務めれば良い」
との話で結局、三瀬さんと話し合った上で已む無く引き受ける運びとなった…
その後はモデルの件は別れる直前迄ゲスト的に参加していたが、別れた後は自然消滅的に参加しなくなった…
閑話休題…
以後、釈迦堂さん以外からは未だ漏れない中、極秘交際は水面下で継続していたのだが、暫くして私が公共放送杯で優勝し、世間的知名度が上がると、その頃から再び彼女が私を遠ざけるようになった…
それでも彼女が居てこそと思い、必死に対局を勝ち抜き、彼女と一緒に過ごそうと思ったのだが成績が上がるにつれ、却って関係が希薄になってゆく有様だった…
そんな中、対局から戻った私を突如彼女が訪れて来た。
部屋に入るなり、
「私、女流辞める事にしたから。あ、釈迦堂は知らないわ。話すのはアンタが初めて。で、何で辞めるか?って?そんなものアンタ達男にまるで歯が立たないんじゃ如何に私でも折れるわよ…」
と早口で捲し立てた。
「否、総体的には負け越しているけどプロ相手に勝利ばかりか、複数回勝っているのも貴女だけでしょう」
と私が返すと、
「そんじょそこらの新人とか枯れた老体ならそれなりに自信はあるけど、AB級とか本戦で戦うレベルじゃ格が違い過ぎなの!あんな宇宙人レベルをこれ以上どうしろと?」
と間髪入れずに返し返され、これには私も更に返す事が出来なかった…
「で、将棋辞める以上、もうアンタとも付き合えない。でも今夜だけ、最後にアタシの身体にアンタの全てを刻み、叩き付けて頂戴!」
とまた何とも一方的に私に突き付けてくれたもので…
…結局その夜は我々の最後の濃密な刻となった…
その後の彼女については私もつい先頃迄はまるで知らなかったのだが、その間一度だけ顔を合わせていた…
申し訳ない…
回想で長引き過ぎたんで、更に延長…
桐山君の最終決戦のお相手は?
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西の魔王・九頭竜八一
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浪速の白雪姫・空銀子
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神戸のシンデレラ・夜叉神天衣
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神の子or悪魔の子・宗谷冬司
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風林火山・ニ海堂晴信
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盤上の探検者・土橋健司
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盤上の格闘家・隈倉健吾
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猖獗の大魔神・氷室将介
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新世代の申し子・椚創多
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ゴッドコルドレン・神鍋歩夢
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その他