王位戦は隙なしがリベンジ挑戦、
棋聖戦はと云うと、軍曹先勝も天才覇王が五分に戻してまだまだ簡単には終わらせはしない図式に持ち込み……
何か今暫くは王者vs3強の図式が続きそうな……
って訳で本編スタート!!
ダイヤモンドエンペラー対局初日……、
午前5時30分……、
スイートルームの最高級ベッドでの眠りから目覚め、少し身体を馴染ませつつ、備え付けのシャワーで汗を流し、シャッキリした処で朝食が運ばれて来た。
本来なら船上の朝食は船内レストランでのバイキングで行うのだが、今回はタイトル戦と云う事で僕と八一君については室内に注文した食事が運ばれる特別措置が取られていた。
因みに他の乗船者については通常通り、レストランでのバイキングでの朝食となっている。
で、食事内容は……、
御飯櫃(3合分)、味噌汁鍋(5杯分)、鮭の塩焼き、鯖の塩焼き、卵焼き、きんぴらごぼう、切り干し大根、板わさ、香の物、コーヒーゼリーで、御飯は3杯(1合半程度)、味噌汁は3杯、他はほぼ完食して少し休憩を取ってから着替えに掛かり、開始1時間前には準備万端、後は入場するだけであった……
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〜side八一〜
午前5時……、
スイートルームのベッドで予想よりも早く目覚めた俺だが、戸惑いよりも一刻でも早く兄弟子ととことんまで殺り合いたい感情に駆られ、全てが整ったと感じていた。
やがて朝食が運ばれ、早速頂いた。これから2日間に及ぶ決闘へのエネルギー補給は万全にしなくちゃ到底兄弟子の領域に及ばずにして惨敗するだけだからな。
朝食の内容は……、
御飯櫃(3合分)、味噌汁(5杯分)、肉うどん、きんぴらごぼう、切り干し大根、冷奴、香の物、フルーツ盛合せであり、取り敢えずは完食しておいた。
後は着替えて対局に臨むまでだ……
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午前8時40分……、
先ずは挑戦者たる僕が入場し、下座に陣取り瞑想に入った。
5分後、満を持して竜王たる八一君が入場、上座に座り、早くも臨戦態勢モードに突入していた。
最愛の銀子ちゃんを失い早2年……、それでもその痛手を抱えながらも竜王9連覇を成し遂げ、10連覇か8冠完全制覇かの究極の番勝負に挑む八一君……、僕ももう2度とは無い最大のチャンスを逃す訳には行かない人生最大級の大勝負な訳で……、
「「お互い己と愛する人に恥じない戦いにっ……!!」」
早くも戦闘モード充満となり、その火花をひしひしと感ずる風情を纏いながらやや遅れて入場してきた山刀伐さんと坂梨さん……
尤も早朝から準備万端な記録係の健司君は平然と僕ら4人を次々と迎え入れ、寧ろこの大勝負を一刻も早く始めて欲しいオーラ満載だったのは流石だな……とは思った。矢張り土橋健司の本領・根本は転生しようが変わりようもないんだなと実感した次第だ。
そして役者が揃った処で八一君が駒を取り出し、そこから健司君が歩を5枚取り、早速振り駒を行った結果……、
先手は八一君となった。
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〜side夜叉神天衣〜
……、振り駒の結果が出て、どうやら先手はロリ王と決まったようね……
まぁ師匠はどんな戦型でも先後何れでも物ともしないオールマイティ・オールラウンダーだから開始時点での有利不利は特には考える必要性は無いわね。
……けど、ロリ王の先手獲得に期待の笑みを浮かべるあいに何だか苛つきを感じるのはなんで?
まさかロリ王が師匠の先を行く構想を構築してるとか?
……、ロリ王なんか所詮師匠には及ばない、冬司にも先んじられてる程度の分際なのに、この胸騒ぎは??
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〜side雛鶴あい〜
ししょ……八一さんが開幕局の先手を摑んだ……!!
おじさん…零先生が挑戦者に決まってから丸1ヶ月…、八一さんは先手でも後手に回ろうと取れるだけの研究・対策を練りに練り続け、後手では未だ形の構築が試行錯誤だったけど、先手なら既に10連覇への道筋が出来る程には完成度が高まっているだけに、この開幕局で先手を握ったのは大きなアドバンテージに他ならない……!!
私の……、銀香の……、そして私個人としては複雑な思いでもあるけど誰よりもおばさん・銀子さんに報いる為にもこの竜王戦、八一さんには零先生をぶちのめして貰いたい。
もし、此処でも零先生にコテンパンに伸されたなら例え心身瓦解しようが『だらぶち!!』連呼するまでだから!!
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第1局第一手……、
八一君が指したのは、角道を開けるオーソドックスな一手であった……
さて、第二手は僕の番だが…、果たして八一君は釣られるか否か……?
此処で繰り出した一手は……、
新鬼殺し……、それも米原誠雄永世十段・棋帝が編み出した基礎レベルなんてものじゃなく、自惚れ覚悟で言わせて貰えば、
『桐山式新鬼殺しマル改』
と命名する程には一介のハメ手戦法をタイトル戦仕様にまで昇華させた自信・矜持はある。
だが、この段階では通常の新鬼殺しと何ら変化は見られないので八一君はこっちの狙い通りに釣り針の隠れた一見豪華な餌に喰い付いた……!!
こうなると大魚たる八一君を散々に引き摺り回し、後は弱らせるだけ弱らせて疲労困憊に陥った処を仕留める……筈だったのだが、そうは簡単には行かず……
八一君、この新鬼殺しマル改にも僕の考えていた限りのあらゆる対策に沿って対応しており、僕の方が逆に攻め手が限定され、持ち時間を削られる予定外の悪循環……!!
その間の昼食休憩では……
八一君→クルーズオリジナルフレンチコースランチ
僕→クルーズオリジナルイタリアンコースランチ
を選び、午後からの難局に備え、十分に回復に努めた。
午後……、腹の探り合いが続き、お互いに持ち時間を消費しながら鈍重に指し続け、封じ手迄に進んだ手は……、僅かに24手に過ぎなかった……!!
そして午後6時30分前に山刀伐さんから封じ手に入ると指示が入り、手番の八一君がそれに応じ、別室で封じ手の記入を行った。
これで初日終了……!!
残り持ち時間は……、
八一君→4時間ジャスト
僕→3時間57分
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〜side八一・夕食、晩酌〜
ふぅ……、初日はどうにかありとあらゆる対策から範囲外に流れなくて済んだか……!!
あの無限の神・帝王たる兄弟子じゃ、どれだけ考え抜こうが悉く読み切られる事必至だけど、それにしても改良版新鬼殺しか……
これは明日も時間削らなきゃどうにも防ぎ切れるかだし、何よりも攻め手がな……
そんな事を考えつつ、運ばれて来た夕食を食べながらビールで晩酌していた。
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〜2日目〜
八一君の封じ手については夕食後から寝るまでの約5時間(就寝は午後11時過ぎ)色々検討していたけど、結論としては出たとこ勝負しかないかなって事に至ってしまったのは、矢張り如何に八一君の魔王たる程の実力実績が超絶レベルで図抜けているかがどんな角度からでも痛感してしまったのが決定的だったのは今更否定の仕様が無い。
そんな危機感全開の中で2日目開始……
初日の棋譜を辿り終えた処で九頭竜竜王の封じ手が開封………、
その一手は敬愛する兄弟子に対する手とは思えない程に挑戦的挑発的な黒い刺客(ライスシャワー)染みた思い切った手に他ならなかった。
……、その八一君の封じ手が開封された瞬間、僕は半ばは想定の範囲内ではあったけど、それでも世間的には予想外な超絶的絶妙手と映ったのは僕にも否定の仕様が無い程には素晴らしい一手だったのは間違い無い。
そんな絶妙な封じ手開封を喰らわされたせいで僕は午前中の中で結局一手も進められず、残り持ち時間中、更に3時間を削られるハメに陥った………
〜2日目昼食〜
九頭竜竜王→太平洋沿岸鮮魚御膳、黒潮寿司御膳
桐山名人→ステーキ3種(サーロイン、ヒレ、Tボーン)盛り合わせ、太平洋沿岸御造り御膳
その後は………、休み明けに僕が一手指すと今度は八一君が即刻長考に入り、おやつの時間まで全く動く気配すら見せなかった。
2日目おやつ→
九頭竜竜王→特製ぜんざい
桐山名人→フルーツ盛合せ
そこからは終局までノンストップの激戦が繰り広げられるのだが、少なくとも会長と立会人と解説・聞き手の面子だけは翌日の夕刻までは平然とこなせるだけの体力気力精神力が旺溢しており、精力的に任務をこなしていたようだ……
で、午後からの八一君の長考は3時間半にも及び、次の手を指したのは午後5時を過ぎてからだった。この日3手目……
前日と合わせても都合27手目と、兎に角時間を削っての長考合戦となってしまい、結局中盤をスッ飛ばして異例の短手数での終盤戦に突入する事となった……
この段階で残り持ち時間は……
八一君→30分
僕→57分
もうお互い余り時間が残っておらず、2時間程の短期決戦になる流れになっていた。
そこから更に長考し、残り時間を15分になるまで使いに使った僕の次なる一手は……、
桂馬を跳ね、不成で王手を掛ける手であった。
それを見た八一君はと云えば……、
玉を前進させ、王手を躱す事で一息ついたようだが、此処からがこの後他に正解の無い異常とも言える47手連続王手決着に結び付くとはこの時点ではまるで気付いては無かったようだ。
尤も一手でも誤りが起これば忽ち攻守逆転、一転八一君に勝利が転がり込む綱渡りでもあった……
そして此処から僕のノータイム指し王手ラッシュがスタート、八一君もそれに応じるかのようにノータイムで指し返し、1時間足らずで40手以上使い、僕の王手24手目となる74手目を指すと八一君、残り時間を使い考慮し始めた……
そして10分………、考慮を終えたかと思えば湯呑みに水を注ぎ、一息に飲み干すや、
「兄弟子……、これは俺に逃れる術は無いって事ですね。此処から46手後に完全に詰み……、この第1局、俺の負けです」
と、静かに投了を告げた。
そして感想戦に入り八一君、
「あ〜あ、今回は密かに自信あったんだけどな……」
とか負け惜しみなのか、してやられた思いからなのか、時々ウンウン唸りながら場面場面での変化と対策に見入っていた……
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〜side宗谷冬司〜
……ふ〜ん、ロリ王もなかなか研究練ってたようだけど零君の奇襲には対応しきれ無かったか……
まぁあんなの僕でもそうそうは仕掛けられない手ではあるけど……、それでも後手番で先勝したのはかなりのアドバンテージにはなるか……
後はロリ王がどう立て直すかだけど、逆境からの巻き返しにも定評あるからまだまだ行方は見えないか……
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ともあれ最初に後手番で取ったのは大きな意味を持つ。
けど八一君だからな、まだまだ予断を許さないのは明らかだ。
第1局、結局終盤の王手ラッシュで桐山君の先勝、この後は……
って訳でまた次回!!