ヒロアカ短編集   作:残月

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生意気な後輩(マウントレディ)

 

 

 

俺の名は蟹田盾爪。ヒーロー名前『ガードキャンサー』こう見えてもそこそこベテランのヒーローだ。経歴?ふ……俺は高校卒業からヒーローを始めて10年になるベテランだ。成績は……虚しいもんだけどな。

 

俺の担当する地区では売り出し中のシンリンカムイが居る。俺が事件現場に駆け付けても大抵終わってしまっている。それどころか最近ではマウントレディのデビューも相まって俺の影は更に薄くなっている。元々派手な個性では無いから影が薄いのは当然か……

俺の個性は『蟹』自身の体を蟹の甲羅を発生させたり手を爪にする個性だ。守る事に特化した個性故に地味であまり目立たない。だからヒーロー人気も上がりにくい。ただ長くヒーローやってるってだけの存在になりつつある。事件を解決したり、事故から市民を守っても話題に上がらないヒーロー……か。俺も若い頃はヒーローに憧れてヒーローになったのに思い描いた未来とは違う状態になったもんだ。

 

 

「何をしょぼくれてるんですか、せ・ん・ぱ・い♪」

「……なんの用だ、マウントレディ」

 

 

パトロールをしていたら通常サイズのマウントレディに肩を叩かれる。美人だとは思うが俺は苦手だった。なんせコイツはデビューしたてにも関わらず人気が鰻登り状態で俺の存在が更に霞んでしまっている。個性も派手でウケも良い……いや、一番の理由は……

 

 

「あ、もしかせて私に人気を取られて更に影が薄くなったから?それともさっきの現場でシンリンカムイさんに手柄を先取りされたから?」

 

 

こうやって弄ったり、煽ってくるからだ。人はコイツを『小悪魔』とか言うけど俺は普通に悪女だと思う。ドロ○ジョ様的な感じの。マウントレディは何故かデビューしてからと言うもの俺に絡んでくる事が多い。そしてこうやって俺を弄る。なんで態々絡みに来るんだコイツ……

 

 

「ま、この美しく可憐にデビューした私の栄光に先輩の影の薄い感じが加速したのは否めないですよね」

「俺ももう……30手前のオッサンだからな……燻んで見えてくよな……」

 

 

マウントレディの煽りに俺は同意してしまう。ヒーローとしての活躍を後輩達に奪われ、人気もない。俺はなんでヒーローしていたのか疑問になる。こうも生き甲斐を感じないヒーロー生活に終止符を打つのも悪く無いかもしれん。

 

 

「……え、何をマジになってるんですか、せんぱ……」

「実際……ヒーローとしての活動にも疑問を感じていたからな。引退ってのも考えるべきか。今はヒーロー飽和状態だし、俺が引退しても誰も気付かんだろ」

 

 

いや、マジで引退も考えるべきかもな。ヒーロー歴が長いだけで取り柄の無いヒーローなんざ必要ないもんだ。そんな風に空を見上げたら……あ、ヤバい。

 

 

「そんな事ありませんよ、先輩は昔から……あ、ちょっと先輩!?」

「悪い、話は後だ!」

 

 

マウントレディが何かを叫んでいたが俺はそれどころじゃない。見上げた空から降ってきた物に俺は走り出した。その先には手を繋いで歩いている親子が。俺は個性を発動させ左腕を甲羅に変えていく。

 

 

「伏せろっ!」

「え、きゃあ!?」

「うわぁぁぁぁ!?」

 

 

俺の叫びに親子は咄嗟に伏せる。俺は親子に覆い被さりながら甲羅に変えた左腕で空から降ってきた植木鉢を弾く。植木鉢はガチャン!と音を立てて地面に落ちた。

 

 

「やれやれ、植木鉢が降って来るとは、とんだ悪天候だな。怪我は無いか?」

「え、あ……ありがとうございます」

「スゲェ!ヒーローだ!」

 

 

親子が歩いていた近くのマンションの上階から降ってきた植木鉢。恐らくベランダに置いてあったのが何らかの拍子に落下したのだろう。気づけて良かった。母親からは感謝され、男の子からはキラキラした瞳で見上げられていた。こんな視線も久しぶりに見た気がする。

 

 

「そうよ。このヒーローさんは貴方達の危機を察知して助けてくれたのよ。凄いでしょ」

「おい、マウントレディ。何を言って……」

 

 

追い付いたマウントレディが俺の両肩に手を添えながら親子に話しかける。なんで俺を持ち上げるんだコイツは。さっきまで『ざぁこ、ざぁこ』みたいに言ってたのに。

 

 

「なあ、おっちゃん!俺もヒーローになれるかな!?おっちゃんみたいに凄いヒーローに!」

「なれるさ……俺なんかよりも凄いヒーローにな」

 

 

男の子の『おっちゃん』呼びに心を痛めながら俺はヒーローらしく振る舞おうと決めた。俺は片膝を突き、男の子に視線を合わせながら頭を撫でる。

俺の答えに満足したのか男の子は嬉そうに喜び、母親も礼をしてから去っていく。俺は親子の姿が見えなくなるまで手を振り見送った。

 

 

「ほら、先輩……先輩を必要としている人達もいるでしょ?」

「さっきまで俺を馬鹿にしていた奴の発言とは思えんな」

 

 

マウントレディは俺を下から覗き込む様に見上げてくる。無自覚に迫るなよ。オジさん、ドキドキしちゃうから。

 

 

「先輩はさっき自分は大した事ないみたいな言い方してましたけど、見てる人は見てるものなんですよ。さっきの男の子も先輩を見てヒーロー目指そうとしてたじゃないですか。大丈夫ですって。あの男の子も人を守る立派なヒーローになりますよ」

「恐ろしくハードルの低いヒーローになりそうだがな」

 

 

マウントレディの言葉に俺はあの男の子の将来が若干心配になる。俺みたいなのが目標だと低すぎやしないか?

 

 

「私だって……もっと素直に先輩を称えたいのに先輩がそんなんじゃ煽るしかないじゃないですか」

「え……マウントレディ、今なんて……」

 

 

マウントレディがポツリと溢した一言を俺は聞き逃してしまった。今、なんか結構重要な事を言わなかったか?

 

 

「喧嘩だー!あっちの通りで個性使った喧嘩が始まったぞー!」

「あ、ほら。次は事件ですよ!急ぎましょう先輩!雑魚な先輩でも活躍の場があるかもしれませんよ!」

「お、おい……マウントレディ!?」

 

 

そう言って俺の手を引きながら現場に走り出すマウントレディ。本当に生意気な後輩だよ、コイツは。ま、でも……もう少しコイツに振り回せれてみるか。さっきの言葉も気になるしな。

 

 




『蟹田盾爪』

ヒーロー名前『ガードキャンサー』
個性『蟹』
デビューから10年目になるベテランのヒーロー。守る事に特化した個性の持ち主で地味な活動が多くヒーローランキングは常に下位。
日々、事故や事件を解決しているがシンリンカムイやマウントレディが目立つ為に目立っていない。
マウントレディからは煽られたり弄られたりしてメンタルも落ち込み気味。

次回のキャラは?

  • 発明に必要な事?(発目明)
  • 愚痴を聞く理由(ピクシーボブ)
  • 逃げる私、追う彼(爆豪勝己)
  • 手の掛かる幼馴染(轟焦凍)
  • 増やさないで(トゥワイス)
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