呪術廻戦にP5のジョーカーぶち込んでみた   作:全てのイシを拾イシ者

5 / 33
#5

 23.

 平日の昼間だというのに、原宿の街はその人通りが色褪せることはない。蒼天の下、蒸し暑い雑多の中、三人の男子学生が原宿駅前で(たむろ)っている。

 一人は原宿駅の隅で上の空で突っ立っている雨宮蓮、ガリガリくんを味わう虎杖悠仁、スマホを見て時刻を確認している伏黒恵だった。入学が正式に決定したその翌日。三人は、集合場所に指定された原宿に集まっていた。

 現在の時刻は正午の少し前。空腹で胃がインボリュート曲線湾曲螺旋を模ってくる時間帯。蓮は久々に、ハンでバーガーなジャンクなフードを食べたい気分だった。

 蓮は料理は得意だが、日々の食事に一々栄養バランスを考えるほど几帳面ではない。前世の東京では、朝にカレー、昼に焼きそばパン、夜に巨大ハンバーガーといった、炭水化物のオンパレードな食生活をしていた。その代わり怪盗活動で食べた分以上に動くので、プラマイゼロはおろか筋力的な意味ではプラスになっていたと言えるのだった。

 

「なあ恵。何で一年が四人なワケ? ちと少な過ぎねえ?」

「じゃあお前、今までに雨宮以外で呪いが視えてる奴と会った事あるか?」

「…………無えな」

「それだけマイノリティなんだよ、呪術師は。……尤も、雨宮みたく『視えててもそれを言いふらさない奴』も居るには居るんだろうが、術式が使える(戦える)か否かを選別すると、その数は更に少なくなる」

「ってか何でこんな時期に来てんだろーな。俺と蓮はともかく」

「さあな。こんな学校だし、色々込み入った事情があんだろ。入学はお前らより早く決まってたらしいが」

「ってか、何で原宿集合なの?」

「聞いてないから知らん。大方、竹下通りを見て回りたかったとかだろ」

「な〜んか図太そうな予感すんなー……。にしても暇〜! しりとりしようぜ」

「何でだよ」

「じゃあオレからだな」

「おっ、蓮おかえり」

「ただいま」

「いや、それこそ何でだよ。つーかお前何してたんだよ」

「内緒」

 

 フリーズから目覚めた蓮が乱入してきた。 

 

「じゃ、しりとりの『り』からな!」

「リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ」

「何じゃそりゃ!?」

「竜宮の乙姫……これか。あー、アマモの別名だと。和名では一番長い名前の植物らしい。……お前これが言いたかっただけだろ」

 

 スマホを手に持っていた恵がウィキペディアで調べたようだ。

 

「へえ、良く知ってんな蓮」

「長い名前って何か覚えたくなるだろ?」

「あー、何か分かるわ。寿限無とかピカソのフルネームとかな。えーと『シ』……うーん、シルバニアファミリー」

「虎杖も何だそのチョイス」

「ほら恵、『イ』!」

「何で俺まで……ってか、『リ』じゃねえのか?」

「え? 伸ばし棒の『イ』っしょ?」

「ふーん。……イギリス。ほら雨宮、『ス』」

「スリジャヤワルダナプラコッテ」

「あー……なんか聞いたことあるわ。何だっけ……?」

「スリランカの首都だ」

「あーそうそうそう! えーと『テ』……テトリス」

(すみ)

「身から出た(さび)

「『び』!? えー、『び』なんてあったかなぁ……び、び……あっ、ビンテージワイン!」

「……虎杖、お前しりとり弱すぎ」

「え? ……ああっ!?」

 

 斯くして第一回呪術高専一年生しりとり大会は、悠仁を敗北者として終了したのだった。

 

「おっまた〜。おっ、制服間に合ったんだね、悠仁、蓮」

 

 ──と、そこに現れたのは、責めるほどでもない遅刻魔の五条悟だった。相変わらず黒い目隠しをしているので、周囲の人からの視線が熱い。主に奇抜さで。

 

「おう、ピッタシ!」

「でも、恵のものとは若干違うな」

「俺のはパーカー付いてっし、蓮のは裾長えしな」

 

 本日四人目の一年生を迎えるに当たり、蓮と悠仁は支給された制服を身に纏っていたのだが、悠仁の制服は襟首部分が赤いパーカーとなっており、蓮のは燕尾服のように後方の裾が長い。

 

「希望があったら制服は改造してもらえるよ」

「えっ、俺そんなん出してないよ?」

「そりゃ僕が出したんだもん」

…………まあ、いっか!

「気ィ付けろ。五条先生こういう所あるぞ」

「……もう少し裾を長く出来ないか? こう……怪人二十面相みたいなイメージで」

「お前はお前で気に入ってんのかよ……」

「そんな事より先生、俺腹減った」

「んー、じゃあ何か買いに行こうか」

「俺ポップコーンとかクレープとか食べたい!」

「オレマック行きたい」

「あー、ビッグマックも追加で!」

「おっけい。んじゃ、僕も何か食べよっかな。恵は何か希望ある?」

「……照り焼きチキンフィレオで」

 

 

 24.

 原宿の竹下通りに、ある一人の男がいた。スーツを着こなし、貼り付けた笑顔で女性に(すが)っている。男はスカウトマンであり、モデルの勧誘に今日も勤しむ。売れそうな女性(金になりそうな木)に片っ端から声を掛けていき、最終的に枕仕事に行き着かせ、搾れるだけ搾り取り、後は知らんぷり。堕ちる所まで堕とし、自分は美味い汁を啜る。それがこの男の生き方だった。

 しかし男は容姿が優れているという訳ではない。太り気味で足も短く、雨宮蓮の顔を満点とした時、顔面偏差値は甘く見積もっても10点満点中3点程度だ。そんな条件の男がそう易々と女性が捕まえられる訳も無く、先も一人良さそうな人材を逃した。

 ──すみません、少々お時間よろしいでしょうかー?

 ──急いでいるので。

 ──ワタクシ、こういう者でして。モデルとか興味ありませんか?

 ──急いでいるので。

 ──あ、いや、話だけでも……。

 ──警察呼びますよ?

 作り笑いを絶やさず、心の中で舌打ちし、次の獲物を見繕おうとした矢先──その獣は現れた。

 急に背後から肩を掴まれる。ポリ公か、と一瞬体を強張らせ、恐る恐る背後を向いたが、そこにいたのは高校一年か中学三年程度の女子生徒である事は分かったため、一つ安堵の溜息を吐いた。

 少女の顔は良かった。絹のような茶髪、健康的な肌、垂れ目気味の双眸、桜色の唇。スタイルも良い。少々田舎臭いが、逆にこのような世間知らずの田舎者こそ()()()()()。鴨がネギを背負ってきたとはまさにこの事。このような上玉に出逢えたのならば、先の女などどうでも良かった。

 しかしよくよく見れば、制服がどこの学校の物かが分からない。モックネックの、その豊満なスタイルを際立たせるデザインの制服に見覚えがない。男は未成年にも手を出す程の変態であり、原宿近辺の女子学生の制服はある程度把握していた。そのため、眼前の女子生徒が只者ではない事を悟った。

 

「オイ」

「ひえっ!? な、何でしょう……?」

「私は?」

 

 ──ワタシハ!?

 

「え、いや、あの……わ、ワタクシ、急いでいるので……!」

 

 そう言いつつ、既に踵を返して眼前の少女から離れていた。足は無意識的に反対方向のどこかへと向かおうとしていた。失われたはずの男の野生が警報を訴えている。鴨ネギだと頭では分かっていても、体は真反対の行動を起こす。この一瞬で、男は本能で理解したのだ。

 ──この女、ヤバい……と。

 しかし少女のそのヤバさが、この程度で終わるはずもないのだった。

 

「ちょっと、どうなのって聞いてんでしょ? 答えろや」

「ひぃぃぃ、ごめんなさいぃぃ……!!」

 

 襟首を掴まれ、それ以上前に進めない。膂力が女子高生のそれではない事に恐怖心を抱き、謎の力に対抗しようと必死に足をジタバタさせる。悲しいかな、捕食者は既に入れ替わっていたのだった。仕事柄自意識過剰な女性はこれまでに幾度も見てきたが、ここまで傲岸不遜を極めている者は初めてだった。

 もうこんな事するの辞めよう。

 切実に男はそう思った。

 そんな少女を側から眺めていたガヤの内に、呪術高専一年男子達とその担任がいた。

 

「ええ……アレに話しかけんの? ちょっと恥ずいなあ」

「お前がだよバカ(虎杖)

「ひょうはほ。ほっほひっはいほひっほははえはいほ」

「口ン中に物入れたまま喋んなバカ(雨宮)

「おーい、こっちこっち! このGood Lookin’ Guyの方だよ〜。……うおっ、アイス甘っ。僕のフェイバリットに追加だね」

「せめて生徒の模範にはなってくださいバカ筆頭(五条先生)

 

 目元に傷のあるおバカ甲と、癖毛のおバカ乙、二十八歳児のおバカ丙、そしてツッコミ担当である。

 おバカ甲は、初の原宿ともあってか目に写った商品を衝動買いし、左手にクレープ、右手にポップコーン、後の主食としてビッグマックも追加して、2018とデザインされた眼鏡を購入、装備&食事中。おバカ乙は、適当にお気に入りのバーガー達とポテトをテイクアウトで購入、食事中。おバカ丙は、マックで期間限定商品のぐでたまコラボマックフルーリーに加え、流行りのマンハッタンロールアイスを購入、食事中。ツッコミ担当は頭を抱えていた。

 閑話休題、少女は近場のコインロッカーに荷物を置いて、改めて自己紹介をするのだった。

 

釘崎(くぎさき)野薔薇(のばら)。──喜べ男子。紅一点よ」

「やったー……?」

「何で疑問系なんだよそこの癖毛!」

「はいはーい! 俺、虎杖悠仁! 仙台から! よろしくね、野薔薇!」

「……伏黒恵」

「雨宮蓮です。よろしく」

 

 じと────────────と品定めをするように男三人を見る野薔薇。田舎で鍛えられた彼女の慧眼は上っ面を全て見破る。彼女の眼前で誤魔化しは一切通用しない。彼女の独断と偏見の眼差しが三人を襲う。

 

(見るからに芋臭い……絶対ガキの頃鼻クソ食ってたタイプね。つーか彼女どころか友達ですらないのにいきなり下の名前で呼んでくるとか、どおゆー神経してるワケ?

 名前だけ? 私偉そーな男ってムリ。きっと重油(まみ)れのカモメに火ィ付けたりするんだわ……。『うに』って言われそうな頭してるし、きっとそうね。

 うーわ出たわ。コイツ完全に天然ジゴロだわ。料理とかちょっとした気遣いとかで知らず知らずのうちに惚れられるタイプだわ。その気になれば十股とか出来そうなくらいにはモテるわね。貶す要素見つかんなくて逆にムカつく)

 

「……ふーん。まあまあってとこね」

「何か人の顔見て評価してんだけど。まあまあって事は喜んで良いの?」

(うざ……)

「仲良くなれそうだな」

「どこをどう見てそう思ったんだよお前は」

 

 前世では様々な癖の強い人と信頼関係(コープ)を築いた蓮である。舐めてはいけない。例えば、オリジナルの薬を売ってくれる代わりに治験の協力を要請(というより強制)する女医や、モデルガンのカスタムをしてくれる代わりに極道の情報を集めさせる店主など……良く生きていられたとつくづく思う。

 そんな思い出に浸っていると、恵が口を開いた。四人目の一年生との顔合わせも済んだ事だし、もう用はないだろうと蓮も思っていた所だ。

 

「先生、これからどっか行くんですか?」

「四人目の一年生は回収済み、内三人はおのぼりさんだよ?

 ──行くでしょ、東京観光!!」

東京っ! トーキョーっ! TOKYO!

 We Love TOKYO!!

「ほら、仲良くなれた」

「ええ……」

 

 地方育ちの悠仁と野薔薇には、東京という都会はあまりにも眩い。蓮もまた、久方ぶりの東京に想いを馳せている。悠仁と野薔薇は、散歩待ちの犬のように悟に擦り寄せていた。

 

TDL(ディ◯ニーランド)! 私TDL(デ◯ズニーランド)行きたーい!!」

「ばっかお前TDL(ディズ◯ーランド)は千葉だろ! 中華街にしようよせんせー!」

「はァ!? 中華街は横浜だろォが!」

「横浜*1は東京だろ!? お前地図見た事あんのかよ!」

「何おぅ!?」

「ンだとぉ!?」

『ぐにににににに〜〜!!』

「なあ雨宮、これでも仲良いって言えるか?」

「……喧嘩するほど仲が良い。そういう事だ」

「目ェ逸らしながら言ってんじゃねえよ」

「鎮まりたまえ諸君。行き先を発表しようではないか」

 

 ザッ、と跪き、王の勅命を静聴する悠仁と野薔薇。それを苦笑いしながら見る蓮と、溜息を吐く恵。そして悟の口がついに開かれ、目的地が明かされる──。

 

「──六本木です!」

 

六・本・木(ギロッポン)!?』

 

 

 25.

 

「──いますね、呪い」

『嘘吐きいいいいいい!!!』

「六本木ですらねえじゃん!!」

「地方民を弄びやがってえええ!!」

「まあ予想はしてた」

 

 阿鼻叫喚の嵐に、蓮は苦笑いするしかなかった。悠仁は既に切り替え、呪術師ムードに突入したが、野薔薇は未だ文句を言うのだった。五人が到着したのは、原宿駅から一番近い青山霊園付近の廃ビル。六本木はその先にある。一応どちらも港区ではあるとだけ記しておくが、それでも二人は納得出来ないだろう。

 

「廃ビルとでかい霊園のダブルパンチで呪いが生じてるんだよね」

「ほー、やっぱ墓とかって出やすいの?」

「『墓=怖い』っていうイメージが根付いてる人間の心の問題なんだよ」

「あー、確か学校とか病院とかも同じ理由だったっけな」

「ちょっとアンタ、そんな事も知らないの?」

「実は……」

 

 恵は野薔薇に悠仁の経緯を話した。新月のあの夜に両面宿儺の指を取り込んだ事や、蓮の術式開花について。流石に悠仁が死刑である事は話さなかった。

 

「──飲み込んだ!? 特級呪物を!?

 う〜わキッショ! ありえない! 衛生観念キモすぎ! ムリムリムリムリムリ!」

「ンだとォ!?」

「これに関しては同感」

「ちょ、恵までそんな事言うなよ!」

「流石に石鹸(せっけん)を食べる気にはなれないな」

「レンレ〜ン…………あれ、俺味方居なくね?」

 

 ゲテモノ料理を食う気にはなれない蓮であった。

 

「さて──」

 

 新月の夜に発現した怪盗服に変身する蓮。蒼い炎が蓮を包み、一瞬にしてジョーカーへと変貌を遂げた。ドミノマスクが漆黒の全身によく映えている。悠仁は目を煌めかせ、恵は無表情を貫き、野薔薇は驚愕に身を引かせ、悟は相変わらず黒布で目を覆っていた。

 

「おーっ、あん時の格好だ! なあ蓮、その格好何かモチーフとかあんの?」

「怪盗だ……と思う」

「怪盗……! 響きちょーカッケーな……!」

「念のため、コードネームもちゃんと考えた」

「めちゃめちゃ本格的だなオイ!」

「なに、厨二病なのアンタ?」

「こういうのは形から入るものだからな」

「ふーん。……で、どんな名前なの?」

 

 口では刺々しい野薔薇も、少し興味があるらしかった。

 かつて前世で呼ばれた名。怪盗の師に名付けてもらった名。切り札としての役割を担った、悪役に最も相応しい名前。

 

「──『ジョーカー』だ」

「……なんでババなん?」

「そっちじゃない。『切り札』の意味合いで付けた。いざという時の切り札でありたいと思ったんだ」

「あー、なるほどね!」

「ま、悪くないんじゃない? ムカつくほど似合ってるし」

「あっ、じゃあさじゃあさ、その格好の時はジョーカーって呼ぼうぜ!

 ──よろしく、ジョーカー!」

 

 ──オマエも気張れよ! ワガハイに損させんじゃねーぞ?

 ──ははっ、だよなブラザー! これから、明日に向かって走ってこーぜ!

 ──キミは、私の『光』だよ。

 ──お前がいてくれて、俺は本当に果報者だ。

 ──私ね、これからもっと違う世界を見られる気がする。

 ──何でも言って? ピンチの時は絶対助ける。ホントだよ?!

 ──もっと頼って? やれるって思えるだけの力を、自分の中に感じるの。

 ──くれぐれも忘れないでくれ。君を倒すのは必ず、この僕だ。

 ──私、先輩と会えて良かったです!

 ──何かあったらいつでも頼れ。必ず力になる。

 ──……ありがとう。皆の事、この旅の事、私は忘れない。

 

 ──ジョーカー!

 

 ……懐かしい思い出が、蓮の脳裏を駆け巡った。

 目頭を押さえる。溢れそうになる涙を堪える。寂しさが流れるのを必死に抑える。男が泣いていいのは、生まれた時と親が死んだ時、そして子供が産まれた時だけなのだから。

 けれど…………。

 どうしようもなく、仲間や、世話になった人に……皆に会いたい。

 

「どったの、ジョーカー?」

「……いや、何でもない」

「何よ。今更自分で『イタい』とか思ってんじゃないでしょーね?」

「そんな事はない。むしろ……嬉しいんだ」

「それはそれでどうかと思うけど……」

「ちょっと待て。まさか本気で呼ぶつもりなのか?」

「何だよ、恵。こーゆーのはノリだよノリ。

 あっ、そうだ! 俺らもコードネーム考えね!?」

「もーこの際だしね。とことんまで乗ってやるわよ」

「冗談だろ……」

「俺は……『タイガー』かな! 虎杖の『いた』って、トラって書くんだよ。だから『タイガー』!」

「安直ね〜」

「じゃ野薔薇は何にすんだよ」

「『ヴェルサイユ』ね」

「『薔薇』繋がりじゃん! お前だって人の事言えねーじゃねーか!」

「えー…………じゃあ、『ソーン』かしら」

「……何で? つーか何それ?」

「よく言うでしょ? 『綺麗な薔薇には棘がある』って。だから棘の意味で、『ソーン』。名前で威圧しなくっちゃね」

「綺麗な薔薇ってそれ自分で言う?」

「伏黒はどーすんのよ?」

「俺はいいって……」

「オレは『アーチン』でいいと思う」

「……理由を聞いてやるよ」

「アーチンの意味は『うに』だ」

「表に出ろジョーカー」

「安心しろアーチン、既に表だ」

「ねね、ジョーカー。このGT(グレートティーチャー)五条には?」

「『五条先生』」

「くやし〜……」

 

 皆で一頻り笑った。恵は(しか)めっ面だった。

 

「……まあともかく、キミ達がどこまで出来るかが知りたいんだ。今日ここに連れてきたのもそのためさ。

 悠仁、野薔薇、ジョーカー。キミ達三人で、建物の中の呪いを祓って来る事。良いね?」

「うげ……」

「了解した」

「良いけど……でも先生、呪いは呪いでしか祓えないんでしょ? ジョーカーならまだしも、俺呪術とか使えねえよ?」

「──そう言うと思って、はいこれ!」

 

 悟から渡されたのは、無骨な片刃の短剣だった。柄には黒色のファーが装飾されており、一目で普通の武器ではないと理解出来る。グリップには滑り止めが包帯のように巻いてあり、気を抜かない限り戦闘中にすっぽ抜けてしまう事もないだろう。

 

「うおっ。何これ?」

「呪具《屠坐魔(とざま)》。呪力のコントロールは一朝一夕で成るものじゃないから、悠仁はそれを応急処置として使ってね。それがあれば、呪いに対処出来るよ」

「うわー、すっごいこれ! FFⅦのバスターソードみたい!」

「だっせえ」

「ンだとぅ野薔薇!」

「あと借り物だから壊さないようにね」

「了解っ! …………えっ、借り物なのこれ?」

「蓮はこっちね」

 

 蓮が渡されたのは、すらっと伸びる両刃のシンプルなダガー。装飾は特にされておらず、グリップからブレイドにかけて白銀一色であり、蓮はかつて前世で愛用した《シルバーダガー》を思い出した。尤もアレはレプリカであり、手に感じる重量はこのダガーよりは無かったが。

 

「これは?」

「呪具《剛巌(ごうげん)》。要らなかったんだけど、ジョーカーには持って来いなんじゃ無いかなって思ってね。僕ン家の倉庫から適当に見繕って(掻っ払って)きた」

「(それを聞かされてオレはどう言えば良いんだ……)……まあ、ありがとう。(いただ)いていく。トカレフは?」

「まだ許可取れてないんだ。拳銃の所持許可得るの、結構大変なんだよ? まあでも来週ぐらいには取れるだろうから、期待して待っててよ」

「分かった」

 

 ダガーを回して遊ばせ、逆手でキャッチする。その一連の動作は、ある種芸術の域に達していた。

 

「なあジョーカー、後で剛巌(それ)振らせてくれよ。あとコート着させて」

「任務が終わってからな」

「やっりぃ」

「ほら、さっさと行くわよ!」

「へいへーい」

「そうそう、悠仁」

「ん? 何、先生?」

 

 野薔薇に怒鳴られ、二人は足を進めるも、悠仁は悟に引き止められる。駆け足をしながら悟の方へ体を向けた。

 

「宿儺は出しちゃダメだよ」

「……周りに被害が及ぶから?」

「その通り。今回はあくまで、キミら自身の実力を測るためってのもあるけどね」

「りょーかい。行ってくるね!」

「行ってらっしゃい〜」

 

 そう言いつつ、悠仁は三秒と経たずに野薔薇とジョーカーの元に到着した。錆びついたシェルターを、無理やり人が通れる高さにまで持ち上げる。そんな中、恵は悟に語りかけた。

 

「……先生、やっぱ俺も行きますよ」

「無理しない無理しない。病み上がりなんだから」

「でも、虎杖は要監視でしょ」

「まあね。でも──」

 

 ──今回、試されてるのは野薔薇の方だよ。

 

 

 26.

 電気が通っていない所為か、昼だというのに廃ビルの内部は恐ろしく暗い。加えて謎のおどろおどろしさを感じ、肌寒さは収まる所を知らない。その廃ビルに三人の少年少女が。虎杖悠仁、釘崎野薔薇、雨宮蓮ことジョーカーである。悠仁とジョーカーは、カバーアクションを駆使して警戒しながら進んでいくも、野薔薇の方はどこか気怠そうに……あるいは面倒くさそうにして、正面を堂々と歩いていた。

 

「はァ〜〜〜ダルっ。何で東京来てまで呪い祓わなきゃならんのよ」

「いや、呪い祓いに来たんだろ……?」

「めんどくさいし、時短しましょ。私は上から、アンタら下から。一階ずつ(しらみ)潰しに呪霊をブッ飛ばす。とっとと終わらせてザギンでシースー。ユー・コピー?」

「いや、ちょっと待てよ。もっと真面目に行こうぜ。呪いって危ねーんだよ」

「ムっ……」

 

 少しムカついた野薔薇。ドダドダドダと勢いよく階段を降りてそのまま悠仁を足蹴にした。

 

「あだーっ!?」

 

 ドゴォ、と人体からは決して発せられてはいけない打撃音が聞こえ、そのまま悠仁は地面に突っ伏す。一部始終をジョーカーは見ていたが、そっとしておく事にした。

 

「最近までパンピーだったヤツに言われたくないわよ! さっさと行けっ!」 

「……今日お前の情緒が分かんねーんだけど!?」

「だからモテないのよ!」

「何で知ってんの!?」

 

 そう叫びながら蹴られた尻を(さす)る悠仁。

 

「いっちち……クソ、蓮……じゃなかった、ジョーカー。(しゃく)だけど、アイツ(野薔薇)の援護してくれねえ?」

「悠仁は?」

「俺はだいじょーぶ。まあ、任せとけよ」

「了解した。気を付けろよ」

 

 そう言い残し、ジョーカーは野薔薇の後を追い階段を登る。

 

「つーかテメーは言うほどモテてんのかってんだよ」

 

 クソが、と悪態を吐き一階のビルを進んでいく。

 ──静寂。悠仁の履いている赤い靴が、床のタイルに規則的なリズムを刻む。ゴム底故、吸い付くようなほんの小さな音であるが。それを除けば、羽虫の声一つも聞こえない。故に悠仁は──自身の首に近付く二つの刃に、寸前まで気が付かなかった。

 

「シッ──」

 

 しかし研ぎ澄まされた悠仁の第六感は、迫る死の感覚に敏感に反応した。刃の一つを根本から屠坐魔で切断しつつ、本体である呪霊から、全ての膂力を利用して退避した。彼奴はどうやら天井から命を刈り取ろうとしていたようで、それに失敗したため地上に降り立ち、怯みもせず悠仁を睨んだ。

 

「れ しいと ごりょお」

(──出た、呪い!!)

 

 その呪霊の風貌を一言で言い表すなら、『昆虫版ケンタウロス』だった。かつてのイグアナの呪霊よりは小さいが、悠仁よりも五十センチは大きい。上半身は、腕部を除けばほぼ人間のソレだが、下半身は昆虫の腹で、そこから四本の節足動物の足が生えている。

 悠仁は改めて敵を見据え、屠坐魔を逆手に、体勢を低くして構え──バネの如く弾き跳んだ。

 真正面。脳死で両腕の鎌を振り(かざ)すケンタウロスだったが、その体型故に殺される事になろうとは最期まで思わなかった。スライディングで間一髪鎌を避けつつ、切った鎌と同じ方向の脚部も切り落とし、バランスが崩れた所を一気に跳躍。脳天に屠坐魔を突き刺し──

 

「ご よう れじぃ゙ぃ゙い゙ど

「くたばりやがれ」

 

 引き抜き、もう一度──今度はより深く脳天に突き貫き、ケンタウロスは絶命した。紫苑の蜜が辺りに飛散している。呪いにも血は存在し、しかもそれが紫色である事に、悠仁は初めて気が付いた。

 

「──うし。動けんね、俺。」

 

 虎杖悠仁の呪術師としての初陣は、圧勝で幕を閉じたのだった。

 

「悠仁はさ、イカれてんだよね。自分の命を奪おうとしてくる呪いを、何の躊躇もなく()りに行く。君みたいに小さい時から呪いに触れてきたワケじゃない、ふっつーの男子高校生がだよ? 真っ当な神経じゃない」

「……雨宮はどうなんです? アイツ、常に呪いが視えていたと言ってましたけど」

「蓮か。蓮はね──」

 

 

 27.

 

「で、アンタ何?」

「何とは?」

「何しに来たの?」

「援護に」

「別にいらないわよ。居なくてもヨユーだっつの」

「一人より二人の方が確実だ」

「(めんどくせー……)……あっそ。じゃあ好きにすれば」

「判った。──では、好きにさせてもらおう」

 

 ──そう言って振り返りながら、ジョーカーは剛巌を後方にて横薙いだ。

 瞬間、飛散する紫苑の花弁。音を殺し這い寄って来ていた、蜘蛛(クモ)の呪霊の前足──腕二本を斬断しつつ、飛沫する血液が付着しないように、野薔薇を抱き寄せて距離を取った。呪霊は音を殺したつもりだろうが、ジョーカーの地獄耳は決してその足音を聞き逃さない。退避の際、野薔薇を横抱きにしたのは言うまでもない。切断された腕は数秒間跳ねて脱力し、そのまま動かなくなった。

 

「お かあさ これかって」

(──呪い。そしてこれが、呪具《剛巌》の力か)

 

 悟は自身の家にあったものを適当に見繕ったと言っていたが、それにしてはかなり切れ味が良い。『適当にと言っておきながら実は時間をかけて持ってきた』か、『本当に適当に持ってきた』のどちらかが考えられるが、もし仮に後者であれば、五条悟の家にはこのレベルの呪具がごろごろ転がっている事になる。なんとも魅力的──もとい、凄まじい経済力だ。

 閑話休題、その蜘蛛は、全長が約二〜二・五メートルはあり、顔面に当たる部分には、人の歯茎及び無数の犬歯と、血走った八つの眼球がこちらを見ていた。足は完全に人の腕で構成されており、節足動物特有のクチクラのような外殻は無いらしい。

 

「ちょ──いつまで抱き上げてんだっ。降ろせっ」

「ああ、すまない」

 

 そう言いつつ、野薔薇をゆっくりと下ろすジョーカー。直ぐに蜘蛛に向き合い、ドミノマスクに触れる。ペルソナ召喚の合図だ。

 召喚するのは、しかしアルセーヌではない。確かにアルセーヌは強力であり、アレに任せれば眼前の呪いは瞬殺できよう。しかし強力過ぎるが故にその分コストも大きいし、アルセーヌの力に老朽化したこの建物が耐えられるとは思えない(これに関しては完全に後付けなのだが)。故にジョーカーは、呪術師としての正式な初陣に際し、新たにペルソナと再契約を交わした。

 ──円卓がある。そこには三体の悪魔が座っている。一体は我が半身アルセーヌ、一体は亡霊、もう一体は妖精だ。アルセーヌに当たっているスポットライトを、亡霊の方に当てるイメージを現実に昇華する。イングランドにおける鬼火のような存在。堕落した人間の成れの果てと言われる亡霊。その名は──

 

「来い──ジャックランタン!」

ヒホー!

 

 カボチャ頭の魔法使い、ジャックランタンである。右手には小さなランタンを持つ、魔女の帽子を被った二頭身。かつて色欲の巨城にて、ジョーカーが三番目に獲得したペルソナだった。

 ペルソナは人の叛逆の魂を具現化したもう一人の自分だ。それ故に、ペルソナは一人一体というルールがある。心の成長に伴い姿形を変える事はあれど、ペルソナを内包する数は変わらない。しかしジョーカーは、トランプから(なぞら)えて【ワイルド】という類稀なる才能を有しており、数に限りはあれど他者よりも多くペルソナを保有する事が出来る。

 ベルベットルームは、ペルソナに関する事柄のサポートの役割を担っている。……【ワイルド】の素質を持つ者限定で、という一文が文頭に付加されるが。

 例えば、異なるペルソナ同士を融合させて新たなペルソナを作り出したり、ペルソナを『装備品』としてアイテム化したり、ペルソナを生贄にして別のペルソナを強化したり……と、その活用法は多岐に渡る。

 そのサポートの中に、ラヴェンツァの持つ『ペルソナ全書』に登録されたペルソナを、マネーと引き換えに再召喚出来るというものがある。蓮が利用したのはこれだ。加えて割引制度まで設けられているので、蓮の財布は少し痛手を負ったのみ。……やはり高校生の小遣い程度しかない財布では、一体に千円以上もするペルソナの再召喚は痛手だった。ベルベットルーム内で蓮は少し凹んだ。

 しかし読者の諸君らは、『蓮がいつペルソナを再召喚したのか』と思った事だろう。

 ──ではここで、本話の冒頭に戻ってみてほしい。そこには、『原宿駅の隅で上の空で突っ立っている雨宮蓮』の姿があるはずだ。お察しの通り、その時蓮はベルベットルームにてペルソナの調整を行っていたのだ。しかし周囲の人間からは蓮がぼーっとしているようにしか見えていないらしく、かつて前世でも何度も仲間に安否を尋ねられた。

 閑話休題、現在のジョーカーの呪力量(キャパシティ)を鑑みれば、強力なペルソナではその圧倒的な呪力消費によって直ぐに食い潰されてしまうが、逆に弱小なものであれば、現在のジョーカーでも難なく使役出来る。

 止め処なく湧き上がる怒りに任せ、堪忍袋の尾が切れると共に、ランタンから出づる極小の豪炎もまた、その奔流を加速させていく。

 

「《アギ》!」

 

 火炎系最弱のスキル。しかし今はこれで良い。ランタンから火花が不規則な軌道を描いて蜘蛛に直撃。蜘蛛は苦悶に奇声を上げ、消火しようと転がるも潰えず、そのまま熱伝導が作用し、蜘蛛を焼き尽くさんとして全身へと燃え盛っていく。

 

「おか さ おかあさ かあさんかおかさんおかさあんさあかあさおかさあかあさ」

「──幕引きだ」

 

 一瞬で距離を詰め、足を、体を、蜘蛛(呪霊)蜘蛛(呪霊)たらしめる要素を、痕跡を、その存在ごと抹消する──!

 

 

THE SHOW’S OVER

 

 

 手袋を締め直すと同時、紫苑の血飛沫が飛んだ。

 

「蓮はね──底が知れないよ。悠仁と共に普通の高校生活を送っといて、呪いを常に視認できるほどの才能を持ちながら、それらを『何とも思わない』なんて……はっきり言って『異常』だよ。恵も見てきたでしょ? 才能がありながら、それでもなお呪いの嫌悪と恐怖に打ち勝てず、挫折して辞めていった人を」

「…………」

「オマケに手前は、自己犠牲精神の塊と来た。どんな人生経験積めば、『本気で』他人のために命も捨てれるなんて考え方が出来るんだろうねえ。そういう意味では、あんなにイカれてる子を持つのは、僕も初めてだ」

「……アイツ、『見てるだけで何もしないのはイヤだ』って言ったんですよ。先生が言ってたように、呪術初心者のクセに……呪力切れ寸前のクセに、瀕死の俺を助けようとした。自分だって死ぬかもしれないのに……」

「ウンウン、(ジョーカー)をスカウトして良かったよ。──やっぱり彼、面白い(イカれてる)ね」

「……何が面白いんだか」

「野薔薇にも期待だねえ。彼女のやり方がどこまで持つかな」

「釘崎は経験者でしょう? 虎杖と雨宮だけで良いんじゃ……」

「呪いは心から生まれる。人口と共に比例して呪いも強くなっていくでしょ。野薔薇に分かるかな──地方と東京じゃ、呪いのレベルが違うって事。」

 

 

 28.

 

「……ふーん。まあまあやるじゃない、ジョーカー」

「お褒めに預かり光栄だ」

 

 切り札の名に恥じぬ戦いが出来たようだ。ナイフ捌きの腕は鈍っていないらしい。奥へと進みながら野薔薇が口を開いた。

 

「ねえ、アンタも最近までパンピーだったんでしょ? そんな戦い方、どこで覚えてきたワケ?」

「アニメとか漫画とかかな」

「やっぱめっちゃ(こじ)らせてるじゃねーか!」

「拗らせてないもん」

「何が『もん』よ!」

 

 (あなが)ち嘘は言っていない。それらの創作物において参考になる動きは山ほどあるし、それらからインスピレーションを得た事も少なくない。加えてとある仲間からの勧めもあり、ジョーカーはどんどんサブカルチャーにのめり込んで行った。野薔薇の興味は尽きないようで、次々と口を開いていく。

 

「じゃあさ、『アレ(ジャックランタン)』は何なの? アンタ呪霊を取り込める術式持ってんの?」

「アレはペルソナだ。オレの反逆の魂が形を持ったもの。もう一人のオレだ」

「…………要するに幽◯紋(ス◯ンド)ってこと?」

「似てはいるがそう言うと怒られるからやめてくれ」

 

 主に集英社に。

 話している内に先へと進むジョーカーと野薔薇。その間に呪霊と遭遇する事もなく、二人はおそらく会議室であった大広間に出た。

 部屋は散乱としており、段ボールや多数のマネキン置き場と化していた。五体満足の物や、腕が無かったり脚がなかったりする物とで雑多している。随所にはやはり埃や蜘蛛の巣が見られ、野薔薇は不快そうな表情を隠そうともしなかった。

 

「助けてもらったし、次、私の番ね。手ェ出すなよ?」

「了解」

 

 やや横暴な面はあるが、恩義を仇で返すタイプではないらしい。ジョーカーは一歩退がり、野薔薇の戦い方を観察する事にした。

 

「オイ、()()()()()()()()()()()()()だよ。

 ──来ないならこっちから行くわよ」

 

 釘崎野薔薇は、《芻霊呪法(すうれいじゅほう)》という術式を使用する。ハート形が彫られたお気に入りの金槌と、何の変哲もない五寸釘、そしてもう一つのキーアイテムで成り立つ術式だ。

 彼奴のレベルはおよそ三級。であれば釘は二本で事足りる。腰のポーチに仕舞っている五寸釘を取り出し──右手に持っていた金槌で撃刻し、二本共に中央の五体満足のマネキンの頭部に着弾した。

 

「うし」

(……凄いコントロール力だ)

 

 恐らく、その的中精度に関して術式行使によるサポートは無い。打った釘を自在に操れる訳ではないようだ。野薔薇の技術と実力の賜物なのだろう。ジョーカーでさえも、弾丸を外す時は外してしまうのだ。ジョーカーは感心を覚えた。

 さて、釘で穿たれたマネキンはというと、自身を支えていた器具が衝撃により吹き飛んだため、後方へと倒れ、床に落ちバラバラに分解される──事はなかった。

 頭部が地に触れようという寸前、弧を描いた身体は留まり──マネキンが()()()()()()。そのマネキンにはおよそ頭と呼べるものはあっても、顔は存在していなかった。存在しない顔面から、存在してはいけない箇所に、一つだけ眼が浮かび上がったのだ。それを野薔薇は何とも思わず、逆にマネキンに注意を送る。

 

それ()、抜いた方がいいわよ」

 

 祖母から遺伝したため、野薔薇は《芻霊呪法》を操れる。祖母から使い方を教わった《芻霊呪法》により、野薔薇が金槌で打った五寸釘は、ただ敵を穿つだけでは終わらない。

 

「私の呪力が流れ込むから」

 

 指を鳴らす。マネキンが苦しみ悶える。釘を起点に(ひび)が入っていく。放った五寸釘に呪力を流し込み、瞬間的に爆発させる事で対象の部位を破壊する術式。《芻霊呪法》の応用編。

 

「──芻霊呪法【(かんざし)】」

 

 瞬間、マネキンの頭部は粉々に砕け、呪霊は祓われた。

 

「……凄い」

「フフーン、まあね。伊達に経験積んでないわよ」

 

 得意げに鼻を高くして、踏ん反り返る野薔薇。

 ──瞬間、マネキンの群れの最奥にて、ごそ、という雑音が聞こえた。新たな呪霊か、とジョーカーは思ったが、その鋭眼は、段ボールに隠れる小さな靴の存在を認識した。二人がそこに近づいていく。そこに居たのは、呪霊でも何でもない、小学生低学年程度の男児だった。

 

「(遊びで入って呪いに……ってとこか)ほら、おいで。もう大丈夫だよ」

「…………っ」

 

 しかし少年は横に首を振る。野薔薇はガーンとなった。

 

「ま、まあ? 子供は美人に懐かないって言うし?」

「そうだな。仕方ないと思う」

「……サラッと褒めるのね」

「オレは怪盗であり紳士だからな。

 兎に角、悠仁を呼ぼう。アイツならこの子も接しやすいはずだ」

 

「──ま、待って!!」

 

 少年の叫声が響く。助け舟の二人に静止を求める──その背後の壁から一本の腕が透過して、男児の頭を鷲掴んだ。

 

「置いて行かないで──っう、あ」

「──────ッッの野郎!!」

「く──────!」

 

 呪霊だ。全身が毛むくじゃらの一頭身。目が蝸牛(かたつむり)のように飛び出しており、生理的な気色悪さを感じさせる。呪霊は鷲掴んだ手とは反対の手の爪を──男児の首筋に当てた。

 鋭利な爪が皮膚を破り、少量の血を流させる。垂れた血が服の襟に染みを作っていく。男児はもはや恐怖に耐えられず、双眸から恐れが形となって溢れ出る。呼吸もままならず、嗚咽も漏れ出ている。

 ……野薔薇とジョーカーは行動に移すのが遅かった。無理にでも手を取っていれば良かったのだ。部屋にいる呪いが一体だけだと思い込んでいたのが間違いだった。

 ──子供を、人質に取られた。

 

「レベルと言っても、単純な呪力の総量だけの話じゃない。『狡猾さ』……知恵をつけた獣は、時に残酷な天秤を突きつけてくる。何を捨て何を優先するか……そうなってしまったら、野薔薇はどうするかな?」

「……雨宮だったら、どうでしょうね」

「あはは。蓮だったら『呪いを祓いつつ』『命も救う』って言いそうだね。しかも有言実行しそうだし。……ああ、蓮には『その可能性しか考えられない』な。実力もまだペーペーなのに、何でだろうね」

「それほど、アイツは規格外(イカれてる)って事でしょ」

「まるで僕みたいだね!」

「常識を持ち合わせていない所とかよく似てます」

「恵、後でマジビンタね」

 

 

 29.

 

(クソ──クソ、クソクソクソクソクソッッ!!

 こんな奴に! こんな四級程度の雑魚なんかに!! してやられた! 手前の貧弱さ加減を解ってるんだ! ()()()()()()()()の人質作戦なんだ!! コイツには知性がある!! 田舎の時とは全然違う!!

 ……落ち着け私。ここで私が死んだら、次に死ぬのはジョーカー、そしてあの子……。不本意だけど、今優先すべきは私とジョーカーが死なない事……!!)

「……………………分かった。降参する。

 ほら、丸腰よ。だからその子を離して。

 ……ほら、ジョーカーも」

 

 そう言って、野薔薇は手に持っていた釘と金槌を手離した。腰に巻いていたホルダーも外し、これにて野薔薇は攻撃手段を失った。──しかしその行いが、直ぐに間違いだった事を理解する。

 

(私のバカ……アイツ全然手離す気無いじゃない……!)

 

 遊戯王のクリボーをエグい方面に進化させたようなビジュアルの呪霊は、依然子供を手離さない。失策だった。遣る瀬無さに野薔薇は唇を噛み、桜色を紅に染めていく。

 

 釘崎野薔薇が幼い頃、年上の友人がいた。野薔薇は『沙織ちゃん』と呼んでいる。都会から野薔薇のいる田舎に引っ越してきた女性で、当時野薔薇が知らない物事を何でも知っていた。野薔薇にとって『沙織ちゃん』は憧れであった。聖母のような存在だったのだ。

 しかし、そんな『沙織ちゃん』の存在を快く思わない人間もいた。……というよりは大多数がそうだった。「田舎者を馬鹿にしている」と勝手に被害妄想を膨らませ、『沙織ちゃん』を仲間外れにした。遂には村から追い出され、東京への逆戻りを余儀無くされた。そんな村の人々を、野薔薇は嫌った。家族だろうと誰だろうと関係無く、そこにいる人が嫌いだった。

 吐き気を催すほどの邪悪。野薔薇にとっては、かつて野薔薇が住んでいた田舎の皆がそうだ。『己が不快だから』というだけで友を貶し、友を蔑し、そして追い出した。そんな皆が、野薔薇にとって『不快』だった。故に祖母の反対を押し切って、田舎から抜け出したのだ。

 

(せめて最期に、一目でもいいから会いたかったなあ…………)

 

 ──しかし、その思考は、直ぐ右から感じる怨念の波動に阻まれる。──ジョーカーだ。ジョーカーはまだ、得物を手離す(諦める)つもりはないらしい。

 ジョーカーは今、この状況に(いか)っている。それは眼前の狼藉者に対してでもあり、自身の醜態に対してでもあった。

 少年を人質に取られたのは、完全に自分の失態だ。確かにナイフ捌きは鈍っていない。だが敵に対する感情は無意識のうちに軟化していた。甘く見ていたのだ。呪術を、呪霊を……命を奪られるかもしれないという死地の真っ只中を。

 

(情けない……)

 

 だが、この絶望的状況下でも出来る事はある。ジョーカーはそれに賭け、ジャックランタンから己が半身へと、半ば無意識にペルソナを切り替えていた。相手は下の下、三下以下だ。ジョーカーは、三下程度の度胸に、一か八か賭けたのだ……!

 

「バカ、ジョーカー……! 今はアイツを刺激しちゃ──」

 

 その先の言葉を紡ぐ前に、釘崎野薔薇は絶句する。武器を捨てろとまでは行かずとも、下ろすように伝えようとして、右にいたジョーカーの方を反射的に向いた。目が血走っている。普段は無表情の彼の顔に羅刹が浮かぶ。その目は未だ、屠るべき敵を見据えていた。

 ──向いた()()()()()()()()

 

(何よ……コレ…………)

 

 そこにいたのは、ジョーカーであってジョーカーではなかった。

 ──『悪魔』。血色のタキシード、漆黒のシルクハットから伸びる角。顔面に当たる部分はバイザーで、猛る怨讐が辛うじて顔を模っている。玉虫色の翼が禍々しく揺れる。それらが、彼奴が悪魔である事の証明だった。悪魔がジョーカーの背後にて佇み、今にも襲いかかりそうな勢いのままなんとか留まっていた。

 野薔薇が今まで屠ってきた呪霊や、現在人質を取っている雑魚……そして、ジョーカーが先程召喚したジャックランタンとは格が違う。野薔薇の全てが警鐘を鳴らす。声を発せない。呼吸が出来ない。すれば死ぬ。身動き一つ赦さない。恐怖に怯え、震える事さえも出来ない。呪霊もまたそれを理解し、体を強張らせる。

 

 

「その薄汚い手を離せ」

 

 

 ──その(まが)赫星(かくしょう)は、まるで、ジョーカーの怒りを代弁しているかのようだった。

 

 

 バゴォン!!!

 

 

 呪霊と野薔薇が畏怖の念に支配されているその間、突如として呪霊の背後のコンクリート壁から左手が飛び出してきた。ジョーカーも驚きのあまり注意が手に行き、ペルソナを引っ込めた。

 壁を破壊してきたという事は、位の高い呪霊か人間の膂力による物のどちらかだ。別の呪霊の可能性もあるだろう。だがクリボーの呪霊に有利なこの状況で、わざわざ参戦してくる意味は無い。であれば人間の仕業だろう。そして我々は、このような芸当が出来る人間を、ただ一人しか知り得ない……!

 

「あっれェおかしいな〜、外した?」

「もう少し左だ──()()!」

「──ん、おっけ!」

 

 コンクリート壁をブチ破り、現れたのは虎杖悠仁だった。クリボーは直ぐに子供を悠仁に向け、人質の存在を明らかにした──が、それよりも早く悠仁は屠坐魔を振り下ろした。斬、と音を立ててクリボーの腕が切り落とされる。その隙を逃す事なく、人質となっていた男児の腕を取り引き寄せ救出。人質作戦は失敗に終わった。

 

「大丈夫か?」

「うっ……うん!」

「よし」

 

 しかしクリボーの余裕は潰えない。壁をすり抜け、今度は逃走を図った。どうやら先のクリボーは、壁を透過出来る能力を持つらしい。

 

「てめ、逃げんなッ!」

「逃さねーよ! ()()ッ、その腕寄越せ!!」

「う、腕ェ? よく分かんねーけど、ほらよっ」

「褒めて遣わす!」

 

 野薔薇が制服のフロントのボタンを外した。その内ポケットにあったのは──

 

「──藁人形(わらにんぎょう)!?」

「こわ……」

「るっせえ黙ってろ!」

 

 呪霊が落とした腕の上に藁人形を乗せる。釘崎野薔薇の三つ目のキーアイテムがこれだ。人形(ヒトガタ)を敵の一部に乗せ、釘を打ち付ける事で真価を発揮する、《芻霊呪法》の本領。

 

「芻霊呪法──【共鳴(ともな)り】!!」

 

 呪力を込めた釘が、大きく振りかぶった金槌により、藁人形を貫通し呪霊の腕に突き刺さる──!

 

「おっ」

 

 廃ビルの外、すぐ正面。窓をすり抜け、先のクリボーによく似た呪霊が飛び出してきた。恵は立ち上がり、両手で鳥を模り、呪力を練る──

 

「祓います」

「ちょい待ち」

 

 ──その寸前、心臓が一際大きく拍動した瞬間、呪霊の身体から極太の釘が突き出てきた。呪霊は悲鳴を上げ、どこにも居ない誰かに助けを求めるも……その思いも虚しく、呪霊の生命は終わりを迎え、黒い塵となって消えた。

 

「イイね、野薔薇もちゃんとイカれてた」

 

 

 30.

 

「うし、勝った」

「だから俺言ったろ、一人は危ねーから真面目に行こうぜって!」

「一人は危ないは言ってないぞ、悠仁」

「あれ、そう……だっけ?」

「つーかアンタ、何でコンクリブチ破れんのよ!」

「あれ鉄コンじゃなかったんだよ!」

「鉄コンじゃなくてもフツー無理だっつの!」

 

 わーきゃー言っている二人を無視し、ジョーカーは子供の首筋に注意を向けた。

 

「──キミ、怪我が……」

「…………ぁ、う」

「あーらら、怖がられちゃってるわ」

「……致し方ない。怖がらせたのはオレだ。動くなよ」

 

 円卓のイメージが浮かぶ。

 アルセーヌとジャックランタンと、もう一体がそこに鎮座している。

 ジョーカーは『ソレ』を連れてきて良かったと心から思った。スポットライトが最後の一体に当たる。蝶の羽を持つ少女、耳の尖った、青いレオタードとストッキングを履いた蠱惑(こわく)的な少女。名を──

 

「──ピクシー、《ディア》」

 

 イングランドに伝わる妖精、ピクシー。翠色の奔流が少年の首へと伸びていき、みるみる内に血が止まり傷も癒えた。痕も残っていないようで、ジョーカーは一安心した。

 

「よし、もう大丈夫だ」

「──いやいやいやいや! ちょっと待てやオイ!」

 

 急に野薔薇に首を掴まれる。何か間違いを犯したかと一瞬だけ思ったが、本人にそんな覚えはない。何がそんなに気に食わないのかを、余裕を失ったままジョーカーは問うた。

 

「な、何? どうした?」

「アンタ、《反転術式》使えんの!?」

「はんぺんの術式がどうしたんだ?」

「何ではんぺんになるんだよ! 反対の『反』に転がるの『反転』! それを使えんのかって聞いてんの!」

「知らない……何それ、怖……」

「ぬあああああああああ反応ムカつくうううううううう!!!」

「飴舐めるか?」

「お前のせいだかんな!? 原因お前だからな!?」

「なあ、何の話してんだろーな?」

「僕が知るわけないじゃん……それよりも」

 

 ガミガミ言う野薔薇。おどおどするジョーカー。側から眺める話についていけない悠仁と少年。先の緊迫した空気は、いつの間にか霧散していた。

 

「ねーねー、あの赤いヤツ、もいっかい見して!」

「──へ?」

 

 突然男児が口を開いたかと思えば、その恐怖の対象の一つを見たいと言い出したのだ。本人は呆気に取られ、普段は出さないような素っ頓狂な声が出た。先程まで自分を怖がっていたというのに……とジョーカーは思ったが、男児は怪我を治してくれた時点で、ジョーカーに対する恐怖はほとんど無くなっており、それよりも彼の興味は、ジョーカーの出したアルセーヌに向いていたのだ。

 

「怖いけど、かっこよかった!」

「アルセーヌ? ……あの時に見たのか。相手が三下で良かったよ」

「そのお陰で隙が出来たしね」

「まあ、出すのは構わないが……最近の子の趣味はよく分からないな……」

「アンタいくつなのよ。完全に子供の誕プレに迷う父親じゃないの」

「みーせーて!」

「俺も見たい!」

「ガキかよ虎杖。あーもー、黙らせなさいよジョーカー」

「……まあいいか。

 ──来い、アルセーヌ!」

 

 顕現する赫星、アルセーヌ。サービスで翼をはためかせてやると、悠仁と少年は目を煌めかせた。

 

『おおおおおお〜!』

「アルセーヌ……『アルセーヌ・ルパン』? ルパン要素どこだよ。ソレもアンタのペルソナってやつなの?」

「最初に目醒めたのはコイツだ」

「俺ソイツしかいねーモンだと思ってたわ」

「もういいでしょ。早く帰ってザギンでシースーよ」

「お前そればっかだな。ってかさ、俺らも聞かれたけどさ、野薔薇って何で高専来たの?」

「はァ? んなモン決まってんでしょうが。

 田舎が嫌で、東京に住みたかったからよ!!!

「ええええええええええ!?」

 

 悠仁に電流走る。

 

「お金の事気にせず上京するには、こうするしか無かったのん……」

「そんな理由で命賭けられるの……?」

「賭けられるわ」

 

 その問いには即答する。

 釘崎野薔薇は、自身の友人を否定した田舎の人々を捨てた。凝り固まった概念しか持ち得ない、クソの掃き溜めには居られなかった。自身を天上天下唯我独尊と思っている訳ではない。ただ──自分の心や信念を腐らせてまで、あの田舎には居たくないと思ったのだ。

 あの日の約束。沙織ちゃんが言っていたあの店に、いつか沙織ちゃんと行くその時に、誇れる私でいられるように。

 

 

「──私が私であるためだもの」

 

 

 気高く、優美に。

 釘のように、薔薇のように。

 釘崎野薔薇は曲がらない。

 

 ──沙織ちゃん。私、東京に来たよ。

 

 

「……強いんだな、君は」

「意地みたいなモンよ。ともあれ、私が死んでも、ジョーカーが死んでも、この子が死んでも、明るい未来は無かったわ。そういう意味では、感謝してる。

 だから──ありがとね。()、悠仁」

「…………ぉ、おう」

 

 その立ち振舞いは、凛と咲く赤薔薇のようでいて。

 二人に見せたその笑顔は、向日葵のように晴れやかだった。

 それこそ女性経験のない朴念仁の悠仁でも、頬を赤らめる程には……。

 野薔薇からの信頼を感じる……。

 

 


我は汝、汝は

汝、ここにたなる契りを得たり。

 

契りはち、

囚われをらんとする反逆の翼なり。

 

我、『帝』のペルソナの生誕に祝福の風を得たり。

自由へとる、更なる力と成らん……。


 

 

「……ンまあ、理由が大きけりゃいいってモンでもないよな」

「ハイ、お礼言ったからチャラー! 貸し借り無ーし!」

「な、何だコイツ……」

「はは」

 

 

 31.

 

「家、こっち! ありがとう、ジョーカー!」

「気をつけろよ」

「うん!」

 

 手を振り、男児が笑顔で帰っていく。夕刻、門限の時間にはどうやら間に合いそうらしい。蓮も手を振って見送った。

 

「しっかり切り札が板に付いてきてんじゃん。やるね」

「最強にそう言ってもらえるなら、切り札を担った甲斐もあるな」

 

 一方廃ビル前。悠仁の隣で、貧乏揺すりで制服が擦れる音がする。不機嫌さを隠そうともしていない野薔薇によるものだ。二人は廃ビルから脱出し、子供の保護も完了して、見送りを恵と悟、蓮に任せた。しかしその後が問題だった。

 遅い。五条悟が遅い。子供を送り届けると言っておきながら、かれこれ一時間は待っている。家が遠いのであれば仕方ないが、子供はおよそ小学生低学年だ。小学生の行動範囲など高が知れている。そう遠い所に住んでいる訳でもないだろう。だのに往復一時間もかかるものなのか、と野薔薇は空腹も相まってイライラの臨界点に到達しようとしていた。

 

「……ねえ悠仁。私お腹空いてんのに待たされんの大っ嫌いって話する?」

「しなくていーよ分かったから」

 

 ──と、噂をすれば何とやら。蓮と恵を引き連れた悟は、ようやく空腹の獣二匹の元へやって来たのだった。

 

「お疲れサマンサ〜、子供は送り届けたよ。今度こそ飯、行こっか!」

「ビフテキ!」

「シースー!」

「フッフッフ、ンまっかせなすぁ〜い!」

 

 今回の戦闘を経て、悠仁と野薔薇は仲を深めたようだった。

 夕焼けが空を黄昏へと導く。原宿駅へと向かうその道中でも、会話は絶える事はない。仏頂面に拍車がかかる恵にその理由を悠仁が問う。

 

「あれ、どったの恵?」

「……別に」

「出番が無くて()ねてんの」

「プップー、うに頭〜」

「おい雨宮、お前釘崎に教えただろ?」

「えっ、野薔薇に? 何の事だ……?」

「そんな頭だから性格もツンツンしてるのよ」

「雨宮……!」

「いやオレ本当に何も知らないぞ!?」

『あっはははははははははは!!』

 

 新たな生活。呪術師としての生業。蓮は今しがた、呪術師として生きる事の苦渋を学び、戦う時の意気込みや執念を思い出した。次は今日のように上手く行かないかもしれない。不安は泥のように、蓮の脳裏にへばり付いて離れない。

 ──けれど今はただ、この新しい日常の平穏の中で、笑い合っていたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記録
二〇一八年七月

 

 西東京市 英集少年院 運動場上空にて、特級仮想怨霊(名称未定)の呪胎を非術師数名の目視で確認。緊急事態のため、高専一年生四名が派遣され──

 

内一名 意識不明の重体

内一名 死亡

 

 

PERSONA5 in Jujutsu Kaisen

Let us start the game.

#5 For me to be me.

*1
神奈川




コープ獲得:女帝(釘崎野薔薇)

章ごとに情報が解放されていく形式の雨宮蓮の設定欲しい?

  • オ…オタカラァ…!
  • どうでもいい…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。