桐山君は清滝家の長男坊?【本編完結済】   作:紫電海勝巳

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東西対抗戦、西が鎧袖一触の圧勝…今の棋界は西高東低?
まぁ魔王が居なけりゃこんなもんですか…

これは王将戦も強奪間近か…

って訳で本編スタート!!


銀子の意外なルーツ(後編)

〜回想・於鬼頭曜(続)〜

 

一方的に別れを告げられてから思わぬ再会を果たす迄費やす事13年…

 

 

その再会も尋常な状況下に非ず…

 

 

 

 

 

その後の13年で私はタイトルにこそ手は届いて無かったが、地道にクラスを上げ、順位戦A級・竜王戦1組に到達していた。

然し、そんな私の前途を阻み且つこれ迄の道程を全否定する無機質な悪魔が目の前に現れた…

 

それこそがAI=人工知能だった。

 

将棋に特化したAIとの対局は、兎に角最短で最善手の連続で、少しでも考慮に時間を取られると、たちまち詰みまで持っていかれる…まさに悪魔兵器としか言えない凄惨の極地だった…

 

 

 

将棋棋士でA級と云えば永きに渡り、「神」に近い存在と認識されていたのだが、私の惨敗により、地に堕ちる結果を導いてしまった事で業界内外の多数から責めに責められ、過激な守旧派の三流棋士でしかないとある老体からは「除名」すら主張される有様だった…

 

そして、そんな絶望の日々に嫌気が差し、ある日、私は「こんな命など不要」とばかりに当時住んでいたマンションからダイブを決行…

 

然し周辺が木に囲まれた環境であった為、そのうちの大木の枝葉に引っ掛かり、どうにか一命は取り留めた。

 

が、この事で直後の対局相手だった清滝さんに長年に渡りダメージを与え続けたのは申し訳無かったとしか言えない…

 

 

 

彼女と再会したのは、その影響による入院中の事だった…

 

 

 

彼女は顔を合わすなり、

「機械に負けて死に損なった?馬鹿過ぎて罵る気も失せたわwww」

と、相も変わらずネジを何本か締め忘れた口調で飄々とツッコまれた…

「まぁ私もアンタを笑っちゃいられないけどね」

と続けると、その後の消息の一部だけ聞かせてくれた。

 

 

結論…

 

三瀬法子は、私との子供を別れた後に産み、然し、引退後から今に至るまで生活がままならなかったので、身分を隠し、夜の仕事を中心に仕事を行って、どうにか生活出来る状態だった。

その為か、産まれて間も無い赤ん坊を病院に置き去りにして1人再び消息不明となっていた…

その後は…、一時は東アジアに事業を拡げた実業家の愛人に納まったりもしたが、リーマンショックの煽りでその実業家が失脚・自裁に至ると、又も流浪の日々に明け暮れた…

 

だが、ひょんな事から産み捨てた娘が難病を抱えながらも将棋界の強豪の1人に事実上養育されているのを知った…

 

が、彼女はその強豪棋士即ち清滝鋼介九段に娘の全てを委ね、自ら真実を明かす事は無かった…

 

そして、私が自裁未遂で入院中、彼女も同じ病院で重度の肝硬変の治療の為、入院していた。

 

 

結局、私も彼女も死に損ないと死にかけの人生の落伍者でしかなかったのがなんとも…

 

 

以後の私は何としてもコンピューターの思考回路に人間を捨てて近付かんとし、所謂「コンピューター棋士」と云う新たな二つ名を頂戴する話となり、密かに釈迦堂さんを通じて娘・銀子の行く末も見守る事となった…

 

勿論、釈迦堂さんからは、

「お主は表立ってはならん。飽くまで影で見守り、必要な場合のみ、余か、鋼介さんに相談するスタンスを貫け」

と、必要最低限且つ銀子本人には知られない姿勢を通す役回りに徹するよう厳命された。

故に、清滝さんにはこの前後辺りで私が銀子の実父である事が知られてしまった訳だ…

 

 

そして銀子の意中の人が九頭竜君である事は、他ならぬ釈迦堂さんが嬉々として伝えてくれた。

故に帝位戦の後、九頭竜君と2人だけで話す機会を態々設けたのだ。

が、肝心要の九頭竜君が矢鱈鈍過ぎたせいで今回、清滝一門関係者多数を集めて改めて説明しなくてはならなかった訳だ…  

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

「於鬼頭さんの過去と今現在に至るまではそれでいいとは思いますが、その元彼女さんの危険性と懸念についてはまだ説明が不十分と思います。更なる話がまだあるのではないのですか?」

と、僕が問うと、

 

「その事だ。彼女は女流を引退し、元女流の身分だったのだが、連盟自体を退会した為、連盟から掣肘を受けない存在となっている。例えばプロだと、引退して仮に連盟から離れてもプロ棋士の経歴は残る為、アマチュア大会で復帰参加は不可能だ。が、女流は元来プロから軽んじられている身分である為、引退・退会後の規定が明文化されておらず、退会女流がアマチュア復帰するのを阻止出来る方法が無い…。故に先頃、アマチュア復帰を水面下で認定され、アマチュア支部名人を獲得し、毎朝アマ名人戦を勝ち抜き、毎朝アマ名人を獲得した三瀬法子のプロ棋戦挑戦となるアマチュアの出場が認められる竜王戦、毎朝杯将棋オープン戦は確定、更にアマチュア出場可能な女流棋戦の女王戦(マイナビ女子オープン)、女流玉座戦、清華戦、今期からアマチュアにも開放された女流玉将戦も彼女の参加を阻止出来ない…。依って、彼女の魔性の暴走を止めるか餌食になるか、その最前線にいるのが君達少年少女である以上、君達に将棋界の未来が委ねられている事を承知して貰いたくて今回の会合を清滝さんと話し合ったのだ。」

 

 

十人十色…

 

万智、桂香さん、あいちゃん、リーナは女流戦で激突する可能性が高いから警戒心露わとなり…、

 

天衣も前期毎朝杯では1次予選敗退だったので、次の1次予選でいきなり当たる可能性がある事から、知らず知らずのうちに顔がやや固まっていた…

 

一方で、まだ奨励会員の健司君はまだしも、毎朝杯前期優勝者の神宮寺さんと、前期竜王挑戦者の冬司は平然としたもので、

 

「於鬼頭のダンナ、そのオンナ、誰に勝ったんだ?」

と神宮寺さんが言い放てば冬司は、

 

「どうせ未熟者か負け老人でしょ」

と火に油を注ぐ爆弾発言…

 

 

 

 

 

そして一言抗議しただけで後は沈黙一方だった八一君が、

 

「ここまで来れば何も銀子ちゃんに隠す必要も無いと思いますが…」

と暗に於鬼頭さんに覚悟を突き付けたのだが、

 

於鬼頭さん曰く、

「名乗る時は盤上でだ」

と答えると、八一君沈黙…

 

 

結局、現時点では銀子ちゃんには一切内密にする事だけが決定・確認される事となった。

 

 

 

尚、三瀬さんに敗れたプロ棋士とは…都合4人で不名誉な第1号は何と山刀伐さんで、その後の餌食となったのは関西初の犠牲者として蔵王先生、更には松永さんに関崎さん、特に松永さんは3戦3敗と、いいカモにされる始末で…成程、これは於鬼頭さんからの警告も肯ける…

 

 




大阪・福島に突如建った高層高級マンション…

そこに住まうトップ&ホープ将棋棋士…

一方は竜王4連覇、タイトル通算5期にして順位戦でも「鬼の棲家」と称されるB級1組に在籍している九頭竜八一竜王。

更なる一方は…

アメリカ国籍の日本人で、幼児から将棋に目覚めた結果…、飛び級に次ぐ飛び級の結果、18歳でハーバード大学卒業、その年に来日し、アマチュア棋士として己の将棋人生のデビューを果たした。
主だったアマチュアタイトルの大半を独占、然し、相手に飽き足らなかったからか、次第にプロ棋戦に軸足を移すようになる。
そこでアマチュア竜王、アマチュア玉将、毎朝アマ名人等アマチュア至高のタイトルホルダーとして各棋戦に参加、そこでも目覚ましい記録の数々を披露し、トッププロからも畏怖の目で見られるようになった。

そして親同士が極めて親しかった縁で、昔からの知り合いだったニ海堂晴信八段(現・棋帝)に師匠となって貰い、プロ編入試験では3勝合格の規定を無視し、最後まで戦うと主張。結果、相手棋士の承諾、連盟の追認により、最終戦まで戦うことになった。
結局、3連勝から更に上乗せし、最終的に5連勝で堂々たるプロ入りとなった。

その男は…神宮寺崇徳六段である。





そして現在…、

新築高層マンションの44階に神宮寺家と九頭竜家が居住している。神宮寺家は神宮寺さん・桂香さん・将馬君、九頭竜家は八一君と銀子ちゃんで暮らしている。

日常は凄まじいようだ…

神宮寺家の場合…

神宮寺さん、釣りと酒が生き甲斐みたいな人だから、桂香さんの「酒禁止令」には最大限抵抗したようだ…
が、本気で厳禁にしたら周囲への被害が増幅するだけなのでそこは桂香さんも心得ており、「節酒」で妥協したようだ。


八一君は…

晴れて銀子ちゃんと同棲し、相も変わらず銀子ちゃんからムチャ振りされつつも、何だかんだとそんな状況を楽しんでいるようだ。

今だけかも知れないけど、この一刻を大事にして欲しい…

桐山君の最終決戦のお相手は?

  • 西の魔王・九頭竜八一
  • 浪速の白雪姫・空銀子
  • 神戸のシンデレラ・夜叉神天衣
  • 神の子or悪魔の子・宗谷冬司
  • 風林火山・ニ海堂晴信
  • 盤上の探検者・土橋健司
  • 盤上の格闘家・隈倉健吾
  • 猖獗の大魔神・氷室将介
  • 新世代の申し子・椚創多
  • ゴッドコルドレン・神鍋歩夢
  • その他

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