目指すは孫悟空 作:黒沢
「まさか私まで竜河少年たちの修行に付き合うことになるなんてね……」
何もない殺風景の荒野のなか、ただ一人立ちながら舞空術で修行をしている竜河達のことを見つめていた。
「だがこれは自分を見つめ直すいい機会でもある……」
オールマイトもまた舞空術で空を飛び、竜河達の修行に付き合うのであった。
数日前……。
「なんと私も竜河少年たちの修行に!?」
「はい、この先何があるか分かりません……貴方も体を鍛えておくというのはどうでしょうか?」
緑谷がおよそ1トンに及ぶ重りを見に付けながら周りを歩いていると姿を背後に二人は話していた。
「この先またウィローのような奴が現れるかもしれません。現状、俺達が戦えるような証明がない以上頼れるのは貴方なんです」
戦える証明がないというのは竜河達、二人がヒーロー活動を行うのは原則禁止されているからだ。
今まで行ってきた行為は目を瞑られて来たが今後はマークされていることもあって中々そういうことは出来なくなってきていたのだ。
「分かった、竜河少年の修行……私も付き合うことにしよう」
という理由でオールマイトが修行に付き合うことになったのである。
修行内容は最初は簡単だった。舞空術が使えないオールマイトに舞空術を教えることから始まった。一から基礎ということもあり、竜河や緑谷も付き合うことになったがオールマイトは見事一週間で舞空術を使いこなして見せていた。
「空を飛べるオールマイトって……最強なんじゃないのか……!?」
飛んでいる姿を見ながら緑谷が興奮のあまりそんな声を上げていた。
確かに今まで自分の能力のみでジャンプをしていたりしていた彼が自由自在に空を飛べる力を手に入れてしまえば、最強に近しい存在になってしまうだろう。
だが、修行は此処からであった。
次に始めたのは気の特訓である。
だが、これはあまり原作では説明されてはいない。だが、気を会得した者に該当するのはそれぞれ長期的なパワーアップなどによるものである。分かりやすいのがナメック星編のベジータであろう。あのときのベジータは地球にやって来た際かなり追いつめられ、地の淵からのパワーアップで会得することが出来たのである。
つまり、竜河が選んだ修行法というのは……。
「随分と奇妙なところだね」
「此処は精神と時の部屋と呼ばれている場所です。俺や緑谷が一ヶ月も居るのが困難だった場所です」
「なるほど……確かに一ヶ月も居られなそうな場所だ」
流石のオールマイトもこの部屋の異質さに気づいていたようだ。それもそのはず、既にこの部屋の中はマイナス40℃の世界になっていたのだから。日本の寒さとは桁違いであり、それを肌で感じ取れば流石のオールマイトも寒く感じるであろう。
「それで竜河君……私は何故この部屋に呼ばれたのかな?」
何も言わず、体に赤いオーラを纏わせてそのまま界王拳を発動させる。
「オールマイト、これから貴方と本気での模擬戦をお願いします……。俺も個人的に貴方の本気を知りたいので……」
緑谷と過酷の精神と時の部屋での修行を終えた彼にとって、今の自分がどれだけやれるのかを試すにはいい機会だということが考えていた。なにより、№1ヒーローの実力を測るにはちょうどいい機会だと考え、少しワクワクしていたのだ。
「なるほど、確かにいい機会だ……。私も本気のキミを見れるいい機会だ……!」
№1ヒーローが相手だ。
手を抜くの失礼ってもんだろう。なら、俺がすべきことは……。
「界王拳……10倍だ!!」
全力で相手をするということだ。
この人相手に手を抜くのは失礼だ。それに俺も今自分がどれだけやれるのかを試してみたい。
「はぁ……はぁ……流石はオールマイトですね」
「竜河少年こそ中々の強さだったよ……その界王拳という技流石の私もヤバいと思ったよ」
この戦い、負けたのは俺だった。理由は簡単だった、界王拳はスタミナ切れを起こしやすい形態だ。その形態を維持するのはかなり難しいしなによりこの形態ばかりに頼るのは駄目だ。使うとしても戦闘につき一回と考えるのが無難だろう。それ以上は持たない。二回目の発動はあまりにも危険すぎるのだから。
界王拳が切れ、体力を消耗しているときはかなり弱点となるだろう。実際、オールマイトに気を使っての拘束技をされて俺は手も足も出なかったのだから。
「自分の力を見つめ直すいい機会にもなったか……」
なにより気の力を得たオールマイトと戦うのはかなり厳しいものであった。
彼が放つ気弾などは一つ一つが重くまともに受けていたらこちらがかなり削られていた可能性は高いだろう。気の応用もかなり使いこなしたようで、指から小さな気弾を放ったり変化型のギャラクティカドーナツのような拘束系の技も使っていた。様々なヒーローを活動してきたオールマイトだからこそ出来る芸当だろう。
それにオールマイトの持つ個性、ワンフォーオールとの併用もかなりのものであった。最後に放たれたデトロイトスマッシュと気の併用はかなり強力なものでガードが間に合わなければやられていただろう。
これで全盛期ほどの力ではないというのだから全盛期がどれだけの強さだったのか気になるところだ。
「それは……ありがとうございます……」
№1ヒーローからの有難いお言葉……。それは何事に代えがたく嬉しいものだった。
「オールマイトこちらを飲み込んでみてください……」
「これは?」
「体力が回復する仙豆という代物です」
俺はオールマイトに仙豆を渡した。この仙豆というアイテムはこの世界にもあったのだ。
カリン様から受け取っていたが少量しかないものであったが、俺は少し試してみたいことがあった為、オールマイトに渡していた。
「やはり駄目でしたか……」
頭の何処かで少しだけ考えていたように昔の傷は消せないようでオールマイトの体に残っていた。
あの傷はその昔オールマイトが付けられた傷だと言っていたが……。それを消すことは出来なかったか。
「いや、竜河少年……。確かに傷を消すことはできなかったが、力の方は全盛期とまでとは行かないがかなり戻ったようだ」
傷を消すことは出来なかったが、それでもオールマイトの力を取り戻すことは出来たようだ。
俺はそれに少し安心しながらも同時にワクワクしていた。
「そうでしたか、それは良かったです……ではオールマイト」
「どうしたんだい竜河少年?」
「もう一度手合わせお願いできますか……?」
全盛期の頃に近いオールマイトと戦えるなんてこの上なく幸せなことだ。
これは拳を合わせるしかないと俺は考えていた。
「構わないよ、今度は手傷を負うことなく倒すと予告しようか……!」
「それは楽しみですね……!」
なにより拳を合わせることは、ワクワクするのだから……。