ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双   作:ゆきほたる

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奈落の底 〜出逢いはパンドラの箱を開けて〜

 □noside

 

 一行は何ヶ月か、あるいは何週間か。迷宮の攻略を行い、そして相対する魔物の全てを喰らった。

 タールの海を泳ぐサメモドキ、極夜の暗闇の世界でバジリスクを倒し。

 フクロウかよくわからない魔物。虹色の毒ガエルにモスラ擬きの蛾やらめちゃくちゃに種類がいたが、実際はテンプレートの魔物ばかりだったのでそこまで能力を得ることはできなかった。

 

 参考程度にハジメが得た能力はこうである。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 南雲ハジメ 17歳 男 レベル:51

 天職:錬成師

 筋力:1080

 体力:1070

 耐性:960

 敏捷:1140

 魔力:860

 魔耐:860

 技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・言語理解

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 そして現在、双葉たちは。奈落の底が、そのスタート地点から数えて50層目を攻略し次の層へ進むか進むまいかを悩んでいた。

 理由としてはこの層にあるある一角の未探索エリアだ。

 

 それは、なんとも不気味な空間だった。

 

 脇道の突き当りにある空けた場所には高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。

 

 その空間に足を踏み入れた瞬間全身に悪寒が走るのを感じ、これはヤバイと一旦引いたのである。でも、同じような迷宮の中でようやく現れた‘変化’。

 もちろん装備を整え避けるつもりは毛頭ないので挑む気は満々である。もはやコイツら「藤○弘、探検隊」の意思でも継いだんじゃなかろうか? 

 興味、未知に貪欲になりつつあったから。

 

 全員は期待と嫌な予感を両方同時に感じていた。あの扉を開けば確実になんらかの厄災と相対することになる。だが、しかし、同時に終わりの見えない迷宮攻略に新たな風が吹くような気もしていた。

 

「どう見てもこれ、なんかあるよね」

「さながら、パンドラの箱の蓋だな」

「スルーしてもいい気はするんだけど、双葉。何か気になる?」

 

 香織に振られた双葉は魔力感知を駆使して……扉に弾かれる。プロテクトでもかかっているのか、思わず眉を顰めた。

 ハジメはこの扉に用いられている魔法式を見たことがないと2人に伝える。

 近くで見れば益々、見事な装飾が施されているとわかる。そして、中央に二つの窪みのある魔法陣が描かれているのがわかった。

 

「だめだ、やっぱ開けないと無理っぽいね。扉越しに感知はできないみたい」

「んじゃ、開けるしかないな……っく、離れろ!」

 

 ハジメは扉に両手をつき錬成を用いて扉を崩壊させようとするが……ばちぃ! と弾かれ。バックステップで距離をとり。双葉は香織を抱き寄せて腰あたりに手を回すとハジメの元へと跳躍した。

 ハジメの手は煙を上げ、明らかに正常ではなく。それをみた香織が回復魔法を使用して一瞬で快復させる。

 

「サンキュー、香織」

「治療は私の出番だからね♪」

「んだ、ありゃ……2人とも、くるよ!」

 

 ──オォォオオオオオオ!! 

 

 突然、野太い雄叫びが部屋全体に響き渡ったのだ。

 

 ハジメは腰を落とし、手にドンナーを構え。香織はその手に小型レールガン、‘デュランダル’を抜き。

 

 雄叫びが響く中、遂に声の正体が動き出した。

 

「まぁ、ベタと言えばベタだな」

「サイクロプスかぁ……若干デフォルメされてるのかな?」

「さぁね」

 

 苦笑いしながら呟くハジメ達の前で、扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が周囲の壁をバラバラと砕きつつ現れた。いつの間にか壁と同化していた灰色の肌は左側が青っぽく、右側のか赤っぽく変色している。

 

 一つ目巨人の容貌はまるっきりファンタジー常連のサイクロプスだ。未だ埋まっている半身を強引に抜き出し無粋な侵入者を排除しようと一行の方へ視線を向けた。

 

 その瞬間である。

 

 ドパン! ドパンッ! 

 

 双方のサイクロプス達は、目を撃ち抜かれて絶命した。

 

「悪いが、空気を読んで待っていてやれるほど出来た敵役じゃあないんだ」

「まぁそういうことで。先制パンチできるなら誰でもするよね」

「……お、おう」

 

 双葉も二人も変わったなーなどとつぶやく中。ハジメと香織は風爪を用いてサイクロプスの遺骸から魔石を取りつつ。

 

「コイツをあの窪みに嵌め込めばいいみたいだな。肉は……」

「はいはい、任せて」

 

 双葉が錬成で作り出したナイフをサイクロプスに差し込み。肉を適量切り取ると、容器にぼちゃりとしまう。

 

「いただくのは後にして、まずは進もう」

 

 香織の提案にハジメは頷き、魔石を扉に嵌め込んだ。

 魔石から赤黒い魔力光が迸ほとばしり魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、パキャンという何かが割れるような音が響き、光が収まった。同時に部屋全体に魔力が行き渡っているのか周囲の壁が発光し、久しく見なかった程の明かりに満たされる。

 

 双葉とハジメはその眩しさに少し目を瞬かせ、警戒しながら、そっと扉を開いた。

 

 扉の奥は光一つなく真っ暗闇で、大きな空間が広がっているようだ。〝夜目〟と手前の部屋の明りに照らされて少しずつ全容がわかってくる。

 

 中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。

 

「……みて、人がいる」

「何?」

「嘘でしょ?」

 

 目のいい双葉は奥の立方体を指差して。そこから生える何かが人だと言った。

 

「……だれ?」

 

 かすれた、弱々しい女の子の声だ。ビクリッとしてハジメが、香織が慌てて部屋の中央を凝視する。すると、先程の〝生えている何か〟がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。

 

「人……なのか?」

「人って言ったでしょ?」

 

 双葉が若干拗ねながら、三度言う。‘生えていた何か’は確かに人だった。

 

 上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗のぞいている。年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。

 

 流石に予想外だった二人は硬直し、紅の瞳の女の子も三人をジッと見つめていた。やがて、ハジメはゆっくり深呼吸し決然とした表情で告げた。

 

「すみません。間違えました」

 

 そう言ってそっと扉を閉めようとするハジメ。それを金髪紅眼の女の子が慌てたように引き止める。もっとも、その声はもう何年も出していなかったように掠かすれて呟のようだったが……

 

 ただ、必死さは伝わった。

 

「ま、待って! ……お願い! ……助けて……」

「なんでやねん!?」

「話くらい聞いてあげようよ、ハジメ!?」

 

 その弱々しい声音を聞き。双葉が思わずビシッとツッコミ、香織が引き止めにかかる。しかし、ハジメは反論した。

 

「あのな、こんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されているような奴を解放するわけないだろう? 絶対ヤバイって。見たところ封印以外何もないみたいだし……脱出には役立ちそうもない。という訳で……」

 

 ぐうの音も出ない正論だった。しかし、香織は捨て置けなかった。もちろん、双葉も。

 

「待って、ハジメくん! 話も聞かずに放置するのは可哀想だよ! ……そんなに薄情な人だとは思わなかった」

「うぐ、それはだな……」

「へー、ならあたしがあの子の話を聞きに行くわね? ハジメは一人で先に進んでくれてもいいんだよ?」

「双葉、てめ……あーもう、わかったよ! 話を聞いてから、でも遅くねえな!」

 

 二人に折れたハジメは踵を返すとツカツカと部屋に入っていく。

 

「助けて……くれるの……?」

「話を聞いてからな。なんでこんなところに封印されたんだよ」

「ちょいまち。えっと、はい」

 

 双葉は自分の外套を女の子に羽織らせる。何やってんだよ、とハジメが目で抗議したが……彼女の体は一糸纏わぬ姿だ。その事実に気がついたハジメは直視できず、目を逸らした。

 

「あと、これ飲んで。水よ……」

「いらない……」

「そう……なら、あとで飲んで」

 

 双葉はそう言うと、一歩下り。ハジメに視線を向ける。もういい、と。

 

「で、話を戻すぞ。なんでここに封印されてんだ?」

「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……‘裏切られた’の……」

 

 三人の胸の奥がずきりと痛む。こんな幼気な少女が、‘裏切られた’と。言葉を発した。そして、クラスの誰かに‘裏切られた’ハジメもまた。友が、恋人が共に降りて来なければ……死んでいた、あるいは人間らしさも失い。生きるために全てを殺すと宣うようになっていたかもしれない。

 

 ハジメは頭をカリカリと掻きながら、女の子に歩み寄る。もちろん油断はしない。

 

「裏切られたと言ったな? 誰が、その話が本当だとして、裏切った奴はどうしてお前をここに封印したんだ?」

「おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

 枯れた喉で必死にポツリポツリと語る女の子。話を聞きながらハジメは呻いた。なんとまぁ波乱万丈な境遇か。しかし、ところどころ気になるワードがあるので、湧き上がるなんとも言えない複雑な気持ちを抑えながら、ハジメは尋ねた。

 

「お前、どっかの国の王族だったのか?」

「……(コクコク)」

「殺せないってなんだ?」

「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

「……そ、そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」

「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」

「双葉にそっくりだね……私たちも魔力操作はできるけど」

 

 ハジメ達も魔物を喰ってから、魔力操作が使えるようになった。身体強化に関しては詠唱も魔法陣も必要ない。他の錬成などに関しても詠唱は不要だ。

 だが、この女の子や双葉のように魔法適性があれば反則的な力を発揮できるのだろう。否、それは双葉が証明済だ。

 あの時の、中野へ無詠唱で‘火球’を行使して見せたあれが、何発も飛来するのだ。中野なら2節詠唱を繰り返す必要があろう。

 双葉はそんなものがなくとも、最大火炎系呪文(メラゾーマ)を連発できる。

 しかし、この女の子には、双葉とは決定的に違うアドバンテージがある──不死身。おそらく絶対的なものではないだろうが、それでも下手すればそこにいる人型ドラゴンすら凌駕しそうなチートである。

 

「……たすけて……」

 

 ハジメが一人で思索に耽ふけり一人で納得しているのをジッと眺めながら、ポツリと女の子が懇願する。

 

「……」

 

 ハジメはジッと女の子を見た。女の子もジッとハジメを見つめる。どれくらい見つめ合っていたのか……

 やがてハジメはガリガリと頭を掻き溜息を吐きながら、双葉と香織を見た。二人は「異議なし、やれ」と言わんばかりの顔。

 苦笑しつつハジメは女の子を捕える立方体に手を置いた。

 

「あっ」

 

 女の子がその意味に気がついたのか大きく目を見開く。ハジメはそれを無視して錬成を始めた。ハジメの魔物を喰ってから変質した赤黒い、いや濃い紅色の魔力が放電するように迸る。

 

 しかし、イメージ通り変形するはずの立方体は、まるでハジメの魔力に抵抗するように錬成を弾いた。迷宮の上下の岩盤のようだ。だが、全く通じないわけではないらしい。少しずつ少しずつ侵食するようにハジメの魔力が立方体に迫っていく。

 

「ぐっ、抵抗が強い! ……だが、今の俺なら!」

「なんなら、あたしもいるよ」

 

 ハジメが両手を立方体に手を添えて。魔力を注ぎ、錬成を行うその後ろで。双葉は左手を上げて、ハジメに向ける。

 

擬/赤龍帝の籠手(シャドウ・ブーステッド・ギア)っ!!」

 [倍加(Boost)ッ!! ──Transfer!! ]

「受け取って、ハジメ! 影/赤龍帝からの贈り物(シャドウ/ブーステッド・ギア・ギフト)ッ!」

 

 直後、双葉の赤龍帝の籠手よりオーラが放出される。そのオーラはハジメを包み込み。その魔力の力強さを跳ね上げる! 

 

「コイツは……これなら!」

「だめ押しの、錬成ぇぇぇ!!」

「あっ……」

 

 双葉も立方体に手を添えて魔力を注ぎ込む。ハジメだけではびくともしなかった立方体が徐々に溶け出していく。

 なぜ、この初対面の少女のためにここまでしているのかハジメ自身もよくわかっていない。双葉が、香織がとにかく放っておけないのだから仕方ない。

 

「「これでぇぇぇ、爆ぜろぉぉぉ!!」

 

 暴虐的な魔力が立方体に注がれる。ブツの震えが大気を振動させる。

 直後、女の子の周りの立方体がドロッと融解したように流れ落ちていき、少しずつ彼女の枷を解いていく。

 彼女を包んでいた立方体が流れ出す。一糸纏わぬ彼女の裸体はやせ衰えていたが、それでもどこか神秘性を感じさせるほど美しかった。そのまま、体の全てが解き放たれ、女の子は地面にペタリと女の子座りで座り込んだ。どうやら立ち上がる力がないらしい。

 はらり、とその上に双葉が彼女に掛けていた外套が乗るように。

 

 ハジメも座り込んだ。肩でゼハーゼハーと息をし、使った膨大な魔力消耗のせいで激しい倦怠感に襲われる。

 荒い息を吐き震える手で神水を出そうとして、その手を女の子がギュッと握った。弱々しい、力のない手だ。小さくて、ふるふると震えている。

 

 ハジメが横目に様子を見ると女の子が真っ直ぐにハジメを見つめている。顔は無表情だが、その奥にある紅眼には彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。

 そして、震える声で小さく、しかしはっきりと女の子は告げる。

 

「……ありがとう」

 

 繋がった手はギュッと握られたままだ。いったいどれだけの間、ここにいたのだろうか。少なくともハジメの知識にある吸血鬼族は数百年前に滅んだはずだ。この世界の歴史を学んでいる時にそう記載されていたと記憶している。

 話している間も彼女の表情は動かなかった。それはつまり、声の出し方、表情の出し方を忘れるほど長い間、たった一人、この暗闇で孤独な時間を過ごしたということだ。

 

 しかも、話しぶりからして信頼していた相手に裏切られて。よく発狂しなかったものである。もしかすると先ほど言っていた自動再生的な力のせいかもしれない。だとすれば、それは逆に拷問だっただろう。狂うことすら許されなかったということなのだから。

 

「神水を飲めるのはもう少し後だな」と苦笑いしながら、気怠い腕に力を入れて握り返す。女の子はそれにピクンと反応すると、再びギュギュと握り返してきた。

 

「……名前、なに?」

 

 女の子が囁くような声でハジメに、そして、双葉を見て尋ねる。そういえばお互い名乗っていなかったと苦笑いを深めながらハジメは答え、女の子にも聞き返した。

 

「ハジメだ、南雲ハジメ。こっちの黒紅白髪は双葉。それと、そっちが恋人の香織」

「むっ……恋人がいたの……?」

「何もできなくてごめんね? 私は白崎香織。ただ、これくらいならできる──‘廻聖’」

「魔力譲渡の魔法か……あたしは今紹介があったけど。天龍双葉よ」

 

 女の子は「ハジメ、カオリ、フタバ」と、さも大事なものを内に刻み込むように繰り返し呟いた。そして、問われた名前を答えようとして、思い直したようにハジメにお願いをした。

 

「……名前、付けて」

「は? 付けるってなんだ。まさか忘れたとか?」

 

 長い間幽閉されていたのならあり得ると聞いてみるハジメだったが、女の子はふるふると首を振る。

 

「もう、前の名前はいらない。……ハジメの付けた名前がいい」

「……はぁ、そうは言ってもなぁ」

 

 前の自分を捨てて新しい自分と価値観で生きる。この女の子は自分の意志で変わりたいらしい。その一歩が新しい名前なのだろう。女の子は期待するような目でハジメを見ている。ハジメはカリカリと頬を掻くと、少し考える素振りを見せて、仕方ないというように彼女の新しい名前を告げた。

 

「──ユエ、なんてどうだ? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが……」

「ユエ? ……ユエ……ユエ……」

「ああ、ユエって言うのはな、俺の故郷で〝月〟を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな……どうだ?」

「厨二っぽい発想! でも、似合ってると思うよ!」

「ちょっと黙ろうか、香織ィィ!」

 

 思いのほかきちんとした理由があることに驚いたのか、女の子がパチパチと瞬きする。そして、相変わらず無表情ではあるが、どことなく嬉しそうに瞳を輝かせた。

 

「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

「おう、取り敢えずだ……」

「?」

「それちゃんと着とけ。いつまでも素っ裸じゃあなぁ」

「……」

 

 自分を見下ろすユエ。確かに、ほぼ、すっぽんぽんだった。大事な所とか丸見えである。ユエは一瞬で真っ赤になると羽織っていた外套をギュッと抱き寄せ上目遣いでポツリと呟いた。

 

「ハジメのエッチ」

「……」

「……」

「……」

 

 女性陣の視線が痛かった。そして、何を言っても墓穴を掘りそうなのでノーコメントで通すハジメ。ユエはいそいそと外套を羽織る。ユエの身長は百四十センチ位しかないのでぶかぶかだ。一生懸命裾を折っている姿が微笑ましい。

 

 ハジメは神水を飲み、魔力を回復させると……気配感知に反応があり、すぐに銃を抜く。そして、その反応が真上にあることに気がつき……双葉もハジメと顔を見合わせ、すぐに動く。

 

「……みんな、気をつけて!」

 

 双葉はそう言うと香織の前に立ち。かばうように槍をバトンのように回転させる。

 

「双葉!?」

 

 飛来した棘を双葉は槍を振り回して弾き飛ばす。双葉が感じたのは天井に何かがいる! と言うことだ。

 

「ハジメ、ユエを安全なところに! 援護お願い! ……くるよ!」

 

 ──ギジャァァォァァァァッッッ!! 

 

 雄叫び。そして、何者かが落下したのか、土煙が巻き上がる。

 

 そこにいたのは……巨大なサソリの魔物だった。

 

 ──

 

 to be continued

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