「その事件は2日前、スランプに陥っていた矢先に起きた。怪しげな車から降りるやしげな覆面の男4人。彼らが車から引っ張り出したのはなんといたいけな少女だった!!」
「そんな少女よりも気になるものを持っていたので、いやいや首を突っ込む事になるのでした」
「事件はまだ始まったばかり…… それでは第13話、いってみましょ!」
「…なんでそんなテンション高いの?」
物陰に隠れながら忍び足で近づいていく。ある程度、距離を縮めた所で顔だけ出して様子を窺う。
「こんな簡単なお仕事で大金が手に入るなんて、楽勝だったな!」
「それにしてもあの女、こんな少女を誘拐して何をするんだろうな?」
近づいている間に少女は使われたない倉庫の中へと連れていかれたため、いま視界に入っているのは見張りの覆面2人。会話を聞いた限りだと誘拐は依頼らしい。そこはどうでも良いけど。
【ガイアメモリ】、地球に眠る何かしらの記憶を元に作られたアイテム。人体に【生体コネクタ】移植手術をする事で使えるようになる。使用は使用者の体が蝕まれ暴走・依存症、つまるところ麻薬と変わらない代物。何よりガイアメモリの恐ろしい所は、生体コネクタを通して人体に直接挿すことで超人態【ドーパント】へと変身できること。
ドーパントは一言で説明すれば自我を持つスマッシュ。自分の思うがままに人外の力を行使する者。メモリとの相性しだいではメモリを使わずともある程度、能力の使用が可能。身体に直挿しするとメモリの毒素、負の感情を増幅させやすく暴走を促すため、フィルターとなるベルトも存在する。まぁ、メモリもベルトもこの世界には存在しない代物。
入手経路と誰が何の目的で作ったのか気になるところ。仮に量産体制が既にできているなら、情報をアイドル装者の組織に送って放置。できていなくても送るけど、どうやって作っているのかは知りたい。ガイアメモリはそう簡単に作れる物じゃないから。
『これ以上じっとしてても大した情報は出なさそうなんですが、どうします?』
は~、メンドだけど仕方ない。
頭の中で落胆しながらも身体を物陰に隠してビルドドライバーを装着。兎と戦車フルボトルを取り出し、数回軽く振る。
〈ラビット!タンク! Are you ready?〉
ハンドルを握りしめながら大きく息を吸い、はき出す。ビルドドライバーが返答を待ち、エコーがかかった音声を周囲に響き渡らせる。背中の方で覆面の見張りが動揺の声を漏らす中、静かに呟くのだった…
「変身…」
生成されたハーフボディを装着、周囲に白色のスチームが広がる中、左足の跳躍強化バネ【ホップスプリンガー】を使い覆面2人組の前にハイジャンプで姿を現す。
〈鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イエーイ!〉
「なっ、なんだお前は!」
『通りすがりの仮面ライダーだ!』
あってるんだけど、違う……
突然視界に現れた私に驚き腰を抜かす覆面A、それに対してコンバットナイフ…………いや、果物ナイフをこちらに向けて質問をぶつける覆面B。それに対してニャルが答えるが私にしか聞こえてないので意味ない。
『いつもニコニコあなたに這い寄る混沌、ニャルラトホテプです! ……の方がよかったですか?』
それも微妙に違う。私、人もどき。それにニャルはニャルラトホテプ星人じゃないでしょ…
って、そんな話をしてる暇ない。視線を覆面2組に向けて出来るだけ低く、恐ろしく聞こえるようにを意識ながら声を発する。
「なんでもいい。ガイアメモリよこせ…」
要点だけを伝えて静かに待つ。風が強くなってきた中、動き出したのは倒れていた覆面Aだった。
「ガイアメモリ? もしかして、フィーネとか言う女の側にいた白服の男に渡されたこれか!!」
「話すな!渡すな!」
目に涙をためながら、早口で聞いてないことまで教えてくれる覆面A。その横で覆面Bが突っ込みを入れていたが無視。それにしてもフィーネが絡んでいるのか……
「フィーネはなんて言った?」
覆面Aからひったくるように受け取った赤色に苺のデコレケーキでSのイニシャルのメモリを手に、弱腰の覆面Aに質問を投げかける。
「ヒィ! 写真の少女を誘拐するようにと。白服からは選別だと人数分のメモリを貰いました…」
「だから、喋んな!!」
辺りをキョロキョロ見ながら小声で話す覆面A。私・覆面B・周囲にの視線に完全におびえてる。それにしてもフィーネの誘拐、その子も
『ガイアメモリを渡した白服の男も気になりますね。この世界には【運命の子】は誕生しないはずですから…』
ブツブツと思考の海に入ったニャルを放っておいて、覆面Bに手を差しだす。
「なんだよその手は」
「…メモリ」
「そこの馬鹿と違って渡すかよ!」
蹴りを入れてくる覆面B、後ろに軽く跳ぶことで回避と同時に距離を取る。視線を再び覆面Bに戻すと彼は、茶色のメモリの端子付近にあるボタンを押す。
〈COCKROACH!〉
内部に記憶された力を示す音声が鳴り、そのまま後ろ首の鎖骨辺りにメモリの端子を当てる。メモリは生体コネクタを通し人体の中へと入りこみ、怪物へと変貌。【コックローチドーパント】へとなり背中の羽を鳴らす。
「ぎゃあぁぁぁーーー!?!?!?」
コックローチDの姿を見た覆面Aは股付近にアンモニア臭がするシミを作りながら気絶。無理もない。コックローチは現代日本だと、ゴキブリと総称されている昆虫。黒光りするのが【クロゴキブリ】、1匹いたら数十匹いるのは【チャバネゴキブリ】と種類が違う。
埃などを嫌う綺麗好きで殺菌効果を持つ粘液を分泌。雑食の為、森の掃除屋。清潔な場所で育ててれば食べる事が出来、意外と珍味だったりする。
オウムガイと同じく太古の昔からあまり進化をしていない生物、つまり元から完成された生物で生きる化石の一つ。頭部の触感が『いつまで語るんですか!』
………ホップスプリンガーに力を籠め、数秒の間すべての行動を高速化させる【ワイルドチェストアーマー】の効果で目にも止まらない速度で近づき、右足の【タンクローラーシューズ】の裏側についた無限軌道装置を回転。コックローチDの身体を削ろうと試みるが、高速移動で回避された。
蹴りを回避した奴は後ろへと回り込み羽交い絞めの動作。ラビット側のアンテナ【イヤーフェイスモジュール】の効果、わずかな動作を捉え次なる攻撃を予測する効果で読めていたので掴まれる事無くしゃがんで回避。そのまま足払い、コックローチDは地面へと倒れる。
そのまま追い討ちをしかげるが粘液を飛ばしてきたので咄嗟に回避。あの粘液は窒息効果を持っており、生身のまま頭部に受けるとどうなるか目に見えている。
「クソガァ!」
戦っていて思ったがこいつ、弱い。ただラビットタンクFとの相性が悪く、お互いに決定打に欠ける。なので
地団駄を踏むやつを視界に入れ、新たに取り出した2つのボトルを振る。周囲に無数の数式が浮かび上がる中、ベルトに装填。
〈スコーピオン!ゴールド! Are you ready?〉
展開された高速ファクトリー【スナップライドビルダー】のパイプに【トランジェルソリッド】が流れる中、軽く俯き一言…
「ビルドアップ…」
新たに生成されたえんじ色のスコーピオンハーフボディと黄色のゴールドハーフボディを前後から挟み込む形でチェンジ。
〈高貴なる毒針! ゴールドスコーピオン! イェイ!〉
幻のビルド【ゴールドスコーピオンフォーム】へ、姿を変えた。
覆面Aよ。お前、出番終わりだってよ…