目指すは孫悟空   作:黒沢

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修行と蠢く影

 修行は始まった。

 主に修行内容は、亀仙人の修行内容と俺独自の修行をみっちりと緑谷には教えた。緑谷はまず基本がなっていない。ヒーローになりたいと強く焦がれていた割に体の方は全く鍛えていなかったようだ。気についてはまだ説明する段階じゃない。

 

 

 最初は運動公園を何週という修行を与えた。最初のうちはヘトヘトで帰って来ることが多かったが、徐々に速度も上がり、体力面も鍛えられていたようだ。

 次に、俺は石を探させる修行を行った。これは、最初の頃はかなりキツかった。神面的にもかなり参って来るし、集中力もいる。体力面はもう大丈夫だろう。緑谷は絶望したような顔をしていたが、俺は気にせずやらせた。因みに、俺はすぐに見つけ出してそのまま緑谷を待つことにした。

 

「見つけたよ……!竜河君……!」

 

 とこんな感じに疲れ果てた姿で緑谷は俺の下に戻って来た。ヒーローを目指しているという志は折れはしないってことか……。ますます俺は緑谷のことが気に入ったかもしれない。本来なら此処で次に牛乳瓶配達と言いたいところだが、生憎俺にはそれはできなかった。だから此処で俺はある策を練った。

 

「緑谷、お前100キロ以上の重りをつけて走れ」

 

「え……?」

 

 緑谷は再度絶望していた。

 いきなり無茶難題を押し付けらた。そんな顔をしている。しかし、緑谷はそれでも何度も諦めはしなかった。時間はかかったが、何百段もある階段を何度も何度も往復してみせた。

 

「ぜぇ……ぜぇ……!もう僕駄目かも……!」

 

 大の字になり緑谷は呼吸を荒くしていた。

 その後も畑作業の手伝いだったり、海を何往復も泳がせたりしていた。そんな日々が一ヶ月ぐらい続いていた。精神と時の部屋っていう場所があれば、そこで鍛える事も出来たのかもしれないが、無いものに縋っていても仕方ない。そういや、この世界って神様って居るのか……?いや、居たとしても位置が分からない以上無理だな。今度探してみるか……。でも、ドラゴンボールの世界じゃないから居ないんじゃないか……?

 緑谷の修行を見ながら、一緒に走っていると俺は最初の頃を思い出す。重りの重さに何度弱音を吐きそうになったことか……。今では軽々と100キロ以上の重りをつけて毎日階段ダッシュをしているが……。

 

「さて緑谷、この一か月間よく頑張ったな。随分鍛えられたんじゃないか?」

 

「そうかな?体つきとかは確かに変わったけど、あんまり実感が湧かないかな……」

 

 前まではヒョロガリだった緑谷は男らしい体つきになっている。筋肉フェチとかが見たら喜ぶこと間違いなしだろう。

 

「さて此処からは実践だ。本来なら俺と組手と言いたいところだが、今のお前の実力じゃそれはまだ先になりそうだ。だから、今回はヴィラン退治に行ってもらう」

 

 丁度よく今さっきネットニュースで近場でヴィランが暴れているという情報が入った。ご丁寧に場所まで書いてくれている。これなら、瞬間移動である程度は探れるだろう。

 

「ヴィラン退治……?それって大丈夫なの?」

 

 この世界ではヒーロー以外の人間がヒーロー活動することはあまり良くないらしい。確かそういう奴らをまとめて"ヴィジランテ"とか言ったな。俺もそういう人間になるのだろう。だが、すぐ瞬殺させてその場から消える為バレていない。なんなら、バンダナ姿のグレートサイヤマンみたいな格好してるから絶対に俺だとバレることはないはずだ。

 

「色々と思うところがあるだろうが……。これが一番手っ取り早い」

 

 と言うと緑谷は良い声でやると宣言した。良い覚悟だ。

 

「予めお前にはこの仮面とパーカーを用意してある。準備でき次第俺に声をかけろ」

 

 緑谷はすぐに仮面とパーカーを着てフードを被る。俺は緑谷に肩に掴まるように言った。指先に意識を集中させて気を探っていた。近場でデカい気……。何か混じっているような気だが……。これはなんだ……?とにかく現場に向かうか……。

 

 

 現場付近に来ると、既にヴィランは見境なく暴れているようだ。緑谷は瞬間移動について聞きたそうにしていたが、自分の頬を叩いて集中していた。

 

「大丈夫だ、今までの経験を活かせばお前ならやれる」

 

「分かったよ……!」

 

 緑谷は現場へと行く……。

 男は先ほどまで暴れ回る馬のように暴れていたが、そんな緑谷を見て標的にしたかのようにして飛びかかっていた。

 

 

 

 

 

 

 ††††††

 

 

「グァァァッ!」

 

 男の人の頭には血管のような物が浮き出ている。凄いグロテスクだ……。これも個性なのだろうか……。

 男の人は飛びかかって来た僕は急いでそれを回避すると、男の人は僕に攻撃を入れようとする。急いで僕は防御の体勢を取ると、男の人は何度も何度も拳を入れて僕の防御を崩そうとしていた。その度、威力は増していっている。

 

 僕はひたすら連撃を耐えていた。この人の個性……。

 この徐々に威力が上がるこの感じ……。間違いない、増強系の個性だ。このまま押されると確実に僕がやられる。考えろ、考えろ……!そして、思い出せ……!厳しかった、この一か月間を……!そして、僕はこのときある手段を思いつく……。

 

 僕は拳を見る前に回避行動を取る。すると、攻撃は回避できた。僕はそのまま回し蹴りを入れようとしたが、男の人はそれを受けて物ともせず僕の顔面に一発を入れてきた。痛い……。なんて痛さなんだ……。痛いけど、これが実践なんだ。とにかく今は痛みを堪えて戦うしかない……。

 

 男の人は再び僕に飛びかかろとしていた。僕はそれを見てから彼の腹部に思いっきりパンチを入れるようとするが失敗。前転をした後、再び連撃が来ると踏んだ僕は防御の体勢に入った。しかし、足元を見ると隙だらけなことに気づき……。足元が留守になっていたのを見て、僕は足払いをして男の人の体を倒す。

 男の人は体勢を崩し、よろめいていたがすぐに体勢を整えて立ち上がった。そう来るよね……!なら、此処で僕が取る行動は……。この一撃に賭けることだ……。

 

 一瞬、僕の手が光ったように見えた。右ストレートの要領で僕はパンチを繰り出す。パンチを繰り出すと、あまりの速さに追いつけなかったのか男の人の顔面に直撃すると、男の人はそのまま吹っ飛んでいき、倒れて行った。

 

 

 

 

 

 

 虚無に等しい時間が続く中、人々が僕に対して賞賛の声を向ける。

 

「ありがとう……!キミこそが我々の救世主だ……!」

 

 そんな言葉を投げかけられ、僕の中に熱い気持ちが湧いていた。ああ、そうか……。こんな僕でもヒーローになれるんだ。もう二度とヒーローになれないかもしれないなんて迷ったりしない。僕は必ずヒーローになるんだ……!

 

†††††† 

 

 

 

 

 

 

 緑谷が賞賛される声を聞きながら、俺は無言で拍手をしていた。この一ヶ月でこれだけの攻撃を見せてくるとは……。しかも、最後の攻撃あれは気を纏った攻撃だ。無意識とはいえ既にそこまで成長していたか……。

 俺は瞬間移動した後緑谷の手を掴み、誰にも気付かれない速度で急いで移動した。

 

 

 

 

「どうだ?初めてのヒーロー活動ってのは?」

 

 息を若干荒くしている緑谷を見ながら俺は言葉を続けていた。

 

「凄く疲れた……。でも、その分凄く嬉しかった……。僕でもヒーローになれるって分かって……!」

 

 良い顔をしていやがる。

 俺はそんな緑谷を見ながら、緑谷の母親の気を探る。そして、探り当てて俺は緑谷の家の前に着く……。

 

 

 

 

「い、出久……!」

 

 傷だらけになっている息子を見て母親は心配そうに駆け寄る。緑谷の母親は俺と緑谷が一緒に修行をしているということを知っている。

 

「すみません、今回の修行で思ったより酷い怪我を負わせてしまったみたいで……。病院代は俺が出しますので……」

 

「いえ、いいのよ……!龍司君」

 

「本当は、いつもボロボロに帰って来る出久を見て不安になるときが多かったの……。でも、ヒーローになりたいんだって今でも夢見ている出久を見て応援してあげなくちゃって思うようになったの……。龍司君はこの子に修行をつけてあげてるんでしょ?」

 

 怒られると思っていた……。

 流石に今回はかなり酷くやられている。今までだって俺はこいつをボロボロになるまで修行をさせたことはあった。だから、そんな子供の身を案じてもう二度とこの子に近寄らないでと言われるぐらいのことは考えていた。なるほど、通りで緑谷が強く成長することだ。

 

「はい。あいつは……緑谷は強いです。今日だって危険な目に遭うのかもしれないのに……。俺の修行とはいえ勇敢にヴィランに立ち向かいました。そして、緑谷は勝ちました。あいつは人々から声援を送られてとても嬉しそうにしてしまいた。俺はそれを見て思いました」

 

 

 

 

「あいつは間違いなくヒーローです」

 

 俺は正直に話をした。この人は間違いなく強い。

 強さとは力を表すものではない。時に心を表すときにも用いる。だから、俺はこの人は強いと思った。だから、俺は正直に話をした。

 

「あの子がヴィランに勝ったなんて……」

 

 母親は心配そうにしていたが、何処か心の中で嬉しそうにしていた。

 

「そう、もうあの子の夢は現実になっているのね……」

 

 涙を流しながら、母親は緑谷の夢が夢物語から現実になっているのを感じ始めていたようだ。

 

 

 

 

「龍司君、あの子は不器用な子だけどこれからもよろしくね……」

 

 

 

 

「はい、任せてください」

 

 

 

 

 

 

††††††

 

 とある研究所……。

 

「あの程度の個性の持ち主ではやはり駄目か……」

 

 大きな脳のようなものを持っている機械のような体の持ち主……。

 

「早く現れろ、オールマイトよ……。私はお前の偉大なる体が欲しいのだ。お前の体を手に入れたとき、私は完璧な存在となるのだ」

 

 

 

 

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