ダイヤモンド=変わるもの+変わらないもの
ギラギラと輝く太陽、よく耳に聞こえてくるセミの合唱、風に揺れる地面に這えた草花。整備されていない獣道に出来た車輪の後と手元にある地図を頼りにアタシ達は進んでいくデス。
「あ~、暑いデスよぉ~」
「そうでね」
季節は8月に入ったばかりで夏真っ最中。人気を一切感じない道をアタシ、暁切歌とエルフナインは歩いているデス。額からは汗が流れ既に互いの水分は飲みつくした現状、目的地に着くか熱中症で倒れるかのチキンレースデスよ。
じわじわと体力を削られるのを感じながらとにかく前に進む。草木をかぎ分けやっとの思いでひらけた場所、目的地である家にたどり着いたデス…………
山奥の更に山奥なこの場所にポツンと立っている一軒家。夜中に来たら心霊スポットと思うほどにボロボロでとても人が住んでいるようには思えないデスが、ここにはレセプターチルドレン時代からの因縁のアイツが一人で暮らしてる。
「やっと着きました~」
アタシよりも体力が無いエルフナインは砂漠の中でオアシスを見つけたかのように一息ついている。気持ちはわかるデス。こんな秘境に引きこもった上に直接会う事でしか話が出来ない環境に住んでいる事とここに来るまでに無数の虫嚙まれが出来たことに文句言ってやるデス!!
「調ぇ! わざわざ来てやったデスから、おもてなししやがれデス!」
「待って下さいよ、切歌さん~!」
アイツへの不満を胸に玄関を勢いよく______開いたら壊れそうなのでそっと開く。扉の向こうから閉じ込められていた熱気を全身で受け止めるがそんなの気にせず腹から大きな声を出しこの家の住人、今は月読調と名乗っている悪魔の科学者に怒鳴る。その時、後ろでビックっと怯えたエルフナインには申し訳ない事をしたと思いながらデスけどね。
「(返事は)帰ってきませんね… 留守なんでしょうか?」
家中に響き渡るアタシの声、しかしながら目的のアイツの声は帰ってこない。事前に来る連絡をしてないので仕方ないデスね(そもそも出来ない)。そんなことを思いながらも家主の許可なく家の中へ入っていく。「失礼します」と律儀に挨拶をしながらエルフナインが入って来るのを背にアタシは初めて来た家の中を探索する。………と言うか、蒸し暑いデス。
なんと言うか、外も中も人が住んでいるようには見えないデス。かつて人が住んでいた廃墟と言われた方が納得するレベルで、生活感が無い。現に天井を見上げれば蜘蛛の巣が張っており、一部の扉は完全に使い物にならない。掃除もろくにされておらず、部屋を照らすLEDや冷暖房を調節する機械も見つけられないデスよ。
「いったい、アイツはどうやって生活してるんですかね」
「切歌さん!」
トイレや風呂・キッチンと言った部屋も無く、調の生活が気になり始めたその時、別ルートで家を探索していたエルフナインの呼ぶ声が聞こえて来たのでそちらに向かうデス。開けられっぱなしの扉をくぐるとそこには机の上に置かれた物に視線を固定するエルフナインの姿があった。
「っあ………!」
エルフナインの視線を追いそこあるものを見る。そこに置かれていたのは懐かしくもあり、もう見る事はないと思われていた物。赤いグリップに黄色の刃、様々な所にコードがつながっているがそれはまさしく調の最高戦力の一つ、フルボトルバスターで間違いないデス。
「どうやら、メンテナス中の様です」
先に復帰したエルフナインがコードがつながている先、どうやって動いている分からない最新型のデスクトップに表示された画面を見て呟く。一方のアタシはいまだに動揺が抜けきらないデスよ。
そもそも
本来の目的をそっちのけで聞き出す必要があるデスね。
のどの渇きなど忘れて怒りに燃えるアタシ。やっぱりアイツの考えている事は理解できないデス。
「なるほど! ここの数値をこうする事でボトルのエネルギーが内部で破裂しない様に調整してたんですね!! あ~!ここは_______」
反対にエルフナインは初めて見るフルボトルバスターの細かなデータをまるで、ヒーローショーでヒーローをまじかに見ている子供の様な反応をしている。まぁ、確かにアイツが変身した姿はヒーローっぽいのは認めならざる事実ですけど…………… 正直複雑デスぅ___
それにエルフナインは技術者としても調の事を慕っていますから。詳細な情報は隠している調の発明品に関するデータを見られるこの時間は有意義なのだろう。正直、なに言ってるか分かんないデスけど……
「ボトルに込められたエレメントを読み取るのは「ここまで」っあ…」
その観察の手を止めるのはやはりと言うか、当然と言うべきか、アイツだった。パソコンの画面をブラックアウト?させられて見れなくなったことに悲しそうな表情を浮かべるエルフナイン。そんなエルフナインの頭を撫でながらアタシに視線を向けるとアイツは一言呟く。
「なんの用?」
真顔で尋ねるアイツの声は業務的と言うか、機械的と言うか、疑問に思っているけどそこまで気にしてないようなそんな声。数年ぶりの再会なのにこの塩対応。やっぱりこいつは苦手なタイプの悪魔デスよ……
そんな調の見た目は昔と変わらずちんちくりんな見た目で、子供みたいです。今年で22になるはずなのに、なんでこんなにも若さを保てているんデスかね? いや、若さを保つレベルじゃないデス!!
言いたい事はたくさんあるデスけど、アタシだって立派な大学生。先に要件を伝えてから話を進めていくデス。
「スゥ~~~ッ。先に水分を要求するデス!」
いい加減、熱中症でぶっ倒れそうデス!
「「っぷは~~」」
居間の様なスペースに案内されたアタシ達は、出された麦茶をあっという間に飲み干していた。アタシはもちろん、さっきまでアイツの研究にかじりついていたエルフナインもここまでの道のりで水分を欲していたから仕方ないですね。
空いた窓から部屋に流れてくる風、それに合わせてなる風鈴の音色。床が畳なのもあって、ドラマとかでたまに見る田舎の実家に帰った主人公気分ですよ。 ……家主が調でなければデスけどね。そんな当の本人はと言うと、部屋の奥からそうめんが入った容器と汁が入った容器をお盆に載せてくる。
「そんなに睨まなくても、毒とか変な物は入れてない」
どうやら無意識に睨みつけちゃったみたいデス。こいつがどんなに酷い事をしてたとは言え、水や食べ物に毒を仕込むことは無いのは流石に知っている。 ……と言うか調はそういう事をするのは嫌う方だ。そんな事をするぐらいなら正面から戦うのが月読調と言う科学者デス。
それに料理も普通に美味しい。たぶんいや、確実に両親を殺されなかったら料理人の道に進んでいたと思う。そう思えるぐらいにはアタシも大人になって、こいつの過去を知ってる。だかろこそ、子供の時みたいに調を絶対的な悪の科学者と憎めなくなった。今はむしろ同情だってしてるし、あの時の言葉を全部謝りたい気持ちもある。
でも本人には伝えない。だったこいつは誰よりも自分のやって来た
辛気臭いのはアタシには似合わないデスね。割り箸を手に取り、麵を汁につけてすする。汁には柚子が入っていたみたいで、独特の香りが鼻を通り抜けていく。アタシの乏しい語彙力だとうまく表現できないけど、美味しいデス。
横を見ればエルフナインも無言で箸を進めていく。そして調は一切手を付けず(そもそも自分の分を用意して無いみたいデス)に分厚い本を読んでいる。本に書かれた文字がどこの国の物か分からないデスけど、よくあんなに分厚いの読もうと思えるデスね。漫画だとしてもあの分厚さの本を手に取る気にはなれないデスよ……
とりあえず今は、目の前のそうめんに集中するデス。
本来であれば今やってるメックヴァラヌス編の前半終了後に投稿する予定でちまちま執筆してましたが、本編の執筆が思うようにいかないので予定を繰り上げての投稿です。
続きは今月の10日12時にて。