急に評価と感想増えてびっくりしたけどランキング載ってたのか。ありがとうございます。
いろいろ意見あると思いますが主人公に関しては本当にその通りなんでもっと言ってやってください。作者が全力で同意しに行きます。
もしかしたら忙しくて今後三日に一話ペースとかになるかもしれないけど変わらずのんびり書いていくのでよろです。
「うっし、こんな感じかな」
そんな独り言と共に僕は目の前に広がるノートを閉じた。
現在時刻は夜の九時。特にこれといった趣味を持ち合わせていない僕にとってこの時間は暇を持て余しがちだ。
てな訳で、最近新たに日課を作ってみたのだ。
そう、日記である。
思ったんだよね。ゲーム内の主人公と同じようなことしてたらそりゃゲーム通りになっちゃうのでは? って。
つまり、僕はこれから少しずつ主人公と"僕"の差別化を図っていく必要がある。アウトドアな趣味はインドアに。行動理由は人の為じゃなく自分の為に。
ゲーム内の主人公がどんな趣味を持っていたかは事細かには知らないが、少なくとも日記なんぞは書いてなかったはずだ。
これは高校入学当日──つまり僕が記憶を手に入れた日から始めたもので、あれから一週間ちょっと過ぎた今、ようやく日記を書くという行為に慣れ始めていた。
とは言え自分の思考を文字にするって結構気持ち悪いんだよな。絶対に読み返したいとは思わない。
「ふぅ……」
ノートを引き出しにしまうと何となくため息が溢れる。
先日ショッピングモールでやらかした白石に対するガバ以降、僕はなんとなく本調子になれていない。
まぁ端的に言うと少し萎えていた。
(うわぁもう本当どうしよう……! あんなしょーもないやらかしのせいで今後に悪影響出たら死んでも死にきれないんだけど……!)
ゲームと違う行動すんのやめちくり〜!
しかしまぁ、そうは言っても起きてしまったことは仕方ない。
幸いあれから白石含むヒロイン達からの接触は一つもないしな。紬がめっちゃ見てくるくらい。
つまり僕が出来ることは今後万が一の時、どうやって事態を回避するかをシミュレーションすることだ。『Loving Days.』ってそういうゲームじゃないんだよなぁ。僕だけの楽しみ方ってやつだね。
それに、考え方によっては完全に無視できない状況もあるってことを知れたのは成長とも受け取れる。やれやれ全く、太陽のようにポジティブな男だぜ僕は。二度とガバすんなよ (自戒)
気合を入れるべく自分の頬をパチンと叩いた時、ドアが控えめにノックされた。
「兄さん、アイスあるけど食べる? ……って、どうしたの?」
「何でもない。ちょっと自分に喝を入れてたとこ」
「喝……?」
「心頭滅却すれば火もまた涼しってね」
「もう、また意味わからないこと言って」
それな。僕もわからん。
しかしそう言いながらも微笑んでくれる妹。かわいいね。
流れでアイスを食べることを伝えると、二人して二階からリビングへ向かった。テレビではお笑い番組が流れている。
冷凍庫から棒アイスを取り出してソファーに腰を下ろすと、遅れて莉緒もアイスを片手に隣に座った。
「面白い? これ」
「よくわかんない。私あんまりお笑いとか詳しくないから。なんとなく点けてるだけ」
「そか」
画面の中ではよくわからない芸人たちがしょーもない芸で笑いを取っていた。しょーもなさなら僕の方が数段は上ですな、なんてしょーもないことを思いながら、それをつまみにアイスを一口。優しい甘さが広がった。
ドラマとかでもそうだけど、こういうの見ると演技くさいって思っちゃうタイプなんだよな。ただ台本に従ってるだけの動きに発言。ウケ狙いの作られた会話。それがどこまでも嘘っぽい。
まるでこの世界みたいだぜ、ってな。厨二くさいね。
「あ、それ」
「うん。結構抱き心地よくて気に入っちゃった」
ふと莉緒の方を見ると、この前僕が買ってきたゆるかわなペンギンのぬいぐるみを抱き抱えていた。
昔、莉緒は好きな動物の中でペンギンを一番推していた時期があった。当時はまだ生きていた両親にねだって水族館に行ったり本を買ってもらったりしていたくらいだ。
しかし現実は非情である。ある日買ってもらった図鑑を読んでいた時、ペンギンの口の中をばっちり知ってしまい号泣。それ以降二度と
「私も行きたかったなぁ、ショッピングモール。どうだった?」
「とにかく広かったよ。僕一人じゃ全然回りきれなかったから今度一緒に行くか」
「行く!」
お、おん。そんなに行きたかったのか。けど仕方ないよね、この前は寝てたし。次行く時は時間帯をお昼過ぎとかにしようか。
そんな感じで軽く予定を立てていると、僕の頭にとある懸念が浮かび上がった。
(……またヒロインの誰かと会いそう)
この前だってあんな限定的な場所で遭遇したんだ。あり得ないとは言い切れない。てか普通にあり得そう。あり得んな(半ギレ)。
遠目に見かけたとかならわかる。すれ違ったとかもまぁわかる。けどアレはわからんだろ。
僕か? 癒されようとした僕が悪いのか?
あっ、思い出したらまた萎えそう。
「に、兄さん?」
「ん?」
「アイス溶けかけてるけど。大丈夫……?」
「あぁ本当だ。大丈夫大丈夫、ちょっとお笑いに夢中になってただけだから」
「今CMだけど」
「うわこのCM面白いな〜」
そう言いつつテレビを見るも、画面には面白さのカケラもない病気の予防とかそんな感じの宣伝が流れていた。不謹慎すぎる。
流石に適当すぎたか、なんて考えていると、莉緒が改まって僕の方を向いた。しかもなんか深呼吸して気持ちを落ち着けてるように見える。
な、なんだ……? あっ、いやごめん、流石に不謹慎だったよな。仮にも両親いないんだし人の死に関することで面白がっちゃダメだよね。うん、ダメダメ。本当に軽率だったと思います。そんな感じで大いに反省してるから──
「兄さん」
「ハイ」
莉緒が僕の目を真っ直ぐに見つめた。
「兄さんが私とか家のために頑張ってるのは知ってます。いろんな辛い思いとか悩みとかを抱えてるだろうなーっていうのも、その……全部はわからないけどほんの少しは知ってるつもりです。だけど、私たちは家族だし……あんまり一人で抱え込まないで欲しいっていうか、それで兄さんだけが負担を感じるのは嫌っていうか……」
「ハイ……は?」
ゴメン何言ってんの?
え、アレ? 今そういう話の雰囲気だった? 明らかに僕の失言に対してお叱りを受ける流れだったと思うんだけど。だって笑ったんだぜ? 僕。それでいいのか。
予想してた内容と違いすぎて半分も話が頭に入って来なかったが、莉緒の表情を見るにどうやら僕の身を案じているらしい。
ならば僕が返す言葉は決まっている。それ
「あ、あ〜全然大丈夫。むしろウェルカム? みたいな。ハハッ、アイスうま」
──話題のすり替えッ!!!
誰もが一度は使ったことがあるだろう奥義、話題転換。自分に心当たりのない話をされた時はこれに限る。
ごめんな莉緒、僕が唯一抱えてる悩みみたいなのはお前には絶対わからないんだ。むしろ莉緒は僕にどんな悩みがあると思ってんだ? 気になる。僕自身には心当たりが微塵もない。
「けど、まぁそうだな」
僕の悩みとも言える『Loving Days.』関連で一つ、莉緒に言えることがあるとするなら。
「いつも感謝してるよ。莉緒の前だけだ。僕がこんなに安心できるのは」
何となく、ずっと一緒にいるせいか莉緒のことはゲームのキャラとは思えないんだよな。単純にヒロインじゃないから僕の警戒心が緩みきってるってのもあるけど。
この世界はゲームの中だ。証拠だの根拠だのは置いておいて、僕の中にある記憶が
けど、この世界は僕にとって現実だ。毎日のように事件や事故の報道はされるし、偉い人は今も世界を動かしている。ただゲームで描かれていないだけ。真偽にはたったそれだけの違いしかない。
だから、別に誰がどうなろうが僕の知ったことじゃない。この世界が偽物だから、なんて理由すら本当はどうだっていいのかもしれない。どうせ"本当の世界"とやらでも自分が良ければそれでいい。多分、僕はそういうヤツだ。だって、綺麗な主人公なんかじゃないんだから。
よって僕は僕の生きたいように生きましょうね〜。
Q.E.D.っとまぁ、そんな感じだ。僕の冒険はここからですよ〜完。的なノリで締め括っとこう。
頭の中に一区切りつくと、僕は重ねて莉緒に告げた。
「てな訳でこれからもよろしく頼むよ」
「……へっ!? ぁ、うん!」
驚きながらも喜ぶ妹。器用だね(褒め言葉)
莉緒を攻略対象じゃなくただの妹キャラの枠に留めたのは『Loving Days』最大の汚点にして美点だったな。神ゲーか? 神ゲーだな。
本当、この世界じゃ貴重な存在だぜ。
灯台下暗し。真の癒しは家にあったのかもしれない。猫カフェ? 知らない子ですね。
そんなこんなで再びテレビを眺めながらアイスをペロペロ。おっ、当たりだ。ラッキー。
その後は特に何事もなく、のんびりした時間が流れていった。
……で、莉緒のは結局何の話だったんだろうね。妹のみぞ知る、ってやつか。
●○●○
「はい、今日は席替えをします!」
するな。
退屈な朝の
抜き打ちテストならぬ抜き打ち席替えと聞いてクラスは歓喜の渦に飲まれる。
対して僕はただただハテナマークを頭に浮かべていた。
──えっ、早くない? 席替えだぞ? まだ高校始まって二週間くらいしか経ってないんだぞ?
ゲームに比べて明らかに早い。倍くらい早い。ナニコレ。珍百景? 違うね(冷静)。
「名簿順にくじ引きに来てね〜」なんて声を掛けようものなら、すぐさま教室内は喧騒に包まれた。
「窓際の席お願いします窓際の席お願いします……ア゛ッ!」
「最前列は嫌だ……最前列は嫌だ……最前列!(絶望)」
「篠宮さんの隣……篠宮さんの隣……! まだわからん!」
頑張れ、まだチャンスあるぞ。お前は篠宮の隣を勝ち取ってくれ。他はご愁傷様でした。
くじを引いたヤツが次々に発狂を始める中、僕の番が近付いてくる。
(どこでもいいのでヒロインの隣以外どこでもいいのでヒロインの隣以外……!)
精神統一。恐ろしい集中力で雑念を振り払い、僕はいよいよくじを掴んだ。すぐさま中身を確認すると、黒板に貼ってある番号と照らし合わせる。
(取り敢えず窓際ッ! 結構いいぞ)
あとは隣に誰が来るかだけど……。
(いや、もうこの際誰でもいい! 来る者拒まず去る者追わずッ! 変に来るなって思うとそれもフラグになりかねん!)
けど願わくば僕の知らない人でありますように。それならまだ話しようもある。なんなら普通に仲良くなるのもアリだ。無視するのはあくまでヒロインとのフラグや関係性のみ。
「全員引き終わったみたいなので席の移動開始〜!」
「うぉぉぉぉおおおお!」
うるさっ。
男どもの雄叫びと共に席移動が始まった。
僕の席は今も次も窓際。多少後ろに下がればいいだけだ。
ささっと移動を済ませると、僕は座して時を待った。ちょっとだけ、本当にちょっとだけ心臓がばくばくしている。柄にもなく緊張していた。
オ、オーライ。バッチこい。来れるもんなら来い……!
しかし
え、何これ。辺りを見渡してみると星乃や白石、紬達の三人が近い席に座っていて、離れた位置から僕と同じように不思議そうな顔で何もない空間を見ていた。
(……ん? とりあえずヒロインの隣は回避できた……のか?)
想定外の席替えに加えて想定外の状況に頭がついていかない。ただ何となく、危惧していた事態は回避できたことは理解できた。
「終わったみたいですね。空席は──八束くんの隣ですか。わかりました」
そう言うと先生は一度教室を出て行き、新たに
まっ、待て、待ってくれ。前言撤回。やめろ、嫌な予感がする。本当に、ここ最近で一番嫌な感じが。
表情が引き
「はい、では続けて転校生の紹介です! 入ってくださーい!」
(ファ────────ッ!?)
ガラガラ、と音を立てて女子生徒が入ってくる。
そいつがゆっくり教卓の前まで進んでいく姿をクラスの誰もが息を呑んで見ていた。
「初めまして。
「佐久間さんは八束くんの隣──そこの空席に座ってね」
「はい」
「みなさん、いろいろ聞きたいことはあると思うけどあまり佐久間さんを困らせないように!」
クラス中が唐突な転校生(しかも美少女)の登場に沸き立つ。男どもはあからさまに喜んでいた。
そんな中、僕は歓喜とは真逆の顔──言うなれば能面のような表情で明後日の方向を見据えている。
(あっ、お外きれい……)
「キミが八束くんか。隣失礼するよ」
(ふふっ、小鳥さん……)
完全に飛んでますね。僕も小鳥も鈴も。みんな違ってみんないい。よくないのはこの状況、テメェだけだ。
「改めまして、ボクは佐久間はつめ。いろいろよろしく頼むよ──八束クン?」
「ハッ、それなッ」
この状況に対して思うこと。それは一つだけだった。
はー、意味わからんちん。キレそう。
誤字報告ニキたちありがとうございます。めちゃくちゃ助かってます。一話の誤字多すぎて笑った。