一方でこの物語も徐々にクライマックスに向け進行したい処ですが中々展開に迷い、筆が鈍りがちで…
って訳で本編スタート!!
10日目午前9時30分過ぎ…
遂に動きが出た!
一度下げた龍王を再び上げ、僕の玉の喉元に突き付けてきたのだ。
そして今度は僕の長考が始まった…
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〜side後藤正宗〜
氷室のオッサンめ、此処へ来て再び龍王を上げたとは…、一気に桐山の喉笛掻き切りに動いたな…。
検討室のモニターじゃ最早物足りないと思って会長控室に行こうと腰を浮かせた処、雷が全力で腰にしがみ付き、顔を蒼白にして懇願して来た。
「正宗ぇ…、アンタ今会長の処行ったら間違い無く壊されるよぉ…」
と、何時もの雷らしくなく眼の光が薄れ、何処か覚束無く頼りない風情だったものだから俺も怪訝に思い、何があったか聞いてみた。
雷の答えは、
「会長の処、ついさっきから会長とか佐伯のジジィの知り合いみたいな薄気味悪いジジィがひたすら今回の棋譜を検討してそれをなぞって駒を動かして不気味な笑い繰り返してるんだよぉ…。そんな処に正宗行かせたら間違い無くあの不気味なジジィに壊されてしまうじゃん…」
だった…。
けど今回の俺は特別立会補佐の立場にいる以上、最後まで見届けなくてはならず雷の心配は理解出来なくもないがそれ以上に、寧ろその不気味な初老の男に興味を持ち、心がざわめくのが抑えられない自分が自覚出来たのは棋士の性としか言えなかった。
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〜side月光聖市〜
いよいよ決着へ大きく動き出したようだ…
氷室十六世名人…氷室君の命の炎が今、当に最後にして最大に燃え盛っているのが視力を失って久しい私でも即座に感じ取れ、理解出来る程だ…
ん…?
昨日迄の棋譜を読み漁っていた筈の滝川元名人の気配が何時の間にか消えているが…控室から抜け出したか…
…抜かった…!あれだけの棋譜を見て平静でいられる筈も無い…このままでは対局室に闖入して決着の場を乱しかねない!
今控室に居るのは私以外では秘書役の男鹿さんと、モニターを食い入るように見つめている刈田実力制第四代名人、次期会長内定の十八世名人に引退したばかりの佐伯永世竜王の4人…
となると、男鹿さん以外で最も若い佐伯さんに頼むか…
と思っていたら、立会陣で唯一部屋から離れていた後藤九段が丁度戻って来た。
これを幸いに後藤九段に対局室に闖入しようとしている滝川元名人を取り押さえるよう頼み、追い掛けて貰う事にした。
と思えば後藤九段が立ち去った途端、今度は刈田先生が絞るような声を出していた…
「氷室…将介…、貴様の最後の決着…、儂が御神三吉に成り替わりしかと見届ける…!」
と…
あの事実を知る私と佐伯永世竜王は特には動じなかったのだが、承知していない十八世名人と男鹿さんは何事かと目を丸くして刈田先生を見つめていた…
そして、男鹿さんが私に
「会長…、不肖男鹿は会長の全てを把握し理解した上で働いている事を自認しております。然し今回ばかりは…、刈田実力制第四代名人の態度を見ても何等動じない事だけは男鹿の理解の外です…それが何なのか差し支え無ければ是非とも御教え願います…」
と懇願し、口を開いていなかった十八世名人も私にその類稀なるオーラで同歩の意を示していた…
そして、刈田先生を無視した形で私から2人にその事実を話した…。
その説明の間、2人とも一切口を差し挟めない程に仰天の顔色になっているのを目に見えずとも感じ取れた…
そして説明が終わるや、十八世名人が
「刈田先生と氷室さんに是程悍ましい歴史が…。然し会長も佐伯さんも何時その事実を?」
と問うて来たので
「佐伯さんは滝川vs氷室の名人戦前のA級最終戦の際に刈田先生の独白で知り、私は…会長就任の際に刈田先生から呼び出され、万一の時のカードとして貴様に預けるとの言葉と共に告げられました。」
と返答した。
ともあれ、納得し切ったかは兎も角、符には落ちたようだ…
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〜side夜叉神天衣〜
一度検討室に戻っていたのだが何か妙な胸騒ぎがし、元JS研メンバーに頼み、対局室前に検討用の七寸盤を運んで貰った。
そして他のメンバーには検討室に戻って貰い、あいだけは昨日迄の棋譜を私と一緒になぞりながら先の展開を自分達なりに予想してみた…
そしたらさっきの初老の闖入者が対局室に向かい、押し入ろうとして来た!
その不穏な気配に私もあいも気付いたが、先に動いたのはあいで、
「おじさん、此処から先は誰も立ち入るのを許されない場所です。零おじさんと氷室先生の決着の場、邪魔させません。」
と敢然と闖入者に立ち向かっていた。
そしたらその闖入者を追い掛けて来たと思しき後藤九段もやって来て、その闖入者に
「おい、滝川の亡霊ジジィ!此処は過去の遺物に過ぎないアンタの立ち入る場所じゃねぇ!大人しく控室で棋譜を読んでろ!!」
と叫びながらとっ捕まえようと身体を乗り出したが、何故か滝川ジジィを捕まえられず、そのまま対局室に乗り込まれかけてしまった…
が、対局室に最も近い場所にいた私が滝川ジジィの和服の裾を掴み、転ばせた事でどうにか闖入という最悪の事態だけは一旦は回避出来た…
で、その滝川ジジィはと言えば…
「名人を超えた神たる私にその不遜な行為…、到底許し難き蛮行…、年端の行かない小娘と云えど容赦なく葬る以外無し…」
と、何とも厨二病なゴッドコルドレン(神鍋歩夢賢王)やロリコン気質満載なクズ竜王(九頭竜八一竜王)が常識人に思える程には狂いに狂った妄想狂としか私には見えなかった。
ホント、将棋以外じゃ常識の欠片さえも怪しい冬司でもこの初老ジジィに比べたらまだマシな部類ってのがどうにも…
そんな訳で持ち込んだ七寸盤を使い、私が滝川ジジィと昨日までの棋譜の最後から対局する事となった。
でもどういう訳か私が氷室十六世名人側で滝川ジジィが師匠側って何で?
これには私処かあいも後藤九段も私が師匠の弟子だから私が師匠側になるべきと主張したのだが、ジジィ曰く
「私が葬るのは氷室君…、ならば氷室君の敵は私以外無い…」
とか、私の立場を丸々無視した一方通行かまして私達の主張を押し退け、結局私が氷室十六世名人側に押し切られてしまった…
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氷室先生が上げて来た龍王…
勿論王手であり且つ、此処から駒補充分を含む都合37手連続王手の絶対絶命に等しい絶対的危急である。
当然即座に指せる訳もなく、又もや長考に沈むしか無かった…
穴は…起死回生の一手は…1時間2時間…、まだ答えが出せずに悶々と悩み続けていた…
が、そんな中、とある事実に気付いた…。
それは僕が徹頭徹尾氷室先生のペースに乗り続け、自分のペースに氷室先生を1度たりとも導けなかった事であった…
故にこの長考中、是迄神宮寺さんの休憩中にのみ行っていた軽食と排便を敢えて実行してみた。
排便は元々軽食給水共少なかったから大して出なかったが、食事は休憩スペースに終始控えていた鏡洲さんに頼み、定食メニューを運んで貰い、1時間掛けて食べ切った。
そして体力気力を十分に回復させた処で長考再開…
其処で唯一の逆転が見つかった……が、これは氷室先生に悟られるとたちまち封じられ、敗北一直線に導かれる獣道…!
そしてそんな綱渡り状態のまま対局再開…
予定通りに王手→回避を辿り、王手が切れた次の76手目の僕の一手が氷室先生必敗の妙手となった…
最短5手最長13手の決着手であり、最早僕が戦闘不能とならない限り、氷室先生の敗退が確定した…!
そして次の一手を指す事無く、氷室先生から
「桐山…、見事に切り返しやがったな!!此処まで追い込んで逆に喉笛喰い破られるとか…、勝者はてめぇだ!!こうまでやられりゃ完全に俺の負けだ!!全く、最後がてめぇで良か…ガフォっ…!!」
と、敗北宣言が為された次の瞬間、突如氷室先生が口から大量の血を吐き、盤と駒を真紅に染め、その場に倒れ伏した…
一瞬思考停止に陥りかけたが、直ぐに持ち直して氷室先生を寝かせた。
然し、記録を取っていた神宮寺さんが
「応急処置は俺がやる!!お前は救急車の手配頼む!!」
と矢継ぎ早に指示を出し、僕はそれに従い、会場近くの救急センターに連絡し、3分後には救急車が現場に到着していた。
そこに氷室先生を乗せた後、対局室前を改めて見ると、天衣が初老の男性と対峙しており、然し、その対局は既に終局に至っており、敗者たる男性はどうやら力…否、命そのものが尽きており、力無く座っているだけだった…
この男性について天衣に聞こうとしたら、立会っていた後藤さんが代わりに答えてくれた。
曰く、
「このジィさん、氷室のオッサンと浅からぬ因縁持ちな滝川幸次元名人だ。で、此処で夜叉神と対峙してたのは、ジィさんの押し入りを夜叉神が阻んだ結果だ。俺も会長指令でジィさんの確保に此処まで追い掛けたが、夜叉神との対局を始めちまったから見守る側に回ったって訳だ」
との事でどうやらこの対局、天衣に守って貰っていたらしく、師匠でありながら当分は頭が上がりそうにないか…
で、事切れている滝川元名人は…、後藤さんが運び、救急センターで後処置をして貰う事になった。
そして会長控室に足を運び、改めて今回の異例尽くしの名人戦開催の尽力の礼に伺うと、此処は此処で特別総合立会を務めた刈田先生が事切れており、急遽呼び出されたと思しき生石さんと山刀伐さんが2人掛かりで担架に乗せ、運び出す騒ぎとなっていた…
一体なんなんだ…?
幾ら異例尽くしの対局とは云え、死亡者2人に救急搬送1人とか、僕も当事者の1人ではあるのだが、将棋史最悪の黒歴史に数えられかねない大惨事模様じゃないか…
どれだけ譲っても氷室先生だけなら覚悟の上での事だから呑み込めるけど、刈田先生は…そもそも老齢だから無くも無いって事で此方も無理すれば呑み込め無くも無い…けど、天衣やあいちゃん曰く、闖入者の滝川元名人だけはどうにも擁護のしようが無いって言ってたよ…。後藤さんもあのジィさんだけは無理筋もいい所って吐き捨てていたし、会長も十八世名人もアレは守りようが無いって諦めてたし…
けど滝川元名人、何処から僕らの対局を知って闖入したんだろうか…これは会長や佐伯さんに聞いても明確な答えは出て来なかった。
実際、2人にしても滝川元名人の闖入は完全に想定外だったようだからな…
ともあれ、これで僕は名人9連覇を果たし、通算でも12期獲得を記録し、また新たなステージに立つ事となった。
そんな訳で桐山君、名人防衛しましたが流石に10日に渡る死闘激戦による心身双方のダメージは大きく、4月中に予定されていた対局は全て延期となり、帰宅後5日間は絶対休養・研究禁止を強制される始末と相成りましたとさ。
一方で救急搬送された氷室十六世名人はと云うと…、救急センター及び搬送先の病院が近隣だった事から迅速に手術が行われ、取り敢えずは一命を取り留め、入院生活決定。
そして文書を出し、正式に現役引退を発表。
前回の長期休場とは異なり、今度は引退届を受理されたとの事。
又、死亡した滝川幸次元名人の闖入はと云うと、滝川元名人が入居していた施設の担当者が元奨励会員であり、この対局を興味深く話していたのが基だったらしい…
にしても、その施設は淡路島にあり、フェリーから新幹線、列車バス等の交通機関を多用しなくてはならず、お金は兎も角、よくも迷わずに現地に来れたな…と言うのが桐山君の感想でした…。
桐山君の最終決戦のお相手は?
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西の魔王・九頭竜八一
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浪速の白雪姫・空銀子
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神戸のシンデレラ・夜叉神天衣
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神の子or悪魔の子・宗谷冬司
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風林火山・ニ海堂晴信
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盤上の探検者・土橋健司
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盤上の格闘家・隈倉健吾
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猖獗の大魔神・氷室将介
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新世代の申し子・椚創多
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ゴッドコルドレン・神鍋歩夢
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その他