ああ・・・お腹が空いた・・・
ここでこうしていて何時間、いや何日経ったのかわからない。ここ、遺棄された研究所でウチはこうして何時間もぼーっとしている。やることがないのではない。動けないのだ。ウチを作った科学者はなんのことかウチの体をえらく貧弱に作ったのだ。餓えや渇きのある状態でまともに動く筈がなかった。疲労で全くと言って良いほど動けない。
何日か前に送ったメール・・・見てもらえたんやろか・・・
まだ体が少しでも動く頃、投棄されていたデバイスからメールを送った。
ああ・・・オムライス・・・食べたいな・・・
ウチはそこで意識を失った。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「ふぅむ・・・」
「私は・・・行った方が良いと思う。」
「せやけどなフェイトちゃん・・・」
「例え罠やイタズラでも助けを求めているなら行くべきだよ。」
「そうやな・・・」
捜査官はやてのプライベートルームでメールフォームの整理をしている時に見つけた一通のメール。そのメールには一枚の画像が添えられていた。
こんにちは。ウチは八神はやてのクローンです。
いま、遺棄された研究所のいます。
場所はわかりません。
助けて欲しいです。
不恰好な日本語で書かれた手紙の画像。それには鬼気迫る状況であることがありありと伝わってきていた。しかしそれに対してはやてはどうしたものかと攻めあぐねていた。
「とりあえずメールの追跡からやな・・・場所は・・・っと・・・」
「どうする?はやてが行く?私も動けるよ。」
「私が行こうと思っとる。私に来たメールやからな・・・」
「じゃあ私も付いていくね・・・罠だったことも考えて。」
「助かるで。追跡結果来たな・・・意外とあっさり出たなぁ。なんの小細工もしてないんか・・・急いで行けそうや。」
「第8資源管理世界クシュガル・・・ポートに行き先があったかな。」
「調べてみる。はよせんとな・・・」
「うん。準備が出来たら連絡して。すぐに出られるようにしとく。」
「ありがとうな。」
フェイトが急いで退室し、はやてが取り残される。クシュガルへの転送ポートの検索を始めながらはやては誰に向けるわけでもなく口を開いた。
「私のクローンか・・・初めてのことやな・・・私がなんとかしてあげんと・・・!!」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ぴたりと頬に刺激を感じ目を覚ます。どれくらい眠っていたのだろうか。頬に伝わる雫の感触からそれほど時間が経っていないのか。それともあまり雫が垂れなかっただけで時間は経っているのだろうか。もうわからない。
「う・・・」
もう言葉を発することすら難しい。体に降り掛かる疲労が限界へと達している。
「うあ・・・」
なんとか体を起こし壁にもたれ掛かる。体が重い。手足も動かない。
ああ・・・最後にお腹いっぱい食べたかった・・・
そんなことを考えながら辺りに視界を向けるがなんの気配も無い。当たり前だが。
オムライス・・・カレー・・・ハンバーグ・・・シチュー・・・
食べたいものを羅列し意識を保とうとするが同時に腹も鳴る。これはよそう。余計に腹が減る・・・
神様なんていないんやろか・・・ウチはこんなにも生きたいのに・・・
生きたい。もう考えることはそれだけだ。それだけを考えながら埃臭い静かな研究所内でぼんやりする。
助けて・・・・
「たすけ・・・て・・・」
次の瞬間轟音が響き渡り、研究所内へと誰かが侵入してきたことがわかりウチはまた意識を手放した。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「ここやな。」
「うん・・・メールの発信箇所と思わしき箇所と一致するよ。」
はやてとフェイトの二人は第8資源管理世界クシュガルにいた。クシュガルへは直通のポートが存在しており難なく転送することが出来ていた。ポートが設置してある施設から移動した二人は追跡したメールの痕跡を辿り、とある洞窟に隠されていた明らかに人工物の入り口の前まで辿り着いていた。
「さて・・・鬼が出るか蛇が出るか・・・」
「まず私が突入する。はやてはサポートよろしく。」
「承った。よろしくな」
「うん・・・すぅー・・・プラズマセイバー!!!」
入口を吹き飛ばし、突入する。少し進んでサーチャーを飛ばし施設内を探索する。
「今のところ人の気配無し・・・罠かどうかはまだわからない。」
「はやて・・・急ごう。」
「おーけーや。」
慎重に進む二人の前には明かりの無い暗い長い廊下が広がっている。途中のドアを調べながら進んでいく。罠が仕掛けられている様子は無さそうだった。
「この部屋も反応無し・・・次のドア行くで。・・・開かへんな。」
「また私がやるよ。下がってて。・・・はぁーっ!!」
轟音が響き渡りドアを斬り捨てるフェイト。ドアの先はからっぽの部屋であり遺棄された研究所というのが伝わってくる。
「よし、次の部屋や。・・・待った。」
「どうかした?」
「次の部屋・・・なかなか広いで。気を付けなあかんな。」
「わかった。サーチャーに反応は?」
「今のところ反応無し・・・イタズラやったんかな・・・しかしこんなところからわざわざイタズラするかいな・・・?」
「気を引き締めていこう。」
「せやな・・・イタズラじゃないなら早く見つけてあげなあかんしな。」
「うん。」
次の部屋に向かった二人は半開きのドアをこじ開け部屋に入る。
「これは・・・!」
「ビンゴ・・・やな。」
その部屋にはいくつもの生体ポッドが置かれた部屋だった。しかし液体の詰まったポッドの中にはひからびしなびた遺体がいくつも浮かんでいた。
「う・・・」
「くっ・・・可哀想に・・・」
生まれてくることすら許されなかった惨状に目を背けそうになるがはやてが部屋の隅にあるものを見つけた。
「これ・・・このデバイス・・・まだ生きとる。」
「えっ?」
「これ・・・この紙も・・・メールの画像の紙や。」
そこにあったのはまだ光を放つデバイスとメールの画像の元になった拙い日本語の手紙であった。
「・・・っ!この近くにおるで!フェイトちゃん!」
「うん!私もサーチャー飛ばすよ!」
フェイトの黄色い光の放つサーチャーを飛ばし、更に辺りを探索する。
「どこや・・・どこにおるんや・・・!」
「どこ・・・!!」
懸命に探索しメールの送り主を探す。そしてはやてのサーチャーが捉えた。
「おった!!フェイトちゃん!みっつ隣の部屋!!」
「わかった!!」
二人は駆け出しサーチャーに反応のあった部屋に飛び込む。
「見つけたで・・・!」
「ひどく衰弱してる・・・意識も・・・!」
「たす・・・けて・・・」
「うん!今助けたるからな!!」
はやては少女を抱え出口へと駆け出す。フェイトもそれに続き飛び出していった・・・