はやてちゃんに養子になると伝えてはや数日、もう安心と言われたにも関わらず入院は長引いていた。それもこれもウチを作った科学者が体を貧弱に作ったせいだ。困った物だと思っていると病室のドアがノックされた。
「はぁーい」
がらっとドアが開き、そこにいたのはパツキンロングのお姉さん。ふんわり漂う穏やかな雰囲気はこちらを落ち着かせるには十分だった。
「kdkfjslsdkirjrwjvdjd?」
「んん??」
「lskxsjkkdjdn。そっかミッド語は喋れないんだった。ごめんね。」
「日本語で頼んます。」
「うんわかった。それにしても良かった。元気になったんだね。」
「それはそれは・・・お姉さん誰?」
「あっ、ごめんね。私はフェイト。フェイト・T・ハラオウンだよ。」
「ウチはのどか。八神のどかです。」
「八神のどか・・・そっかはやてが引き取るって言ったんだった。」
「のどかっちゅー名前もはやてちゃんに付けて貰いました。」
「そうなんだ。よろしくねのどか。」
フェイトさんはベッド脇の椅子に腰掛けると持っていた小さな箱をテーブルに置いた。わずかに甘い香りがする箱はケーキか何かだろうか。
「あ、これはお見舞い品のケーキ。冷蔵庫入れとくね。」
「どうもありがとうございます。」
「うん。それでね、今回来た理由なんだけど・・・事情聴取なんだ。」
「じじょうちょうしゅ。」
「うん。のどかははやてと私の2人で助けに行ったんだけど。のどかが目覚めてからの状況が聞きたくてね。」
「そうなんか・・・」
「あ、辛くて思い出したくないって言うなら大丈夫だよ。」
「いえ辛かったは辛かったですがそれほどでも。」
「そっか・・・じゃあ聞かせてもらえるかな?」
「はい。」
ウチは目が覚めてからの状況を話した。目が覚めてから開いたポッドの中だったこと。空腹で大変だったこと。デバイスでなんとか連絡したこと。更に空腹で辛かった事など話した。
「うんうん。だいたいこっちの想定通りだね。」
「こんなもんでよろしおす?」
「うん。ありがとう。」
「はぁたくさん喋ってお腹空いたわ。フェイトさんケーキ食べてもええ?」
「うん。いいよ。お皿はっと・・・」
「上の棚です。」
「上の棚・・・あった。じゃケーキ出して・・・はいどうぞ。」
「おお・・・!豪華なケーキや!」
「美味しそうでしょ?有名な所のなんだ。」
「いただきまーす。」
ケーキを小さく切り分け口に運ぶ。すると口の中にフルーツの爽やかな酸味が広がり幸せが訪れた。
「美味しい〜!」
「ふふっ良かった。」
ケーキの二口目を口に入れようかと思った所でドアがノックされた。
「のどか〜!来たで〜!」
「なんやはやてちゃんか。」
「なんやとはお言葉やな。」
「嘘やでごめんて。」
「やっはやて。」
「フェイトちゃんが来とったんやな。」
「うん。事情聴取で・・・」
「さよかさよか。と言っても私達の想定と特に変わりはなかったやろ?」
「え、はやて先に聞いてたの?」
「いや?そうやないかなーって思ってな。」
「そっか。驚いたよ。」
はやてちゃんはフェイトさんと仲良さげに話している。まぁ2人は友達なんだろう。ケーキを食べながら考えているとはやてちゃんが口を挟んできた。
「おっのどかええの食ってるな。一口くれへん?」
「え、やーよ。」
「ええやん一口〜」
「やーよ!」
「まぁまぁはやてケーキ買ってきてるからみんなで食べよ?」
「冗談やて。買ってきたのはのどかに食べさせてやらな。」
「はやてちゃんはなんも無いの?」
「図々しいやっちゃな・・・」
「まぁまぁ・・・」
「私はこれやで!じゃじゃーん!のどかの養子縁組が正式に受理されたの書類ー!」
「おぉーぱちぱち」
「これで大手を振って家族って言えるな!」
「養子縁組ってこんな早く受理されるものだっけ・・・」
「まぁそこはホラ、管理局の体制も変わって来たっちゅーことで?」
「ふぅん・・・ならいいんだ。はやてのことだから狡い手を使ったんじゃないかと思って。」
「失礼な!ちゃんと待ったんや!」
「そうみたいだから良しとしましょう。」
「フェイトちゃん・・・強かになったな・・・」
「ふふっ・・・」
「なぁなぁはやてちゃん他の家族言うんは来てへんの?」
「ああごめんなーちょおっと忙しくて来れへんのよー来週には連れてくるさかい。待っとってな。」
「わかった。待っとるよ。」
「ごめんなー」
はやてちゃんが言う他の家族も気になるが他にももう一つ気になることがある。
「なぁなぁはやてちゃん。ウチはいつになったら退院出来んの?」
そう呟いた瞬間不意に空気が変わるだが一瞬で元に戻り、はやてちゃんがたははと言葉を繋げた。
「すまんなぁ退院ももうすぐなんやけど検査とかが入っとるみたいなんよ。だから退院ももうちょっと待ってな?」
はやてちゃんに頭を撫でられくすぐったく感じながらああ長くなるんだなとも感じとる。そういえばそのはずだ。マトモに生み出された体ではなく。しかも勝手に稼動した体だ。どこかに不具合があってもおかしくはない。それの調整の為の検査なのだろうと考えた。
「あんなーウチ早く退院しておもちゃ屋さん行きたいんよ。」
「ん?なんや欲しいおもちゃでもあるんか?買ってくるで?」
「ん、いやそうじゃなくておもちゃがいっぱい並んでるの見るのが好きなんや。記憶に引っ張られてるのかどうかはわからんけどそれ楽しみにしてるんや。」
「そかそか。退院したらいっぱいいろんなとこ連れてってやるからな!覚悟しときいよ〜?」
「うんわかった。楽しみにしてる。」
「うんうん。じゃあフェイトちゃん私らはこの辺で出よか。」
「そうだね。じゃあね。また来るよのどか。」
「うんフェイトさんもまた今度な!」
ばいばいと手を振り2人は病室を後にした。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「・・・フェイトちゃん。のどかの症状聞いとるか?」
「ん。まだ・・・」
「そか。のどかの体のことなんやけど。まだ安心出来へんねん。」
「・・・そうなんだ。」
「フェイトちゃん、事情聴取でわかったこと聞かせてくれへん?」
「うん、のどかは調整が終わってないまま、勝手に稼動した個体みたい。」
「やっぱりな・・・のどかは体に異常を抱えたまま稼動しとるって医者の先生が言うとった。・・・下手したら長くないこともありえるってな・・・」
「そんな・・・!せっかく助かったのに・・・」
「そこでや・・・フェイトちゃんには嫌な話やろうけどprojectF.A.T.Eの技術を流用して、調整する案が出とる・・・」
「のどかが助かるんなら私は気にしないよ。」
「ありがとう・・・でも問題が山積みや、解決するまでのどかが生きてる保証は無い・・・問題は私がなんとか説き伏せてみせるけどな。」
「頼もしいよ。でも間に合うといいね・・・」
「ほんまにな・・・せっかく掴んだ命を手放してしまうことだけは絶対に避けたい。そこでなフェイトちゃん。ちょーっと頼みがあるんやけど・・・」
「ん、なんでも言ってよ。」
「それじゃあ・・・」