目指すは孫悟空 作:黒沢
森林の中……。
俺と緑谷は二人で修行をしていた。
「緑谷この一ヶ月間厳しい修行だっただろ」
修行をある程度終えた俺達。
休憩がてらに俺は緑谷に話しかけていた。それにそろそろ頃合いだろうからな……。
「そうだね、最初は色々大変で竜河君の修行に追いつくのがやっとだったよ……」
と話している緑谷。確かに最初の頃は絶望したかのような顔を何度もしていた。
「だろうな。大変だっただろうが、今こうして強くなれたのはお前が乗り越えたからだ。それは誇っていい」
緑谷は小さくガッツポーズをしてみせていた。
この一か月間とそしてあの実戦練習。最早俺を黙らせるほどの実力はある。だが俺を超えられるほどではないだろう。
「さて此処からはもっと実践で使えるものを教えて行くとする。まずは見ていろ……」
気を集中させる。
「か‥…」
俺は足を広げて、両手首を合わせ手を広げる。そして、そのとき腕を腰の方に持って行く……。
「め……」
腰辺りに来た腕を見てから「め」と発音する。
「は……」
集中し気が集まって行く……。
「め……」
手の中に光の球体のような物が現れる。
そして、球体は大きくなっていく……。
「波……!」
一気に両手を前に突き出し、そこから光の球体となっていたエネルギー波が放出される。その名もかめはめ波。孫悟空の代名詞とも呼べる技だ。かめはめ波が放たれた場所を見ると、木々が倒れ、地面は焼き焦げていた。
「これが俺の必殺技、かめはめ波だ」
緑谷の方を見ると、口を広げてまるでとんでもないものを見たかのような顔をしていた。
「す、凄い……!こんな技を持っていたなんて……!でもどうやってやったんだろうか……!やっぱり竜河君の個性によるものなのだろうか……!構えがあるからちょっと隙ができるけど、これだけの大技を使えるならそれは最早デメリットじゃない……!」
緑谷はどうやって発動したんだろうと必死に自分のノートに書いていた。
「ごほんっ、いいか?」
俺が咳払いすると、慌ててノートを書くのをやめていた。
「あっ、ごめん!」
「これは基本的に体内の"気"スピリットとも呼ぶが……。好きなように呼べ。そしてさっきのはエネルギー化して放出する技だ」
「気……?」
おっ、気という単語に食いついたか……。
これは話が早くて助かる。
「気ってのは誰にでもある体内に隠されたエネルギーのことだ」
最も使いこなせるかは本人次第だが……。
試しに俺は変化型の気功波を作り出す。そう、それはベジットソードや神烈斬のようなものだ。流石にゴクウブラックのように気の鎌を作り出すことはできなかった。あれ次元の裂け目みたいなのを作り出していたから相当修行しないと出来ない可能性が高い。
「え?じゃあ、僕にもあるの!?」
誰にでもあるという言葉に対して深く反応を示す緑谷。
「ああ、言ったろ。誰にでもあるって……。気ってのは使い方次第では色々と応用ができる。そして、コントロールができるようになれば空を飛ぶことだってできる」
「え!?空を飛ぶことが……?」
ああ、そうか……。こいつの前では俺は空を飛んだことはなかったな。いや、それ以前に俺はこの世界に来てから舞空術を練習するために使用したこと以外使ったことはあまりない。この世界は気難しいことに無許可での個性は使用禁止だ。舞空術は個性じゃないが、警察に見つかったときにわざわざ事情を説明するのがめんどくさい。だから、瞬間移動したときもあまり人目につかないところに瞬間移動した。ワープ系の個性持ちと思われたくないからな。
「この通りな」
俺が浮遊すると、瞠若していた。そこまで驚くことか……?
「凄い……!その気を使えるようになったら、色んなことができるようになるんだね……!じゃあこの前のワープみたいな個性もあれも気の一種なの?」
「ワープみたいな……?ああ、瞬間移動のことか……。その通りだ。相手の気を探ってその付近に移動できるってわけだ。相手の気が分からねえとそこに移動できないけどな……。位置とか分かれば移動できたりするが……」
瞬間移動は最初から使えた。サイヤ人絡みの力ではないが、恐らく神様が気前よく使えるようにしてくれたのだろう。
「相手の気というのを探ることで瞬時にそこに移動できるなんて……!この技は戦闘にも応用できるんじゃないのか……!」
戦闘にも応用できるか……。確かに悟空が使っていた瞬間移動かめはめ波って技がある。練習相手が居なかったから試したことは一度もない。緑谷が強くなったら試してみるか……。ちょっと可哀想かも知れんが……。
「あっ、ごめん……!また僕一人でブツブツと……」
「その分析力は素直に素晴らしいもんだ。さてお前にはこれから気を会得してもらう」
「お前は既に気というものを無意識にだが使用できている。ヴィラン退治のときお前は僅かにだが気を纏って攻撃をしていた。だから、お前には気の素質がかなりある」
あの拳に気を纏った攻撃……。見事なものだった。
「え……?僕が……?あのときは無我夢中だったら気がつかなかったよ」
緑谷は自分の体を確かめながら踏ん張るが、気を集まらないようだ。
「無我夢中でも気を纏えること自体すっげえことなんだ」
「そ、そうなんだ……。無意識に発動していたからあんまり実感湧かないや……」
「さて話は此処までだ。早速気の修行を開始するぞ」
気を使えるようになるには長期の鍛錬が必要だ。ビーデルさんも短い期間で舞空術を使えるようになったのだから、無意識のうちに気を纏えた緑谷だって出来るようになるはずだ。俺は緑谷をみっちりと鍛えながら気の練習を行った。
それから約数週間が経った。
「ある程度は出来てきたな……」
気を扱えるようになってきた緑谷。
数週間で此処まで使いこなせるようになるとは正直驚いた。
「それじゃあ緑谷飛んでみろ」
緑谷は気を足に集中させ始め、徐々に空中を浮き始めていた。
驚いたな。まさかもう此処まで成長するとは……。気のコントロールだけだからそう難しいものではないが……。
「え……?嘘……?僕飛べてる……!」
緑谷は周りを少し飛び回る。
落ちることなく持続できているようだ。
「凄い……!気というのがまるで僕の個性になったみたいだ……!」
緑谷は自分に個性ができたようだと喜んでいた。さて、あいつも空飛べるようになったことだからそろそろ……。
ん?なんだこの気……?近くに邪悪な気を感じる。俺達のことを見ているようだ。緑谷にはまだ気を感じ取る練習はさせていない。もし仮に自分自身で覚えていたとしても気を茫然と感じる程度ぐらいだろう。それでも充分だが……。
「緑谷……」
「うん。僅かにだけど近くに邪のような気配を感じる」
悪い気と良い気の違いまで見極めるようになっていたか……。
まさかそこまで行っているとは……。流石、俺が見込んだだけはある。
「こそこそしてないで出て来いよ……」
瞬間、二人の男が目の前に現れる。男たちは不敵に笑いながら俺達に近寄って来る。そして、すぐに消えて俺の背後を回って来た。俺はすぐにそれに気づき一旦距離を置くと、男は再び俺に近づこうとして消えた。消えたり現れたり忙しい奴だ。
「緑谷、此処は二手に分かれて戦うぞ……!」
「うん、分かった……!」
緑谷と一旦離れて、俺は男と戦い始める。
拳と拳がぶつかり合う。気を感じ取っていた段階で気づいていたが、こいつ中々やる。拳は中々に重い。だが、倒れてしまうほどの拳ではない。俺は再び拳を入れようとするが、男は消える。そして、今度は俺に多重残像拳を仕掛けて来た。
俺は本体を衝撃波で見破り、そのまま拳を入れた。ようやく一発拳を入れることに成功する。
「お前達の狙いは何だ?」
男は血を拳で拭きながら、ニヤリと笑う。
「答えるつもりはないってことか……。なら、口を開きたくさせるまでだ」
再び激しい攻防が続く……。俺が無数のエネルギー弾を投げると弾き返し、エネルギー波を放ってきた。こいつ、気を使えるのか……。やっぱ、只者じゃねえ……。
「お前気を使えるのか……。なんで使えるのか気になるがどうせ教えてくれはしないんだろ?」
その通りとでも言いたそうに男は笑みを見せる。
そして、男は今度は無差別に攻撃をし始めた。チッ、連続エネルギー弾か……。面倒な技を使う……。
「面白い。少しはやるじゃねえか……!なら俺もほんの少しだけ本気で行かせてもらう……!」
体に一旦白いオーラが出て、俺の気が解放される。
そして、瞬間移動で一瞬で消えて男の背後を取り俺は両手を握り、そのまま力強く振り下ろすと地上へと落下されていった。この程度でくたばる訳がない。俺はかめはめ波の構えをする。
「波……!」
地上に落下した男に対して追い打ちをかけるようにして、俺はかめはめ波を放った。煙が巻き上がる中、俺は警戒しながら煙が晴れるのを待っていた。
そして、煙が晴れるとそこには倒れている男の姿があった。どうやら、こっちの奴は倒せたようだな。緑谷の方を確認しに行くと……。
緑谷の方も終えたようだ。
「はぁ……はぁ……」
緑谷は息を荒くしていた。
体を見ると、怪我をしているようだ。辛勝と言ったところか……。だが、今回の相手に勝てた。それだけで充分だ。
「よく頑張った、緑谷」
「う、うん……。ありがとう……」
俺は緑谷の肩を軽く叩いた後、地上に下りて二人を縄で縛って動けないようにした。俺と途中まで戦っていた奴がこの程度の縄で拘束できると考えられないが、いざとなれば金縛りでも使えばいい。
「お前らに聞くぞ……。何故俺達を襲った?」
すると、先ほどまで俺と戦っていた男がこちらを見ながら笑っていた。
「強い個性を持つ奴らを集めてあのお方の力で洗脳する為だ」
「洗脳だと……?」
洗脳……。
そういえば、ドラゴンボールに洗脳されたピッコロが出て来たことがあった。まさか……。
「そしてあのお方の願いはオールマイトの体を手に入れること……。No.1ヒーローであるオールマイトのな……」
間違いない……。
こいつらが言っているあのお方とは……。
「オールマイトの体を奪うだって……!?そんなことできるわけがない……!オールマイトは強いんだ……!」
「強いからこそだよ……。そして、あのお方は何が何でもオールマイトの体を手に入れる」
男は高笑いをしながら、そう話していた。
はたして、オールマイトと呼ばれている男があいつに勝てるだろうか……。俺も正直……。いや、俺には"あの技"がある。まだなんとかなるかもしれない。
「そんなことより俺たちと話してていいのか?今お前らの町は洗脳された奴が暴れ回って大変なことになっているだろうぜ……」
「なんだって……!?」
気を探ると、あのときと同じく何かが混ざったような気を感じ取れた。いや、待てよ……。この気は……!?
「間違いない、この気は……かっちゃんだ。行かなくちゃ……!」
緑谷は急いで爆豪の下へ向かった。
俺はこいつらを気絶させてから、瞬間移動で現場へと向かった。恐らく、オールマイトの体を欲しがっているという男……。
それは間違いなく、Ⅾr.ウィローだ。