TSして自由なVtuber生活!   作:ae.

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七夕番外編2024年版です。
時系列は気にしない方が吉。


番外編『宵に願いを2』

 七月七日。七夕の日になると、うちのママはどこからか笹を買ってきて玄関に飾る。そしてお願い事を短冊に書いて、その笹に吊るすのだ。

 だからママから短冊を渡された時も、ああもうそんな時期か、としか思わなかった。…渡された短冊の枚数を確認するまでは。

 

「…なんか枚数多くない?」

 

 とママに言えば、短冊を吊るせる場所はこんなにあるんだし、深見(ふかみ)さんとか、お世話になっている人達のお願い事を聞いて、代わりに書いて吊るしてあげたらどう? とのことだった。

 ママは百々(もも)ちゃ…深見莉緒(りお)さんが一度家に来てご飯を食べて以来、頻繁に連絡を取り合っているらしい。オレが好きな二人が仲良しなのはとても良いことだと思うけれど、一方でなんだか気恥ずかしくもあった。

 

「予備もたっくさんあるからね」

「ええー…」

 

 色とりどりの短冊をどこからともなく取り出し、目をキラキラと輝かせてそんなことを言うママは、オレよりもよっぽど子供っぽい。けれどその気持ちを無下にすることもできず…(よい)あかりとして配信した時よりもずっと忙しいオレの七夕が幕を開けたのだった。

 

 

『ひなたさんから話は聞いてる。七夕のお願い事だよね』

「う、うん…」

 

 一人目に選んだのは、ママが真っ先に名前を挙げていた百々ちゃだ。相変わらずこちらから通話をするのには勇気が必要だったが、それでも勇気を出せば自分から通話できるようになっただけ、圧倒的に成長したと思う。

 

「か、考える時間が必要だったらメッセージ送ってくれれば書くよ…?」

『ありがとう。けど大丈夫。私のお願い事は決まってるから。私のお願い事は──』

 

 百々ちゃから聞いたお願い事を短冊に書く。これで一人目。少なくとも三期生のみんなの分は書こうと思っているので、残るは四人。…まだまだ先は長い。それにまぁ、百々ちゃだしそういうこと言うかもとは思ってたけど、お願い事の中身を聞いて少し顔が赤くなってしまった。他の四人はさすがに違うお願い事を言ってくれるとは思うけど、なんだか先が思いやられた。

 

 

『七夕の願い事か…』

「は、はい…」

 

 次に選んだのは秋風(あきかぜ)さん。さっき百々ちゃと通話していた際、こーよーはどんなお願い事をするかな、と百々ちゃが言っていて、オレも秋風さんがどんなお願い事をするか興味が湧いたからだ。

 

『七夕の願い事を考えるだなんて子供の時以来だが、答えるのは難しくない』

 

 秋風さんのお願い事を短冊に書く。少し痛いところを突かれた感じはあるけれど、秋風さんがオレを思ってくれているというのはよく伝わってきた。

 

『七夕の願い事を叶えるのは自分自身だという話もある。私もこの願いが叶うよう努力するよ。だからひかるも頑張ってくれ』

「が、頑張ります…」

『ふふ、ではまたな』

 

 

『七夕のお願い事ですか? そういえば宵さんの配信で話してましたね!』

 

 お茶目なお母さんで羨ましいです! とまおー様は言う。こっちとしてはちょっと恥ずかしかったりもするけれど、そう言われて悪い気はしなかった。

 

『んー…じゃあこれにします!』

 

 まおー様のお願い事を短冊に書く。もっとお酒が飲みたい! とかそういうのだと思っていたからちょっと意外…いやでも間接的には…?

 

『私がもっとお酒をたくさん飲めますように! とかそういうお願い事すると思ってました??』

「う゛えっ!? い、いえ全然!」

 

 

『七夕のお願い事? あぁ、もうそんな時期か』

 

 もしかして運営さんに言われた感じ? とゆいなちゃんが聞いてきた。確かにこの手の無茶ぶりはほとんどが運営さん発案だが、今回はオレのママ発案である。ゆいなちゃんにそう答えると、

 

『なんかいいね、そういうの』

 

 と言われてしまった。声色からして本心からそう言っているのが伝わってきて、どう返事をしたらいいか分からなくなってしまう。

 

『ごめんごめん。えーと、じゃあ私はね…』

 

 ゆいなちゃんのお願い事を短冊に書く。思えば初めてコラボした時から、ゆいなちゃんは何かとオレをフォローしてくれていた。ダウナーな雰囲気とは裏腹に、面倒を厭わない優しい人だと思う。だからこそすっごい苦労人でもあるんだよな…。

 

『今調べたんだけど、短冊の色にも意味あるんだって。でも昔、私金色の短冊にお願い事書いてた覚えがあるんだよね。ちなみに星奈(せいな)は銀色だったかな』

「き、金色…あったかな…」

『あっ、いや普通の色でいいよ?? なんか私だけ金色だったらすごいアレじゃん?』

 

 

『待ってたよひかるちゃん!!』

「ひえっ」

 

 通話をかけてすぐ聞こえてきた大きな声につい悲鳴が漏れてしまった。ひかるちゃんの鳴き声コレクションしたい…という(ほのか)ちゃんの妄言を華麗にスルーしつつ、待ってたの? と言葉を返す。

 

『みんなに七夕のお願い事聞いて回ってるんでしょ? 莉緒がひかるちゃんのママから聞いたってマウント…じゃなくて、教えてくれたから!』

 

 オレの知らないところでオレの情報がやりとりされている独自のネットワークがあるらしい。どんなことが話されているのか知りたいような、知りたくないような…うーん複雑。

 

『私のお願い事は当然これだよ! あっ、もし織姫様が叶えてくれなくても私が叶えるから安心してね!』

 

 仄ちゃんのお願い事を短冊に書く。通話越しでも仄ちゃんが笑顔なのが分かる。それと同時にオレが赤面しているであろうこともたぶん仄ちゃんに伝わってしまっているかもしれない。気恥ずかしさを払うように、さっきゆいなちゃんから聞いた話をすることにした。

 

「お、お願い事書くの、銀色の短冊の方がいい…?」

『えっ、待ってなんの話??』

 

 

 

     ひ     

     か     

     る     

     が     

     楽     

     し     

     く     

     過     

     ご     

     せ     

     ま     

     す     

     よ     

     う     

     に     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ひ     

     か     

     る     

     の     

     成     

     績     

     が     

     良     

     く     

     な     

     り     

     ま     

     す     

     よ     

     う     

     に     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     三     

     期     

     生     

     の     

     み     

     な     

     さ     

     ん     

     が     

     健     

     康     

     で     

     あ     

     り     

     ま     

     す     

     よ     

     う     

     に     

 

 

 

 

 

 

     あ     

     の     

     バ     

     カ     

     が     

     ひ     

     か     

     る     

     に     

     迷     

     惑     

     を     

     か     

     け     

     ま     

     せ     

     ん     

     よ     

     う     

     に     

 

 

 

 

 

     ひ     

     か     

     る     

     ち     

     ゃ     

     ん     

     が     

     笑     

     顔     

     で     

     い     

     ら     

     れ     

     ま     

     す     

     よ     

     う     

     に     

 

 

 

 

 

「今年のお願い事、決まった?」

「…うん」

 

 みんなのお願い事が飾られた笹の前で、ママの言葉に返事をしながら、考える。いつもは、七夕のお願い事なんてテキトーに書いていた。叶っても叶わなくてもいいような、何なら次の日には何て書いたか忘れてしまっているようなお願い事だ。けれど、今年のお願い事だけは、ちゃんと叶ってほしいなと、心の底からそう思えた。

 

 

 

    楽 み    

    し ん    

    く な    

    過 と    

    ご こ    

    せ れ    

    ま か    

    す ら    

    よ も    

    う ず    

    に っ    

    ! と    

    ! ず    

      っ    

      と    

 

 

 

 

 

 

 

 

 カラフルな短冊達が笹を飾る。いつもよりもずっと多くの願い事を乗せて。

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