桐山君は清滝家の長男坊?【本編完結済】   作:紫電海勝巳

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今回は前回と同じ9月9日ですが、八一君の視点で書いて行きたいと思います。


って訳で本編スタート!!


9月9日(八一君視点)

9月9日……

 

 

今年もこの日が訪れた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀子の誕生日にして命日……、そして俺と銀子との間の唯一の子である『銀香』の誕生日でもあり、今日、『銀香』は2歳となる……。

 

 

名前の由来は文字通り、銀子と桂香さんから1字ずつ取った銀子自身による命名だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5年前…、永世竜王資格を取得した打ち上げで簡易公開婚約発表し、翌年4月1日付で入籍…

 

その後は俺は竜王防衛とA級戦線に忙殺され、名人挑戦もしたが、名人戦は兄弟子の底力をまざまざと実感した完敗となり、以後は竜王戦以外タイトル戦への挑戦すら叶わないモヤモヤだらけの4年間だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で銀子は、竜王戦こそ俺に完敗でタイトル獲得には至らなかったが、その直後の盤王戦であの兄弟子から奇跡的な連敗後の3連勝で女性棋士初(ってか、女性初)のタイトル獲得を果たし、400年超に及ぶ将棋史に革命的な1ページを刻み付けた。

 

そして、その盤王の初防衛戦も因縁の祭神相手に悪戦苦闘しながらもどうにか防衛、まぁ女性同士初のタイトル戦番勝負だったものだから兎に角エラい騒ぎになったりして俺等現役タイトルホルダーが全戦解説に駆り出されたりしてコッチも一苦労だったのだが…(第1局は俺、第2局は兄弟子、第3局は神宮寺さん、第4局は冬司君、最終第5局はまた俺)

 

 

 

 

んで順位戦も本格始動した2年目から順調に勝ち上がり、1期抜けを続けて(1年目は休場したのでC級2組は2期抜けだったが)産休による休場になった頃にはB級1組に上がっていた。

 

 

そんな産休期間も最初は順調に経過していたのだが、臨月近くになると体調に異変が生じ、母体か赤子かを迫られる事態に……

 

 

 

 

 

だが俺にはその片一方を捨てる選択は出来なかった……

銀子も子供も両方いてこそしか考えられないからだった……

 

 

それで銀子の主治医である明石先生にも相談したのだが、難しい顔で先生も容易に答えが出なかったようで、

 

「これは僕が簡単に導き出していい話じゃないな…。君と銀子ちゃんで納得いくまで話し合うしか無いだろう…。」

 

と言われてしまった。

 

 

こうなると最終的には銀子との話し合いとなり、結果、一縷の望みに託し、両方生き残る方法を探る方向で決まった。

 

 

その後、薄氷ながらも臨月が来て、いよいよ出産…、通常よりも時間が掛かったが、どうにか小柄な女の子が誕生した……

 

 

そして3人だけの時間となり、命名をどうするか(男でも女でも今回は銀子が主導権を持っているが)となり、予め考えていたようで銀子曰く、

 

「私と桂香さんの名前を組み合わせて『銀香』にしようと思う」

 

となり、娘は銀香と命名された。

 

 

 

こうして出産そのものはどうにか無事に終われた………と思ったのだが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、銀子の体調が急変………、

 

ついさっき命名した時は少し疲れていたようだったが、それでもそんな異変は感じなかった訳で………

 

俺も万一に備え、当日は病院に詰めており、直ぐにナースコールして総出で診て貰ったのだが、既に手の施しようが無いと診断され、俺は只呆然と突っ立っているしか無かった……

 

 

 

そんな中、既に意識朦朧としていた筈の銀子がフラッと力無く左手を伸ばして来た……

これは間違い無く俺に手を握って欲しい合図だ……!

 

一時の呆然から忽ち覚めた俺は躊躇なく右手を差出し、その手を握った………!

 

その左手は今際の際とは思えない程に力強く、俺も思い残しが無いように力強く握り返していた。

 

 

 

そして日付の変わる9分前、銀子臨終……21歳の誕生日当日でのあまりに早い人生の終焉だった……

 

 

そして気が付けば俺と銀子の繋いだ手は看護師さんに離されており、部屋を出されて休憩スペースのベンチに呆然と座っていた。

 

 

少しして幾分正気を取り戻すと、空の御両親と俺の両親、更には師匠に桂香さん夫妻、兄弟子夫妻も顔を見せており、皆が皆、心配するような、又は困った様子で俺を見つめていた………

 

 

「皆さん、こんな遅くに申し訳ありません。つい先頃銀子は旅立って行きました………、俺は……っ、銀子を守れなかった…!約束を……一生添い遂げる約束を……っ……!」

 

 

懸命に平常心を保とうとして然し、溢れる後悔が噴出し、声が詰まるばかりでまともに挨拶すら出来なかった………

 

 

 

 

 

そして葬儀となり、俺は喪主でありながら碌に動く事も出来ず、殆ど師匠や桂香さん、兄弟子に頼りっ放しでどうにもなりはしなかった。

 

そんな呆けた俺に耳元で声を張り上げたのが……、

 

「ししょーっ!!何時まで呆けてるんですかっ!!ししょーがこんなでは間違い無くおばさんが化けてでますよっっ!!おばさんに心配かけたくないならシャンとして下さいっっ!!」

 

東京にいる筈のあいだった………

 

 

「って……、あい、お前今日学校じゃないのか?」

 

「対局と葬儀で休みを取ったので大丈夫です」

 

「…、全く出席日数大丈夫なのか?ここ暫く対局増えてるだろ?体力も学校もちゃんと考えろよ」

 

「今の腑抜けたししょーに言われたくはありません。おばさんがいなくなったからって言ってもししょーはししょーのおしごとが満載じゃないですか。竜王戦も近いのにこんなではゴッド先生(歩夢)にも失礼です」

 

「あぁ、そうだったな。次は歩夢だったか。確かにこれ以上呆けても居られないな…。あい、有難う。これで漸く目が覚めた」

 

 

と、あいとの会話である程度は戻せたようだ…

 

 

 

 

 

そして物故した銀子には連盟から九段を追贈された。

 

と言うのも、四段から竜王挑戦で七段、その後は盤王連覇でタイトル2期の昇段規定により八段に上がっていたからだ。

 

 

 

 

 

 

その後は1人で銀香を育てるつもりだったのだが、どうしても女手は欠かせないって言ってきたあいが突如大阪に戻り、学校をどうするかやら所属変更の手続きやらでてんやわんやしながらも結局学校は兄弟子の母校に転校、所属も再度関西に変更となり、再び俺のマンションで3人同居と相成った…。

 

 

で、これは雛鶴の御両親にも話を通さなくてはならず、『ひな鶴』での話し合いの結果、あいと婚約、で、あいの高校卒業を潮に結婚、俺が婿入りし、銀香も雛鶴家に籍を移す運びとなった。

又、あいの棋士としての時間も20歳までとなり、その後は棋士を引退、女将修業を再開の話も決まった。

 

 

 

 

 

 

以上の顚末を月光会長に報告したのだが、

 

「ふむ……、実家の事情とは云え残念ですね。ところで竜王は移住するのですか?」

 

と問われ、

 

「当分は大阪ですけど何れは石川に移って会館には通いになると思います。俺の現役については特には言われてないですから」

 

と答えると、

 

「それなら安心しました。竜王には名人共々将棋界を盛り立てて貰わねばなりませんから」

 

と返され、何とか纏まった。

 

 

 

 

そこからは上京し、於鬼頭さんの許を訪ねたのだが、そこには将棋界から完全引退した三瀬さんも同席していた。

 

因みに三瀬さんは数年前の復帰で女王戦番勝負まで駒を進め、天衣ちゃんに挑戦、フルセットの激戦を繰り広げた結果、天衣ちゃんに敗れ完全復活は為らずとなり、その後は竜王戦6組で優勝から本戦トーナメントも2勝、3回戦で1組5位の銀子と戦い、敗北を機に再び引退し、その後の消息は知らなかった……

 

で、於鬼頭さん曰く、引退後はまた入院してリハビリに取り組み、少し前に退院して同棲したとの事…

で、銀子の誕生日に入籍したばかりとか…

 

まぁ葬儀には於鬼頭さんは出席していたのだが、その話は聞いて無かったので俺も目が点になった…

 

 

で、諸々の顚末を話したのだが特にはどうこう言われる事も無く、淡々と会話するだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今日、銀子の3回忌…

 

 

 

俺、銀香、あい、更に師匠と釈迦堂さん、歩夢とその妹で弟子でもある馬莉愛ちゃん、於鬼頭さんに三瀬さんも顔を見せ、しめやかに法要が行われた。

 

で、法要の後の食事前にもう1人顔を見せたのだが……、

 

何と「十八世名人」現会長であった……

 

 

「あの〜会長、御多忙な筈なのでは?勿論時間を割いて駆け付けて頂いたのは有難いのですが」

 

「否、僕も午前だけ近くで予定をこなしてね。午後からはフリーだったのでそういえばと思って急遽駆け付けたんだ。邪魔じゃなければ少し参加したいんだが良いかな?」

 

「そういう事なら大丈夫です。是非お願い致します」

 

って訳で会長も参加し、そこから数時間食べ呑み、語り合った。

 

 

因みに会長、於鬼頭さん夫妻と銀子の関係は引退から暫くして月光先生から知らされたそうな…

どうやら会長引継ぎの一環として教えられたらしい……

 

けど、銀子の血縁は相変わらず公には知られてない訳で、俺達一部の関係者のみ知る秘事となっている。

 

 

 

 

そして、この行事を終えれば次は俺の10連覇か兄弟子の八冠完全制覇かのどっちも大記録の懸かった竜王戦が待ち構えている………!!

 

 




なんとなんと銀子ちゃん天へ旅立ってしまいました(涙)…

で、八一君、今度は事情が事情とは云え、あいちゃんと婚約……

なんか八一君らしいと言うか何と言うか……



ともあれ、次回からはクライマックスの竜王戦です。

後どれだけで完結出来るのやら……
なかなか遅筆もいいところだし……


って訳でまた次回!!
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