ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双   作:ゆきほたる

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召喚されるクラスと私

 ■双葉side

 

 チャイムが鳴り、お昼休みとなる。私は自分で詰めた弁当を机に出すと、そこへ香織がやってきて。その後ろには雫もいるのが見えた。

 

「双葉ちゃん、一緒に食べよ」

「双葉、失礼するわ。相変わらず料理が上手なのね」

「ん、いいよ、2人とも」

 

 私の机に弁当箱を置くと、香織と雫は自分の席へ椅子を取りに行く。その隣では……じゅるるるる、キュポン。と音がしたと思えば……

 

「南雲くん。そんなので足りるの?」

「あっ……大丈夫だよ。あとは昼寝するだけだし」

 

 弁当()のういだーを飲み干して満足げな顔をする南雲くんの顔が見て取れた。しかし、少し疲れも見える気がするんだけど? 

 

「ご両親のお仕事を手伝うのもいいけど、私たちはまだ未成熟な子供なんだから。体を労りなさいよ?」

「うん、ほんとによく見てるね天龍さんって」

「目元に隈はないけど、雰囲気的に疲れも見える……ほんとに大丈夫?」

「ヘーキへっちゃらさ。でも、さすがだね。医者目指してるだけはあるよ」

「褒めても何も出ないわよ。まぁ、そうならいいけど」

 

 会話もそこそこに、香織たちが席にやってきたので弁当を広げて昼食を。優美に箸を使い食べながら、最近話題のVRゲームについて会話が弾んだ。

 

「今度出る‘プレステVR’を買おうか悩んでるんだよなぁ……それ見越してお小遣いを貯めないとダメだと思うんだけど」

「そりゃ既知の技術は使われてないだろうし高いのは確実よね」

「刀を使うようなゲームはないのだろうか。コントローラーを振り回す手前、広いところでしかできなそうだが」

 

 うーんと唸る雫。その様を見た私は昔流行ったWiiスポーツにてチャンバラゲームで雫をボコった時を思い出す。

 

「Wiiスポーツのチャンバラで私に惨敗したくせにまだいうの?」

「んな!? あ、アレは剣道のセオリーを守らない双葉が足元を狙うから!」

「勝てば良かろうなのだよ!」

「双葉ちゃん……さすが卑劣」

 

 お嬢様がする会話なのかだって? 知らんなぁ、雫も香織もゲーマーだし。誰のせい? 知らんなぁ……? 

 

 そんなことは置いておき、南雲くんは机に突っ伏して眠ってるので、香織は無理に声をかけることはない……心配そうなのは確かなのだが、寝ている彼を起こすような愚行は禁物だと指導した甲斐があるワケダ。

 

「そういえば、双葉。前出してたあの赤い籠手ってなんだったの?」

「ん? これ?」

 

 雫が訪ねてきたのでとりあえず私は何もない左手に、意思を集中。すると、若干仄暗い真紅の籠手がその手に装備された。これは私の持つ特別な……

 

「いや、別に出さなくてもいいでしょ!?」

「なんだって聞くからには説明しないとダメでしょ?」

 

 そんな時だ。何やら足元が輝き……なんだろう。その輝きが増しているような気がする……

 

「んぐ……眩しいなぁ、誰だよここでネーム書こうとしてるのは」

「あ、おはよう! ハジ……南雲くん!」

「まだ学校だったか……うん、おはよう香織……じゃなくて白崎さん」

 

 墓穴を掘りかけた香織に対して墓穴を掘った南雲くん。いや、無防備すぎひん? 

 

「香織……だって?」

「……なんだ、偽善野郎。気になるの? つか、さっきから眩しいんだけど」

 

 いつのまにか近くにいた光輝にそっけなく返し、光の出どころはこいつだと理解して、ハッとなる──なんで光輝が物理的に輝いてるわけ? 

 光輝の足元を覗き込むとそこには何やら白く輝く幾何学模様の……

 

『フタバ! すぐにそこから離れろ!! そいつは』

「うわぁい!?」

「どうしたのよ、双葉……光輝、その足元のは何なの!?」

「え……」

 

 ギョッとする光輝の顔。そして、びっくりした。ドライグの大声が脳に直接響いたのだ。やたら切羽詰まった感のある声だったけども、どうかしたのかな? 神器(セイクリッド・ギア)を消失させながら辺りを見回す。

 

『言ってる場合か! クソッ、レジストに間に合わねえ』

『おい、赤いの!? 何事だ!』

『こいつは召喚術式だ! だけど。悪魔の使うやつじゃねえ!』

「召喚術式!? みんな、光輝から離れて! いや、教室から出て!」

 

 私がヒステリック気味に叫ぶと教室にいた皆は何事かと振り返る。いや、だから早く出ろって! 

 

「双葉がちゃんと名前を呼んでくれた……!」

「おい、光輝! 感動してる場合じゃねえぞ!?」

 

 龍太郎も呑気だよなぁ……って幾何学模様が完全に何かしらの魔法陣になった……あー……たしかに悪魔(・・)の使う奴じゃないわね。

 

 光輝の足元を中心に、魔法陣は一気に拡大する。金縛りにあったかのように教室にいた皆は迫る異常事態にようやく我に帰り、悲鳴と共に逃げ出そうとするが……

 

「無理ね、これは逃げれないわ」

「やけに落ち着いてるね、双葉ちゃん」

「ん? いや〜……親友が隣にいてくれるから落ち着けるのかな?」

 

 私は内心ヤケクソ気味になりつつ、香織と雫に微笑みかけた。

 

「皆さん、教室から出て!」

 

 畑山先生が叫ぶがもう遅い。魔法陣は一層強く輝く寸前に。

 

「南雲くんの近くにいてあげなよ、香織」

 

 私は親友の背を押した。そして……私の目の前は白で塗りつぶされるのであった。

 

 □noside

 

 光に目を潰されぬよう、閉じていた目を双葉は開く。そして、自身がどこにいるのかを把握すべく、あたりを見回した。

 まず、そこは壁画の描かれた大広間……壁画は中性的な顔立ちに金髪の男か女かもわからない者。

 後光を背負い、その背景は草原や湖、あるいは山々。その全てが自身のものと言わんばかりに手を広げている物と双葉の双眸には映る。

 

「この世界の神様ってところかねぇ、この壁画に描かれてんのは」

 

 そう呟きながら、内心では薄っぺらい、反吐の出る神か何かなのだろうと彼女はその壁画を切って捨てるように視線を切った。

 磨かれた純白の大理石のような石製の広間に自分たちはおり、ハジメと香織を探す。隅の方で抱き合ってるのを見つけたが今はそうっとしておこうと思った彼女はさらにあたりを観察する。

 

「光輝、無事?」

「あ、ああ……双葉……」

「今だけあんたを偽善野郎とは呼ばないであげる」

 

 双葉は動揺する光輝に話しかけ、我に帰させながら彼に状況把握に努めようと提案して他の生徒たちを見回して行く。

 光輝には良くも悪くもカリスマ性というものがあり、リーダー体質とも言えるだろうそれだ。故に、混乱の最中でも生徒たちを落ち着ける役割を任すことにしたのである。そして、どうやら双葉たちはその大広間の最奥に置かれているのだろう台座のような舞台上にいるようだった。

 

 高いところからあたりを見回すと、如何にも神官です。と言わんばかりの格好をしたものたちが祈りを捧げるような体勢で跪き、30人ほどが微動だもしないでいる……その様は不気味だと感じた。

 その中で、やたらと長い烏帽子のようなのを被った如何にも司教か教皇かと言わんばかりの派手な爺が進み出てくる。

 

 齢にして70代か、しかしその覇気のせいか20歳は若く見れるかもしれない。程なくしてその老人は口を開いた。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

「……トータス。知らない土地の名前ね」

 

 イシュタルと名乗った好々爺じみた笑みを浮かべる老人に対し、双葉は話しかける。しかし、イシュタルはそれに対して

 

「勇者様、そしてご同胞の方々は今は混乱もされておられるご様子ですな。まずは茶でも飲みながら一息つかれませぬかな?」

 

 そう提案するのであった。

 

 ──────────────────

 

 異世界に転移した面々は長テーブルの置かれている部屋へと案内された。未だ現実離れしたこの世界に気圧され。転移した生徒たちのほとんどは夢見心地なのだろう。声を荒げることも、また騒ぐこともなく静々と部屋へ案内される。

 また、やはり光輝が宥めたおかげでもあるが故に双葉は彼に対しての評価を少しだけ、ほんの少しだけ上方修正をすることにする。案内された部屋を見渡し、双葉は1人考える。

 

(手の込んだ彫刻や調度品を見る限り、この宗教団体は国以上の権威がありそうね……はぁーは、厄介なことになったわー)

 

 内心で項垂れる双葉は銀製のカップに入れられた〝茶らしきもの〟を啜ると、その味はよかった。周りでは……美少女、美女が揃ったマジモンのメイド様があちこちに待機しており。男子たちがあっけなく鼻を伸ばしているのを女子たちが氷点下とも言える冷ややかな視線を寄越していた。無論、双葉もその視線を寄越す側なのだが。

 なお、ハジメに関してはメイドの本当の役割を見抜いていたのか。一切目もくれず、この後の顛末を予想していたようであるが。

 

 上座に当たる奥の方に畑山教諭、光輝、龍太郎、雫、香織。そして親友2人に腕を掴まれ――連行される宇宙人のような姿勢だ――強制的に連れてこられた双葉が座り。

 他の生徒たちは自由に座っており、ハジメは目立たない席に座りひっそりとしていた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 クラスの全員がが落ち着いたと見越して、イシュタルは本題としての話をする。

 いわく、魔人族の侵攻でこの世界が‘トータス’の人間族が危機に瀕している──と。

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 そして、‘エヒト’なる神が異世界より勇者を招聘し、人類の危機を乗り越えるよう支援した……それがこの場にいる召喚された者たちなのだ──と。

 

 双葉はその話を聞き、ふざけるなと叫びたい気持ちを抑えながら頭を抱えた。

 利己的で身勝手な理由で召喚され、そして自分達に望まれる事を、あるいは強要される事を思うとゾッとする。やるわけがない、やりたくもないし理解もしたくない。

 

 あんまりにも理不尽なこの現状に対して激憤が込み上げてきていたがまだ、理性的に判断はできる。そう判断して双葉は心を落ち着かせるべく、茶を啜ったが。先程のイシュタルの顔を思い出してしまい思わず咽せる。

 

 エヒトの名を語る度にイシュタルは恍惚とした表情をしていた。おそらくはかの神からの神託を得てその嬉しさを思い出しているのだろうか? イシュタルによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。

 

 この世界は碌でもない神のお遊びに付き合わされているのではないだろうか──双葉はそう予想してしまうほどに、エヒトやらの都合のいい土壌が作られている気がしていた。

 

 そして彼女はとてつもない危機感を募らせる。それはバカ(光輝)がやらかさないかという事を。

 杞憂であってくれ。そう願う双葉をよそに、イシュタルへ猛然と抗議したのは畑山教諭だった。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 畑山愛子。25歳、独身「独身は余計ですよ双葉さん!」「いや、私そんなこと言ってないんですけど!?」……社会科の教師でこのクラスの担任ではないが、今回のクラス丸ごと転移に巻き込まれた教師である。

 低身長の童顔、ボブカットの髪型と多少の残念さを持つという‘合法ロリ’の四暗刻で多くの生徒にも慕われている教師の鑑であるが、見目の都合で彼氏がなかなかできず悩んでいたりもするとかしないとか。

 

 今現在も怒髪天を突く怒りを露わにしているが、側から見れば子供がぷりぷりと怒るようなもので……はっきり言ってクラスの生徒たちは「ああ、いつもの愛子先生だ」と半ば現実逃避気味に和んでいた。その畑山先生の怒りは最も。だが、対してイシュタルは天を仰ぎ……次に発した言葉は怒りに燃えていたであろう彼女を凍りつかせた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

 場に静寂が満ちる。双葉はんなアホなと言わんばかりな表情でイシュタルを見やり、畑山先生は叫んだ。そして、無常にもその答えは帰ってきた。

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

「そ、そんな……」

 

 脱力したかのようによろよろと椅子に腰掛ける畑山先生の様子を見て、生徒たちは現実を突きつけられる。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

「あの子に告白もしてないのに! そんなのあんまりだ!」

「遠藤……気づいてもらえてるのか?」

「うるさいぞ清水!」

 

 一部を除いてパニックになる生徒たち。その様子を見て双葉は腕を組み、瞑目した。

 

『……あ゛あ゛っクソッ! 絶対エヒトとか言うのぶっ飛ばす! ドライグ、アルビオン……決めたわ、あたし。赤龍帝と白龍皇の逆鱗に触れた輩を赦しとくのは癪よね?』

『クククククッハッハッハッ! あぁ、そうだな。白いの』

『笑い事ではないだろう、赤いの。だが……フタバの怒りは私の怒りだ』

 

 静かで密かに闘志を燃やす二天龍を従える者はまずは事の成り行きを見守るべく、目を開いた。

 そして未だ尚、パニックが収まらない中。誰かが立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり音を立てた者を注目する生徒達。音の主は光輝だった。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「まって」

 

 光輝の問いにイシュタルは満足そうに頷く。そこへ双葉が待ったをかける。

 

「気に食わないわ、偽善野郎」

「双葉……偽善野郎はよしてくれ!」

「うっさい黙れ。自分の決定で、あんたの意思でどれだけの人が運命を狂わせることになるってわからないの?」

「え、そうなのか……そうなんですか、イシュタルさん」

「左様でございますぞ」

 

 双葉の指摘に渋面ながら頷くイシュタルを見て光輝は戸惑いながら彼女に聞く。

 

「どう言う意味なんだ、双葉」

「さっきからあんたは何を聞いてたの? たしかに、魔人族と人間族は何百年と戦争をしてるんでしょうね。それで私たちの世界はこの世界よりも上位の世界になるから、何かしらの能力に目覚めるとは思うわ。ええ、神の選んだ使徒ですもんね。イシュタル様、相違なくて?」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「ではエヒト様の思惑をありのままに伝えるわ。つまり、私たちは強い。強いから‘殺戮マシーン’になれって事なのよ」

 

 双葉の選んだ言葉。‘殺戮マシーン’──その形容で光輝はハッとした顔をする。また、賛同しかけていた生徒たちもその意味を考える。

 

「──光輝。気がついたみたいならまだあんたはまだ救いがある大馬鹿野郎で済ませてあげるわ」

「双葉……すまない」

「そうね。「人を殺す覚悟」があるなら、とやかくは言わない。土壇場で捕虜にしようとか言ってその捕虜に寝首を狩られるような甘ちゃんが「戦争に参加する意思」を見せるなら、あたしは一生軽蔑するし侮蔑するわ。絶対に許すつもりはないから」

 

 自分たちにとっての分水嶺だと双葉は言っていると気がついた光輝は悩んだ。

 それは「人殺しをする勇気はあるのか?」と。「救うために殺せるのか?」と彼女は彼に問いかけているのだ。

 

「再三問うわ、光輝。「戦争に正義も悪も、秩序も混沌もない」それでもやるの? みんなもそれを理解して参加するなら……私は軽蔑も侮蔑もしないから──立派な1人の意思で決めた事だもの」

 

 光輝に問い。クラスの皆の顔を見渡して双葉はそれ以上言うことはない、と瞑目して椅子に腰掛けた。そして、光輝は決断の表情を見せる。

 

「なら俺は戦う。だけど無理強いはしたくない。みんなもよく考えてくれ……俺がやろうとしてるのは人殺しで最低な事だ! それを誰かに責任を押し付けるような真似はしたくない! だから、ついてこれる人だけついてきてくれ! 来ても来なくてもいい! 自分の意思で、この手を汚せる覚悟がある人だけ、立候補してほしい──イシュタルさん、立候補でも構いませんよね?」

「うむ、仕方ありませんな……認めましょうぞ」

 

 光輝の呼び掛けに対して……クラスの生徒たちは沈黙した。

 

「へっ、光輝ならそう言うだろうな──俺も手伝うぜ。お前だけに任せてられるか」

「龍太郎……すまない」

「不本意だけど私も手伝うわ。そうしなきゃならないのかもしれないし」

「雫……ありがとう」

「私は……」

 

 香織はハジメをチラリと見た。それに対して、ハジメは……力強く頷いた。

 

「双葉ちゃんはどうするの?」

「悪いけど、私は付き合わないよ。ただ、戦わないとは言わないわ。せいぜい裏方で支えさせてもらうから」

「それなら私も戦うのは無理だけど、精一杯支えさせてもらうね!」

「香織、双葉……ああ、前に出張るのは俺だけでいい。無理しないでくれよ?」

 

 光輝は2人に無理強いするつもりはないようで、香織と双葉は裏方に徹する意思を見せたのを見てあからさまにホッとするハジメ。光輝の様子を見てクラスの面々は分かれた。戦う意思を示したのは小悪党組を含めて半分。残りの者たちは戦う意思を示さなかった者たちだった。

 

 最後まで畑山先生は彼らを止めようとしていたが、覚悟を決めた目を見た彼女は……最終的にその意思を尊重した。そして、こう伝える。

 

「私は先生失格ですね……ですが、元の世界に帰るためにも皆さんの奮起をこれ以上逆撫ですることは愚かと思います。だから、皆さん……約束してください。辛くなったら私を頼ってください。皆さんの罪は私も一緒に背負いますから……それが年長者として、教師として──私にとっての最後の矜持です!」

 

 その言葉は極一部(・・・)の生徒を除いて心に強く響いた。

 

「方針は決まりましたな? では、【ハイリヒ王国】へ皆様をお送りいたしましょう」

 

 ここは神山という聖域らしく。方針が決まった以上長居は無用との事だ。

 一行は移動するべく出て行く。ふと、双葉は視線を感じ振り返るが。そこには案の定誰もいなかったが……奥に見えていたエヒトの壁画と目が合う。

 言い知れぬ不快感……真夜中のキッチンでGと出会った時のような感覚になり思わず眉を顰め、睨みつける。が、壁画を睨んだところで虚無感に包まれるだけだと割り切り。神殿を後にした。

 

 ──

 

 to be continued .

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