ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双 作:ゆきほたる
そして、最強への第一歩を
□noside
ハジメが連れの二人に喰われた……襲われた夜からおよそ二ヶ月の時が流れた。
彼が多くの装備品である、自身の武装そしてアーティファクトの作成を行なってきたハジメの最高傑作とも呼べるものがこの日、ついに完成したのだ。
「できた……
「……双葉の義腕?」
「ああ、そうだ。ほれ、手の向きが右腕だろ?」
作業台に置かれた物は作り物とはいえ、偽りとは言え月の光を反射して銀色に煌めいている。
その神秘的な美しさは流麗で繊細。それでいて機能美を忘れていなさそうな細めの義腕だった。美術品についてあまりわからないユエでもってしても、綺麗であるという事は理解した。
ハジメも失った左腕をオルクスの遺していた義肢を改造した物を身に付けているが、そちらは漆黒に赤いラインが入ったとても無骨な物だ。ハジメが盛りに盛った色々な機能を搭載させたすごい義腕となっている。
世に出れば間違いなく国宝級のアーティファクトとして厳重に保管されるだろう逸品である。
そして、今日組み上げたそれは。この拠点にあった鉱石鑑定でも読み取れなかった未知の金属に加えてシュタル鉱石と‘神結晶’を鉱物融合させて作り出した新たな金属である
神結晶の持つ莫大な魔力を溜める機能、そしてシュタル鉱石の特性である魔力を込めれば込めるほどより強固になる性質を保有するため頑丈さはピカイチとなっており。
また、未知の金属の力なのかは不明だが、傷がついても日光あるいは月光を、浴びるとたちまち修繕されるため、常に美しいままである。
そして、この義腕にも色々と仕込まれていた。
まず、魔力式パイルバンカーこと‘パルマフィオキーナ’。これは双葉の持つ魔力や龍のオーラを‘光のパイル’に変換して、掌より。光速かつ超至近距離で射出するギミックだ。理論上では豊富な双葉の魔力量の実に‘十分の一’消費するだろう威力を持つ。
これは通常魔法と近接攻撃を使い分けて戦う双葉の弱点である物理耐性の高い敵に対しての魔法以外の‘有効札’が欲しいと彼女が指し示した要望にハジメが応え、搭載された。
そして次に、白銀の閃きこと‘ダークネス・リパルサー’。これはアガートラムよりレーザー砲の様に魔力を照射する光学兵装だ。
特に‘魔を払う’術式を込められたためか、魔物に対して致命的なダメージを与えれると双葉は豪語していた。実際に、将来。魔物を一撃で消しとばしていたりするが……先にて語られるだろう。
さらに対決戦兵装こと‘
これは
なお、この攻撃を発動すると双葉は最大値で使う場合、実に‘二分の一’の魔力を失う羽目になるが、その極大のオーラ剣は必殺兵装として申し分はないだろう。
また、この義腕を持つ者は闇属性魔法による精神汚染的な効果を一切受け付けない……‘精神汚染無効’なる効果を持っているが、そもそも双葉自体がメンタルクリーチャーなので保険的な機能とされている。
「我ながらメチャクチャなのを作っちまったな……」
「……神結晶をほとんど使ってる。仕方ない」
「神水が枯渇したんだし、有効に使うべきだろ……また埋めるわけにもいかん」
そう、素材としてこの義腕に使われている神結晶は全体の6割。残りの4割は別のものに使うとしてハジメは残しているが、そりゃあとんでもないモノになるわけである。
「ガングニールも正式にロールアウト。双葉の防具も作り終わったな。ユエ、また双葉のマッサージよろしくな?」
「んっ……む、時間」
「ん? ……ああ、そうだな」
ハジメは彼女たちと過ごす上で、モノづくりをする際は集中したい、とローテーションを組んだのだ。次は香織が彼の助手として動く時間で、ユエは名残惜しそうに部屋を後にする──何事もメリハリは大事である。
余談だが香織に生涯の墓場に引き摺り込まれ。ユエに年上の貫禄を見せつけられ色々吹っ切れてしまったあの夜。
奈落の底で、常識はずれの化物達を相手に体を作り替えてまで勝利し続けたハジメも、二人の猛攻には太刀打ち出来ず勝率は0%だ。なので、ハジメは開き直って受け止めることにしたのだった。
しかし、事に及んだのはあの二人くらいで、双葉はそっち方面はあまり積極的ではない……のは内心助かっているハジメだったが、逆に申し訳ないとも思っていた。
ユエと入れ替わった香織にそれとなく話を聞くと。香織は意外な事実を教えてくれた。
「……重婚に遠慮してるというより、一線引いてタイミングを見てるのかねぇ」
「双葉って結構恥ずかしがりだし、恥ずかしがりでもあるし……二人っきりでいちゃつきたいんだと思うけど」
「二人きり、か」
なお、香織とユエが水面下で正妻争いをしているため、双葉はその間を取りなしている苦労人でもある。なお、香織もユエも。誰が正妻だろうとハジメが選べば矛を収めると思われるが……今のハジメにそこまで決めれる度量はないのであった。
■双葉side
ハジメが義肢をくれてから、あたしは使いこなすべく、一月かけて訓練した。
魔力操作の感覚は問題なかったけど、擬似神経の接続がなかなか思うように行かず、手の部分をうまく扱えなかったのはいい思い出と言うべきか。
香織とユエの尽力には頭が上がらず、幾度となく血を吸われるわ。褥に引き摺り込まれるわ……踏んだり蹴ったりなことも多いけど、それでも感謝が勝る。
「腕にはなれたか?」
「まぁ、うん……良好というか、親和性が凄すぎて困惑してるよ」
「服もユエが作ってくれたんだってか」
「うん。かわいいでしょ♪」
くるり、とその場で回ってみたあたしの格好は新しい服装。
純白の戦装束で、スカートより半パン主義のあたしに合わせてくれた代物だった。
ユエのデザインセンスはすごい……地球でも一線張れるだろうと保証できる。
私の格好は頭には龍の意匠を凝らしたティアラっぽい羽付きのヘッドギア。胸元は
魔物の素材を使ってるため見た目以上に頑丈で防護性能の高いインナーは首元を守るためにはタートルネック。だけど腕の稼働を阻害しないように肩はノースリーブになっている。
白のハーフパンツに黒いニーハイソックス。実は付与魔法でこれらの衣服は破れないし下手な金属防具よりも防御力がある代物である。そして私の右肩から肘まで欠損していたのを補うべく。一からハジメが作ってくれた
ブーツはもともと履いていた物に追加装甲を施してもらうだけ……どころか別物になっていた。
完全にグリーブなんだけど、軽金属なので羽のように軽い代物だった。
「ここまでしてくれなくてもよかったのにって言ったら罰当たりそうね」
「俺がやりたいからやっただけさ」
「ところでなんで二人きりなの?」
「……いやか?」
「とんでもござんせん」
あたしは緩む頬を必死に隠すように、ハジメと向き合っている……だってあたしはハジメが好きだから当然だ。あのヒュドラとの戦い、そこで彼は身を挺してあたしを守ってくれた。
死を覚悟したヴァルキリーのジンクスというものがある。
それは、己の勇士を護るべく盾として死を覚悟する。そして、その逆。勇士がヴァルキリーを救うべく死を覚悟する。
前者は私たちの価値観であれば……当然の帰結。勇士が
だから、ヴァルキリーは導き手にして守護者な訳なのだが。もしもヴァルキリーが勇士に命を救われた場合……「その人以外居ない」と思いを寄せてしまうのだ。
女としての本能か、それともヴァルキリーの習性なのかは、あたしにはわからない。
だけど、それを踏まえてもあたしはハジメが好きだった。もう、キスされてからはハジメの以外の男などを考えるのはできなくなっている。なるほど、これが香織がのろける原因だったのね。
「変な言葉遣いになってるぞ双葉。さて、そんなことはどうでもいい……明日には出発するぞ」
「そうだね。もういい頃合いだと思うし」
この拠点を住処にして鍛錬と準備を進めたあたし達。ここでの伸び代はもうないだろうと思う……ステータスも伸びなくなったしね。
「それでよ。香織には渡したんだが……手を貸して来んねぇか?」
「何する気?」
「いいから……これでよし」
何かするのかわからないという顔をしていると、ハジメは……私の左手薬指に指輪を嵌めた。
「は?」
「おー、ピッタリだな。気が早いかもしれないと思う。だけど、俺なりのケジメはつけとかないとダメだろ?」
「な、え!?」
「──婚約指輪だよ」
ハジメなりにあたしを手に入れると豪語した以上。婚約指輪は必須だとはわかるけども……!!
「愛してるからな、双葉。何があっても俺はお前を離さないから」
「──はい……ありがとうございます……ハジメ……」
「ちなみに、まぁ、第一の嫁は香織だ。扱いはな……ただ、俺にとっては第一も第二もないからみんな平等だ。立場的に第二の嫁になるが、我慢してくれるか? ……雰囲気ぶち壊しですまないが」
「……そもそもオンリーワンが常識でしょ? あたしたちが異常なだけよ」
呆れ眼でハジメにジト目で返す。彼は「それもそうか」と苦笑いする……くそー……かっこいいんだよ! それはそうとこれって……
「これ、神結晶よね?」
「おう。魔力を蓄える性質があるから、宝飾品にもってこいなんだよ」
「それでかぁ……あたしの腕にもめちゃくちゃ使ってたみたいだけど、在庫は……?」
「三割は俺の義眼にしたからな。残りの一割の内から作ってあるので……まだいけるな」
神結晶は貴重な物なんだけどなぁ……ホントに愛されているとわかる……大事にしなきゃ、この右腕は。
「頼りにしてるぜ、双葉」
「おうとも!」
ハジメに頼ってもらえるなら……あたしはどこまでも飛んでみせる。そして、エヒトをぶん殴って帰るのだ……地球に!
「あ、ハジメ。魔王を名乗る?」
「……やめろぉぉぉ!! 今の俺の格好を見てお前は何も感じないのか!? 最初俺が自分の姿を見て一日中寝込んだことを思い出せよ!!」
「それはごめん……で、でも神殺し宣うなら……ねぇ?」
「……それもそっか? なんて言うかよ!? 魔王なんていやだ!!」
「まぁー……そこまで拒否するなら……ごめんね?」
「なんだっていきなり言い出したんだよ、お前」
「だって、冥界の方じゃ四大魔王がいるからねー。サーゼクス・ルシファー様にセラフォルー・レヴィアタン様とアジュカ・ベルゼブブ様に、ファルビウム・アスモデウス様……個性の塊だよ」
「双葉が様付けて……相当やばいのか?」
あたしは一度冥界に行ったことがあり、サーゼクス様にあたってはとある機関のエリートである我が父上の友人なのである。
何がどうしてそうなったんだとも言いたくなったが、どうにも二天龍を宿しているあたしに対しても興味を持たれているとか。
まぁ、あたしは転生悪魔になるつもりはないけど……帰還後、ハジメに対しても興味を持たれる可能性は大いにある。
「サーゼクス様は間違いなくヤバいから。数千人の反乱軍を一人で潰した実績の持ち主だしね」
「……さすが
「目をつけられる可能性もあるから、その辺は考えとくほうがいいかも」
「おう。留意しとくわ」
はぁ、とため息。まぁ、「個性の塊」とあたしがあの方々を表するのには理由があり……フリーダムが過ぎる。なんやねん、‘魔王戦隊サタンレンジャー’とは一体。
「んじゃまぁ……今日はゆっくり休めよ」
「了解。おやすみ、ハジメ」
「ああ、また明日な」
ハジメを見送り、あたしも眠ることにした。胸の高鳴りは未だ衰えず、左手薬指に存在するその証を見て……幸せを感じながら夢に落ちていった。
□noside
三階の魔法陣を起動させながら、ハジメは静かな声で告げる。
「みんな、俺の武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」
「そこはもう周知の事実だよ、ハジメ」
「諦めはついてるから、まぁ……そんじょそこらのやつに負けるつもりもない」
「……その通り」
ハジメの言葉に香織、双葉、ユエが返す。その雰囲気は自分たち以外のことは全くもってどうでもいい……とも言わんばかりである。
「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」
「要求してきたら、〆てもいいよね?」
「あたしも香織にさんせー。ぶっ飛ばして黙らせる方が楽だよ……‘全部’、ね」
「……双葉、一番過激」
苦笑いするハジメ。どうにも彼女たちは変わらないようだ。と
「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」
「「「自称神はとりあえず害虫だし駆除」」」
「……世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」
「鉄火場を踏み越えた数を考えてみようよ、ハジメくん」
「あたしたちならそれすら捻じ伏せて進むまでよ」
「今更……双葉はいつもの脳筋」
ユエの言葉に思わず苦笑いするハジメ。真っ直ぐ自分を見つめてくるユエのふわふわな髪を優しく撫でる。
気持ちよさそうに目を細めるユエに、ハジメは一呼吸を置くと香織と双葉の腰を抱き寄せ、彼女たちの額に軽くキスする……爆ぜろ。
そして、ハジメは望みと覚悟を言葉にして魂に刻み込む。
「俺がお前らを、お前らが俺を守る。これで俺達は最強だ。全部なぎ倒して、世界を越えて……故郷に帰るぞ」
ハジメの言葉を聞き入れて。香織はにこりと余裕の微笑み、双葉は力強く頷いた。
ユエはまるで抱きしめるように、両手を胸の前でギュッと握り締めた。そして、無表情を崩し花が咲くような笑みを浮かべた。
「「「おう!」」」
彼女たちの返事を受け、ハジメは魔法陣を起動させるのであった。
──
to be continued
双葉の進化先、バランスブレイクはどちらを優先する?
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赤龍帝の鎧ベース。これしか勝たん
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白龍皇の鎧ベース。銀の腕だし映える
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二天統一ベース。オリジナル亜種禁手化
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禁手化を状況的に使い分けろ!