呪術廻戦にP5のジョーカーぶち込んでみた 作:全てのイシを拾イシ者
力を求めるのを正義と云うのなら
正義を弱者に振り翳すのを善しとするのなら
力を求める事すら赦されない者は
果たして 生まれた時から悪なのか
34.
〈2018年7月17日〉
〈昼〉
先日の任務から一週間が経つ。梅雨の明けた暑い晴空の下、高専のグランドに二人一組の男女が、トレーニングウェア姿で屯っている。片方は我らが雨宮蓮、もう片方は頼れる姉御肌の禪院真希であった。
「うーし、来たな」
グランドと校舎を繋ぐ石段を降りる蓮を見て、真希はそう語りかけた。砂が運動用のシューズを貫通するほどに熱くなっているのが分かった。
真希の服装は、紫色を基調とした特に何の装飾もない長袖のジャージと、白のショートパンツ。そして太陽に艶かしく照らされる黒のレギンス。彼女は右手に木槍を、左手に竹刀を持っていた。
片や蓮はというと、もはや地味さを隠そうともしていない黒色統一の長袖のジャージ。ただ上着だけは脱いで脇に抱えており、その下から現れるやはり黒いシャツ。そこから覗く鎖骨に汗が伝ってシミを作り、なぜか目が離せない。伸びてきた髪から垣間見えるうなじから色気が止まらない。
「お前が雨宮蓮だな」
「そういう貴女は、禪院真希さん」
(……なんか調子狂うな)
そう言って真希は頭を掻いた。真希はこういうノリをやや苦手としていた。真希は世俗に疎かった。
「まー長ったらしい前座もいらねえな」
そう言うと真希は、蓮に向かって何かを投擲した。
「うわ」
それは一振りの、子供用の短い竹刀であった。使い古されてなお手入れの行き届いた、ささくれの見えぬ一尺の竹の刀。ちょうど、蓮の得意とする得物であった。
蝉の音が五月蝿い。汗が玉となり吹き出てくるのを、蓮は上着を捨てながら手で拭いながら──
「来な。一本取ってみろ」
「では、遠慮なく」
──蓮はジョーカーへと成り、その瞬間が稽古開始の合図となった。
先手を取ったのは真希であった。杖にしていた木槍を瞬時に右腰付近にて水平に構え、石突手前三寸を右手で支える、左前半身構えを取る。
剣道とは違い、槍術の型は右手足を軸とする構え。一尺に満たぬ短刀と、穂先合わせて十尺もある槍とでは、決定的にリーチに差がある。ジョーカーは稽古前から、自身が不利的状況にあることを、理性的に推測していた。
一突。ただの突撃。しかし踏み込みは浅く、ただの小手調べに過ぎない。それをジョーカーは右に躱し、左手を得物に添えてその一突きを受け流す。だがそれだけでは終わらない。
受け流した槍を地へ押さえ、さらにダメ押しに左足で踏み付け自由を殺す。そしてその左足をバネに、ジョーカーは真希の頭上上空を跳ねていく。そのあまりの身体性に、真希は目が離せなかった。
(うおっ)
だがこれで、真希には枷がなくなった。押さえつけられていた槍を、視線上に映る空のジョーカーに向けて横薙ぎに振るう。真希の背中を適当に襲うつもりだったジョーカーは、頭上が地面となる体勢のまま、薙がれた槍を振り払う。
まるで宙を舞う蜂のように、ジョーカーは真希の頭上から真希を襲う。
(曲芸師かよ! だが、そんだけ!)
一度真希は身を退き、穂先を地へと突き刺した。棒高跳びの要領で、真希もまた宙を舞う。だがジョーカーのように、まるで無重力空間にいるかのようなフワフワとした動きではなかった。全体重と全スピードを上乗せした破壊力を伴う木槍を、無防備のジョーカーへと見舞う──!
これは流石のジョーカーも、受ける他に対処が出来なかった。
「くっ」
「まだまだ!」
なんとか木剣で凌ぐも、ジョーカーは叩き落とされる。それに追い撃ちをかけるように、真希は更なる一手を試みるのに対して、砂上を転がって着地したジョーカーは、真希から視線を外してしまう。
苦渋に顔を顰めつつ、拙い、と思うのも束の間。どうにか四つ這いになって正面を見たジョーカーの後頭部を、何か硬い物がかなりの力で突っつき、ジョーカーは無様に倒れ込んでしまった。
「くぉっ!?」
「ほい、私の勝ち」
その正体は、ジョーカーの真後ろにいた真希の木槍であった。どうやらこの一本は、取り逃してしまったようだ。
これが仮に真剣勝負であれば、ジョーカーは死んでいたという事実が、ジョーカーの唇を悔しさに歪ませた。
「……なるほどな」
「?」
「お前のそれ、自己流だろ。しかも見よう見まねの」
その通りである。
ジョーカーの戦闘流儀は、テレビドラマの殺陣やアニメを参考としている。ジョーカーが「あっ、これ良いな」と思ったものを、見境なく頭にインプット・シミュレーションしているのだ。痛々しい高校生活を送ったものだと、ジョーカーは自虐的になった。
さて、真希はそんなジョーカーの自虐も露知らず、頭を掻きながら再度ジョーカーへと語る。口の中が少しシャリシャリするのを、女性の前だからと我慢してジョーカーは立った。
「何となくそんな感じはしてたんだよな……」
「自己流だと何か問題が?」
「ありまくりだ。
剣術、槍術、棍術……あらゆる『武術』には、必ずと言っていいほど何かしらの『型』がある。『型』ってのは、相手が『どこ』を『どうやって』打ちに来るかを想定し、その『解』を体に染み込ませるためのものだ。
基礎の『型』を修練し、自分なりの発展を作ることを『型破り』っつーんだ。これは謂わゆる守破離の『破』に当たる。お前のは、行き当たりばったりの詰め合わせ……これは『形無し』。
『型破り』には更なる発展の追求、つまりあらゆる状況のシミュレーションを無限に作れるが、『形無し』にはそれが出来ない。何たって、ただ闇雲に剣振るってるだけなんだからな」
「ふむ……」
「もっとも、フェイントのためにあえて型を無くす奴もたまにはいるが、お前のは、もう一から十までずーっと形無しなんだよ。多分お前、その短剣も雰囲気で振ってるだろ」
「まあ、そうだな」
「そんで厄介なのは、形無しなのに、お前がある程度『完成』しちまったことだな。
雰囲気で得物振ってるお前なら、何百回やっても私が勝つぞ?」
「む……」
真希のその言い草に、ジョーカーはかっちーんと来た。
(けど筋は悪くねえ。……コイツ、マジの『戦いの中で強くなる』パターンのヤツか? すげーな、マジに主人公じゃねーか。
……コイツを利用すれば、きっと私は夢に早く近付ける)
禪院真希には夢がある。たった一つの、人生を賭けて叶えたい夢が。その夢に近づくためならば、真希は命すら惜しくない。
「ちょっと聞け、
「?」
「お前、これからきっと伸びるぞ。その短剣だけじゃねえ、刀やら槍やら、あとは私の
──取引だ。私はお前に、私の持てる技術を教えてやる。その代わり、お前は私の特訓に協力しろ」
「貴女の目的は?」
「『強くなる』以外に何があんだよ?」
「それもそうか」
ジョーカーとしても、願ったり叶ったりであった。
正直な話、前世でも、仲間の得物を振るってみたいと考えていたのだ。特に刀はサムライソウル、大和男の憧れだ。怪盗服のビジュアルに合おうが合うまいが、馬鹿野郎そんな事より刀だと、ジョーカーは常日頃考えていた。
「真希」
「何だ?」
「ご指導よろしくお願いします」
「……お、おう。何か、改まって言われると、ちょっと小っ恥ずかしいな。
まあ、よろしくな、蓮」
そう言って差し出した真希の手を、ジョーカーは優しく、しかし固く握り返した。
真希からの仄かな友情を感じる……。
「でも百回やっても〜の下りは頭に来たから、もう一本だ、真希」
「真面目なのか生意気なのかよく分かんねー……けど、ハングリーなヤツは嫌いじゃないぜ」
「あと今のオレはジョーカーだ」
「いちいちめんどくせ〜、なっ!」
気合十分。しかし技術はまだまだ発展途上。
その後何度も勝負を
この舌は 言葉を発せず
この口は 意味を持たず
この咽喉は ただ一つの
この想いすら 伝えられない
35.
〈2018年7月18日〉
〈放課後〉
本日の空は雲八割也。しかし雨が降る様子は無い。明日には晴れているだろう。曇天の夕が包む高専の砂道を歩き、寮に向かうのは、我らが雨宮蓮である。
本日の午後のカリキュラムは呪術実習。一年生二年生合同の
もちろん呪術実習と言っても、高専が斡旋した任務である。任務達成による報酬金ももちろんある。
本来一級術師以上の担任教師と同伴により実施される科目であるが、今回の合同実務演習に至ったのは、恵の存在が大きい。と言うのも、来る姉妹校交流会においての団体戦のために、一年生が授業の合間を練って考えた結果、恵の『一、二年の交流が必要だ』という意見が出たのだ。
恵の提案に、悟と蓮の特級術師という立場が作用する事で、二年担任もこれを承諾。この案が、後に都立高専のチームワーク発展……相互理解の第一歩となる。
呪術高専は、学校でありながら職場でもある。そしてその生徒も、呪術師の一員。合同の任務という面目で、午後の授業は全面的に実習となったのだ。
「高菜」
「棘さん。さっきはどうも」
そして蓮の相棒は、ハイネックにした制服で口を覆う狗巻棘であった。
蓮が寮へと向かう道中にある教室棟の横には花壇がある。その世話係をしているのが、この狗巻棘なのだ。
現在棘は、植えていた紫のトレニアと朱のランタナに水をやっている。そこをたまたま蓮が目撃したという状況だ。まるで花に語りかけるように、優しい目をしていた。
「こんぶ?」
「えー……『今帰る所?』?」
「しゃけ」
「えー……『合ってるよ』?」
「しゃけしゃけ」
棘の反応を見ながら、蓮は会話する。
(やっぱり慣れないな、この人のおにぎり語……早く慣れないと)
実の所、蓮は棘が苦手だ。嫌いではないし、好きになろうとしているのだが、コミュニケーションが取りづらいせいか、どうにも苦手意識が若干あった。
先の呪術実習でも、蓮は棘とろくすっぽコミュニケーションが取れず、アイコンタクトさえままならなかった。何とか呪霊は祓除出来たからよかったものの、この先それでは危険だと、蓮自身そう思っていた。
(手伝おう)
そう思った矢先、蓮はすぐそばにあった水飲み場にある、もう一つの無骨なじょうろを発見する。緑色の何の変哲もないじょうろに水を汲み、棘の隣で撒いてやることにした。すると──
「
「っ!?」
危うく落としそうになったじょうろを抱えて、蓮は安堵した。
今、確か棘の声が、重なって、本当に伝えたい事が分かったような気がする。
「今、棘さん普通に……」
「いくら?」
「あれ……?」
おかしい、一瞬棘の声が重なったような気がしたのだが……。
(聞き間違いだったのか?)
その日は、特に何かを話す訳でもなく、淡々と手伝いをして解散した。
36.
〈放課後→夜〉
「ああ、棘先輩のおにぎり語か」
「何か知らないか?」
そう話し合うのは、将棋を指し合う伏黒恵と雨宮蓮である。恵は電子ゲームの類を持っていない(というか興味も無い)ようなのだが、ボードゲームは悟に教えられたらしく、ただ相談するというのも詰まらないと思った蓮は、スマホの将棋アプリで一緒に遊んでいた。
相談しているのは、勿論夕方の棘についてだ。
棘の話したおにぎり語が、突然本来の意味を持つ言葉と重複して聞こえたのだ。
「それは前兆だな」
「前兆?」
「ああ。実は俺もそうなった。先輩方も、棘先輩と会話したての頃はそんなんだったらしい。そこから自然と言葉が分かっていくって感じだな」
「そうなのか」
「ああ」
「恵」
「何だ?」
「三十一手先でお前の詰みだ」
「それ言いたいだけだろ」
その後、三回中二回、蓮は白星を挙げた。
37.
〈2018年7月19日〉
〈放課後〉
本日は晴天也。昨日と同じ帰り道で、雨宮蓮は狗巻棘と再会した。棘は昨日と同じように、花々に水をやっていた。
「棘さん。手伝いますよ」
「
そう言いながら、蓮は水飲み場のじょうろを手に持つ。そしてその最中も、蓮は棘の言葉に違和感を感じていた。
(これが前兆か)
蓮だけではなく、恵や真希らもなったと言われる、棘の言葉を理解しつつある『前兆』。それ即ち、棘の事を知ろうと仲良くなっているという証拠だと、蓮は考えた。
だが、蓮はこの程度で満足する男ではない。蓮は、棘のより深い所に踏み込み、棘をより理解しようと試みる。
「棘さんは……」
「?」
「おにぎりの具でじゃなくて、普通に喋りたいって思ったことはありますか?」
昨日、聞こうとしても聞けなかった……聞くのは野暮だと思った事を問うてみる。
帰ってきたのは、数秒の、しかし意味のある静寂。そして──
「──ゆかり」
先ほどのように声は重ならない。
だが、その目が全てを物語っていた。
伏せられた目と、泣きそうな俯いた顔が。
『あるよ』と、そう言っていた。
「じゃあ、オレ手伝いますよ」
俯く顔が、勢いよく蓮の方に向けられる。
「何しろオレ、特級ですから。呪いに当てられても、死なない限りは治せますし」
「……しおむすび?」
おそらく、「どうしてそこまで?」と言っていると蓮は考えた。
「決まってるじゃないですか。
オレの作るカレーを、あなたに『美味しい』って言ってほしいんですよ」
少しキザな事を言って、微笑んでみる。
蓮は正義の味方を自称しない。そんなものに成りたいと思ったことはない。だが彼を知る者は皆、口々に彼を正義の味方と呼ぶのだ。
だって、誰かを救う事が、悪なはずがないのだから。
「ツナマヨ」
「ありがとう……だな」
「しゃけ!」
西に困っている人あらば助け、東に悪人あらば成敗する。
南に歩きタバコする人がいれば注意し、北でイタズラされてる猫がいれば見捨てない。
怪盗の師匠が言っていた、彼の人としての持論。
それは今も、蓮の信念に根付いている。
そういうものに、蓮もなりたいのだと。
先輩だろうが何だろうが関係なく。
困っている人を助けたいのだと……。
棘からの感謝を感じる……。
コープ獲得:女教皇(禪院真希)
習得:《真希流の基礎篇》
短剣に加え、刀や剣カテゴリの装備品を装備できるようになる。
コープ獲得:塔(狗巻棘)
習得:《あやふやおにぎり翻訳》
狗巻との会話で、おにぎり言葉が時々分かるようになる。
短くてごめーーーーん!!!
ポエム書くのと大体の流れ書くのとエヴァ15が楽しくてつい。
展開が遅過ぎる。あと一話挟んだらそろそろ幼魚と逆罰編書くよ。
ちなみに真希の誘いには合計三つパターンがあります。「今のオレは〜」と「光栄だな」と答えると恋人になれますが、「心に決めてる人がいる」と答えると、いかに好感度上げる選択肢押しても恋人ルートに派生しません。
ここのレンレンはどうするのか。どうする兄ちゃん、股す?股す?
あと真希戦は負けイベですが勝てます。