ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双 作:ゆきほたる
勇者()とおでんの出逢い
□noside
ハジメ達が奈落の底にて魔物を喰らい、成長していく中で。少し時を戻し、王宮に光輝達一行が戻り。国王と教皇に謁見の日を控えた前日の晩。
薄暗い地下牢に光輝は足を運ぶ。そこに囚われるのは罪を犯したもの達であり、そしてそこでは誰もが平等となる──罪の前に人の立場とは平等なのだから。
「檜山。気分はどうだ?」
「光輝……なぁ、俺はやってないんだ! やってないのに……なんで俺はここにいるんだよ!」
「……すまない、檜山。僕にはわかる」
「わかってくれるのか、光輝ぃ!?」
「お前が南雲を爆破したのがわかる」
「……っ」
じっと檜山を見つめる光輝の目を見れず、彼は言葉に詰まる。なによりも確信があるが故に、そして。
「僕には双葉がくれた原初のルーンがある。それには過去を見る呪いもあってね? クラスメイトみんなの了承をえて見せてもらったんだ。……その時の記憶を、何を標的にしたのかを」
「っ! は、ハッタリを言うんじゃねえよ! 俺はやってないんだ! 南雲が勝手に落ちたんだよ!」
「なら見てもいいか? 君の記憶を」
「……そ、それは……」
「そうだな。君がやった以上、見せるわけにもいかないだろう」
しかし、光輝は檜山を責めることはせず、確認だけだったのか踵を返した。その態度に檜山は責められると思っていたのに何故だ、と吠えそうになる。
「君の処遇は国王と教皇が決めるとのことだ。僕には君を裁く権利はない……ただし、君が嘘偽りなく話してほしいと僕は思うね」
「なんで……だよ! なんで責めないんだよ!?」
「君はもう、報いを受けた。南雲は生きてるし、香織も双葉ももちろん生きてる」
「嘘だ! あいつらはもういない! 俺たちの目の前に姿を表すことなんかねぇ!」
声を荒げ、自分が彼らを殺したと自覚している檜山はその場で頽れる。そして、自分が受けた報いとはなんなんだ! と恐怖に震え上がる。
「君はもう外に出ないほうがいい。君には双葉がかけた‘ガンド’の効果が出てきてるそして、双葉の本気で撃ったガンドなら君は死に絶えてる」
「っ……どう言う意味だよ」
「君は確かにあの三人を奈落の底に突き落とした犯人だ。だけど、あの方の言う通りなら三人は生きてる」
「殺人未遂だってか? つか、あの方……?」
「……今の君に話すつもりはない。ただし、君が全てを償った時になら話してもいい」
そう言い残し、光輝は地下牢を後にした。その後ろ姿をただただ見送ることしかできなかった檜山は彼との話が引っかかる。
「君の呪いは君が善行をすれば消える。もちろん僕にも消せるだろうけど、それは君が向き合うべきの‘罪’だ。だから僕は一切、その呪いの解呪には手を貸さないから」
「呪いってなんだよ」
「君の‘幸運を奪う’呪いさ。君は外に出ると愚行の度に不運が付き纏うようになる。そしてその愚行の判断基準は術者に依存する。つまりは双葉の基準で善行に励まないとならないのさ」
「んだと!? んでそんな事を俺がしないとダメなんだよ!?」
「……君の自業自得。今の君を双葉が見たらこう言うだろう「他者への不平不満ばかりで、自分では何も背負わず強者に媚びることしかできなかった生粋の負け犬」──と」
その言葉は檜山の心をズタズタに引き裂いた。なにより、正解なのがタチが悪い。
罪人とはいえ、同胞である。故に光輝は心を鬼にして檜山を諭すべくひどい言葉を敢えて彼に聞かせたのだ。
そして次の日、処遇はこうだった。
「勇者一行が檜山大介の罪状は殺人未遂とし、厳重注意、保護観察の上でハイリヒ王国への奉仕活動を半年行う旨を判決と下す」
とのことで、実質無罪。しかし、この処遇には続きがある。
「なお、次に同じあるいは類する愚行を行なった場合、‘神山への幽閉’の処分を下す」
全てが終わるまで幽閉されるというおまけ付きで檜山は光輝の指し示す指示に従い、真人間への更生を強要される羽目になることになるが、彼はその指示に従う中でサボったり、指示を聞き入れない時。
鳥のフンに見舞われたり、犬のクソを踏んだり、魔物に食われかけたりと色々なバリエーションに富んだ不幸に見舞われるがその話はまた今度でもよろしいだろう。
■??? side
「
「はい、母親としては心配で仕方ありませんが、二天龍をその身に宿してるあのバカ娘を心配するのもまた無粋かと思いまして、放置しておりましたが。流石に一月、二月も行方知れずは親としても心配になりますから」
「それで儂に相談か。なるほど、確かにあの子に原初のルーンを贈ったのは儂だしのぉ……どれどれ……ん?」
「どうかなさいましたか、主よ」
「……あのおバカ友人に原初のルーン譲ってるんじゃが」
「……は?」
「あー、なるほど。そうせざるを得ずかのぉ……ちょっとだけちょっかいかけてもいい?」
「……暇なのはわかりますが、貴方様は北欧の神々が頂点でございます。ご自重ください──ロスヴァイセが黙ってませんよ?」
「ちょっとだけじゃよ、ちょっとだけ」
「あ、こら、クソ爺今すぐ戻ってこい!!」
「ブリュンヒルデよ、バルドルに少し代理を頼んでおいてくれや〜」
「……オーディン様、せめて護衛くらいつけろやクソジジィ!! 待ちやがれぇぇぇ!」
どこかの
■光輝side
あの日。僕たちは命辛々迷宮から帰還することができた。そして、宿場街で一夜を明かし、気怠げな体を休めてから王宮に帰ったのだが。その日は貴族達の陰口で無能の烙印を彼らが押していた南雲のせいで香織が、人類史の中で最も強い者であった双葉を失ったとメルド団長も責められる事態になり、僕は彼らに全力で抗議した。
南雲が頑張ったから僕たちは命を繋げれた、彼に救われた側としては我慢できなかったから。
そして、僕に宿った新たな力を見る。技能に発現したのは‘原初のルーン’だ。これはおそらく双葉が僕を殴ったとき、あの一瞬で譲渡したのだと思う。
使い勝手が良く、なんと呪いの殆どは僕の意思によって選択、適宣できる万能の魔術だった。
‘全属性適正’を持つ僕なら、おおよその魔法を模倣して使う。後衛のみんなの真似事もできるようになった……しかし、それだけでは香織と双葉、南雲を助けになんていけないと思う。
今までの特訓ではダメだ。何かしら、コーチのような人々がいてくれれば……
「お悩みかな、若き
「……誰だ!」
「ふーむ、格上の探知が疎かよなぁ……もうちょい、周りに気をつけるよう努力せねばならんぞ?」
「……あっはい」
「気の効かん小童じゃなぁ、茶くらい用意せよ」
豊かな髭に緑色の帽子を被ったお爺さんが何故か僕の部屋に、いつの間にか入り込んでいた。どこか、只者じゃない気配を感じる。
なんだか、ヒトとは違う。まるで……いや待てよ?
「……その左目は……まさか、ミーミルの泉に捧げられましたか?」
「うん? おお、わかるか。博識なのは良いことじゃよ」
「……は? ご本人様ですか?」
「本当はこっちにきてみたかったが、この儂は魔術で作り出した幻影じゃよ。儂が踏み入れたら踏み潰しかねん脆弱な世界に二天龍が本気出したらぶっ壊れそうじゃが」
……なんでこんなヒトがここにいるんだろうか。愚問だが、もう一度聞こう。
「……えっと。北欧の神々が頂点、オーディン様であらせられますでしょうか?」
「うむ、如何にも」
僕はとりあえず土下座した。
「ひょ?」
「許可なくそのご尊顔をまじまじと見つめた事を、非礼を深く、深くお詫び申し上げます! わたくしめにはやらねばならぬ事象があり、それが終わるまでこの命、召し取られることをお待ちいただけませんでしょうか!!」
「いや、そのなんか勘違いしてない?」
「奈落の底に落ちた同胞を三人救わねば死なない! ですから、何卒、何卒!」
──終わりだ。‘勝利の父’と呼ばれるオーディン様に不敬なんて働いた僕は勝利に見放される。
「んんっ、面をあげよ。儂は何も怒っておらんから安心してほしいぞ?」
「は、ははぁ!!」
「顔上げろと言ってあろうが。天罰下すぞええ加減にせにゃ」
「滅相も!」
がばり、と顔を起こす僕に対して。オーディン様はにこやかな笑みで。言葉を続ける。
「さて、フタバの‘原初のルーン’を宿してあるのかは不問とする。だいたいのことは把握しておるからな」
「そ、それは」
「良い。助けようにも、フタバが自分の意思で降りた以上はお主を責める理由がないわい。で、上手く使いたいよなぁ? その力を」
「……はい!」
なんとなく彼の言いたいことはわかる。つまり、指導してくれると言うのならば……!
「良いぞ。まぁ、儂直々に指導はできないからのぉ。時間がないから、
「……丸投げ!?」
「では、うまく使うがy「見つけたぞクソジジィぃぃぃぃ!! 、ロス、回りこめぇ!」「ハイ、ヒルデ様!」──あっちょ待て、まギャァァァァァァ!?」
オーディン様はフッと消えた──確かに幻影だったようだ。
「……とりあえず、明日から試そう」
こうして、僕たちは強くなるために英霊の力を借りれるようになった。
翌日、試しに呼んだら応えてくれた人がいた。
「ワシを呼んだのはお前さんかな?」
丁髷に胴着を着た武闘家のお爺さんだった。名前は詳しく教えてくれなかったけども、僕たちに足りてない基礎の礎を築くようにと指導をしてくれた。
一日中みっちりと基礎トレーニング。そして、龍太郎は何を気に入られたのか。
「‘気を整えろ’。静かに、荒々しさを抑えてなぁ。次に、‘拝め’。自身以外に対して全てに感謝しろ。そして、‘祈れ’。平和でもなんでもいい、守りたい者でもなんでもなぁ。さらに、‘構えろ’。その力をなんたるか、生涯の全てを載せる覚悟でな。最後に、‘突け’。例え、その一度の正拳突きでも。命をかけろ……武闘家なら、己が肉体を武器にするなら、な」
そう言い残し消えていった。それから、龍太郎は空き時間はずっとその‘感謝の正拳突き’をやり続けてる。一日にワンセット千回を目標にしてるみたいだけど、最近は三千回やってるらしい。
1日限定で死んだ人を呼び寄せる。エインヘリアルと呼ばれる存在へと至った人々を呼ぶことができるようになった。
僕達は強くなるために、彼らに教えを乞うた。そして、彼らは教えてくれた。
何事も挑戦を続けることが大事だと。なにより、自分に限界を作ってはいけない、と。
だから僕たちは前に進む。強くなって……いつか香織たちを迎えに行くんだ……それまで、頑張ってくれ……香織、双葉……南雲!
■双葉side
「へっくしん!」
「へっくしゅっ!」
「ヘップボーンっ!」
……誰かが噂したのかな?
「おい、双葉」
「ねえ、双葉」
「……んだよ」
「「面白いくしゃみだな(ね)」」
「うっせえわ」
──―
to be continued .
次回はユエ様の登場