──それからも、これ明らかにマッチング機能働いていないだろ、と言いたくなるような格差ランクマッチ戦は続く。
『それでね! 画筆にもたくさん種類があって、今使ってるのは豚さんとか、お馬さんの毛なんだけど、他にもコリンスキーとか、パーミティルとか! イタチさんの毛を使って作られた筆もあるんだよ!』
『ぶ、豚さんにお馬さんにイタチさん…』
『そうそう! ふふ、他にもね──』
一度は心が折れかけたものの何とか持ち直したオレは、最強戦法の一つである「オウム返し」戦法を使って戦線を持たせつつ、反撃の機会を
(信じてるからなお前ら…!)
だから早く一発逆転のつよつよな策を頼む!
..
..ひまマジで可愛いなこいつ.
..
..楽しいで満ちてるヒマワリみてぇな女.
..
..こんひまひま主食にしたい.
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..笑顔がひまっとしていてとてもよい.
..
..ヒマ!!(擬音).
..
..こんひまひまは絶対流行らせろ.
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..全身で楽しさ表現してるのいいよね.
..
..絵は分からんけどひまはすき.
『お前らなに完全に
確かにかわいいとは思うけど! お前ら一応オレ推しなんじゃないのかよ!! 陽キャでオタクにも優しそうな画伯系大型犬女子がそんなにいいのかお前ら!!!
『いや確かにめっちゃいいな…』
こうして直に接するんじゃなく傍から見てる分には!
『ひま先輩でいいよ!』
『あっ、はい』
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¥7,000
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カウンターが宵特攻すぎる
..
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¥1,000
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あんな騒いでたのに瞬殺されるな
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¥50,000
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死─DEATH─
..
..
..あっはいじゃないが??.
..
..そうだ…俺の推しは宵…うっ頭が….
..
..宵…あかり…?.
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..思い…出した!.
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¥4,141
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一斉に宵を思い出すコメ欄草
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¥500
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お前がひたすらオウム返しマシーンになってるのが悪い
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¥8,600
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頑張れ!!宵あかり頑張れ!!宵は今までよくやってきた!!宵はできるやつだ!!
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¥9,999
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知らんけど逆に距離感ガン詰したらなんかバグって勝てるかもしれない
..
..
..現実世界にバグを持ち込むな.
きょ、距離感をバグらせる…そ、それだ!
『あ、あの…ひ、ひま…ちゃん…!』
思い返してみれば、オンライブフェスの時の三期生のみんなを名前呼びするという、当時のオレには超高難易度だった最恐イベントもそれで乗り越えたのだ。どういう理由であれやったのかもう覚えてないけど、あの時はとりあえずいい感じにはなったから効果はあるはず!! 何かわからんがくらえっ!
..
..ひまちゃん!??!.
..
..
¥2,000
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すごい!すごいぞ宵!
..
..
¥5,999
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ひま先輩でいいよにひまちゃんで返すのは強すぎる…
..
..
¥10,000
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成ったな
..
..
..この成長コンテンツ成長が目覚ましすぎる.
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¥25,000
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「太陽にだって負けないくらい輝いてみせるから!」明るい性格をした元気で活発な子。配信を通じて自分の元気をみんなに分けてあげられたらいいなと思っている
..
..
..っぱ宵よ.
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..これは公式自己紹介に偽りなし.
..
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¥1,300
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リスナーの手首大丈夫そ?
..
オレを讃えるコメント欄に、勝利を確信してつい笑いがこぼれてしまう。ふふふ…距離感ワープはもらった!!
さすがの夏華先輩もこれには驚いたのか、今まで話しながらも止まっていなかった筆が止まってしまっている。しばらく勝利の余韻に浸っていると、夏華先輩がこちらに向けて、文字通り向日葵の花のような満面の笑顔を向けた。
『はいひまちゃんだよ!! なぁに? あかりちゃん!!』
あ、あれ~??
『ぇぁ…あ、あの…そのぉ…』
ぜ、全然効いてないじゃん!!! むしろ陽キャオーラが一層増したんだけど!?
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¥3,535
..
よっっっわ…
..
..
..さっきまでの勢いはどこ行っちまったんだ….
..
..
¥3,210
..
こいつ積んでるブレーキの性能高すぎるだろ
..
..
..まーた消えるのか.
..
..こいついつも消えそうになってんな.
..
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¥25,000
..
「太陽にだって負けないくらい輝いてみせるから!」明るい性格をした元気で活発な子。配信を通じて自分の元気をみんなに分けてあげられたらいいなと思っている
..
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..二度撃ちやめろ.
..
..どこだよその元気で活発な子.
..
..
¥10,000
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タ ー ン 制 バ ト ル
..
..
..まぁひま相手じゃそうなるよ….
..
..
¥10,000
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うちのひまの笑顔をどんどん引き出してくれてありがとう宵あかりさん…
..
..
¥5,000
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逆にどんな結果を期待してひまちゃんなんて呼んだんだよお前!?
..
そりゃもちろんいい感じにバグってくれるのを期待してだが!?!? いやよく考えたらゲームじゃないんだからバグるわけないじゃん騙したな!!
ど、どうする…? すっっごいキラキラした目線を向けられて今にも消し飛びそうなんだけど…! な、何か、何か話題は…そ、そうだ!
『そ、そのぉ…絵を描くって言うと、なんか人物の絵とか、風景の絵とかってイメージがあったんですけど、ひ、ひまちゃん…の絵は違うんですね…?』
とっさに絞り出したにしてはだいぶ良い感じの話題を選べたんじゃないだろうか!? そう、夏華先輩はこれまでも配信でオンライブの先輩方の絵を描いていたが、どれも人が直接描かれてるものではなかった。ネットで調べた感じだと抽象画? というやつが近いと思う。色とか、何かの形とか、そういうのが組み合わさってできた不思議な絵なのだ。
『そういうのも描けるよ?』
描いてあげる! と言って、近くに置いてあったスケッチブックに夏華先輩が手を伸ばす。すると右手でスケッチブックにボールペンで絵を描き始めた。…左手の方の作業を止めることなく。しかもキャンバスと配信画面の方をチラッと見ることはあれどスケッチブックの方にはほとんど目線すら送っていない。その様子に呆気に取られている間に、スケッチブックの絵は完成してしまった。
『はい、どうぞー』
『あっ、ありがとうございます…』
スケッチブックから切り離された厚めの紙には、楽しそうに笑う
『わぁ…!』
..
..うっま….
..
..えっ??ひま絵上手くね??.
..
..宵の無邪気さをよく捉えた名画.
..
..10分経たずに出てくるクオリティじゃねぇだろこれ….
..
..無駄な線がまるでない….
..
..精密動作性A.
..
..ガチな方の画伯じゃん.
..
..すみませんでした….
..
..正直お絵かきのレベルだと思ってましたすみません.
..
..みんな謝り出すの笑う.
..
..ひまはこういう方面の絵はマジで上手ぇんだ.
オレもコメント欄と同じ意見だった。絵のことなんてまっったく分からないけど、この絵はすっごく良い絵だと思う!
『す、すっごく良い絵だと思いますっ! 笑顔がその、綺麗で、こっちまで笑顔になっちゃうみたいで! それで──』
足りない語彙で必死に言語化して描いてもらった絵を褒めたのだが、なぜだか夏華先輩は不満げな様子だった。…な、何か気に障るような言っちゃったかな…?
『もうっ! みんなこういう絵ばっかり好きだって言うんだから! あっ、もちろんあかりちゃんが褒めてくれたのはすっごく嬉しいよ! でも描きたいって心から思う方の絵がね、評価されないのはこう…んんん!! …ってなるの!』
『な、なるほど…?』
『自分が本当に評価して欲しい方は評価されなくて、そうじゃない方ばかり評価されるなんて耐えられないよ! ね、あかりちゃん!!』
『た、確かに…そうかも…?』
『だよね!! では、んんん!! ってなっちゃったからあかりちゃんに絵の代金を請求したいと思います!』
『はい…はいっ!?!?』
えっ、あっ、いきなり!?!? いや、確かに描いてあげるとは言ってたけど代金は請求しないとは言ってなかったけども!
しかしこの絵に報いたいという気持ちはある。おいくらか分からないが、頑張って払おう…!
『い、いくらですか…?』
『お金は取らないよ! 代わりにあかりちゃんにも私を描いて欲しいの!』
『えっ、ええ!? お、オレ絵は全然だめだめで…!』
『いいのいいの! 絵は上手さじゃないんだよ! あかりちゃんが思う通りに私を描いてくれればそれでいいっ! というか、それがいいんだよ!』
道具とキャンバスはここにあるから! と言って、夏華先輩は自分の前に置かれていたキャンバスと道具のセットをもう一つ用意し始めた。スタッフさんたちもその作業を手伝って、オレの前に絵を描くための環境が出来上がる。
『心の赴くままに、さぁどうぞ!!』
『えっ、あ、で、でも…オレ、絵のモデルなんですよね…? モデルが動くのはよくないんじゃ…?』
『大丈夫!!』
『そ、そうですか…』
いやオレの方は全っ然大丈夫じゃないんですけど…! しかもなんでかコメント欄の連中もみんなすっごく乗り気みたいだし! …こんなはずじゃなかったのに、と思うのは今日だけで何度目だろうか。ある種の諦めを胸に、オレは逸らしていた視線を用意してもらったキャンバスへと向けた。