この状況を私は一体どう捉えれば良いのかしら。買い物から戻ってきたら…普段は人を小馬鹿にするのを大の得意としている奴が…大人しくソファーに腰を下ろしている。そして折原臨也の目の前には…如何にも好青年のような男が座っていた。
「まさか……兄さんが帰ってきているとは思いもしなかったよ」
「それはこっちもだよ。臨也は元々、新宿主体の人だから池袋にいるとは思いもしなかった。それにしても臨也と顔を合わせるのは五年ぶりぐらいかな」
「そうだね。兄さんが声優を辞めてからになるからそれぐらい経っているね」
あの折原臨也がこんなにも礼儀正しく話している姿を初めてみた。まだ、折原臨也に雇われてから数か月ぐらいしか経過していないけど…こいつがこんなにも普通にしているのは珍しい。
「このまま話を続けても良いんだけど……そこにいる女性のことを紹介してくれないかな?」
「ああ、この人は……俺が秘書として雇っている矢霧波江という人間だよ。兄さんも矢霧製薬って聞いた事があるでしょ?」
「うん。確か…最近は人間を誘拐したり…人体実験をしているっていう噂が絶えないところだよね」
「そうだよ。それである程度はあっている。その矢霧製薬が北米の大企業ネブラに合併されて…色々とあって職を失った彼女を雇っているんだ」
「そうなんだ。それでは改めてよろしくね、ボクの名前は折原
何故か…折原臨也の兄だという青年はソファーから立ち上がり、私に頭を下げてきた。折原臨也も状況が呑み込めていないのか……静かにそれを見つめている。
「そう言えば…これは余談になるけどさ、九瑠璃と舞流がまた学校で問題を起こしたらしい。俺のところに連絡が来てたからね」
「まあ、九瑠璃は大丈夫だろうけど問題は舞流の方かもしれないね。誰かを傷つけていないと良いけどね」
折原臨也の兄も決して妹たちの心配をしているのではなく、妹たちに被害を受ける方の心配をしている。いくら世界は広いと言っても血の繋がっているであろう妹のことよりも相手のことを心配する兄は珍しいでしょうね。
「それで学校側が妹たちを迎えに来て欲しいんだと…」
「それはボクに行ってとお願いしているの?」
「ああ、ちょっと今日は仕事で手が離せないんだ。お願いできるかな?」
「別に良いよ。今日は池袋を見て回る予定だけだからね。それに二年前までは保護者としてよく臨也や妹の授業参観とか三者面談とかも行ったりしてたしね。それにしても入学してまだ数日しか経っていないのに早速、保護者が呼ばれるとは妹たちも凄いね。これほど早く親が呼ばれる人も居ないんじゃないかな」
「あいつらが小学生の頃に問題を起こしてた理由は……………いや、この事は言わない方が良いかもしれないね」
「何?」
「何でもないよ。もし、ここで言った事があいつらに知れたら僕はリンチにされちゃうだろうからね」
妹にリンチされるって一体どんなことなんだよと心の中で思った。
この後も二時間以上…折原臨也とその兄は話をつづけた。