それからひかるちゃんはポツポツと、ゆっくりだけど確かにメモへ、何があったのかを書いていった。タイピングの音だけが部屋の中に響いて、私たちは何も言えないまま、ただ記されていく言葉を追っていく。
最初にひかるちゃんが書いていた通り、その内容は普通なら到底信じられるものではなかったけれど…ここにいる私たちにはどこかピッタリと、欠けていたピースが埋まっていくような感覚があったのだと思う。
あまりにも自然に見えたTSっ娘というキャラクターも。
こんなにもたくさんの人を魅了しているのに自分に自信がないように見えるところも。
そして、私たちとのこれまでの接し方も。
今のひかるちゃんの話が本当なら、全てしっくりくるから。だからきっと、今私たちの前にいるひかるちゃんが、元々のひかるちゃんの身体に入ってしまったというのはきっと事実で。…だからこそ私はどうしようもなく、今ここにいるひかるちゃんを、そしてこれまでのあかりちゃんを責めるひかるちゃんのことが許せなかった。
聞いてくれてありがとうl
ねぇ、なんで。
ちゃんと、みんなにだけは話したかったl
どうして、そんな風に自分を責めるの?
「ひかるちゃんは…あかりちゃんは…」
「
ごめん
「…もう一人のひかるちゃんが頑張ってたっていうのはよく分かったよ。でも、今私たちの目の前にいて、こんなにも心配されて、こんなにも愛されてるひかるちゃんはいったい誰?」
びくり、とひかるちゃんが震える。大きな声出してごめん、でも!
「ひかるちゃんだって! 今日までずっと頑張ってきたんでしょ!? たくさん配信をして、歌の練習をして、ライブだって成功させて! 私が好きなひかるちゃんは他の誰でもなくって、今ここにいるひかるちゃんなんだ!!」
それなのにっ…!
「彼女の努力を認めてあげるなら、自分の努力も認めてあげなよ! 確かに奪ったのかもしれない。でも、みんながずっと見てきた一番星は!」
「他の誰でもなく、ひかるちゃん自身なんだから!!」
◇
あんなにあの時は話したいって、話さなくちゃって思っていたのに。いざこうしてメモに書き始めると、まるで上手くいかなくって。
結局オレは、どうしたかったんだろう。少し考えて、やっぱり宵あかりを続けたい。Vtuberをやめたくない。…みんなと、まだいたい。そんなことをつらつらと思う。でも、メモにはとても書けなかった。こうしてみんなに聞いてもらって、書くべきじゃないと、そう思ってしまった。
聞いてくれてありがとう、ちゃんと、みんなにだけは話したかった。そんなありきたりのことだけ書いて、オレはこの気持ちに蓋をしようとした。
それなのに。
「ひかるちゃんだって! 今日までずっと頑張ってきたでしょ!? たくさん配信をして、歌の練習をして、企画だって成功させて! 私が好きなひかるちゃんは他の誰でもなくって、今ここにいるひかるちゃんなんだ!!」
「彼女の努力を認めてあげるなら、自分の努力も認めてあげなよ! 確かに奪ったのかもしれない。でも、みんながずっと見てきた一番星は!」
…ああ、そっか。
「他の誰でもなく、ひかるちゃん自身なんだから!!」
オレが…宵あかりで。
「…あの時、信じてあげられなくてごめんね。私もたぶん、分かっていて見ないふりをしてた。でも、あなたが私に向けてくれる視線や言葉、それに愛情はあの子と同じ。だから、あなたも大切な私の子供で、誰が何を言おうと、
…オレだって、星宮ひかるなんだ。
「う、うぅ…」
また涙を流す。違うのは、そこに「声」があったこと。
「うわぁあぁぁあん…!!!」
きっと簡単なことだった。ずっと前から答えは決まっていた。
これが幻覚なのか、オレ自身が見せた都合の良い妄想なのかは分からないけれど。涙でぼやける視界の中で優しく微笑む、どこか宵あかりを想起させる男のキャラクターと、星宮ひかるの姿が確かに見えた。
(大丈夫。
男の身体、楽チンでさいこー! …という幻聴はきっと気のせいなので聞かなかったことにして。
こうして