ヒロアカ短編集   作:残月

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発明に必要な事?(発目明)

 

 

 

 

 

「私とデートしてください!」

「え……?」

 

 

これが彼女……発目明との出会いだった。

 

 

俺の名は『薬液錬金』雄英高校普通科に通う一年だ。俺の個性は『薬錬金』俺は個性で薬や栄養剤を作り出す事が出来る。瓶に手を翳して個性を発動させれば風邪薬や栄養ドリンクを生み出す事が出来る。

勿論、手軽に出来る事では無く成分や分量を完全に理解しないと作れない上に薬事法の都合上、薬を他人に譲渡出来ないので俺自身が飲むか、栄養ドリンクがギリギリ他人に渡せる範囲だ。

そんなヒーローに向かない個性持ちの俺は身の丈を考えて普通科に通っていた。

 

目立たなく、静かな日々を送っていた俺はだったが……とある日の放課後。帰ろうと思ったら先程の様に声を掛けられたのだ。彼女には見覚えがあった。発目明、体育祭でサポート科で唯一、決勝リーグまで勝ち上がった凄い子……であると同時に雄英高校サポート科の爆発の六割くらいが彼女の研究の失敗での爆発なのだと言う。そんな彼女が俺に声を掛ける理由が分からない。しかも、デートのお誘いとは何事?

 

 

「えーっと……急なデートのお誘いに驚いてるんだけど、なんで俺?つうか初対面だよな?」

「おっと、そうでしたね!私はサポート科の発目明です。初めまして!」

 

 

俺が戸惑い気味に聞くと俺が一方的に発目の事は知っていたが向こうは俺を知らなかった様だ。ならばなんで俺をデートに誘ったのだろうか?

 

 

「実は工房で爆発事故を起こし過ぎた為にパワーローダー先生から一週間程、工房を出禁になりました!そこで工房に一週間も行けないとなると何をすれば良いかとパワーローダー先生とミッドナイト先生に相談した所……『少しは自分の研究以外の所にも目を向けてみろ。目から鱗的に新しい発見があるかも知れんぞ』

『ん〜、だったら学生らしく青春しなさい!誰かとデートをして胸をキュンキュンさせれば今まで見えなかった世界が見える筈よ!』との事でしたのでお願いします!」

「出禁になった件と誰かをデートに誘った理由は理解したけどなんで俺だったのかは分からないんだが……」

 

 

発目の説明にそう言えば昨日、やたらと大きな爆発音が鳴り響いたがそれが理由か。流石にパワーローダー先生も見過ごせない事態になったんだろうな。

 

 

「はい、最初は緑谷さんにお願いしようと思ったのですが麗日さんが居たので諦めました。他に知っている方もご身内の事でゴタゴタしているので止めとけとクラスメイトに止められまして。そこで私は考えました……一週間、色々な方とデートをして各種データを比較すれば良いデートの仕方の方程式が……っ!」

「わかった……いや、分からんが落ち着け。つまり適当に視界に捉えた俺に声を掛けたって事だな」

 

 

どうして開発とか理系に関わる人間はこう極端なのか。何処から遠くを見ながら熱く語る発目の肩を掴み落ち着かせる。まさか適当に選んだ相手だとは思わなかった。

 

 

「いえ、流石の私も適当には選びませんでしたよ?前に普通科を通りがかった際に他の人の手助けをしている貴方を見た事があったので良い人だと覚えていましたので」

「ああ……そんな事もあったかも」

 

 

そういや少し前に普通科で先生に頼まれて雑用をしていた友達の手伝いをしたっけ。見られていた上に覚えられているとは驚いた。

 

 

「そう言う訳で私とデートしてください!」

「色々とツッコミ所が多いが……ん?」

 

 

何処からツッコミを入れようか悩んでいると発目の表情に少し違和感を感じる。なんか、疲れている様な……

 

 

「ご予定があるなら断っても大丈夫です!他の方に声を掛けますから!」

「特に予定も無いから大丈夫だ。それでデートって言ってもどうするんだ?」

 

 

早々と見切りをつけようとした発目。なんか危なかしいので目を離さない方が良さそうだ。俺がどんなデートにするか発目に聞くと発目は作業着のポケットからメモ帳を取り出した。

 

 

「ご心配には及びません!ミッドナイト先生からオススメのデートプランの計画書を貰いましたから」

「ミッドナイト先生発案のデートプランの段階で嫌な予感がするが……どれどれ?」

 

 

発目からデートプランの計画書を見せてもらう。

『個人的な話をする』

『他人に興味を持つ』

『甘い物等で食べ歩き』

『手を繋いでブラブラ街歩き』

『仲良くなってからキス』

ミッドナイト先生は発目を幼稚園児か小学生と思っているのだろうか?

いや、でも……さっきから発目の距離感や考え方を見ると恋愛事には小学生レベルな気がしてきた。プランの最後の一つは兎も角として……

 

 

「えっと、じゃあ……甘い物でも食べに行くか?」

「はい!では、行きましょう!」

 

 

なんか、ほっとくと危ない方向に行きそうなんだよな発目って。工房を爆破事故で出禁を食らうぐらいなんだから危ないのは間違いないか。

そんな事を思いながら甘い物を食べる為に駅前に歩き出す。「効率的に学食に行きましょう」と言い出した発目を「食べ歩きと言われたんだろ」と外へ連れ出した。

駅前までの道中、やはり会話の流れは個性の話題となる。俺の個性を教えると発目はわかりやすく目を輝かせていた。

 

 

「薬錬金ですか……使いこなせば素晴らしい個性となりますね!私の開発したベイビーを使えば更に……」

 

 

『他人に興味を持つ』って事で話をしてるんだろうけどサポートアイテムの開発計画を延々と聞かされてる気分だ……少なくともデートって感じじゃないよな。なんて思ってる内に駅前の大判焼き屋に到着。普通ならアンコなんだろうけど俺はカスタードクリーム派だ。カスタードクリームを二つ頼んで一つを発目に渡す。

 

 

「それでですね、私のベイビー達は……」

「発目、食う時は食い物に集中しろ。お前の話も聞くけど俺が大判焼き屋を紹介して大判焼きを奢るんだから」

 

 

放っておけばいつまでもマシンガントークを続けそうな発目にストップを掛ける。発目はトークを遮られて少々不満そうだが大判焼きのカスタードクリームを口にした。その瞬間、発目はパァッと表情が明るくなり目を見開いた。

 

 

「美味しいです!大判焼きはアンコが当然と思っていましたがカスタードクリームも美味しいのですね!」

「それが当たり前と思ってると、その考えから抜け出せないもんだよ」

 

 

さっきまでのサポートアイテム論議よりも大判焼きカスタードクリームに感動している発目。こんな顔も出来るんだな。

 

 

「意外でした。私は食は栄養摂取の為の行動と思っていて興味が無かったので驚きです」

「どんだけ食事に興味無かったんだよ」

 

 

発目の発言に驚いた……って言うよりも若干引いた。どんだけサポートアイテム以外に興味が無いないんだよ。発目の姿を見ればデートだってのに作業着のツナギだし、目の下にはクマがある。思えば、さっきの発目の疲れた顔もサポートアイテムの開発で徹夜でもしてたんだろうな。だから頭が回らずに工房で爆発事故を引き起こしたと見るべきなんだろう。

 

 

「食とか他の物にも興味を持った方が良いんじゃないか?例えば……事故で味覚を失った人にサポートアイテムを作るなら食に興味が無いと作れない。服に興味が無いと良いデザインのサポートアイテムが作れないと思うけど」

 

 

俺がそう言うと発目の背後に雷が落ちた様なリアクションを見せた。いや、どんだけショックを受けてるんだよ。発目は震えた後に俺の手を取った。

 

 

「感動しました!私に足りない思考を貴方は持っているのですね!貴方をデート相手に選んで正解でした!」

「デート相手と言うよりも相談相手じゃないのか、それは」

 

 

発目の手はサポートアイテムの開発をしている者の割には細く柔かった。そしてブンブンと握った手を嬉しそうに振るう。まあ、発明脳のままなんだろうけど……少しはコリが解れたのかも知れないな。

この後、甘い物談義を多少した後に発目と別れて帰ろうとする前に俺は個性を発動して栄養ドリンクを生成して発目に投げ渡す。

 

 

「研究や発明に心血を注ぐのも結構だけど健康にも気を使えよ?今日、カスタードクリームの大判焼きに感動したみたいに他の事にも興味を持ってな。じゃあな」

 

 

そう言って俺は発目とのデートを終えた。最初は戸惑っていたけど……ま、楽しかったから良いか。発目の発言から明日は他の奴とデートすんのかな。それほちょっとモヤモヤすんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて、思っていたのだが……

 

 

「薬液さん、今日もデートしましょう!」

「……はい?」

「「「な、なにぃぃぃぃぃぃぃっ!?」」」

 

 

翌日の放課後。なんと発目が普通科の俺のクラスに来たのだ。しかも昨日とは服装が違い作業着のツナギではなく普通に制服を着て、髪も整えてある。ぶっちゃけ美少女なのだ。いや、元々可愛いんだけどさ。

変人として有名な発目が作業着のツナギではなく制服でしかも、俺をデートに誘いに来るなど異常事態にクラスは騒然となった。

 

 

「薬液、お前発目さんに何を盛った!?」

「なんで俺が発目からデートに誘われただけで一服盛ったと疑われなきゃならんのだ」

 

 

クラスの男子の一人が俺の胸ぐらを掴みながら詰め寄る。俺の個性で何か一服盛ったと疑われたみたいだが冤罪も良い所だっての。

 

 

「昨日、薬液さんとのデートは私の価値観を変えるものでした!何よりも楽しかったのでまた行きたいと思ったのです!そして私の身体の為に栄養ドリンクを作ってくれたのも嬉しかったです!薬液さんのドリンクに身体が喜んでいました!」

「いや、言い方!表現に気を付けて!」

 

 

発目の箇条書きの様な発言にクラスが騒つく。間違っちゃいないんだろうけど表現の仕方が!

 

 

「と言う訳でデートです!私の出禁の期間はまだあるので、その間はデートに集中しましょう!」

「それは出禁解除になったら終わりって事かよ」

 

 

期間限定のデート相手の発言に若干へこむ。そんな風に思ったら発目は小首を傾げた。

 

 

「いえ?出禁の期間はデートに集中しますが出禁が解除されてもデートはしたいです。薬液さんの思考は私がベイビーを開発するには必要な事なんです!個人的にもサポートアイテム開発にも私に足りない物を補ってくれるので!」

「え……発目、それって……」

 

 

発目が言った『個人的にも』と言う発言に俺はドライな関係では無く発目は俺の事を……と考えそうになった所で発目に腕を引かれながら教室を出た。

 

 

「さあ、行きましょう薬液さん。今日は他の甘味を教えてください!」

「やれやれ……取り敢えずは駅前に行こうか」

 

 

楽しそうにしている発目な姿からは『発明の為に』と言った感情は読み取れなかった。発目が純粋にデートを楽しもうとしている姿に俺も今はデートを楽しもう。

 

組まれた腕に掛かる胸の感触に全神経を集中しながら俺はそんな事を思っていた。

 

 

 





『薬液錬金』
普通科に通う一年生。格好良い容姿では無く普通と言われる顔。所謂モブ顔。
発目にデートに誘われた事をきっかけに彼女と交流を持つ様になる。

『個性・薬錬金』
体内で薬や栄養剤を作る事が出来る個性。薬事法の都合で自身の個性で生み出した薬は他人に譲渡する事が出来ない。栄養剤や栄養ドリンク等はギリギリセーフとされている。

次回のキャラは?

  • 逃げる私、追う彼(爆豪勝己)
  • 手のかかる幼馴染(轟焦凍)
  • 父のサイドキック(轟冬美)
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