ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双 作:ゆきほたる
□noside
「うぅ〜……」
「唸るなって、双葉。服はちゃんと作ってやるから」
「ブラも下着も全部よ! 胸の形が崩れないようにサラシ巻いてたんだから!」
裸カッターシャツというどんな罰ゲームかと、双葉は自身の服装を見て嘆く。ハジメとしても女子三人揃ってその格好は理性的にもやばいと感じているので、常に目を逸らして彼女たちに接していた。
ゴタゴタもありながら、ベッドルームから出たハジメと双葉は、周囲の光景に圧倒され呆然とした。
まず、目に入ったのは‘太陽’。もちろんここは地下迷宮であり本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。
「……夜になると月みたいになる」
「マジか……」
「無駄に凝ったやつね」
「朝晩の感覚を地下でも忘れないようにするためじゃないかな」
次に、注目するのは耳に心地良い水の音。扉の奥のこの部屋はちょっとした球場くらいの大きさがあるのだが、その部屋の奥の壁は一面が滝になっていた。天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいく。よく見れば魚も泳いでいるようだ。
「……やっとまともな食糧! そうよ、もう魔物肉は食べなくてもいいよね!」
「……私はみんなの血を」
「ユエもそろそろ普通の食事しようぜ!!」
「双葉の作る料理は美味しいから!!」
「……双葉の血より美味なら考えてもいい」
「おうこらまてや!? ハードル上げるなぁ!?」
川から少し離れたところには大きな畑もあるようである。今は何も植えられていないようだが……その周囲に広がっているのは、もしかしなくても家畜小屋である。動物の気配はしないのだが、水、魚、肉、野菜と素があれば、ここだけでなんでも自炊できそうだ。緑も豊かで、あちこちに様々な種類の樹が生えている。
ハジメ達は川や畑とは逆方向、ベッドルームに隣接した建築物の方へ歩を勧めた。建築したというより岩壁をそのまま加工して住居にした感じだ。
「……少し調べたけど、開かない部屋も多かった……」
「普通に拠点だと思うけどねぇ」
「そうか……油断せずに行くぞ」
「オッケー。何が出るやら」
石造りの住居は全体的に白く石灰のような手触りだ。全体的に清潔感があり、エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。薄暗いところに長くいたハジメ達には少し眩しいくらいだ。どうやら三階建てらしく、上まで吹き抜けになっている。
内装は高級マンションにも引けを取らない充実したものとなっている。そして、システムキッチンを見つけた双葉は歓喜の表情である。コンロや水道はない。それでも広いキッチンを見るとやはり、興奮する……料理を嗜む彼女からすればそういうことなのだろう。
そして、一行は未探索の部分に足を踏み入れる──先ほどより、警戒しながら進む。更に奥へ行くと再び外に出た。
そこには大きな円状の大きな窪みが鎮座しており。その淵にはライオンぽい動物の彫刻が口を開いた状態で設置されている。彫刻の隣には魔法陣が刻まれていたので試しに魔力を注いでみると。
ライオンモドキの口から勢いよく温水が飛び出した。マーライオンよろしく、どこの世界でも水を吐くのはライオンというのがお約束らしい。
「まんま、風呂だな。こりゃいいや。何ヶ月ぶりの風呂だか」
思わず頬を緩めるハジメ。最初の頃は余裕もなく体の汚れなど気にしていなかったハジメだが、余裕ができると全身のカユミが気になり、双葉に頼んで水を出して貰い、体を拭いていたのを思い出す。
しかし、ハジメも日本人だ。例に漏れず風呂は大好き人間である。安全確認が終わったら堪能しようと頬を緩めてしまうのは仕方ないことだろう。
そんなハジメを見て香織とユエは期待する眼差しで
「「一緒に入ろ?」」
「……一人でのんびりさせて?」
「ぐぬぬ」
「むぅ……」
「……混浴前提なのね」
湯加減はいいのか早く入りたそうな香織と、素足でパシャパシャと温水を蹴るユエの姿に、一緒に入ったらくつろぎとは無縁になるだろうと断るハジメ。断られると香織はジト目、ユエは唇が尖らせて不満顔。双葉は思わず笑いそうになっていた。
それから、二階で書斎や工房らしき部屋を発見した。しかし、部屋を開ける条件が分からず、開けることはできなかった。
仕方なく諦め、探索を続ける。一同は三階の奥の部屋に向かった。三階は一部屋しかないようだ。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。いっそ一つの芸術といってもいいほど見事な幾何学模様である。
「……この骸は」
「……反逆者?」
しかし、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影である。人影は骸だった。既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。薄汚れた印象はなく、お化け屋敷などにあるそういうオブジェと言われれば納得してしまいそうだ。
椅子にもたれかかりながら俯いている骸があった。その姿勢のまま朽ちて白骨化したのだろう。魔法陣しかないこの部屋で骸は何を思っていたのか。寝室やリビングではなく、この場所を選んで果てた意図はなんなのか……
「……怪しい……何かありそう」
「喋り出したりしそうだね?」
「んなベタな……」
骸に興味を抱いた香織たち。反面、ユエは少し警戒気味である。
骸はおそらく反逆者と言われる者達の一人なのだろうが、苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿は、まるで誰かを待っているようである。
「まぁ、地上への道を調べるには、この部屋がカギなんだろうしな。俺の錬成も受け付けない書庫と工房の封印……調べるしかないだろう。何かあったら頼む」
「あたしも踏み込むよ。なんとなく、遅かれ早かれそうするべきだと思うし」
「ん……気を付けて」
「わかった」
ハジメと双葉は魔法陣へ向けて踏み出した。そして、魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。
「ぐっ!? なんだ……」
「頭の中を覗かれる感覚だね……不快だわ」
全員はそのまぶしさに目を閉じる。直後、何かが頭の中に侵入し、まるで走馬灯のように奈落に落ちてからのことが駆け巡った。
やがて光が収まり、目を開けたハジメの目の前には、黒衣の青年が立っていた。青年は、よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。
【試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?】
「試練にしちゃ殺す気だっただろうに」
「まぁ、あれで死ぬ程度じゃダメだってことじゃないかな?」
話し始めた彼はオスカー・オルクスというらしい。【オルクス大迷宮】の創造者のようだ。驚きながら彼の話を聞く。
【ああ、質問や愚痴は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを】
そうして始まったオスカーの話は、ハジメたち地上組が聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚愕すべきものだった。
それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。
何百年と続く争い。種族間の戦争の裏にある神託……そんな暗黒の時代にに終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、《解放者》と呼ばれた集団である。
彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。そのためか解放者のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。
何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。解放者のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。
彼等は、【神域】と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。〝解放者〟のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った七人を中心に、彼等は神々に戦いを挑もうとした。
しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。
──何と、神は人々を巧みに操り、彼等を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。
神を討つことを目的とした解放者たちは人々に牙を剥くことなどできないと、解放者たちは反逆者として討たれ、仲間を次々と失っていったそうで。
「……やっぱ、そういうことね」
「……そうだな。真の敵とやらはエヒト……この世界だけで満足してくれりゃいいが、飽きたら今度は……」
「地球に白羽の矢が立ちそうだね。召喚魔法で私たちという存在を呼べたなら、エヒト自体が地球に行くことも可能だと思う」
「……神は身勝手。はっきりわかるんだね」
所感を挟みながら話を聞く四人。そして、最後まで残ったのは中心の七人だけだった。世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。
試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。
長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。
【君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。ここにあるもの全てを、どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを】
そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、魔法陣内にいる二人の脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいたためと理解できたので大人しく耐えた。
やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まる。落ち着かせるよう、ハジメと双葉はゆっくり息を吐いた。
「ハジメ、双葉……大丈夫?」
「ああ、平気だ……にしても、何かどえらいこと聞いちまったな」
「そうだね……エヒトの‘お遊び’に付き合う気はないけどさ」
「……ん……どうするの?」
ユエがオスカーの話を聞いてどうするのかと尋ねる。
「うん? 別にどうもしないぞ……とは言えないな。元々、勝手に召喚して戦争しろとかいう神なんて迷惑としか思っていないし、この世界がどうなろうと知ったことじゃない……とは言ったものの」
「このまま放置してりゃエヒトはこの世界が滅んだあと、絶対地球に……あたしたちの故郷にちょっかいかけるわよね?」
「そうだろうな。それを俺たちは許すつもりはない……あれだ、害虫駆除ついでにこの世界を救ってやるか」
「……まぁ、素直じゃない二人の気持ちを代弁すると……元々エヒトの身勝手に付き合わされた私たちが地球に戻っても、いつかエヒトが害を及ぼす可能性がある。なら、倒す方がいいよね」
ハジメ、香織、双葉は別にこの世界に思い入れがあるわけではない。オスカーに対して同情はするがどうこうする気はなかった。薄情とはいえ、お前たちの世界のことはお前達の世界の住人が何とかしろと。
しかし、召喚魔法なんて傍迷惑な魔法を扱えるエヒトが新たな盤面を求めて、それが地球になるのは面白くない。そこで、ハジメたちは……別にオスカーやこの世界のためにではなく。自分たちのために──
「元々あたしはエヒトを殴らないと気が済まないし、そのついでに付き合ってくれない?」
何より、双葉は最初からエヒトをシバくつもりだったので都合がいいと判断する。
「……私も手伝う」
「いいのか? ユエまで付き合う必要はないぞ?」
「私の居場所はここ……だけど、それを将来奪おうとする奴がいるなら……私はそいつを許さない」
「……そうかい」
若干、照れくさそうなハジメ。それを誤魔化すためか咳払いを一つして、ハジメが衝撃の事実をさらりと告げる。
「あ~、あと何か新しい魔法……神代魔法っての覚えたみたいだ」
「……ホント?」
信じられないといった表情のユエ。それも仕方ないだろう。何せ神代魔法とは文字通り神代に使われていた現代では失伝した魔法である。ハジメ達をこの世界に召喚した転移魔法も同じ神代魔法である。
「何かこの床の魔法陣が、神代魔法を使えるように頭を弄る?」
「刷り込みの方がいいわね。まさか頭に直接とは思わなんだ」
「……二人とも大丈夫?」
「おう、問題ないぜ?」
「そして、この魔法……ハジメのためにあるような魔法な気がする」
「……どんな魔法?」
「え~と、生成魔法ってやつだな。魔法を鉱物に付加して、特殊な性質を持った鉱物を生成出来る魔法だ」
「錬成師ならバッチェ使えると思うよ」
その言葉にポカンと口を開いて驚愕をあらわにするユエ。
「……アーティファクト作れる?」
「ああ、そういうことだな」
「ハジメの錬成なら高性能な義肢も作れるでしょ、きっと……」
そう、生成魔法は神代においてアーティファクトを作るための魔法だったのだ。まさに‘錬成師’のためにある魔法である。実を言うとオスカーの天職も錬成師だったりする。
「何か、魔法陣に入ると記憶を探られるみたいなんだ。オスカーも試練がどうのって言ってたし、試練を突破したと判断されればユエと香織も覚えられるんじゃないか?」
「……錬成使わない……」
「右に同じく!」
「まぁ、そうだろうけど……せっかくの神代の魔法だぜ? 覚えておいて損はないんじゃないか?」
「……ハジメが言うなら」
「……そうする?」
ハジメの勧めに魔法陣の中央に入る香織とユエ。魔法陣が輝き二人の記憶を探る。そして、試練をクリアしたものと判断されたのか……
【試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスry……】
またオスカーが現れた。何かいろいろ台無しな感じだった。ペラペラと同じことを話すオスカーを無視して一同は会話を続ける。
「どうだ? 修得したか?」
「ん……した。でも……アーティファクトは難しい」
「私は適性がないみたいだねー。双葉は取得したの?」
「当然。つか、あたしは‘全魔法適性’とかいう技能があるから苦もなく覚えれたよ」
「う~ん、やっぱり神代魔法も相性とか適性とかあるのかもね」
そんなことを話しながらも隣でオスカーは何もない空間に微笑みながら話している。すごくシュールだった。後ろの骸むくろが心なしか悲しそうに見えたのは気のせいではないかもしれない。
「あ~、取り敢えず、ここはもう俺等のもんだし……オスカーには休んでもらうか」
「ん、埋葬する?」
「もちろん、棺桶とか作ってあげようよ。仮にもハジメの大先輩みたいだしね」
オスカーの骸はカタリと力を抜くように動いた……彼は長い時を経て、ようやく休めることを喜んだのかもしれない。
一行はオスカーの骸を棺桶に収めて畑の端に墓標を立てる。そこには、‘偉大なる解放者 オスカー・オルクスがここに眠る’と日本語で刻まれていた。
埋葬が終わると、ハジメ達は封印されていた場所へ向かった。ついでにオスカーが嵌めていたと思われる指輪も頂いておいた。
墓荒らしとか言ってはいけない。その指輪には十字に円が重った文様が刻まれており、それが書斎や工房にあった封印の文様と同じだったのだ。
まずは書斎だ。
一番の目的である地上への道を探らなければならない。一行はそこでこの住居の施設設計図らしきものを発見した。通常の青写真ほどしっかりしたものではないが、どこに何を作るのか、どのような構造にするのかということがメモのように綴つづられたものだ。
「ビンゴ! あったぞ、みんな!」
「ヨシ!」
「んっ……」
「これで帰れるんだね!」
ハジメから歓喜の声が上がる。設計図によれば、どうやら先ほどの三階にある魔法陣がそのまま地上に施した魔法陣と繋がっているらしい。オルクスの指輪を持っていないと起動しないようだが、指輪は確保済みである。
更に設計図を調べていると、どうやら一定期間ごとに清掃をする自律型ゴーレムが工房の小部屋の一つにあったり、天上の球体が太陽光と同じ性質を持ち作物の育成が可能などということもわかった。人の気配がないのに清潔感があったのは清掃ゴーレムのおかげだったようだ。
工房には、生前オスカーが作成したアーティファクトや素材類が保管されているらしい。これは使ってくれとの遺言に従うべきだ、と双葉が主張したので譲ってもらうべきだろう。道具は使ってなんぼである。
「ハジメ……これ」
「うん?」
手分けして色々探ることにした女性陣とは別に、ハジメが設計図をチェックしていると他の資料を探っていたユエが一冊の本を持ってきた。どうやらオスカーの手記のようだ。かつての仲間、特に中心の七人との何気ない日常について書いたもののようである。
その内の一節に、他の六人の迷宮に関することが書かれていた。
「……つまり、あれか? 他の迷宮も攻略すると、創設者の神代魔法が手に入るということか?」
「……かも」
手記によれば、オスカーと同様に六人の解放者達も迷宮の最深部で攻略者に神代魔法を教授する用意をしているようだ。生憎とどんな魔法かまでは書かれていなかったが……
「……帰る方法見つかるかも」
ユエの言う通り、その可能性は十分にあるだろう。実際、召喚魔法という世界を越える転移魔法は神代魔法なのだから。
「だな。これで今後の指針ができた。地上に出たら七大迷宮攻略を目指そう」
「んっ」
「ハジメ、こっちの確認は終わったよ」
「とりあえず、義肢とかの試作品っぽいのもあって調整すれば使えそうね」
双葉たちも合流して、それからしばらく正確な迷宮の場所を示すような資料を探したが、発見できなかった。現在、確認されている【グリューエン大砂漠の大火山】【ハルツィナ樹海】、目星をつけられている【ライセン大峡谷】【シュネー雪原の氷雪洞窟】辺りから調べていくしかないだろうと結論つけた。
工房に移動して義肢などのサンプルを確認するハジメ。作りかけの物やほぼ完成品のようなものも散乱していた。
そして、工房には小部屋が幾つもあり、その全てをオルクスの指輪で開くことができた。中には、様々な鉱石や見たこともない作業道具、理論書などが所狭しと保管されており、錬成師にとっては楽園かと見紛うほどである。
ハジメは、それらを見ながら腕を組み少し思案する。そんなハジメの様子を見て、ユエが首を傾げながら尋ねた。
「……どうしたの?」
ハジメはしばらく考え込んだ後、皆に提案した。
「う~ん、あのさ。しばらくここに留まらないか? さっさと地上に出たいのは俺も山々なんだが……せっかく学べるものも多いし、ここは拠点としては最高だ。他の迷宮攻略のことを考えても、ここで可能な限り準備しておきたい。どうだ?」
「……ありだね。装備の開発やら道具も揃ってるし、ガングニールを完成させたりもできそうだし」
「私も賛成! まだまだ魔法に関して勉強も足りないから、ここで修練を積むのもありだと思うよ」
「私は……みんなが一緒ならどこでもいい」
満場一致で一同は可能な限りの鍛錬と装備の充実を図ることになった。
──
to be continued
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おまけ
その日の晩、天井の太陽が月に変わり淡い光を放つ様を、ハジメは風呂に浸かりながら全身を弛緩させてぼんやりと眺めていた。
「はふぅ~、最高だぁ~」
今のハジメからは考えられないほど気の抜けた声が風呂場に響く。全身をだらんとさせたままボーとしていると……
ヒタヒタと足音が複数、聞こえ始めた。完全に油断していたハジメは戦慄する。一人で入るって言ったのに!
タプンと音を立てて湯船に入ってきたのはもちろん
「いい湯加減だね〜」
「んっ……気持ちいい……」
一糸まとわぬ姿でハジメのすぐ隣に腰を下ろす香織とユエであった。香織は右側に、ユエは左側だった。
「……香織さん、ユエさんや。俺は一人で入るって言ったよな?」
「「……だが断る」」
「ちょっと待て! 香織はともかく、何でユエがそのネタを知ってる!?」
「……香織に教わった」
「……何教えてんだよ!? はぁ、せめて前を隠せ。タオル沢山あったろ」
「むしろ見てほしいんだよね、私もユエも」
「……おう……ってユエ、香織。近いんです、ナズェアテルンディスカーッ!?」
「「当ててんのよ(……?)」」
「だから何でそのネタを知ってんだ! ええい、俺は上がるからな!」
「逃がさない、香織!」
「はーい、‘縛光刃’♪」
「ちょ、魔法は卑怯だろ!? まて、あっ、アッ──────!!!」
その後、何があったのかは、皆様のご想像にお任せしようと思う。