目指すは孫悟空 作:黒沢
長らく更新の方が途絶えてしまって申し訳ありませんでした。
Dr.ウィローとの熾烈を極める戦いの後、俺たちは病院へと運ばれていた。
№1ヒーローオールマイトと名乗る男性は俺のおかげでウィローを倒すことが出来たと言っていた。俺はあのとき、死に物狂いで立ち上がって最後の攻撃を放ったに過ぎなかった。その攻撃があの男に通じたというのなら、良かったと言う言葉が相応しいかもしれない。
でも、あそこまでボロボロになっちゃ意味ねえか……。
それはオールマイトやその他の警察関係者からも酷く注意された。今回上手く行ったとはいえ、次も上手く行くとは限らないだろう。それにウィローははっきり言って俺の界王拳でようやくギリギリと言ったところだった。最悪、俺の体の方が根を上げて死んでいた可能性だってあるだろう。
もっと強くならなくちゃいけない……。
「ところで竜河少年、少し話があるのだが……いいかね?」
「俺にですか……?分かりました」
№1ヒーローが俺に話……。
いったいなんだろうか……?と不思議に思いながらも俺は病室から立ち上がり、屋上へと向かうのであった。屋上からは冷たい風が流れていた。風に打たれながら少し待っていると、オールマイトの体の様子がおかしいことに気づいた。
「オールマイト……?」
先ほどまで筋肉の塊のようなオールマイトの姿はなく、そこに存在していたのは痩せほせているただの一般男性のような人物が立っていた。
「先ほどまでのは謂わば私のヒーローとしての戦闘モードでね……」
「つまり、俺の界王拳みたいなものと似たようなものと言ったところですか?」
「あの赤いオーラのことかね?確かに、あれはかなり消耗が激しいモードではあったね……。あのモード長くは使えないんじゃないのかい?」
「そうですね……。界王拳は長時間使用できるような品物ではないです……。……オールマイトは俺のことを聞きに来たんですか?」
どう考えても俺のことを聞きにきた訳ではないというのはなんとなく理解していた。
今までのもただ話を繋げるための雑談と言った感じなのは分かっていたからだ。
「そうだね……単刀直入に言うよ。私の個性を引き継いでみないか?」
「個性を引き継ぐ……?」
この世界ではそんなこともできるのか、と少し驚愕しているとオールマイトは話を続けていた。
「キミは少年でありながら、ヴィランに真っ向から立ち向かっていた。無茶をし過ぎていたとはいえ中々出来ることじゃない。キミになら……私の個性を是非伝授したい……!」
悪くはない話だ。
俺にとってもオールマイトにとってもオールマイトの個性を引き継ぐことが出来れば更なる力も手に入って俺はよりあの人に近づけるかもしれない。
だけど……。
「すいませんオールマイト……。せっかくのお願いですが俺は遠慮しておきます……」
「えっ!?そうなの!?」
俺に拒否されるとは思っていなかったのか、オールマイトは少しばかり驚いている様子であった。
「確かに俺にも悪くはない話だとは思います。ですが、俺は自分の……自分の力で強くなりたいんです」
「……キミはどうして強くなりたいんだい?」
「それは……俺にとってのヒーローと言える人に憧れているからです。その人は戦うことが好きで今まで悪さをしていた奴らも感化させて仲間にさせてしまうような人なんです……。だから、俺もそんなふうな人になりたいんです。どんな敵が相手でも戦うことを好きなのを忘れない……俺が憧れたヒーローのように……!」
俺にとってのあの人とはそういうものだ。
俺はあの人の亀仙人流の教えを守って戦い、どんな相手でもワクワクを忘れない。俺はあの人のああいうところに憧れた。
テレビや漫画を見ていつも思わされた。
俺もあんなふうになりたいと……。だから、この世界に来て俺は思った。俺はこの世界であの人のようになりたいと……。今の俺は遠く及ばないけど、だけど絶対いつかは「ワクワクすっぞ」と言われるような存在になりたいのだ、と……。
「なるほど、そこまで言うのなら私も引き下がろう……」
「オールマイト……一人紹介できる相手なら居ます」
「なに!?それは誰だい……?」
俺の話に食いつくかのようにして顔を覗き込んでくるオールマイト。
「緑谷です」
「緑谷……?確か、キミが戦う前に戦っていた少年のことだね……。確かに緑谷少年も中々見どころがありそうではあったが……」
「あいつは中々なんてもんじゃないですよ……。力の使い方を教えたのはほんの一ヶ月前なんです。しかもあいつは無個性です……。この世界じゃ無個性なんてものは疎まれているようですが、あいつは俺や貴方なんかより勇気を振り絞ってウィローや爆豪に立ち向かった。ありゃ、間違いなくヒーローですよ」
実際、俺は緑谷の戦いっぷりを見ていた。
少しばかり単調の動きが目立っていたが、それでも爆豪の勝機を取り戻すことに成功してウィローにかすり傷を与えることに成功していた。一ヶ月の鍛錬にしては上出来もいいところだろう。
「まさか緑谷少年にそれほどまでの才能があったとは……。いや、それよりも彼は一番先に動いた。我々が何も出来ないなか、しかも無個性というハンデがあるというのに……」
「分かった、竜河少年……!緑谷少年に聞いてみるとしよう……私の個性を継承するかどうかを……」
「ええ、あいつはかなり伸びしろがあるんで……頼みます」
オールマイトは俺との話を終えて、病室を去って行く……。
「はぁ……疲れた」
結構熱中して喋っていた為、俺は倒れるように病室のベッドに仰向けになっていた。
緑谷、これからもっとお前は大変だと思う。だけど、お前ならきっとやり遂げることが出来るはずだ。